英国一家、正月を食べる 2016.01.01


(一同)あけましておめでとうございます!英国人フードジャーナリストのマイケル・ブースです。
「英国一家、日本を食べる」が特別番組として戻ってまいりました。
テーマは「正月」!今回も我々家族が日本を訪れて…。
ん?何の用だ!今は本番中…。
(トシ)マイケル着物のあわせが逆だぞ。
…え?アハハハハ…。
どうもマイケルの友人トシです。
頭から締まりなく始まってしまいましたが今回マイケルたちは日本の正月料理を食べ尽くします。
最後までチャンネル変えずにおつきあい下さい。
(アスガー)すごい!パパの写真がたくさん並んでる!本の売り上げがいいから出版社がだいぶ力を入れてくれてるんだよ。
(リスン)分からないものね。
私たち家族の日本食べ歩き旅行記がこんなにウケるなんて思いもしなかったわ。
書いた人間の腕がいいからな。
いつかこの作品の映画化やアニメ化の話も来るかもしれないぞ。
アニメ?それはないでしょ。
分からんぞ。
物好きなやつはどこの国でもいるからな。
これがパパのイベントなの?すごいだろ?テレビカメラも入るしネットで中継もされるらしい。
それじゃかっこ悪いところ見せられないわね。
大丈夫!任せといてくれ。
あの…失礼ですがマイケル・ブースさんですか?ええそうですが。
感激です!あなたの本を読みました!僕もいつか日本に行って日本料理を食べ歩いてみたいです。
あの〜よければここにサインを…。
お安い御用です。
名前は?ロバートです。
(ロバート)おぉ…おぉ〜!すばらしいじゃないか。
たくさんの人たちが僕の言葉を聞きたがってるって事さ。
今や僕はイギリスにおける…いやヨーロッパにおける日本料理の第一人者ってところかな!日本料理の最大の特徴は食材本来が持つ味を引き出す事。
そして季節を味わう事です!春夏秋冬。
旬の食材の良さを最大限に引き出し…。
(エミル)パパかっこいい。
ステージに立つと別人ね!とりわけ懐石料理…。
(司会者)大変すばらしいスピーチでした。
我々が知らない多様な日本料理の世界を見たような思いです。
日本料理の第一人者マイケル・ブースさんにいま一度拍手を。
(拍手)ここで突然ですが今日はブースさんのためにサプライズゲストをお呼びしているんです。
早速ご登場頂きましょう。
おっ!えっ!?
(司会者)このイベントのためはるばる日本から海を越えてやって来た日本料理界の重鎮ミスター鬼塚!ミ…!
(3人)ミスター鬼塚!?
(鬼塚)お久しぶりですマイケルさん。
急きょここからはミスター鬼塚との対談に切り替えたいと思います。
心の声何で僕より登場が派手なんだ〜!先ほど触れられていた四季の話お見事でした。
今日本は秋真っ盛り。
マイケルさんにとって思い出深い秋の料理は?そうですねぇ…。
京都で食べた懐石の八寸がとても印象的でした。
まるで自然の石のような器。
その中に海の幸から山の幸まで色とりどりの料理があしらわれて…。
「去る時を知りて夜寒むのカワズかな」。
京都の「松原」ですな。
秋のセンチメンタルな情景を料理で表現した八寸ですね。
あの店の料理人は腕がいい。
あぁ…ご存じで…。
では冬は?冬?マイケルさんが食べた冬の日本料理ですよ。
印象に残っているものはありますか?急にそわそわし始めたね。
どうしたのかしら?心の声しまった〜!僕たちが日本にいたのは夏から秋にかけて…。
本から得た一とおりの知識はあるが冬の料理はまだ食べてない…。
相手は鬼塚さんだ。
中途半端な答えは命取り…。
え〜はいはい冬!冬ですね…あ〜…ハハハハ…。
鍋料理!ちゃんこ鍋に湯豆腐しゃぶしゃぶ。
鍋料理は種類も本当にたくさんありますからね〜。
地域性も豊かですし。
他には?心の声なんだよ〜!今の答えじゃ不満だってのか!?確かに懐石の話題からの流れだと鍋料理は地味だったかもしれないな。
何かもっと華やかできらびやかな…。
おおぉ〜!お…おせち!いや〜僕とした事がおせちを忘れていました!日本の新年を祝う料理です!え〜こう四角い箱の中に色鮮やかな料理がたくさん詰められてえ〜何と言いますか…。
なるほど。
