こちら「カレーソース焼そば」それぞれ100円、150円UPするけれど、その価値十分アリ!
撮影:うぬまいちろう
景気は回復した、なんてまたまたご冗談を。「旨いものを食べたい」と思っても、懐具合と相談ありきの我々小市民。せめて財布の痛まない500円以下グルメ探しを楽しもうじゃありませんか、それもとびきり旨い奴を!
賛同してくれたアナタは、とにかく浅草地下街へ向かうべし。東武線、銀座線の浅草駅からすぐにあるこの地下街は現存する日本一古い地下街。天井を見れば薄暗い蛍光灯にむき出しの配管、壁を見れば謎の水が伝うといった様は、さしずめ無料の「昭和レトロテーマパーク」といったところ。
そんなDEEPスポット、浅草地下街を散策したら是非味わいたいのが、福ちゃんの「ソース焼そば」350円。四角い、角のある麺がひとつの特徴で、独特の歯触りを生んでおり、かつソースの匂いも香ばしく、するするっと食べられる。具といえば、キャベツ、豚肉が少々と決して具だくさんではないものの、複雑で深みのある味。ご主人、この値段では考えられない旨さ、どうなっているんですか?
「う~ん、麺は小麦粉の配分、太さを指定して注文していますけどね。高い粉は使えないから、そんな大したもんじゃないですよ。それに『味の深み』といわれてもねえ。干しエビの粉が入っているからかな? もしかして、蒸すときに水の代わりにスープを使っているからそのせいかも…。でもまあ、ただの焼そばですよ」(店長・福塚さん)
かなり謙遜していらっしゃるけれど、それは一般的に「こだわり」というものですし、普通の店なら自慢げに語るところですよ。さらに聞けば福ちゃんでは、鶏ガラ豚ガラから丁寧に煮だしたスープを使ったラーメンを出しており、そのスープを利用しているのだとか。そりゃ旨いわけだ。
なお、同じスープを利用したカレーも福ちゃんの名物メニューのひとつ。さらにそのカレーを焼そばにトッピングしたのが「カレーソース焼そば」450円。ただの変わりダネ焼そばにあらず。深みのある旨さが効いているカレーがソース味の焼そばと絡んで、絶妙な旨さを醸し出している。さらに、牛すじがトッピングされた「牛すじ焼そば」500円も試してみたけれど、トロトロの牛すじがこれまた旨くて、ちょっと贅沢な感じ。それにしても、この値段はありがたいなあ。
そう、この店もうひとつの「こだわり」が、値段。
「店が出来たのが昭和39年で、うちの親が始めたので私で2代目。私も浅草っ子なんですよ。今と違って、昔は浅草寺あたりは焼そばの店が多かったんだけどね、今じゃほとんどないでしょう。値段も少なくとも30年前からは変わってないはずですよ。度重なる消費税の増税が洒落にならないんだけど、まあそこは工夫でなんとかやってきました(笑)。この値段だと、お客さんも喜んでくれるしね」
さすが江戸っ子、気前がいいネエ。浅草詣でなんていうと、気張って老舗のお高い天ぷらなんぞに挑んでしまうものですが、こちらも歴史ある「リアル浅草グルメ」。庶民を地で行くのなら、焼きそばをたぐるのが粋ってもんでしょ!
(宇都宮雅之)
■ワンコイングルメ体験記 第1回