認定延期 業界団体、13社申請、予想上回る
病気のかかりやすさや体質を判定する個人向けの「遺伝子検査ビジネス」を手がける業界団体が一定の基準を満たした企業を独自に認定する制度で、認定企業の公表が当初予定した3月から遅れる見通しとなった。認定を希望する企業からの申請が予想を大幅に上回り、内容の審査に時間がかかるため。団体側は「サービスへの世間の関心が高まっており、慎重に審査を進めたい」と説明している。
遺伝子検査ビジネスは医療目的とは別に、利用者から送られた唾液や口の粘膜などの遺伝子を分析し、特定の病気のリスクや太りやすさなどの体質を調べる。健康維持のきっかけになると期待される一方、科学的根拠のないサービスを提供する業者もあり、認定制度は業界の信頼性を高める狙いがある。
認定制度は、大手のヤフーやDeNAライフサイエンスなど33企業・団体が加盟するNPO法人「個人遺伝情報取扱協議会」(事務局・東京)が昨年10月に創設。利用者への事前の説明や科学的根拠の明示、個人遺伝情報の取り扱いなど206項目のうち、各企業が扱う部分をチェックする。審査は医療や法律の専門家らでつくる第三者機関が担当する。
認定は大手数社を想定していたが、当初は団体に未加盟だった企業を含めて申請が相次ぎ、最終的に13社が応募した。全社の審査を終えた後、夏前には認定企業を公表するという。【千葉紀和】
ビジネス活況 ITなど1000社参入
遺伝子検査ビジネスは近年IT企業を中心に参入が相次ぎ、海外サービスの仲介も含めると国内に1000社近くあるとされる。個人がインターネットを通じて数千〜数万円の検査キットを購入し、唾液などを入れて送るだけで利用できる手軽な方法が主流で、美容やダイエット目的での利用も広がる。
一方、内容は業者任せで、子供の才能が分かるなどとうたい文句を掲げて信用性の乏しい事業を展開したり、同じ項目を調べても企業によって結果が大きく異なったりする問題が指摘されている。
遺伝情報は「究極の個人情報」とも言われ、遺伝子検査ビジネスを法令で規制している国もある。日本は法規制はなく、昨年末に政府の検討会で、遺伝情報を改正個人情報保護法の対象に位置付けることが大筋で了承された。不適切に取り扱われれば就職や保険加入などでの差別につながりかねず、遺伝子差別を禁止する法制度の必要性も指摘されている。【千葉紀和】