地方創生の旗手、井上貴至さんが斬る。「東大生の最大の弱点は人へのリスペクト」
総務省のキャリア官僚でありながら、なぜか突如として鹿児島県長島町の副町長に! 地方創生のトップランナーとして話題の井上貴至さんに、その哲学を語ってもらいました。大学生への喝もたくさん入れていただきました。心して読んでください!
☞学生証
- お名前:井上貴至さん
- 所属:東京大学法学部卒業
- 進路:卒業後、総務省に入省。内閣府地方分権改革推進室主査などを経て、
地方創生人材支援制度で鹿児島県長島町副町長に。史上最年少の副町長さんです。
どうして離島に?
最初からズバリ聞きますが、総務省でお勤めのはずの井上さん、なぜ遠く離れたこの長島町に?
「もっと現場の近くにいたいと思ったから。中央で制度をつくりながら、現場でこそ感じられる深いニーズを、自分で探したいと思ったからだね。」
官僚こそ、地方を知っていなきゃダメだと。
「頭で考えてるだけだと、やっぱり制度が一人歩きしちゃう。何が求められているか身をもって感じて、それを元に仕組みを考えなきゃ。」
そのバランス、とっても重要な気がします。
「あとは単純に、いろんな場所に訪れて人に会うのが好きなんだよね。地域には隠れたヒーローがいて、とても魅力的。この人たちを輝かせたいと思って」
「人も地域もダイヤモンド」って、よくおっしゃってますよね。
井上流、地方創生の定義
「そもそも今盛り上がってる地方創生って、目標があいまいになってることが多いよね」
確かに、どうなったら「創生された!」ってことになるんでしょうね。
「それは現場が見えてないからだと思うんだよね。僕の場合、地方創生って単純に、そこにいる人を一人でも多く笑顔にすることだと考えてる。」
急にめちゃくちゃミクロな話になりましたね。
「だって地域って人の集まりでしょ? 地域を良くするって、誰かを幸せにしてそれをつなげていくこと以外ないよ。」
確かに……。「地方」というなんだか曖昧なものを、とりあえずなんとかしよう、って思っても……。
「具体的な誰かがないと、誰のためにもならない制度が生まれちゃうんだよね。」

地域の現場で活動する人を集めて、その想いや経験を共有する「おっはークラブ」を主宰。
自分でルールを作っちゃえ
とはいえ井上さん、総務省にいながら副町長、ってどういうことなんでしょうか。
「自分で制度を提案して、その第一号として来たんだよね」
……自分で?
「なかったから。でも必要だと思ったから。」
地方創生人材支援制度……本当だ! 井上さん自分で提案して自分で使ったんですね!
「自分でルール作っちゃったほうが楽しいよね。」
またスケールがでかいですね……
「例えば、僕は柔道が好きなんだけど、そんなに強くないんだよね」
(柔道2段だそう。十分強い……)
「で、僕の一生の夢が、オリンピック優勝なんだよね」
(いやそれはたぶん無理でしょ)
「数十年後の、次の次の東京オリンピックで、年齢別チャンピオンになろうと」
年齢別、ですか?
「高齢化が進んでいけば、今の100キロ級とかいう体重の区切りだけじゃなくて、年齢の区切りだって出てきていいはず。なければ自分で作って出る。それなら勝てるかもしれない。」
「つまり、ルールをつくればいいってこと。」
そんな発想はなかった……
「東大生ってルールの中で戦うのがなまじ上手いせいで、ルールをつくろうっていう発想が弱いよね」
自分に刺さった気がするのは僕だけじゃないはず。
次のページ、東大生の最大の弱点が明かされます!
地方創生にかける情熱
そもそも地方創生を仕事にしようと思ったきっかけは何だったのでしょう?
「大阪出身で、ちょうど裏金問題とか企業の東京流出とかで、危機感はずっと持ってた。自分の地元はどうなるんだろうって」
それが今や、鹿児島で地域おこし。
「東大にいたころ川人ゼミに所属していて、とりあえずまず現場に行くべきという先生の考え方を叩き込まれたんだよね。それで、行ってみて人に会うのが心底好きだと思えるようになった。」
「地域にいるヒーローたちは、そのホームグラウンドでこそ輝く。その人たちが活躍できるように、サポートしたいと思った」
今はこの長島町にほれ込んでいるんですね。
「人は温かいし、自然も豊かで一次産業も強い。とてもポテンシャルがあるんだよね。そういう意味を込めて、僕は長島を『長島大陸』って呼んでる」