おせちは正月に食べる料理ですから季節料理という側面も確かにある。
しかしおせちに込められた意味はそれだけではありません。
あぁ…確かにそうです…。
見た目も美しいし晴れがましい新年を祝うパーティー料理としてはうってつけの…。
パーティー…料理?フッ…なるほど。
そういう認識でおられましたか。
綿密な取材が信条のあなたの事だてっきり歴史や由来を踏まえたうえで語っているのかと思っていましたが…いやこれは失礼した。
えっ!いや〜…それについてはですね…。
気にする事はありません。
日本人でも知らない人は多い。
いやいやちょっと待って下さい。
僕がおせちについて全く知らないというわけでは…。
おせちを食べた事は?いえ…まだ…。
あの〜できましたら観客の皆さんにおせちについての説明を。
フッ…ではせん越ながら。
おせち!おせちを語るにはその歴史からひもとかざるをえまい!季節の変わり目を祝う日に食べる特別な料理節句料理の事を!古くは節供あるいは御節供と呼んでいた!それがいつしか長い歴史の中で数ある節句料理の中の正月料理だけが節供から転じておせちと呼ばれるようになったと言われている!あの〜おせちについての話題はその辺で。
ああ失礼。
料理の事となると思わず熱が入ってしまいましてな。
また悪い病気が出ました。
ハッハハハッハハハハッハッハハハハッ…!
(従者)また被害者を出してしまった…!
(従者)対談相手のひのき舞台を横取りし相手を完膚なきまでたたく…。
先生が食の鬼と呼ばれる所以…!
(鬼塚)ハーッハッハッハッハッハッハ!ハーッハッハッハッハッハッハ!
(リスン)元気出してマイケル。
鬼塚さんも悪気があったわけじゃないのよ。
あなたと一緒で食べ物の事になると…。
そんな事は分かってる!僕が許せないのは自分自身だ…。
ちょっと本が売れたくらいで調子に乗って…。
何が日本料理の第一人者だ…!僕はまだ何も分かってない…!マイケル…。
行くぞ…。
(一同)え?正月は…日本に行くぞ〜!
(3人)えぇ〜?ちょっとマイケル本気なの?がぜん興味が湧いてきた!おせちとは何なのか正月とは何なのか!その答えを見つけるんだ!自分の舌で!ん?ようマイケル。
ネットの中継見てたぞ?アッハッハッハ…随分こっぴどくやられてたじゃないか。
ああおかげで目が覚めたよ。
見てろよトシ。
正月には日本に渡って…。
そ〜くると思ってたよ!だけどそれじゃ…遅すぎる。
ん?いきなりおせちだけ食ったって意味がない。
その本当の意味を知るためにやっておくべき事がある。
い…一体何を?稲刈りだよ。
い…稲刈り!?僕に米の収穫をやれってのか?ああ。
収穫もだいぶ終わりごろだがまだ間に合う。
行って取材してこい。
今すぐだ。
福島の郡山にいる米作りの名人を紹介してやる。
取材には日本のテレビ局も同行する。
どうやらお前に興味があるらしい。
うまくやって何かをつかんでこい。
つかむって…一体何を?何かを…さ。
ふぅ〜さてと。
トシが正月料理を理解したいならお米について知るべきだと言うんです。
田んぼにまで押しかけるのは極端かもしれないけど米作りの名人に会ってお米について学ぼうと思います。
マイケルちゃんと段取ってやったんだ。
しっかりやれよ。
コンニチハー!はいこんにちは!フルカワサン?はいそうです。
この人は古川勝幸さん。
日本一おいしい米を競うコンクールで5年連続金賞を受賞した米作りの名人だ。
マイケルさんも稲刈りやってみますか?稲刈りに挑戦。
初めてにしちゃなかなか様になってるじゃないか。
きれいに刈ってますね。
上手です。
足まで刈ってしまいそうで怖いなぁ。
見て!クモだ。
いろんな生き物がいっぱいいますから。
クモにイナゴにカエル。
さまざまな生き物がいる。
古川さんの田んぼでは農薬も化学肥料も一切使わない。
そのかわりに使っているのがこれ。
漢方薬。
人が使う漢方薬を使ってます。
うわっ!アハハハハハッ!すっごい苦い!古川さんによれば漢方薬は土壌を活性化するのに役立っているそうだ。
田んぼの中にいる微生物の餌になるんですよ漢方薬は。
