ちょっと待った。
皆様新年明けましておめでとうございます。
ヒゲじいです。
今年は申年という事で毎週日曜夜7時半から放送中の「ダーウィンが来た!」の中からおサルさんが主人公のとっておきの物語をご紹介しますぞ。
世界自然遺産屋久島の森に暮らすニホンザルの波乱万丈生活。
では早速いってみましょう。
うわ〜寒そう!国の天然記念物「北限のサル」として知られる青森県下北半島のニホンザルです。
ここ下北半島を北限に日本各地に暮らすニホンザル。
その南限はこちら。
樹齢7,200年ともいわれる縄文杉は有名ですよね。
暖かい南の島は下北半島に比べて食べ物がたくさん!その上群れの仲間はとっても仲良しでまるでサルの楽園。
でも…。
あ!群れと群れが激突!屋久島のサルは群れ同士のケンカが日本一多いんだそうです。
一体なぜなんでしょうか?まさに波乱万丈。
世界遺産屋久島のサルたちに密着します。
(テーマ音楽)屋久島の海岸沿い。
1年を通じて緑に覆われる森が広がっています。
中に入るとガジュマルなど亜熱帯性の植物が目立ちます。
早速今日の主人公が現れました。
最も南に暮らすニホンザルです。
他の地域のサルに比べ体は一回り小柄です。
それに下北半島のサルと比べると毛が黒っぽいですよね。
もう一つ目尻がつり上がっていてちょっときつい印象でしょ?こうした違いから他の地域のサルと区別してヤクシマザルと呼ばれています。
ヤクシマザルは30匹ほどの群れで暮らします。
中心は10匹ほどの大人のメスとその子供たち。
そこに群れの外から数匹の大人のオスが加わっています。
初夏群れには新たな命が誕生していました。
生まれてひとつきほど。
かわいいですね。
親子はいつも一緒です。
サルたちが移動を始めました。
ちょっとついていってみましょう。
やって来たのはタブノキです。
この実がお目当てだったんですね。
果肉だけを食べて種は残します。
あ赤ちゃんもまねしています。
こちらはイチジクの仲間のアコウ。
この果実は1年を通して森のあちこちで手に入ります。
次にやって来たのはヤマモモです。
赤い実がおいしそう!サルたちは夢中で頬張っています。
こんなに急いで食べたら喉に詰まりそう。
でも大丈夫。
顎の下にご注目下さい。
ボコボコと膨らんでいますよね。
頬が袋状になっていて食べ物をためられるんです。
ここでたくさんため込んで後でゆっくり食べるつもりのようです。
サルたちが食事をしている木の下に集まってくる動物がいます。
屋久島に暮らすニホンジカヤクシカと呼ばれています。
お目当てはサルが落とすヤマモモの実。
サルたちのおかげで貴重なごちそうにありつけます。
サルたちが木から下りてきました。
今度は?毛繕いを始めました。
気持ちよさそう!こうして互いの体についた寄生虫などを取り除きます。
毛繕いは仲間との大切なおつきあいでもあります。
してもらったら今度はお返し。
こうして群れの仲間同士絆を深めていくんです。
頬にためた実を食べながらのんびり毛繕い。
ゆったりとした時間が流れます。
でも子供たちはちょっと退屈。
取っ組み合いを始めました。
「僕も入れて」。
「えい!」。
あら?こんな近くにシカが来ていました。
サルに触られてもシカは嫌がりません。
別の種類の生きものがこんなふうに触れ合うことは野生ではとっても珍しいんです。
まるでおとぎ話に出てくるような光景です。
サルの群れは再び移動を始めます。
こうして食事と休憩を繰り返しながら森の中を歩き回ります。
食べ物が豊富で群れの仲間たちは仲良し。
屋久島の森はまるでサルの楽園です。
しかし梅雨になると状況は一変します。
「雨の島」と呼ばれる屋久島。
たくさんの雨は豊かな森を育む一方でサルにとっては大きな試練です。
暗い森の中でサルたちがうずくまっています。
冷たい雨に体温を奪われないよう「サルだんご」を作って温め合っているんです。
