ディープラーニングがGoogleを変え、Webマーケティングを変えた
ディープラーニングが生んだコンテンツマーケティングとは
シナプス海老原です。
Webマーケティングで、はやりのコンテンツマーケティング。そして、人工知能の最新技術ディープラーニング。このふたつのトレンドは、ここ数年ほぼ同時期に発達しました。
これは、偶然なのでしょうか。私は必然であると考えます。コンテンマーケティングとディープラーニングは密接に関連しているのです。
ディープラーニングがGoogleの検索ランキングアルゴリズムをコンテンツ重視に変えました。それにより、従来型のSEO対策から、コンテンツマーケティングという記事のコンテンツの質を重視するWebマーケティング手法が生まれたのです。
「ディープラーニング」と「コンテンツマーケティング」ふたつのトレンドの関係性について、理工学修士、IT業界15歴年、現在は、マーケティングコンサルタントで、自社のWebマーケティングの実行をほとんど一人でやっている海老原が解説します。
参考:海老原の新規事業/BtoBマーケティング裏ワザ系コラム集
海老原のマーケティングコラムまとめです。
- コンテンツマーケティングのテクニック- Google検索にやさしい日本語力講座
- 新規事業開発、BtoBマーケティングでキーとなる顧客、競合、自社情報を獲得する7つの情報収集テクニック
- 裏の新規事業計画書の書き方(既存事業計画書は無視せよ!)
- 社内調整のコツ:新規事業開発の社内調整力7つの裏ワザ
1.Webマーケティングのトレンド、コンテンツマーケティングとは
コンテンツマーケティングとは、見込み客や顧客にとって、価値のあるコンテンツを提供し続けることで、興味・関心をひき、理解してもらい、結果として売上につなげるマーケティング戦略のことです。
知りたいことがあれば、消費者はパソコンやスマホで、すぐ検索する時代となりました。そのため、Webマーケティングのおもな施策としてSEO対策が重要となっています。SEO対策とは、ひとことでいうと「検索エンジンのキープレーヤーであるGoogleで検索順位の上位をとること」といえるでしょう。
Googleで検索エンジンの上位に掲載されるために、重要となっているのが「コンテンツマーケティング」です。そして、コンテンツマーケティングにディープラーニングという人工知能の最先端技術が影響を与えているのです。
2.Content is King:Googleがディープラーニング技術を導入してコンテンツマーケティングが変わった
2-1.かつて良質なコンテンツとはリンクが多いことであり、Webマーケティングの重要施策は、リンク獲得だった
かつて、Googleの検索順位で上位を獲得するために、もっとも重要なことは、「そのページがリンクされている数とリンク元のページの質」でした。
このページランクとWebページの重み付け方法は、Googleが最初に導入した画期的な評価方法でした。
これは、学術論文の考え方を元にしています。良質な論文は、かならず、ほかの論文に引用されます。論文に引用される数が多ければ多いほど、また、引用された論文の質が高ければ高いほど、良質な論文といえます。
つまり、質のよいサイトからのリンクがあればあるほど、良質なコンテンツと判断されるわけです。
しかし、2010年前後のWebマーケティング・SEOにおいては、このページランクアルゴリズムを悪用する事業者がたくさんでてきました。リンクされる数が多ければ多いほど、良質なコンテンツと判断されるのであれば、とにかくたくさんのページからリンクされればよいわけです。
そのため、検索順位をあげるためのSEO対策として、順位をあげたいサイトに対して、数百から数千ページからのリンクを売る事業者、買う事業者がでてきました。実際に、大量のリンクがはられることで検索順位はあがっていました。
2-1.コンテンツマーケティングの誕生:「良質」の基準が被リンク獲得からコンテンツの中身へ
2012年、Webマーケティング業界、SEO対策業界に衝撃がはしります。Googleが発表したペンギン・アップデートとよばれる検索順位アルゴリズムの変更です。