微生物がいっぱい増えて土が元気になってその元気な土で育ててるんです。
自然の力やサイクルを生かせというのが古川さんの考え方ですね。
自然にはもう逆らっても無理なんですね。
土の力と自然の力に任せて作ってます。
いい事思いついた!もしこの漢方薬で何でも育つなら僕の髪の毛も育つと思いませんか?ハハハハッ!お前…それはむちゃだろ。
この日手伝いに来ていたのは古川さんの米作りを勉強したり応援している人たち。
5年前の震災直後買い手が激減してしまい古川さんは一度は米作りをやめようと思った。
しかし応援してくれる人たちの励ましに勇気づけられ続ける覚悟を決めた。
福島県は放射性物質の検査を県内全ての米に実施している。
更に古川さんは米の安全性を知ってもらうため独自の検査結果を自らのホームページで公開しているんだ。
午前中の仕事を終え昼御飯。
この田んぼでとれたお米?ここでとった米です。
う〜ん…。
すばらしい。
自然な風味でとても弾力がある。
甘くておいしいです。
ありがとうございます。
古川さんお米作りで一番大事な事は何だと思いますか?一番は感謝です。
土地にも田んぼにも稲にもいろんなものに神様が宿ってるんで今日稲刈りで使った鎌とか農機具とかにも神様が宿って…。
みんな感謝の気持ちを持って愛情込めて作ればいいものができると思うんですよね。
それはすばらしい。
ここでやっている事は大事な事だと思います。
すてきな昼御飯ありがとうございました。
ひと休みしたら農作業再開。
これすごく重い!稲の天日干しに使うくいの打ち込みを手伝う。
ハンマーの重さはおよそ5キロ。
明日は筋肉痛確定だ。
刈った稲をくいの前に集める。
稲の束を向きを変えながら積み上げていくやり方は風強いこの土地に合わせたもの。
天日で稲を干すと米の甘さが増すと古川さんは言う。
作業を終えたマイケルは古川さんの家に夕食に招かれた。
田んぼから戻って最初にするのは炊きたての御飯を小さな皿に盛る事。
神様やご先祖様へ供えるためだ。
古川さんはこうやって毎日欠かさず水と御飯を供えては感謝の気持ちを込めて拝んでいる。
はいお疲れさまでした。
乾杯!
(一同)乾杯!マイケルお待ちかねの夕食。
これはキャベツ餅。
炒めたキャベツにしょうゆや砂糖などを加えて煮込みそこに餅を入れてからめた郡山の郷土料理だ。
とてもおいしい!お餅大好きです。
こちらはイカニンジン。
スルメイカとニンジンの漬物。
冬場を越すための保存食として福島では昔から食べられている伝統料理。
食感の違う食材の取り合わせがいいですねぇ。
かみ応えがあるのにパリッとしている。
(古川)正月は必ずイカニンジンとキャベツ餅この辺では。
これを見るとお正月は思い出しますよね。
神様に感謝を込めて一緒に食べるんです。
正月には何か特別な神様がいるんですか?この辺では正月様と言いますけどお正月は一年の始まりなんで一年間の豊作をお祈りして…まあ全国的には年神様という豊作の神様ですね。
マイケル正月料理にぐっと近づいたみたいだな。
「拝啓鬼塚様。
あのあと僕は郡山のとある農家を訪ねて稲刈りを体験しそこで正月が一年の豊作や幸せをもたらす年神という神を迎えて祝う特別な行事だと知りました。
いよいよ家族と一緒に正月の日本へ行って実際におせちを食べてみようと思います」。
「郡山ではいい経験をされたようだ。
ならば正月を我が家で過ごしてはいかがですか?伝統的な正月料理を振る舞いましょう。
この目で見届けさせて頂きますよ。
フードジャーナリストマイケル・ブースがつかみ取ったものを」。
(リスン)これが鬼塚さんの家?まるで映画に出てくるジャパニーズマフィアの家だね。
中はもっとすごいぞ。
黒ずくめの威圧的な従者たちがズラーッと並んで訪問客を待ち受けてる。
これ何?攻めてくる敵を迎え撃つための武器?年神は山から里へ降りてくると言われている!これはその神を出迎えるための印のようなもの!これは?ここが神聖な場所であると神に示すためのもの!同時に不浄なものが侵入するのを防ぐ魔よけの役割もあるという!今回はだいぶ予習してきたのね。
当然だ。
気を引き締めていくぞ。
頼もう〜!
