日銀が金融政策を決める会合の運営や公表方法を大きく変えた。問題はそんな制度変更より日銀の姿勢や行動にあるはずだ。いくら公表の仕方を工夫しても肝心の論理が破綻していては意味がない。
市場の「裏」をかくように突然、追加緩和に踏み切ったり、そうかと思えば理屈をこねて追加緩和を見送ったり…。
経済政策の根幹を成す金融政策は、市場が予見できることが重要であり世界の中央銀行は慎重に取り組んでいるが、ひとり「黒田日銀」はことごとく逆のやり方を貫いてきた。バズーカ砲の異名がついたようにサプライズ(驚き)を与え、強引に市場を動かす。アベノミクスを象徴する奇手奇策である。市場泣かせの手法はそのままに、情報開示のやり方だけ変えても信頼は得られまい。
日銀が変えたのは、金融政策決定会合をこれまでの年十四回から八回に減らす一方、会合から六営業日後に九人の政策委員の発言を要約した「主な意見」を公表するようにした。従来は会合の一カ月半後をめどに、議事要旨が公表されるだけだった。
議論の概要を迅速に公開することで金融政策をめぐる判断が市場関係者に伝わりやすくなると日銀は期待する。しかし、制度だけ整えても「仏作って魂入れず」にならないか。
「主な意見」はきのう(八日)、初めて公表され、昨年十二月十七、十八日の金融政策決定会合の議論の一端が分かった。同会合では、設備投資や賃上げに積極的な企業の株式を組み込んだ上場投資信託(ETF)を年三千億円買うなど異次元緩和の補完措置を決めた。背景に「市場は不安定でリスクは依然下方に厚い」との認識があったことが明かされた。
そもそも会合後には黒田東彦総裁が記者会見している。総裁が政策の意図や背景を市場に伝わるようしっかりと説明することが何より重要だ。だが会見では下振れリスクが高まったとの判断は示されなかったため「なぜ中途半端な補完措置を行うのか」と株式市場で失望売りが出たのである。
異次元緩和は「二年で2%の物価上昇という目標期限を強く約束することで人々の期待に働きかける」というのが柱である。しかし昨年十月の決定会合で目標達成時期を遅らせたにもかかわらず追加緩和しなかったことで「政策に信頼性がなく、論理破綻だ」との不満が市場から噴出した。改めるべきはまず日銀の姿勢なのである。
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