このペンギン・アップデートにより、リンクがたくさんはられているだけの、中身のないページはおのきなみGoogleの検索順位がさがりました。さがるどころか、ペナルティをうけて、検索結果に表示すらされなくなるサイトもありました。
このペンギン・アップデート、そして、もうひとつのパンダ・アップデートという検索アルゴリズムの更新を、Googleは継続的におこなっています。その目的は、Googleで検索するユーザーにとって「最高の品質のコンテンツを提供」することです。
このアルゴリズムがどんどん洗練され、読む人間にとって本当に良質なコンテンツが判断できるようになってきました。人がみて良質なコンテンツ、役に立つと思えるコンテンツは、Googleで実際に上位表示される確率があがりました。
そのため、最近Webマーケティングの世界でいわれているのがコンテンツ・イズ・キング(Content is King)です。つまり、ユーザーにとって良質なコンテンツをつくることが最重要であり、良質なコンテンツさえあれば集客ができる、という考え方です。
2-3.Googleの良質なコンテンツの判断基準:ディープラーニングの登場
では、「良質なコンテンツを書けばよい」ということですが、ここで重要になるのは良質なコンテンツとは何か?ということです。
ひとことで、良質なコンテンツを判断する論理的、技術的な根拠がディープラーニングです。
コンテンツマーケティングの専門家は、良質なコンテンツについて下記のようなことをいいます。
- コンテンツとは見た人の生活の質をあげるもの
- ユーザーの知りたいニーズを完全に満たす情報を記載する
- 売ることが目的ではなく徹底的にユーザー目線に立つことが必須である
しかし、この根拠を聞いてみると大抵は経験則です。
「ユーザー目線でコンテンツを書いたら上位にきた。だから大事」
「Googleはかなりの精度でコンテンツの質を判断できるようになっている(らしい)」
いわゆる帰納法で、過去の成功事例からなんとなく推測したものであり、演繹法的に論理立てて根拠を説明されることはありません。
Googleは人力での作業をとても嫌う企業です。たとえば、Googleニュースで表示されるニュースは、人の判断が全く入らず、コンピュータのアルゴリズムだけで自動的に判断しています。
単なる経験則ではなく、もっと論理的・技術的な根拠はないか、Googleはどのように良質なンテンツを判断しているのか。たどりついた答えが「ディープラーニング」です。
3.AI(人工知能)の最先端技術、ディープラーニングとは
3-1.人工知能の最先端:50年ぶりのブレークスルー技術、ディープラーニング
ディープラーニングとは、人工知能の最先端技術、アルゴリズムのことです。
「人工知能は人間をこえるか-ディープラーニングの先にあるもの」の著者で、日本の人工知能会の権威である松尾氏は、ディープラーニングは、人工知能に50年ぶりのブレークスルーをもたらす可能性のある技術といいます。
ディープラーニングは、画期的な技術であることは確かです。しかし、ディープラーニングで何でも解決できるのではないか、ディープラーニングを使った人工知能により、映画の世界のように、コンピュータが人類を滅ぼそうとするのではないか、とディープラーニングに過剰な期待や不安をいだかれることに、著者は不安を感じています。
ディープラーニングで、できることと、ディープラーニングの限界を正しく理解しましょう。
<Wikipedia:「ディープラーニング」より>
「ディープラーニング、深層学習(英: Deep Learning)とは、多層構造のニューラルネットワーク(ディープニューラルネットワーク、英: Deep Neural Network)の機械学習の事。汎用的な人工知能、いわゆる強い人工知能の実現が期待されている。ディープラーニングの概念・手法は1980年前後からあったが、2010年代にディープラーニングを使った画像認識の研究などから、急速に盛り上がり、三度目の人工知能ブームといわれる」
3-2.ディープラーニングは、ヒトが考えていたコンテンツの価値判断基準をコンピュータが自らつくりだす技術
ディープラーニングとは何か?誤解をおそれず簡潔にいいます。
ディープラーニングは、「特徴量」つまり、あるものの良し悪しを決めるための、抽象的な価値判断基準を、コンピュータが「自動的に発見する技術」です。