(バイクの音)いつまでこうしてればいいの?おかしいないつもならここに立った瞬間「開門〜!」って掛け声とともに門が開くんだが…。
ん?
(扉が動く音)
(扉が開く音)やあ皆さん!お待たせして失礼いたしました!ささ中へ。
お世話になりま〜す!あの〜いつもは黒ずくめの皆さんがズラーッと並んでましたよね?彼らはどこに?
(鬼塚)ああ…今日は私一人です。
一人!?どういう事ですか?うちでは正月には働いている者に休みを取らせるんです。
おじちゃんはお留守番?そういう事かな。
一人でお留守番だ。
ハッハッハッハッハッハッ!ハッハッハッハッハ!お〜!これはもしかして臼と杵ってやつじゃないですか?今日は皆さんと一緒に餅をつこうかと思いましてね。
もち米と呼ばれる米を蒸し蒸し上がったものを粘りけが出るまで繰り返しついて作る日本の伝統的食品である。
もち米を使った餅を食べるのは稲作が盛んなアジアの中でも日本ラオス中国南西部など一部の地域に限られており極めてユニークな食文化といえる
郡山でもキャベツ餅という料理を食べました。
まさか実際に餅つきを体験できるなんて感激です。
物のっ…!本によるとっ…!こうやって何度もつく事でっ…!滑らかな餅になるんだっ…!あぁ…あぁ〜…。
なかなか物の本どおりにはいかないようですなぁ。
(鬼塚)フンッフンッフンッフンッ!フンッフンッフンッフンッ!
(エミル)鬼塚さんすごい。
第1ラウンドは取られたね。
うるさい!
(鬼塚)つきたてのやわらかいうちに食べて下さい。
見ろエミル!めちゃくちゃ伸びるぞ〜!甘くておいしい。
それは「あんこ」っていうんだ。
あずきという豆を甘く煮たものさ。
こっちの黄色い粉は?これは…きな粉?
(鬼塚)ええきな粉です。
いった大豆を粉にしたもので砂糖で味を調節してあります。
うん…うん…う〜ん!餅の滑らかな弾力ときな粉のこのふくよかな香ばしさ。
世界中の料理を食べ歩いてきたがこんなの初めてだ!お餅最高〜!ほらよくかんで食べなさい。
ハッハッハッハッハ!お子さんたちにも好評なようですな。
味も食感も初めてですがこれは世界のどこに行ってもウケますよ。
(鬼塚)これは鏡餅。
あらかじめついて丸く整えておいた餅を重ねたものです。
食べないの?これは神様の分だからね。
餅は古くから神にささげる神聖な食べ物と考えられてきました。
正月だけではありません。
結婚や子供の成長あるいは家を建てる時などハレの日といわれる特別な日には餅をついて神に供えその神聖な餅を我々人間も食べる。
そうする事で福を招いたり人生が豊かになると信じられてきたんです。
こんがりと焼き上がった餅。
この餅を使った料理で忘れちゃいけないのがこれ。
雑煮だ。
数種類の具材と餅を一緒に煮た日本人にはおなじみの汁物。
ここからは正月料理の定番雑煮を紹介するとしよう。
彼はシェフ仲間の秋山能久。
全国各地を訪ね歩き雑煮を研究している料理人だ。
プロを引き付けてやまない雑煮の魅力とは一体何か。
極めてシンプルな料理なんですけれどもそこには地域のさまざまなバリエーションがあって土地土地に根づいたすばらしい食材をお雑煮という形に表現してるんですね。
料理人にとってはすごく奥深い料理の一つになってます。
なるほど雑煮は地域の食材を使った郷土料理って事か。
クルミが名産の岩手では焼いた角餅に甘いクルミだれをつけて食べる「クルミ雑煮」。
房総半島の特産品はばのりを使った千葉の「はばのり雑煮」。
更に山梨の「きのこ雑煮」福岡の「ブリ雑煮」京都の「白みそ雑煮」などとにかく土地の数だけ雑煮があるといっていい。
ところでお気に入りの雑煮は?
