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生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

児童扶養手当の「まとめ支給」に隠された恐るべき貧困への罠

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【第35回】 2016年1月8日
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最初の「前例」になった記事
そして「子どもの貧困」解決に向けて

 しかし、錦光山さんがたどりついた「公的手当を受けている低所得層の家計をデータによって可視化する」は、「新聞紙面」あるいは「新聞社」の中で、どこに位置づけられるべきなのだろうか? この視点を得た当時、錦光山さんは、信頼できる同僚らに意義は認められたものの、「それってニュース?」という反応もあったそうだ。しかし、最初は「何を言ってるんだろう?」という感じだった同僚たちも、だんだん理解してくれるようになったということだ。

 「貧困を、当事者の思いのこもった言葉やストーリーで語ろうとするのではなく、ただただデータと知見とエビデンスで語っていくタイプの報道、私は読んだことがなかった。だから、雛形を探し当てるのに時間がかかった感じですけれど、『こういうテーマこそ、これから求められる部分だ』と実感しました。勉強して蓄積して、やっていかなくてはと、強く感じています」(錦光山さん)

 子どもの貧困は喫緊の課題であり、早急な解決が必要だ。このことを否定する人は、多くないだろう。でも「現状はどうなのか」「どう解決すればよいのか」を明らかにするためには、データの収集・分析・検討が必須だ。現在、貧困問題に関する政府の公的調査では、性別ごとのデータも充分に収集されていない。しかし、公開されている手当額やゴシップ記事からも収集できそうなデータに、想像力を働かせ、知見を集め、あるいは知見への道を示してくれる人々に接触し、論理的な推論の積み重ねを加えていくだけで、これだけの実態や背景が、解決への具体的な提案とともに明らかになる。錦光山さんのたどったプロセスには、データからのアプローチの醍醐味が凝縮されているように思える。でも、解決はまだまだこれからだ。

 「子どもの貧困がどのように問題なのか、どう解決されるべきかについて、現在は『学力の確保が大切』『文化資本格差の解決も重要』『多様なロールモデルの提示』という意見が多いように思われます。もちろん、学力も文化資本もロールモデルも大切です。でも、子どもの貧困の背景には、大人の家計破綻、大人の就労の問題があります。シングルマザーの場合には、女性の置かれている地位の問題もあります。いずれにしても、お金の問題です。そこに切り込まなくては……と思います」(錦光山さん)

 そういう錦光山さんは、2歳の男の子の母親でもある。母親になって以後、子どもが被害に遭うニュースが身につまされるようになり、虐待死のニュースで1週間ほどウツっぽくなったこともあるそうだ。

 「子どもの貧困を解決するために、給付も含めて全体の所得水準を上げるのが最優先であることに、反論される方はあまりいないと思います。でも具体的な施策になると『各論反対』の方がたくさんです。児童扶養手当も、今回、2番目の子に対して5000円上げるのが精一杯なのが現状です。でも児童扶養手当の『渡し方』、支給頻度を変えるだけで出来る改善もあります。万能薬ではありませんが、コストがかからず、今すぐ出来て、効果の高い施策です。これからも、お金のない中で暮らして行かざるを得ない人たちの収入を安定させ、家計を改善し、子どもの貧困を解決していくために、施策を実施する自治体のヒントになる記事を提供していきたいですね」(錦光山さん)

世論調査

質問1 公的手当の支給頻度はどうするのがふさわしいと思いますか?







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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

生活保護当事者の増加、不正受給の社会問題化などをきっかけに生活保護制度自体の見直しが本格化している。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を紹介しながら、制度そのものの解説。生活保護と貧困と常に隣り合わせにある人々の「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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