具体例で考えてみましょう。
かつて、Googleが検索順位の重みとして重視していた価値判断基準(特徴量)は、リンクの数と質でした。
コンピュータは、人が価値判断基準のルールさえあたえれば、無限ともいえる計算力で適切な答えを導き出します。しかし、ほかのページからのリンクが多いほどコンテンツの質が高い、という価値判断基準・ルールを考えたのはヒトです。
コンピュータは、単純作業は得意分野です。しかし、計算するためのルールをつくる、価値判断基準をつくるという、抽象化の作業は、これまでは、あくまでヒトがおこなう領域でした。
このヒトの判断に依存してきた、特徴量といわれる抽象的な価値判断基準の設定を、ヒトが介在せず自動的に生み出す技術が「ディープラーニング」です。
ディープラーニングが、コンピュータの歴史のなかで、どんなにすごいブレークスルーかがわかってきます。
4.Googleが検索技術にディープラーニングを活用することの意味
4-1.Google検索エンジンがディープラーニングにより獲得した「ネコの概念」
2012年6月、Googleはネコの画像を自動認識できた、という研究成果を発表しました(関連記事)。
コンピュータが「ネコという概念」を自らつくり出し画像認識できました。ネコの概念を獲得するのに使われた技術がディープラーニングです。
「なんだ、たいしたことではないではないか」と思う方もいるかもしれません。ネコの画像を見てネコと認識する。人間なら簡単なことです。しかし、これはコンピュータにとっては、とても難しい作業です。
なぜなら、ネコには「白いネコもいれば黒いネコもいる」「大きいネコ小さいネコ」「毛が長いネコ短いネコ」、一匹一匹のネコは少しずつ違いますがすべて「ネコ」です。さらに、どうイヌと違うのか? あるいは、どうライオンと違うのか?
例えば、「ネコを一度も見たことがないヒトに対してネコの概念を間違いなく伝える文章を書いてください」といわれると相当難しいでしょう。
つまり、抽象的な概念をコンピュータにルール化して教えることはとても難しいことなのです。
ディープラーニングがあれば、ヒトがルールを教えなくても自動的にコンテンツの抽象概念を理解してくれます。
4-2.Googleは、ディープラーニングを使って、どの程度のコンテンツの良し悪しがわかるか?
Google検索のアルゴリズムのひとつに、ディープラーニングが活用されている。ここから想定すると、Google検索アルゴリズムは、以下のようなレベルの抽象的な、日本語理解、言葉の概念理解は、ディープラーニングにより獲得しているはずです。
- 見た目が読みやすい文章やページは区別できる
- 話の流れが、ロジックとしてきれいにとおっている、とおっていないぐらいは判別できる
- 独自性のあるオリジナル記事と、ほかの記事のコピペの違いは認識できる
- 文法的に正しい文章と正しくない文章や誤字脱字がある文章は、ある程度認識できる
どのレベルまで判断できるかの予測は難しいところですが、ディープラーニングで、何らかの抽象概念(=人手を介さず自動的に生成されたコンテンツの良し悪しに関する特徴量)を使って良質なコンテンツの価値判断基準に使っていいるはずです。
5.ディープラーニングをふまえて、よいWebコンテンツを書くときに意識すべきこと
そう考えると、よいコンテンツとは何かの概念が、ディープラーニングの理解をとおして単なる経験則以上に根拠をもって見えてきます。
5-1.ディープラーニングで判断される良質なコンテンツ
コンテンツマーケティングの専門家は、ユーザーにとって役立つ文章であるという概念意外に、「見た目が読みやすいかどうか」「日本語の細かい言い回しの違和感やミスがないか」までをかなり気にしているようです。
Googleは、このヒトだけがおこなっていた抽象的なコンテンツの良し悪しまで、すでにディープラーニングを使って判別できていると考えるのが妥当でしょう。
つまり、「コンテンツマーケティングをおこなう」とは、ディープラーニングの技術レベルを意識してコンテンツを書く必要があるということです。
5-2.逆に、現在のディープラーニングでは判別できない「よいコンテンツ」とは
