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生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

36年ぶりの児童扶養手当増額に仕込まれた毒

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【第34回】 2015年12月25日
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養育費? 就労収入?
隠す以前に「ない」「少ない」問題が

 では、収入が基準より低いことに関しては、どうだろうか? 「子どもの父親から養育費を受け取っていないことになっていたが、実は受け取っていた」あるいは「働いていないことになっていたが、実は働いていた」「就労収入を実際より低く申告していた」は、仮定の話として、ありえなくはない。実際に起こる可能性は、どの程度あるだろうか?

 まず養育費については、受け取っているシングルマザーは全国平均で約20%である。そもそも受け取れている比率が低いので、「養育費を受け取っている事実を隠す」はさらに低い。

 就労収入はどうだろうか? 生活保護の不正受給で最も多いのは「就労収入の申告漏れ」だ。しかし、2011年、母子世帯の就労収入の全国平均は192万円であった(厚生労働省:平成23年度全国母子世帯等調査結果報告)。たいていは「低すぎて隠す必要もない」、が実態のようだ。

 数少ない、個別に対応すれば済むはずの「不正」を、わざわざ国家予算に施策として書き込む必要があるのだろうか? 理解に苦しむところだ。ただ、

 「児童扶養手当を受け取ると、監視の対象になるんですよ」

 という、実質的には「申請せず利用しない方が身のためですよ」というメッセージを送ろうとしているというのならば、極めて分かりやすい話である。それは生活保護で行われてきたことそのものだからだ。1950年、現在とほぼ同じ形の生活保護制度が発足したとき、厚生省(当時)は「濫給より漏給」というスローガンのもと、不正受給(濫給)はあまり問題にせず、受給資格があるのに受給せずにいる人々(漏給)の救済に注力していた。しかし1954年、大蔵省(当時)からの繰り返される要請についに応じ、「適正化」の名の下で給付抑制へと方針転換した。同じことが、これから児童扶養手当についても起こるとしても、不思議ではない。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

生活保護当事者の増加、不正受給の社会問題化などをきっかけに生活保護制度自体の見直しが本格化している。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を紹介しながら、制度そのものの解説。生活保護と貧困と常に隣り合わせにある人々の「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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