回復の可能性がない患者の生命を延長することだけを目的とした無意味な延命治療を、患者の意思に従って中断できるようにする「ホスピス緩和医療および臨終過程にある患者の延命治療の決定に関する法案(ウェルダイイング〈well-dying〉法案)」が8日、韓国国会の本会議で可決・成立した。これにより、患者の自己決定権に基づいて、心肺蘇生術や人工呼吸器の装着、人工透析、抗がん剤の投与といった医療行為を中止し、尊厳ある死を迎えるための道が開かれることになった。1997年の「ポラメ病院事件(患者の家族の意向に従い、人工呼吸器を外した医師と家族が殺人罪などで起訴され、有罪判決を受けた事件)」を機に、「尊厳死」をめぐる論議が始まってから19年後、2009年に植物状態の患者の家族が無意味な延命治療の中止を求めた訴訟で、病院側に人工呼吸器の取り外しを命じる大法院(最高裁判所に相当)の判決が下ってから7年後のことだ。これまでは、延命治療を中断した場合、医師は殺人ほう助罪、患者の家族は殺人罪で処罰される状況にあった。
ウェルダイイング法は8日の国会本会議で、出席議員203人のうち202人という圧倒的な賛成多数により可決された。これを受け政府は15日以内に法律を公布し、2年間の猶予期間を経て、2018年1月から施行される。現在、米国やドイツ、オランダ、オーストラリア、台湾などで同様の法律が施行されている。
延命治療の中断は▲回復の可能性がなく▲医療行為を行っても回復が不可能で▲臨終の段階に差し掛かっている患者-という条件を満たした患者に対してのみ可能となる。このような患者のうち、「事前延命治療意向書」や「延命治療計画書」を通じ、延命治療を望んでいない意向を表明するか、2人以上の家族が患者の普段の考えについて確認していれば、延命治療を中断できる。患者の意向を知ることができない場合は、家族全員が合意した場合に限って延命治療を中断できる。
ウェルダイイング法はまた、末期がんの患者に対してのみ適用されていたホスピスへの入院や延命治療の対象を、エイズ(後天性免疫不全症候群)や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性肝硬変などの末期患者にも適用できることとした。