小さな赤ちゃんを真ん中に入れてお母さんと仲間が守ります。
ようやく雨が上がりました。
サルたちは一息ついて毛繕いです。
群れから離れた森の中に1匹のメスがいました。
傍らの枝には赤ちゃん。
しかし全く動きません。
死んでしまっているようです。
降り続く雨に勝てなかったのでしょうか。
それでも母親は赤ちゃんを抱き上げると群れへ戻っていきました。
およそ3/3の子供が1歳を待たずに死んでしまいます。
梅雨の時期に命を落とすものも少なくありません。
(サルたちの叫び声)ある日。
森にサルたちの叫び声が響きました。
駆けつけてみるとサルが集まって騒ぎが起きています。
2つの群れ総勢70匹ほどがケンカを始めたようです。
尾根を境に向かい合う2つの群れ。
右側の群れはおよそ40匹。
「紅組」と呼びましょう。
対する左側は30匹ほど。
こちらを「白組」と呼びます。
紅組のこの2匹にご注目。
白組に攻め込んだ!…と思ったら追い返された。
こうしてあちこちで攻防が繰り広げられます。
この2つの群れ食べ物を探して森を移動するうちに鉢合わせしてしまったようです。
互いに食事場所から相手を追い出そうとしています。
こちらおなかに子供がしがみついています。
子連れのお母さんまで総動員して戦います。
あ左側から白組が攻め込んだ!紅組も負けじと押し返します。
勝敗を決めるのは群れの大きさだけではありません。
攻め込む勢いも大切です。
斜面の上に陣取る白組と下側の紅組。
にらみ合いが続きます。
騒ぎが始まって20分。
突然白組が退散しました。
決着がついたようです。
食べ物を巡る群れ同士の争い。
実は屋久島のサルは日本一群れ同士のケンカが多いと言われています。
ちょっとちょっと待った!おやヒゲじい何ですか?さっき「この森は食べ物が豊かだ」って言ってたじゃないですか。
ケンカなんかしないで譲り合ってもいいんじゃないですかね。
う〜ん確かにこの森は豊かなんですが食べ物は十分とは言えないんですよ。
は?それってどういうこと?例えば青森県下北半島では1km・当たりのサルの数はたった5匹ほど。
でもここ屋久島の海沿いの森ではなんと最大100匹にもなります。
え〜っ!そんなに違うの!?はい。
この密度は日本一。
超過密状態なので食べ物を巡る争いが絶えません。
1つの群れが食べ物を探す場所は1キロ四方ほどなんですがどうしても隣の群れと重なってしまいます。
ふんふんふんふん。
だから食べ物を探す群れ同士が度々鉢合わせ。
ケンカになるんです。
あ〜なるほどねぇ。
でねケンカに負けるとこんなふうに食べ物を探す場所が狭くなっちゃうんです。
だから必死なんですな。
そういうことなんです。
研究者によると食べ物を探す場所の確保は群れの存続にかかわるといいます。
屋久島の…消滅?そりゃ深刻ですなぁ。
はい。
子連れのお母さんまで総動員して戦う訳が分かりましたか?はいはい。
よ〜く分かりました。
このようにして群れが消滅してしまうのは日本中で屋久島のこの森だけで観察されているそうです。
ここはそれだけ厳しい環境なんです。
なるほどね。
南の島でいい暮らししてると思ってたんですが現実は厳しいもんですなぁ。
私も食べ物不足に備えておやつのせつヤクシマすかな…なんてね。
第2章ではサルたちに恋の季節が到来です。
オス同士の熾烈な戦い。
若くしてトップになったオスに次々試練が襲いかかります。
「サルだんご」で冷たい雨をしのぐ屋久島のサルたち。
取材班はとんでもなく巨大なサルだんごが見られる場所があるとの情報を入手しました。
その場所とは温暖な瀬戸内海に浮かぶ淡路島。
野生のニホンザルの保護や研究を行っている施設です。
うわ!すごいサルだんご!冬気温が下がると100匹を超える大集団を作るんだそうです。