長島の美しい風景。
頭で考えるな!
「自分の本当にパッションをもってやれることが、早い段階で見つかったのは良かったなあ」
あの、切実に悩んでる学生多いと思うんですけど、「本当にやりたいこと」ってどうやったら見つかるんでしょう…
「やってみたらいいじゃん。とりあえず足を動かして、突っ込んでみないと面白いかどうかなんて分かんない。」
やってみるって言っても、じゃあ何から始めたらいいのかって……
「頭でばっかり考えてるからダメなんだよ。これも東大生の弱点かもしれないけど。好きなことなんて、自分探しとか言って自分の中のぞいてたって出てこないよ。飛び込んでみた感覚を大事にしなきゃ」
ロジックよりも感覚、ですか。
「頭の中の勝手なイメージで考えるより、具体的に誰とやるか、やってみて心が動くかのほうが絶対大事だよね。」
なんだか最初の、現場を知らないせいで行政の制度が一人歩きしちゃうって話と似ている気がします。
「同じだね。押し付けになってる行政も、迷ってる東大生も、感覚をもっと使わなきゃ。真面目すぎるというか、完璧主義なところがあるよね」
飛び込んでみる勇気がないせいで動けなくなってる学生、たくさんいる気がします。
「もう受験勉強じゃないからね。知識とか型も大事だけど、実戦で使うのは全然違う。」
東大生の弱点、2つ目。頭でっかちで動けないところ……刺さりますね……
「獅子島の子落とし塾」で中学生の自習を見守る井上さん。
器用貧乏にならないで
「やりたいことが見つかったら、ひたすら突き進んでほしいな。」
「何か軸を持って、それを磨いていかないと器用貧乏で結局何もできなくなっちゃう。どんなフィールドでもいいから唯一の人材になって、自分だけのマーケットを作る。そうすれば自由に新しいことをできるよね」
さっきの、ルールを作れってお話とも通じるところがありますね。もともとある仕事に就くんじゃなくて、自分で仕事を作っていけと。
「全員起業しろってことじゃないんだけどね。組織に居たって起業家精神は持っていられるし」
でも、ひとつのことを突き詰めて切り拓くって、根気が要りますよね。つい、いろいろ手を出してしまったり……
「井戸と同じで、1つのことを掘り進めば、深いところで水脈は広がってるからね。どんな分野でも一流の人は同じように優れた考え方を持ってる。」

「獅子島の子落とし塾」に参加した中学生と大学生たち。
東大生の最大の弱点
「僕にとっての一流の人は、僕の柔道の恩師、講道館の西岡師範。プーチン大統領にも柔道を教えた人なんだけど、91歳でなお現役で指導なさっている」
プーチン! 91歳でも柔道! 恐ろしい方ですね。
「西岡師範は『明るさ・素直さ・謙虚さ・挨拶と礼儀』という言葉を毎日言われてたんだけど」
まあ、よくありそうな標語ですが。
「でも本当にこれが徹底できてる人はそうそう居ないよ。たとえば大学の守衛さんに毎日ちゃんと挨拶してる?」
あ……東大生、ほとんどスルーしてるかもしれませんね。
「そういうところが東大生の最大の弱点だと思うな。立場関係なく、ちゃんとリスペクトを持って人に向き合う。かしこいからこそ絶対意識すべきだよ。」
最後にして最大の弱点! これは痛恨の指摘ですね。そういう鈍感さのせいで、誰も助けてくれなくなったら……
「東大生ってだけでは別に大したことないのに、なんでも自分でできる気になったり、偉くなった気になっちゃう。」
まだ何もしてないのに、プライドばかり高くなって、勝手に誰かを見下したり。
「とんだ勘違いだよね。一人でできることなんて何もないからね。どんな分野だって同じだけど、人に好かれて、人を巻き込める人だけが、何かを成し遂げるんだよ。」
地域で人を巻き込み、惹きつけ、矢継ぎ早に企画を実現させていく井上さん。この言葉の重みが違います。

井上さんが仕掛けた、「長島大陸食べる通信」。名産品がかっこいいパンフレットとともに届きます。
指摘いただいた弱点の数々、東大生に限らず、グサッと刺さった方も多いのでは?
「地域も人もダイヤモンド」、ちょっと意識するだけで、あなたの輝きも増すかもしれません。
井上さんの、若手官僚で唯一の実名ブログ。地方創生の最先端が生き生きと描かれています。こちらも是非!
どうして離島に?
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