(マイケル)
これは極東の国日本を訪れた我々家族の100日間の冒険の物語。
我々の目的は寺院巡りでも秋葉原でのショッピングでもない。
我々の最重要課題それは…
日本を食べ尽くす事だ。
おっうまそうだ!さっさと食べて早めにチェックアウトしよう。
2時間後には東京だ。
ん?何だみんな食べないのか?
(アスガー)う〜ん…いいや…今食欲ない。
(リスン)私も昨日食べ過ぎちゃって…おみそ汁だけ頂くわ。
ちょっと待て本気か?炊きたての白い御飯とみそ汁に焼きザケそしてのり!日本の旅館の定番の朝食だ!別にごちそうってわけじゃないがイギリスに戻ったら食べられないんだぞ?楽しめよ!だからおなかがまだ苦しいんだってば!うん!う〜ん!かむほどに鼻に抜ける独特の香りとほのかな甘み!見てみろ!いい米を使ってる!
小麦や大麦トウモロコシなどと同じイネ科に属する植物イネから収穫される実の事であり日本の主食とも言われる穀物である。
日本で作られる米のほとんどはジャポニカ種だがうまい米を求めてやまない日本人がさまざまに品種の改良を重ねた結果その数はなんと300を超える!コシヒカリをはじめとするいわゆるブランド米は…
だぁ〜っ!今のウンチクでおなかいっぱい!米なんて毎日食べてたじゃん。
この国じゃ大抵何を食べるにもくっついてくるんだからさ。
う〜ん…。
もったいないじゃないか。
見てマイケル。
初めて東京に来た日を思い出すわね〜。
マイケル?すまん今体をひねったら食べたものが逆流しそうだ。
歯磨きのチューブみたいにな。
無理してみんなの分まで食べるからよ。
いいんだ後悔はしてない。
回想会うって…東京でか?お前パリにいるんじゃなかったのか!?
(トシ)別に鎖につながれてるわけじゃない。
気が向きゃ日本に戻りもするさ。
また何かたくらんでるんじゃないだろうな。
アッハハ!お前に忘れ物を届けようと思ってな。
忘れ物…?一体何だ忘れ物って…。
忘れ物…。
これまでの僕の取材に何か見落としがあるって事か?くそっ。
最後の最後に心をかき乱すような事を言いやがって。
この3か月で僕は本当に日本料理を理解できたんだろうか…。
パパ!見てほら!お城が見えてきたよ!アハハハハハハッ!
(エミル)アハハハハハハハハ。
ウッハッハッハッハ!ウフフッエヘヘッ!一体何が楽しいんだ。
さっきから列に並んでるだけじゃないか。
めちゃくちゃ楽しいよ!なあエミル!楽しい。
パパスマホ貸して!並んでま〜す!うわぁ〜っおなかすいたぁ〜!ハンバーガー!ピザ!チキンもある!今日は何食べてもいいんだよね!?好きなもの選びなさい。
パパとの約束だもんね。
ひゃっほう〜!ピザがいいかな〜。
いやでもハンバーガーもいいな。
ねえパパ2つ頼むのってアリ?アスガー…その話なんだが…。
ん?好きなものを食べるのはイギリスに帰ってからにしないか?えぇ〜!何で!?昨日約束したじゃん!せっかく日本にいるんだしもう一度だけ日本料理を食べに行きたいんだ。
何で!?つまり忘れ物が…。
いやちょっと気になる事があるんだよ…それを確かめたい。
やだよ!これまでさんざんパパのわがままにつきあったじゃないか!それはすまないと思ってる。
でもハンバーガーなら日本じゃなくても食べられるだろ?やだ!実はこの近くにうまいアンコウの店があるんだ。
アンコウというのは深海魚でねその肝は海のフォアグラなんて言われてる。
トロッとクリーミーな食感が…。
やだ!だったらフォアグラでいいじゃん。