(秋山)はい。
宮城県の「焼きハゼ雑煮」になります。
見た目もすごくドドーンとインパクトがあるんだけどもポイントはだしなんですね。
これは焼きハゼを使ってだしを取ってます。
ハゼでだし!?このハゼはですね宮城県の松島湾でとれたハゼ。
地元の食材を一晩ゆっくりと昆布だしの中につけてだしを取ってます。
宮城県ではハゼ秋田県ではフグ神戸ではアナゴ鹿児島では車エビとさまざまな食材を使ってだしを取ります。
だしの食材一つとっても地域の特徴が出るって事か。
ところでびっくりした雑煮があるんだって?あ〜はいはい。
香川の雑煮ですね。
入れる餅が違うんですよ。
この餅はあんこが入ってるんですよ。
あんこ!?
(秋山)今切ってみますね。
確かにあんこがぎっしり。
何で香川では雑煮にあんこ入りの餅を使うの?香川県は江戸時代から和三盆という砂糖の産地だったんですね。
庶民はお正月くらい砂糖を食べたいとあんこに砂糖を入れて餅でくるんだんですね。
庶民にとっては貴重な砂糖。
正月が特別だった証しだ。
(秋山)いりこだしの中にダイコンとニンジンを入れてその中に白みそを溶きます。
そして甘めのあん餅を入れまして。
甘めの白みそに甘いあん餅これって見事に合うんですよね。
特産品砂糖があったからこそできた発想だと思います。
まさに地元に根ざした雑煮の一つですよね。
プロもうならせる庶民の発想か。
なるほど。
じゃ最後に手軽に作れるおいしい雑煮を教えてよ。
それでは我が家で作る簡単なお雑煮の作り方をお教えします。
まず豚肉バラ肉ですね。
しゃぶしゃぶします。
豚のバラ肉を湯通ししているのは酒塩薄口しょうゆを加えたカツオのだし汁。
しゃぶしゃぶする事でだし汁に豚肉のうまみが更に加わる。
(秋山)沸騰したお湯の中には入れないで下さい。
大体80℃ぐらいの温度ですね。
そうするとお肉がやわらかく食べる事ができます。
おわんの中に焼いた角餅を入れましてその上にしゃぶしゃぶしたお肉を載せます。
そこへ先ほどのだし汁を注ぐ。
薬味には白髪ねぎゆず一味。
そして最後にポン酢を少しかけます。
これが秋山家の簡単なお雑煮です。
ポン酢が隠し味の豚しゃぶ雑煮の完成。
次はいよいよあれの登場かな?あぁ〜このコタツって暖房器具…最高だね。
鬼塚さんが言ってたぞ。
コタツは人間を堕落させる装置だって。
堕落っていいもんだなぁ〜!鬼塚さんは何してるのかしら?う〜ん…。
ちょっと様子を見てくるかな。
鬼塚さん何か手伝います…。
あ〜すいません!ん?ん?即席のラーメン?あ〜…!いやそれは…。
ひ…一人になるとどうも不精になりまして…。
に…日本料理界の重鎮がインスタント食品を!?皆さんがいない時にちょっと…!何と言いますか年の瀬の忙しい時期でもありますし時間を効率よく…!おいしいですよねこれ。
(せきばらい)全部おせちの材料ですかぁ!ワクワクしますね〜!いや手伝いはいいですから。
せっかくの大みそかはご家族と…。
面白い形の野菜ですね。
…くわいです。
煮物にしようかと思いましてね。
くわいは大きな芽が出る事から成功や幸運の兆しがあるとされています。
こちらの八頭は親芋に小さな芋がたくさんつく事から子宝や子孫繁栄。
エビは腰が曲がった老人に見立てて長寿を祈願したものです。
一つ一つの食材に意味があるんですね。
正月は一年の豊作や健康を願うものですから何かと縁起を担ぐんですよ。