ニホンザルの北限寒〜い下北半島でもこんなに集まることはありません。
なぜ淡路島のサルたちは巨大なサルだんごを作るんでしょうか。
島でサルの行動を調べている研究者に伺いました。
えっ「優しい」?どういうこと?ニホンザルというのは一般的に厳しい優劣関係があって…だからああいったサルだんごを作ることができるんだと思います。
へえ同じニホンザルでも場所によって性格が違うんですね。
そんな「優しい」淡路島のサルならではの技が「サル文字」!エサをまくとみんなで仲良く食べるのできれいな文字になるんです。
でもなぜここのサルが「優しい」のかは謎。
今研究の真っ最中なんだそうです。
秋。
サルたちは恋の季節を迎えます。
堂々とした足取りでやって来たのはこの群れのオス。
「ワカ」と呼ばれています。
上唇の傷が目印です。
年齢は11歳ほど。
大人の仲間入りをしたばかりです。
ワカのそばにメスがやって来ました。
真っ赤な顔は恋の季節を迎えたニホンザルの特徴です。
ワカに熱い視線を注ぎますがワカはつれないそぶり。
しばらくすると別のメスがワカに近づいてきました。
今度はワカも気に入った様子。
カップル成立です。
モテモテのワカの様子をうらやむように見つめるのは群れの他のオス。
群れのオスたちには順位があり順位が高いほど多くのメスにモテます。
この群れでは今ワカが1位のオスなんです。
ワカがメスに毛繕いをしてもらっていると別のメスが近づいてきました。
まだ子育ての経験がない若いメスです。
おどおどしながらワカに近づく若いメス。
あっ追い払われてしまいました。
オスは自分の子供をしっかりと育ててくれる子育て経験豊富なメスが好みなんです。
う〜んお熱いですねぇ。
今度は落ち着きなく歩き回るワカ。
この時期群れのメスたちのハートを射止めようと群れの外からオスがやって来ることがあります。
それを警戒しているんです。
数日たったある嵐の日のこと。
見知らぬ1匹のオスがワカの群れに近づいてきました。
目の周りに赤い斑点のあるこのオス「テンテン」と呼ばれています。
ワカの群れに入ろうとしているようです。
テンテンのように外から来たオスが群れに入るには2つの方法があります。
1つは一番順位が低いオスとして群れに入る方法。
争いが起こらず平和ですが多くのメスにはモテません。
もう1つは群れを乗っ取る方法。
群れのオスとの戦いに勝って1位になれば多くのメスにモテるんです。
あの嵐の日からテンテンは頻繁にワカの群れの近くに姿を現すようになりました。
ワカもテンテンの動きを警戒しています。
テンテンの年齢は16歳ほど。
ワカよりも立派な体格をしています。
唇を突き出して群れのメスたちに熱烈アピール。
どうやら群れを乗っ取るつもりのようです。
ワカは自分の強さを見せつけようと木を揺らして威嚇します。
ところが1匹のメスがテンテンに近づいていきます。
すっかりテンテンが気に入ったようです。
これをきっかけにワカの群れに波乱が巻き起こります。
翌朝。
テンテンが強引にワカの群れに入り込んできました。
群れのサルたちはよそ者テンテンを追い出したいところですが大きな体を恐れてか手出しできません。
ところが…。
突然群れのサルたちが一斉にテンテンを攻撃。
大乱闘が始まりました。
一体何が起こったんでしょうか?もう一度詳しく見てみましょう。
我が物顔で群れの中に入り込んでいくテンテン。
この時奥から顔を出したのはワカです。
テンテンと一騎打ちか?でも引っ込んじゃいました。
体格の差におじけづいたんでしょうか。
いえいえワカはテンテンの動きをしっかり見ていました。
テンテンの背後から不意打ち!すると群れの仲間もワカの勢いに乗ってよそ者テンテンに飛びかかります。
取っ組み合うテンテンとワカ。
それを取り囲んだ群れの仲間たち。
あ!1匹がテンテンのお尻にかみつきました。
