養育費? 就労収入?
隠す以前に「ない」「少ない」問題が
では、収入が基準より低いことに関しては、どうだろうか? 「子どもの父親から養育費を受け取っていないことになっていたが、実は受け取っていた」あるいは「働いていないことになっていたが、実は働いていた」「就労収入を実際より低く申告していた」は、仮定の話として、ありえなくはない。実際に起こる可能性は、どの程度あるだろうか?
まず養育費については、受け取っているシングルマザーは全国平均で約20%である。そもそも受け取れている比率が低いので、「養育費を受け取っている事実を隠す」はさらに低い。
就労収入はどうだろうか? 生活保護の不正受給で最も多いのは「就労収入の申告漏れ」だ。しかし、2011年、母子世帯の就労収入の全国平均は192万円であった(厚生労働省:平成23年度全国母子世帯等調査結果報告)。たいていは「低すぎて隠す必要もない」、が実態のようだ。
数少ない、個別に対応すれば済むはずの「不正」を、わざわざ国家予算に施策として書き込む必要があるのだろうか? 理解に苦しむところだ。ただ、
「児童扶養手当を受け取ると、監視の対象になるんですよ」
という、実質的には「申請せず利用しない方が身のためですよ」というメッセージを送ろうとしているというのならば、極めて分かりやすい話である。それは生活保護で行われてきたことそのものだからだ。1950年、現在とほぼ同じ形の生活保護制度が発足したとき、厚生省(当時)は「濫給より漏給」というスローガンのもと、不正受給(濫給)はあまり問題にせず、受給資格があるのに受給せずにいる人々(漏給)の救済に注力していた。しかし1954年、大蔵省(当時)からの繰り返される要請についに応じ、「適正化」の名の下で給付抑制へと方針転換した。同じことが、これから児童扶養手当についても起こるとしても、不思議ではない。