毎年こんなに夜遅くまで仕込みを?いや本来はもう少し早くに準備すべきなんですが…。
実はおせちを作るのも何年かぶりでしてねぇ…。
一人で食べてもあまり意味のない料理ですから。
さあマイケルさんそろそろご家族のところに…。
このレンコンはどうします?皮をむき薄切りにしたら酢水につけてアクを抜く。
そうすれば白いきれいな色を保てます。
あ〜包丁はそこの棚に…。
ご心配なく。
自分のものを持参しておりますので。
フッそういうおつもりなら朝まで厳しくいかせて頂きますよ。
フランスで修業したというあなたの料理の腕見せて頂きましょうか。
望むところです。
(司会者)321!
(一同)あけましておめでとうございま〜す!
(鐘)鬼塚さん昆布巻きが煮上がりましたよ。
鬼塚さ…。
ん?
(寝息)僕も少しだけ寝ておくか。
ん?あぁ…。
鬼塚さん!起きて下さい!鬼塚さ〜ん!お湯を入れて3分…。
起きろおぉ〜!おわあぁ〜!
(鍋をたたく音)
(アスガーリスン)わあぁ〜!
(鬼塚)おぉ…。
きれい…。
正月の神年神様は初日の出と共にやって来ると言われている。
新しい一年の始まりを告げる特別な太陽だ。
いつもと同じ日の出にしか見えないけど…。
そうかもな。
だけど僕には見えるよ。
太古の日本人が見た恵みの光が。
子供は飲むマネだけでいいのよ。
ハーブのような不思議な味がします。
屠蘇といって日本酒にみりん更にさまざまな生薬を調合して作られたもので悪い気を払うと言い伝えられる正月のお酒ですよ。
一年の最初に口にするものが薬草酒というわけか。
あけましておめでとうございます。
(4人)おめでとうございます。
(鬼塚)お待ちかねのおせちです。
(リスンアスガーエミル)わあ〜!きれい〜!おいしそう〜!
(鬼塚)一の重は祝い肴あるいは口取りともいわれますがオードブル的料理を詰めます。
更に当家では二の重には焼き物を三の重には酢の物そして与の重には煮しめを盛ります。
まずは一の重から。
邪気を払い健康を願う黒豆。
数の子はニシンの卵で子孫繁栄。
ゴマメはその昔田畑の肥料としても使われた事から「田作り」とも呼ばれるカタクチイワシの幼魚です。
田を作る…つまり五穀豊穣を願っているわけですね。
そのとおりです。
この3つは祝い肴三種といって餅と共に日本の正月料理の最も基本的な構成要素なんです。
ちなみに関西ではゴマメではなくたたきゴボウが使われますし他にも土地土地の食材がいろいろ入りますから一口におせちといっても地域や家庭によって実にさまざまです。
器も今日は4段の重箱に料理を盛り込みましたが5段や3段もありますしそもそも重箱を使わないところもあります。
甘っ!何これお菓子!?ロールケーキみたい。
これも甘い!まるでデザートだ。
ハッハハハハ!この甘さが日本酒によく合うんですよ。
あとはどの重からでも自由に召し上がって下さい。
こちらのブリの笹包みはいかがですか?ブリは成長とともにその呼び名が変わる事から出世魚と呼ばれ縁起がいいんですよ。
ほらいいじゃない!出世して持ち上げられた途端また鬼塚さんにコテンパンにされそうでどうもな…。
ハッハッハッハッハッハッ!よく分かってるじゃないですか。
怖いよ鬼塚さん。
(笑い声)ん?この箸…。
普通は片方だけが細くなっているのに両端が細くなっていますね。
それは「祝い箸」と呼ばれるものです。
箸先が2つ。
片方は我々人間のため…。
