今回は、こんな本を読みました。
著者は元テレビ局勤務の50代男性。そんな彼が、実際に首都圏の様々な現場へ派遣され、働いてみた実態を綴ったルポ的な本となっています。
派遣労働に関する本ということで、現役派遣社員+派遣会社の内勤をしているぼくとしては、非常に興味深く読ませていただきました。
今回は、この本を読んで思った「ある疑問」について書きたいと思います。
この本、冒頭からいきなり過激な描写が飛び出します。
「静かにしろ!私語厳禁だ」
やせて神経質そうな銀ぶちのメガネをかけた、長身のダークスーツ姿の若い青年の怒声が超高層ビル街の谷間に響いた。
というものや、
私が名乗ると、不意に大声を出した。
「聞こえねえよぉ。声は大きくっていつも言ってるよね」
距離は1メートルもないのだから聞こえないはずはないが、あわてて大声で言い直した。
というものや、
「お前はそんなことをしなくてもいいんだ。彼女来たから、お前帰って」
(中略)
「帰れって言ってんの。ジジイが受付じゃ、主催者に印象悪いしな」
(中略)
「ちっ、しょうがねえな。どこに入れるか考えるから外に出て待ってろ。パスは返せ。ホールの中をウロチョロするな」
またもや会場の外に追い出された。最後に折れたということは、この責任者も自分の指示が違法であることはわかっているのだろう。
などのやり取りが多く記述されています。これだけでほんの一部です。
後半部分でも、
ある現場では、集合していきなり
「おまえらみたいなクズが大事故を引き起こすんだ。どうせいくら教えてもダメな奴はダメだ。俺がこんなに苦労しているのはおまえらのせいだ」
と一人で延々とまくしたてる正規社員がいた。
という描写があります。
これら4つに共通しているのは、とにかく「現場担当者の口が悪い」ということ。著者は50代男性であり、現場担当者はほぼ全員が著者より年下。しかし、明らかに50代男性にとる態度ではありませんね。
ぼくも東京にいた約2年半の中で、様々な現場へ行きました。
1日限りの「スポット派遣」と呼ばれる現場や、1ヶ月以上の「レギュラー派遣」と呼ばれる現場まで、全て含めると20ヶ所ぐらいには行ったと思います。
しかし、1ヶ所たりとも引用したような「暴言まがい」の言葉遣いで接してきた担当者はいませんでした。スポット派遣だと、その日限りという事でやや適当な対応をされた事はありましたが、それでも最低限「そこで働く人」という扱いはされていました。
逆に、派遣スタッフと現場との間に雇用関係はないから丁重に扱ってくれる現場もあったぐらい。一応、著書には「2014年12月1日に参加した」という記述はありましたし、具体的なビル名まで書かれています。なので、参加したのは事実でしょう。
が、これは本当に2010年代に就業した派遣の現場だったのだろうか?と思ったのが、正直なところでした。20年ぐらい前の話じゃないの?
特に、3つめに引用した「途中で帰らせる」なんて行為は、その人がよっぽど仕事ができないか、よっぽど勤務態度に問題があるかでなければやらないでしょう。
全く同年代で派遣社員ですが、本書で描写されているような酷い環境での就労の経験は有りません。確かに派遣社員への風当たりは厳しいものが有りますが、本書でのブラック派遣の実態は誇張されている疑いが有りますので要注意です。
ちなみにこれは、Amazonに書かれていたレビューです。ぼくも正直、この本の内容は「誇張している」と思わざるを得ません。ここまで著者に対して現場の態度が冷たいというのは、恐らく
・内容を誇張している
・本人の勤務態度に問題があった
・ドヤ街で斡旋される手配師(という名のヤーさん)からの仕事
これのいずれかだったのではないでしょうか?
一応現場も人手が足りないから派遣会社を使って人を集めるわけで、集めておいて「帰らせようとする」というのが、イマイチ理に適っていません。よっぽどその人に問題があるなら別ですが…。
あとは4つめに引用した、正規社員の罵倒。
…常識的に考えて、大勢が集まっている場所であんな事をまくしたてる正規社員がいます?同じ派遣社員ならまだしも、正規社員ですよ?
派遣業界を擁護するつもりはこれっぽっちもありませんが、かと言ってこの本に書かれている内容を鵜呑みにはしないでほしいですね。
どうしても派遣業界を悪く言いたいのでしょうが、何度か就業した経験のある人なら「そんな事された覚えないんだけど…」と思う人の方が大半ではないでしょうか。
おわり。
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