今度は4匹が同時にアタック!巻き添えを食えば危険な戦いですが若者もメスたちも応援に加わります。
戦いはワカとテンテンの一騎打ちになりました。
体の大きなテンテンがワカを押さえつけます。
必死に身をかわしたワカ。
何とかテンテンを追い払うことができました。
仲間の協力で1位の座を守り抜いたワカ。
しかし脚には深い傷を負っていました。
メスが近づいてきても…追い払ってしまいます。
そしてうずくまったまま動かなくなってしまいました。
翌日。
群れは落ち着きを取り戻していました。
堂々と歩く1匹のオス。
でもこの顔ワカではありません。
鼻の脇に白い筋のあるこのオス「ゲド」と呼ばれています。
昨日まではこの群れにいなかったオスです。
ワカの姿を捜すと…群れの端に座り込んでいました。
ゲドがワカに近づいていきます。
落ち着きなくキョロキョロするワカ。
ゲドに向かって歯をむき出して鳴きだしました。
これは自分より順位が高いサルに対して見せる行動です。
更にゲドが近づくと…岩の陰に隠れてしまいました。
あの劇的な勝利からわずか一夜。
ワカはゲドに群れを乗っ取られてしまっていたのです。
ケガを負って弱っていた隙を突かれたのかもしれません。
1か月後。
再び群れを訪ねました。
群れの中心でくつろいでいるのはオスのゲドです。
もう1匹大きなオスを見つけました。
目の周りに赤い斑点。
テンテンです。
テンテンはワカに負けて一度はこの群れから追われたはずです。
一体どうなっているんでしょう?ゲドのそばに近づいてきたテンテン。
ゲドに歯を見せています。
ゲドのほうが順位が上なんです。
そしてゲドにお尻からそっと近づきます。
これは群れの仲間同士の挨拶。
テンテンはいつの間にかこの群れの一員になっていました。
テンテンの所へやって来たのはかつて群れの1位だったオスワカです。
ワカのほうからテンテンにご挨拶。
ワカの順位はテンテンより下のようです。
それでも群れにとどまる道を選んだワカ。
群れのメンバー同士のつきあいは欠かせないんです。
ワカがやって来たのはまだ若いオスたちのグループ。
じゃれ合うワカには秋の初めのあの勇ましい面影はありません。
経験を積んでまた次の恋の季節を目指します。
北の森とは比べ物にならない豊かな恵みを受ける一方ケンカも多いヤクシマザル。
それはたくさんの群れがせめぎ合う日本一過密なこの場所で生き抜くための宿命です。
世界遺産屋久島の森に抱かれてサルたちの波乱に満ちた物語は続いていきます。
2016/01/01(金) 12:15〜12:43
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!新春セレクション▽世界遺産・屋久島 南限のニホンザルに密着![字]
ニホンザルの生息地の南限、鹿児島県屋久島。サルたちは豊かな森で、群れの仲間と仲良く暮らす。でも、他の群れとはケンカばかり。恋の季節、オス同士の激しい戦いが勃発!
詳細情報
番組内容
青森県・下北半島を北限に、日本各地に生息するニホンザル。その生息地の南限は鹿児島県・屋久島だ。一年中暖かく、食べ物が豊富な森で、サルたちは群れの仲間と仲良く暮らす。でも食べ物を巡り、他の群れとはケンカばかり。豊かなはずなのに、いったいどうして?さらに秋、恋の季節にはメスを巡ってオスたちの激しい戦いが勃発!世界遺産・屋久島の森で繰り広げられる、サルたちの波乱に満ちたドラマを紹介する。【歌】平原綾香
出演者
【出演】京都大学野生動物研究センター准教授…杉浦秀樹,大阪大学人間科学部講師…山田一憲,【語り】近田雄一,龍田直樹,豊嶋真千子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
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