はぁ!?フォアグラ以外は絶対にやだ!ちょ…ちょっと待ってくれ!話が飛んだぞ!?あら〜フレンチにするの?いいわねぇ!勝手に話を進めないでくれ!頼むよ〜最後のチャンスなんだ。
今回ばかりは日本料理が…。
(鬼塚)約束を破るのは感心しませんな。
マイケルさん。
ミ…ミスター鬼塚!なぜここに!?実は園内でオープン予定のレストランの監修に携わっておりましてね。
はぁ…。
雰囲気を知ろうと園内をブラッとしてみたんですがいやなかなかどうして楽しい場所ですな。
ハッハッハッハッハ!こんなところでお会いする事になるとはつくづくマイケルさんとはご縁…。
まさかフレンチレストランまで経営されているとは思いませんでした。
先月オープンさせたばかりでしてね。
お味の方はいかがですか?いや〜すばらしいです。
シェフが優秀なんですね。
(ジャン)本日はようこそお越し下さいました。
ん?…ジャン!?お前何でここにいるんだ?いろいろあってな。
ジャンさんはすばらしい料理人です。
私から是非にとこの店の立ち上げに協力して頂いたんです。
マイケルお前からオーナーに言ってやってくれ。
俺には…無理だ。
こっちも完全に言うタイミングを逃した。
気まずい時間を作りたくなかったらこのままやり過ごせ。
はむっ。
んふふっ。
んふふっふふっふふふふふふ。
はぁ…何だそれは。
この旅行中最高の顔じゃないか。
よかったわねアスガー。
うん。
まさか旅の最後でフレンチを食べる事になるとは思わなかったな。
ハッハッハッハ!それもまた面白いじゃないですか。
どうしたのエミル。
御飯は?何言ってるの?ここはフレンチのお店よ。
白い御飯食べたい。
確かにこの3か月間いつも食べてたものね。
でも無理よ。
えっ?無理なの?え?僕も…御飯食べたい…。
今更何言ってるの!?だって最後だし…。
(鬼塚)フッフッフッフ!ハッハッハッハッハ!いや失礼。
実は私も同じ事を思っていました。
いかんですなぁ…。
おいしい料理があるとついつい御飯が欲しくなる。
日本人の悪い癖だ。
確かに日本を旅する間いつも日本料理の傍らには御飯がありました。
いや伝統的な日本料理だけじゃありません。
トンカツコロッケハンバーグみたいな外国の料理をアレンジした料理のそばにも…。
オムライスにカレーライスにハヤシライス…外国料理と米を組み合わせたメニューは枚挙にいとまがありません。
実は気になっていた事があるんです。
日本では食の多様化が進んで米の消費量が随分減った。
そう以前お聞きしましたよね?ええそれは紛れもない事実です。
しかしそれでもなお日本にいると度々感じる事があるんです。
我々外国人には到底理解しえないような日本人の米に対する思い入れの深さを…。
フッ…。
イネの栽培が大陸から伝来した今から2000年以上昔日本の古代国家は米を国づくりの基本に据えました。
その後の長い歴史の中で国を治めるものや統治のシステムは変わっても米の生産だけは一貫して日本の国づくりの根幹であり続けたのです。
2000年にわたり国を挙げて米を作り続けてきたようなものなのですよ日本という国は。
私は長い歴史の中で培われてきた米の記憶が日本人の精神の奥深いところに根ざしていると思うのです。
日本の各地にはさまざまなお祭りや行事が存在しますがその多くも米作りと関係しているんですよ。
日本人にとって米は信仰の対象といってはいささか大げさですかな。
失礼。
身近な話に戻しましょう。
日本人は米を炊いたものを「御飯」と呼びますが同時に食事の事も全部ひっくるめて御飯と呼びます。
例えば朝食卓にパンが出てもそれは朝御飯です。
変だよそれ。
じゃあ今食べてるのは?
