旅と死をテーマにした連載「メメントモリ・ジャーニー」は全15回連載予定で、すでに後半戦に突入しています。
連載後半におけるハイライトとなるガーナ棺桶プロジェクトの帰還報告を簡単にするとともに、応援していただいた方々へのお礼を述べたいと思います。
カネ・クウェイ工房に並ぶ装飾棺桶
昨年12月頭に掲載された連載第9回で、ガーナの装飾棺桶をオーダーして持ち帰る計画について書きました。
12月19日(土)に日本を発ち、西アフリカに約10日間滞在。ガーナの首都・アクラ郊外にある港町・テシの「カネ・クウェイ棺桶工房」に通い、自分のための棺桶が仕上がっていく様を取材しました。完成後も輸送をめぐって空港でひと悶着ありましたが、なんとか貨物便に載せることができ、棺桶は現在、同行してくれた編集者の田中祥子さんのご実家に仮置きされています(なんという迷惑……)。
ほぼ完成した自分のための棺桶「ポテト・コフィン」に入りこむメレ山
棺桶の製作には2週間~1ヶ月ほどの期間を要するため、残念ながらすべての工程に立ち会うことはできません。ガーナに詳しく、現在は大学院に籍を置いてアフリカ現代美術を研究されている森昭子さん(愛称:ショコラさん)に先に現地入りしてもらい、工房の選定や折衝といったコーディネートをお願いしました。
あらゆることが思うようには進まないアフリカで、滞在中になんとか棺桶の完成に漕ぎ着け、完成した棺桶と共に帰ってくることができたのは、ひとえにショコラさんのおかげです。編集者の田中さんにも、前作『ときめき昆虫学』のときに続いて、本当に助けられました。
ガーナの東隣にあるトーゴ・ベナンへも短い旅をし、現地通訳とのトラブルに見舞われつつも、ヴードゥー教や奴隷貿易にまつわる場所を見てまわりました。ベナンでは文化人類学研究者の村津蘭さんに助けていただき、ほとんど同い年の女性たちとの縁に不思議と恵まれる旅になりました。
フェティッシュ(呪物)を商う店。ベナンの静かな町・ウィダの市場で
ヴードゥーの供儀や呪術の文化には日本との共通性を感じるところも多々あったものの、やはり衝撃の連続でした。帰国後に疲労が出たのか、呪物を売る店に置いてあった犬の首の幻影に何度かうなされる日々です……。
棺桶完成を祝うドリンクセレモニーの準備
ヤギを一頭つぶしての棺桶完成パーティ、輸送のごたごたなど、楽しかったと言ってしまうにはあまりに濃い日々でした。棺桶工房は複数の世帯や若い職人見習いが住む長屋でもあり、ガーナの家族の有り様や人同士のつながりを身近に感じられる環境で、日本での生活と比べていろいろと思うところがありました。連載の中で、おいおい文章にしていく予定です。
最後に、今回の企画にあたっていただいたご支援へのお礼です。
メレ山メレ子の生前葬展 ガーナでオーダーメイド棺桶を作るプロジェクト
ガーナへの渡航費、棺桶制作費・輸送費やコーディネートにかかる多額の費用については、準備段階から頭を悩ませていました。「ええい、お香典を前借りしてしまえ」とサイトを立ち上げ、「クラウドお香典」のご支援をお願いしたところ、2016年1月8日現在で、なんと1,217,000円のご支援をいただくことができました! 想像をはるかに超える金額です。
この連載をまとめた書籍やアフリカ土産などのリターンを設定しているため、この額面すべてを使えるわけではありませんが、この旅にかかった経費をほぼまかなえる見通しです。わたしのための棺桶作り、そして生前葬というわたししか得をしない謎の企画に対して、面白がって支援してくださった皆様、本当にありがとうございます。
およそ人が質に入れられる最後のものである「お香典」を質草にしてしまい、かくなるうえはこの体験を過去最高の文章にしなければいけないと、恐ろしくも心地よくもある重圧を感じています……。
ガーナおよび西アフリカでの旅行記の詳細は、この連載で数回にわたってご報告していきます。カメラもこの旅を機にOlympus OM-D E-M5 Mark2に新調し、これまであまり縁がなかった動画などのコンテンツも意識して撮りためたので、連載や生前葬の機会に公開していけたらと考えています。お楽しみに!
(再来週の次回更新はガーナではなく別のテーマですが、その後はしばらくガーナ棺桶紀行が続く予定です)
(第10回・了)
この連載は隔週でお届けします。
次回2016年1月21日(木)掲載