【特集】国会提出迫る秘密保全法~米国によって剥奪される国民の知る権利
自民党トンデモ改憲草案の正体を世界に周知させよう! 会員以外の方にも特別公開中!
「立憲主義の崩壊だ」。海渡雄一弁護士は、2013年4月25日(木)に行われた、東京共同法律事務所主催の憲法講演会でこのように述べ、安倍政権が公言する憲法96条の改正により、改憲の敷居が下がれば、「時の政権による憲法改正が日常化し、憲法と法律の違いがなくなる」と語った。
■内容
「憲法改正と秘密保全法 ~改憲を阻止する運動を~」
海渡雄一弁護士「自民党改憲案と改憲の焦点」 古田紀子弁護士
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海渡弁護士は、秋の国会で上程されるという、秘密保全法の危険性を語った。秘密保全法とは、国が特別秘密に指定した情報を取り扱う人間は調査・管理され、外部に情報を知らせれば処罰対象になる、というものである。
秘密保全法検討委員会のメンバーを見ると、警察庁、外務省、防衛省が中核を担って検討が進められたことがわかる。また、6度開催された有識者会議の内容は、議事録も残されておらず、メモも廃棄されている。情報公開請求しても何も出てこず、準備段階から秘密に包まれている。
対象となる秘密事項は、1. 国の安全、2. 外交、3. 公共の安全及び秩序の維持、の3分野で、罰則対象となるのは、漏洩行為(過失含む)、特定取得行為(取材などの情報へのアクセス)、共謀(情報を取りに行こうと企てること)、未遂、教唆、扇動などである。
これまでも、公務員による秘密漏洩は懲役1年、自衛隊法違反では懲役5年と定められていた。しかし、秘密保全法では、違反した者は懲役10年、または5年以下としており、刑の重罰化が図られている。
「たとえば、原発事故が起こり、事故そのものが秘密対象となったとする。真相を知る公務員がいるなら公開を、と迫ると、これが『扇動』にあたるだろう」。こうした情報を取得するには、10年間の懲役を覚悟しなければならない、と海渡弁護士はいう。
ジャーナリストにも、莫大な法的拘束が働くであろう秘密保全法。海渡弁護士は、違法すれすれの取材活動が、いかに社会に貢献してきたかを説明するために、「シークレットポリスマン事件」を例に挙げた。
「シークレットポリスマン事件」とは、イギリスで警察に潜入取材した記者が訴えられた事件である。人種差別が横行しているという警察署の実態を暴くため、BBC記者が身分を隠して警察学校に入学。警察官になり、取材活動を行った。数カ月後、警察に取材活動が見抜かれた記者は、起訴されてしまう。しかし、それまでの取材成果を、BBCは特番にして放映し、あまりにも酷い人種差別の実態が白日のもとに晒された。記者への起訴は取り消しになり、裁判は行われなかった。こうでもしなければ、明るみに出なかったであろう、警察の腐敗問題であった。「かつて、北海道新聞は、北海道警察の裏金事件を暴いたが、秘密保全法が制定されれば、こうした警察の腐敗などは、隠れたままになってしまうだろう」と海渡弁護士は危惧した。
さらに、話は自民党の改憲問題にも及んだ。「法律の制定は、議会の多数派によって決まる。これが正しいのかはわからず、時代背景によって間違った判断もありえる。そのために、憲法が必要である」と海渡弁護士は述べた。しかし、自民党は参議院選挙の公約として、憲法96条が定める憲法改正要件の「衆参両院の3分の2以上の賛成」という箇所を、「過半数の賛成」に変えようとしている。
海渡弁護士は「96条は憲法の安定化に大きく寄与してきた。国会の多数派は、その時々で激しく変動する。時の政権による憲法改正が日常化し、『憲法』と『法律』に違いがなくなりかねない」と指摘し、「立憲主義が崩壊する」と警鐘を鳴らした。
【IWJ・原】
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