(鬼塚)少し遅めの昼御飯かな。
ウフッそれじゃどうしたって炊いたお米の事思い出しちゃうわね。
(笑い声)いかんいかん米の事は忘れましょう。
何してるの?また胃薬?アスガージャンに気付かれるなよ。
えっ!何これ!シーッ!お前たちが朝風呂に入っている間に作っておいたんだ。
一人で全部食べたんじゃなかったの?そんなの無理に決まってるだろ。
さ鬼塚さんも。
こういう事はあまり感心しませんな。
しかし…面白い。
これこれ!パパナイス!とんだフレンチになっちゃったわね。
(鬼塚)これは愉快だ。
アッハッハッハッハ!ハハッハハハハハッハハハハハハッ!
(鬼塚)また機会があったら。
お元気で。
エミルほら動くなよ〜。
ちょっと静かにしてなさい。
動くなって〜。
(リスン)やめなさい。
もう終わるからちょっとだけだって。
(リスン)もういいかげんにして。
ミスター鬼塚!頭頭!お…おい!バカやめろ!バイバーイ!
(リスン)もう…子供みたい。
鬼塚さんの事笑えないわね。
パパ子供〜。
忘れ物…か。
よぉ〜マイケ…。
ど〜いう事だ!どうして待ち合わせ場所に来なかった?理由は!?出がけに靴下が片っぽしかなかったのか!?気が変わったんだよ。
はぁ!?来ないんなら連絡の一つくらいよこすもんだろ!気が変わったってどういう事だ!落ち着けよ。
会う必要がなくなったんだよ。
おととい言ってた忘れ物の事か?ああ。
でもお前は自分でそれを見つけたろ?もったいぶるなよ何の話だ?ジャンが愚痴ってたぞ。
「マイケルの野郎俺のメニューに握り飯をねじ込みやがった」ってな。
ハッハッハッハッハ!ちょっと僕にも言わせて!トシ!ひどいよ!あ〜え〜とその声は…アンドリュー。
アスガー!がっかりだよ!僕らを引っ張り回した張本人の顔を見てやろうと思ってたのに!マイケル。
家族全員そこにいるのか?いるよ。
はじめまして。
ちょっと!僕の話聞いてる!?ならちょうどよかった。
見せたいものがあるんだ。
え?見せたいもの?ハッハ〜!実況生中継だ!どうだ?見えてるか?今こっちじゃ桜が満開なんだ。
ソメイヨシノだぞ。
今回の旅じゃ日本の桜は見れなかったろう。
トシ…お前一体今どこにいるんだ?フフッ。
この地球のどこかさ。
こうして我々家族の「日本を食べ尽くす」100日間の冒険は終わった。
最後に締めの言葉を述べろって?勘弁してくれ。
もう言う事はないよ。
いや一つだけあった。
仏教から生まれた日本語で食べ物を収穫する人や料理を作ってくれた人に感謝する事を意味する言葉だ
ごちそうさま。
2016/01/01(金) 17:40〜18:00
NHK総合1・神戸
アニメ 英国一家、日本を食べる選「日本を食べる」[二][字]
イギリス人フード・ライターとその家族が、日本に滞在して各地の料理や食材を食べ尽くす!?「和食」をテーマに、一家の100日に渡る日本珍道中を描くコメディ・アニメ。
詳細情報
番組内容
マイケルは、日本での最後の1日を、子どもたちの願いを聞き入れてテーマパークで過ごすことにした。アスガーとエミルは大はしゃぎだったが、マイケルは全く楽しくない。そして、あろうことか子どもたちとの約束をほごにしてアンコウ料理を食べに行こうと言い出してしまう…果たして感動のフィナーレを迎えることができるのか?そして英国一家は、最後に何を食べるのか?
出演者
【声】竹本英史,満仲由紀子,広橋涼,徳山靖彦,滝藤賢一,半田裕典,荒井聡太
原作・脚本
【原作】マイケル・ブース,【翻訳】寺西のぶ子
監督・演出
【監督】ラレコ
ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
情報/ワイドショー – グルメ・料理
アニメ/特撮 – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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英語
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