一方、逆に「ディープラーニングで、今はまだできていないこと」にも注目すべきです。
先の人工知能の権威である松尾氏によると、ディープラーニングは人口知能の大きなブレークスルーであるものの、まだまだ研究の余地がたくさん残された段階だそうです。
たとえば、先ほどのディープラーニングによるGoogleアルゴリズムのネコの概念の認識。今回の研究成果はあくまで「画像としてのネコ」を認識できたに過ぎません。
「ニャーオとなく動物は、ネコである」「ネコは気まぐれ(と思われている)」「ネコは、かわいい」このようなヒトならではの抽象的な概念は、ディープラーニングをもってしても、まだ判断できる技術レベルにありません。
人工知能研究のなかで、自然言語の概念の理解は、何ステップも先の話、時期でいうと2025年ごろが、ひとつの目安だそうです。
現在でも、自動翻訳など、言語処理技術は、かなり進んできていますが、あくまで1対1に機械的に変換しているだけです。コンピュータが言語の概念を理解しているわけではないのです。
例えば、現時点のコンピュータが「シェークスピアの文章に、感動を覚える」ことはないでしょう。あるいは「この記事、電車のなかで読んだら思わず吹いた」という類いのユーモアのあるコンテンツも理解はできないでしょう。
このように、ディープラーニングによりコンピュータが価値判断基準を手に入れられるようになったものの、それはまだごく一部の領域です。まだ、ヒトのレベルに達するには、ほど遠いのです。
5-3.ディープラーニングを意識して「良質なコンテンツ」を書く
「ディープラニングの実力の現在値とコンテンツマーケティングの関係」を知ることは、コンテンツマーケティングに関わっている方、これからコンテンツマーケティングおこないたい方にとって、重要となります。
- Google検索技術には、確実にディープラーニングが使われてる。そのため、ディープラーニングの理解は、コンテンツマーケティングに重要。
- ディープラーニングの技術は、検索エンジンにとっても画期的な技術である。しかし、また、コンテンツでも、判断できる特徴、判断できない特徴があり、まだまだヒトの理解には及ばない。
- ディープラーニングが、判断できること、判断できないことがわかればGoogle検索が、どんなコンテンツを「良質なコンテンツ」を判断しているかがわかるはず。
- ディープラーニングの現在値を知り、「良質なコンテンツ」を書けば、コンテンツマーケティングに有効。
まとめ
- 現在のWebマーケティングのトレンドにコンテンツマーケティングがある
- ディープラーニングによって、Goolge検索にとって、良質なコンテンツの意味が変わった
- ディープラーニングは、人工知能のブレークスルー。しかし、限界もある
- Google検索技術に、ディープラーニングが活用されることは、コンテンツマーケティングに影響を与える
- ディープラーニングの現在値を意識すると、良質なコンテンツを書ける
参考
1.シナプスのマーケティグコンサルタント陣紹介
左から向川、後藤、家弓、海老原
マーケティングコラムを執筆しているシナプスのマーケティグコンサルタント陣紹介です。
- 家弓 正彦(かゆみ まさひこ)
- 後藤 匡史(ごとう まさふみ)
- 海老原 一司(えびはら ひとし)
- 向川 敏秀 (むかいがわ としひで)
2.マーケティング関連企業研修情報
- 新規事業開発ワークショップ研修
事業アイデア(新規事業の棚)を顧客ヒアリング(VOC取得)などを通じて、実際の事業計画をまとめるワークショップです。 - 新規事業アイデア創造力強化ワークショップ研修
新規事業の成否を左右する新規事業アイデアを発想する能力を高める。 - 仮説検証型顧客ニーズヒアリング研修
BtoBマーケティングのキモ、顧客ニーズヒアリング力を高める企業研修。コンサルタントの仮説検証方法を伝授します。 - マーケティング基礎研修
1万人が受講したシナプスの看板マーケティング講座です。 - BtoBマーケティング基礎研修
マーケティング初級者向けにBtoBマーケティングのエッセンスを体系的に学習する企業研修 - BtoBマーケティング企業研修とは?
BtoBマーケティングとは?身につけるべきスキルは?シナプスのBtoBマーケティング研修とは?