【記者手帳】米高官「なぜ朴大統領は元慰安婦の手を握ってやれないのか」

シリコンバレーに向かう米国の安保責任者たち

 デニス・マクドノー米大統領首席補佐官、ロレッタ・リンチ司法長官、ジェームズ・コミー連邦捜査局(FBI)長官、ジェームズ・クラッパー国家情報長官、マイク・ロジャース国家安全保障局(NSA)長官…。米国内の権力者であり、テロを防ぎ安全保障の責任を負う機関のトップたちだ。彼らは8日(現地時間)、サンフランシスコをそろって訪れる。大統領行事でもあるのかと思いきや、そうではない。シリコンバレーにいるマイクロソフト、アップル、グーグル、フェイスブック、ツイッター、ユーチューブの関係者に会うのだ。企業が招待したわけでもない。「高い所にいらっしゃる方々」が米国の安保状況を企業にブリーフィングしようと情報技術(IT)関係者たちの所へ行くのだ。

 彼らはイスラム国(IS)などのテロ集団がITをどのように使い、どのように人を集め、どのように過激な思想を植え付けるかを説明する予定だ。インターネットを通じたテロ謀議がどれくらい容易かも伝える。これを元に、テロリストを阻止する方策を話し合うと言われている。

 飛行機で7時間以上もかかる所へ行くのは、企業の協力が不可欠だからだ。「米国人の通信内容のほとんどは国に傍受されている」というCIAとNSAの元職員エドワード・スノーデン氏の暴露以降、プライバシー保護のため自社製品に暗号をかけた企業は多い。こうした企業にとっては、国の安保も重要だが、個人情報保護の方が優先される。「捜査のため暗号システムをかいくぐって入り込める「裏口」を開いてほしい」と要求されても、ユーザー離れを引き起こすのではと恐れて応じない。だから、国が説得できなければ道がないのだ。

 バラク・オバマ大統領は長官たちの出発前日、銃規制をテーマに1時間20分間にわたりタウンホールミーティング(政治家が市民と対話する集会)を開いた。CNNの主催により銃規制の賛成派も反対派も出席した集会で、オバマ大統領は反対派を1人でも多く説得しようと努めていた。

 韓国政府の高官や大統領府関係者が企業や現場を訪れ、心を開いて語りかけたという話は聞いたことがない。最も敏感で慎重に扱うべき従軍慰安婦問題で、当事者の所に行くのが次官だというのが、この国の政府の現実だ。米国務省のある高官に「なぜ大統領は元慰安婦の手を握ってやれないのか」と聞かれ、答えに窮した。

ワシントン=ユン・ジョンホ特派員
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