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最大手「東京書籍」も教科書見せ現金渡す
1月8日 19時04分

最大手「東京書籍」も教科書見せ現金渡す
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教科書会社が検定途中の教科書を教員に閲覧させていた問題で、業界最大手の「東京書籍」が西日本の教員およそ30人を名古屋市のホテルに集めて会合を開き、検定途中の教科書を見せたうえで現金を渡していたことが分かりました。会社側は「疑念を招く行為だった」と話しています。
東京書籍によりますと、現在、中学校で使われている教科書の検定が行われていた平成22年の9月、名古屋市のホテルに西日本の中学校の英語の教員およそ30人を集め、「拡大編集会議」と呼ばれる会合を開いたということです。
この会議の目的は、新しくなった学習指導要領などをテーマに、現場の教員などから意見を聞くことだったとしていますが、この中で外部に見せることが禁じられている検定途中の教科書を教員たちに閲覧させていたということです。
会議のあとには、飲食を伴う懇親会が開かれ、終了後、交通費と宿泊代が実費で支払われたほか、1人あたり現金1万円が渡されたということです。
会社側の説明によりますと、参加したのは、英語の指導経験が豊富な教員たちで、自治体がどの教科書を使うかを決める「採択」に関わる可能性も否定できないとしています。
東京書籍はNHKの取材に対し、「教科書を採択してもらうことを目的とした会議ではなかったが、検定途中の教科書を見せたことは疑念を招く行為だった」と話していて、詳しい調査結果をまとめて文部科学省に報告したいとしています。
教科書会社を巡っては、三省堂と数研出版が検定途中の教科書を閲覧させたうえで、現金や図書カードを渡していたことが分かっています。
東京書籍は、年間の教科書発行部数が3000万部近くに上る業界最大手で、文部科学省は、「最も多く子どもたちに使われている教科書の会社でも不適切な事実が判明したことは極めて残念だ。改めて業界全体の問題と捉え、調査と報告を徹底させ、悪弊を絶ち切る必要がある」としています。
文部科学省は、今月20日までに各社に対し、同じような問題がないか調査して報告するよう求めていて、その後、報告漏れが発覚した場合、教科書発行の指定を取り消す処分も含めた厳しい措置を検討する方針を示しています。

業界最大手 東京書籍

東京・北区に本社がある東京書籍は明治42年の創業で、現在ある教科書会社のなかでは最も早くから教科書の作成に携わり、100年を超える歴史があります。
東京書籍によりますと、小学校で7教科9種類、中学校で7教科12種類、高校で9教科42種類の教科書を発行しているということです。年間の発行部数が3000万冊近くに上る業界最大手です。
今回、検定途中に教員に閲覧させていたのが明らかになったのは、中学校の英語の教科書、「NEWHORIZON」で、昭和50年代以降、30%から40%と、中学校の英語の教科書では最も高いシェアを維持し続けています。、

元教員が証言 会議で何が

会議に出席した中学校の元教員がNHKの取材に応じ、検定途中の教科書を閲覧したいきさつなどについて話しました。
この元教員は、当時、西日本の中学校で英語を教えていたということで、会議に参加したいきさつについて、「『新しい教科書の作成にあたり、意見聴取会を開きます』と書かれた手紙が東京書籍から自宅に届き、自分の意見が教科書作りに反映されるのであればと思い、参加した」と話しました。
会議については、「会社の担当者から新たに改定する教科書について内容や趣旨の説明を受けたあと、いくつかのグループに分かれて意見交換することになったが、参加者の机の上には中学1年から3年までの検定途中の英語の教科書が置かれていた。会社側の担当者から検定途中の教科書について『意見をください』と言われて、自分の意見を述べたが、すでに検定に出されている教科書なので、この時点で何を言っても反映されないのではないかと疑問に思った」と話しました。
会議のあとには懇親会が開かれ、この元教員が教えていた中学校に出入りしていた東京書籍の営業社員も参加していたということです。
元教員は、「帰り際には会社の担当者から交通費と宿泊費とは別に封筒を渡され、中に1万円が入っていた。『会議費です』と説明された。教科書の採択に関して直接的な依頼はなかったが、会議の流れを考えると、教科書の宣伝をねらったものだと感じた」と話しています。

相次ぐ教科書会社の不適切行為

検定途中の教科書を巡って、教科書会社の不適切な行為が相次いで発覚しています。「三省堂」は、7回にわたって小中学校の教員などを集めて会議を開き、合わせて53人に検定途中の教科書を閲覧させたうえで、現金5万円を渡していたことが明らかになりました。この中には、自治体がどの教科書を使用するか決める「採択」に関わった教員も含まれていました。会議のあと、他の会社の教科書から三省堂の教科書に替えた地域もあったことから、文部科学省が、採択に不正な影響がなかったか調べています。
また、「数研出版」も検定途中の教科書を閲覧させたうえで、一部に図書カードを渡していたことが明らかになりました。
いずれも外部からの指摘があるまで、文部科学省に対して自主的な報告がなかったことから、文部科学省は、各社に調査したうえで今月20日までに報告するよう求めていますが、そのあとに報告漏れが発覚した場合、教科書発行の指定を取り消す処分を行うことも含めた厳しい措置を検討する方針です。
一方で、文部科学省はこれまでの制度を見直すことも検討しています。現在、教科書は公正さを保つことなどを理由に、検定中は外部に見せることが禁じられ、検定が終わったあとでも、それぞれの地域がどの教科書を使うか決める「採択」の作業をしている間は、各社が教科書に関する説明会などを開くことは禁じられています。
文部科学省は、こうした制度がかえって水面下での営業活動を過熱させた一因だったとして、今後は、「採択」の作業をしている段階で、各社が合同で教育委員会や教員に対し、それぞれの教科書の特徴を説明したり、専門の教員から意見を聴いたりする公の機会を設けることなど、対策を検討しています。

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