もう片方は?神様のための箸先です。
おせちも餅も正月の料理は本来「神饌」つまり神にささげる料理でありそのささげたものを神と共にそして一緒に過ごす家族や仲間と共に食べる料理なんですよ。
神と共に食べる料理…。
今僕らは神様と一緒に食べてるって事?どこにいるの?この家にいらっしゃいますよ朝からずっとね。
どうやら21世紀の日本に正月の伝統は残っているようだ。
しかし一体どれだけの人が正月料理本来の意味を理解し神に畏敬の念を抱いているんだろうか。
…なんて偉そうに言ってみたが実のところ僕はいかなる神も信じてはいない。
そんな僕でも日本の正月を体験して感じ取る事ができた。
日本人の根っこにある大切なものを
全部燃やしちゃうんだ…。
これはどんど焼きといってね大事な意味があるんだよ。
この煙はただの煙じゃない。
年神様はこの煙に乗って元いた場所に帰るんだ。
1月15日は小正月と呼ばれていてね旧暦では…。
あぁっ!エミル何だそれ!お餅。
お餅?どんど焼きの火で焼いて食べるみたい。
あっちで配ってるわよ。
エミル案内しろ!こっち。
ちょっと!子供だけで行っちゃ危ないわよ!アスガー!エミル!ちょっと待って!マイケルさんも一緒に行かれてはどうですか?いえ僕はここで。
さっきの小正月のうんちくの続きをまだ聞いておりませんので。
フッ長くなりますよ。
望むところです。
(笑い声)松。
竹。
梅。
こちらは鶴。
そして亀。
見た目にも美しいこれら全て日本の伝統的な菓子。
いわゆる和菓子だ。
まるで抽象画のようなこちらは今年の干支さるをモチーフにした正月の和菓子。
赤い丸はさるの顔を茶色の三角はさるの体を表現しているという。
和菓子は日本人ならではの遊び心と粋な趣向を凝らし手のひらに載る小さな芸術とも呼ばれている。
正月料理をいろいろ食べたマイケルも残念ながらここまでは到達できなかった。
そこで番組の最後はこの奥深い和菓子の世界を紹介するとしよう。
ここは新年を祝う茶会「初釜」。
茶を点てているのは茶道家であり陶磁器研究家でもある林屋晴三さん。
林屋さんが使っているどっしりとした茶わん。
この「大福」というめでたい名の茶わんで茶を振る舞う事が林屋さんにとっては一番の正月行事。
(林屋)大きな福の神の「福」という銘なもんですから福をお互いに分かち合おうというふうな気分で一生懸命に毎年点てております。
茶会では茶を飲む前に和菓子が用意される。
林屋さんが選んだのは…「花びら餅」。
餅の中にゴボウと白みそが使われ別名「包み雑煮」とも呼ばれている。
古くから宮中の正月行事で食べられていたものをもとに明治時代裏千家が「初釜の菓子」として作ったのが始まりだ。
昭和に入るとそれが一般にも広まり今では正月を代表する菓子となっている。
(林屋)花びら餅っていうのはまず姿がいいですね。
白みそのあんを使うんですがねこれが非常にゴボウと合っておいしい。
花びら餅を食べて一服飲むっていうのは何か正月気分を一番味わわせてくれる気がしますね。
和菓子は茶道の歴史と共に発展してきた。
これは茶会の主催者である亭主の考えや趣向に職人たちが応えていく中で菓子が作られてきたからだ。
そして歌をモチーフに作られる事も多い。
短歌を披露し合う宮中の正月行事歌会始。
この歌会のお題をもとに作られるのが「御題菓子」。
今年のお題人をモチーフにしたこちらの菓子。
夜明けの赤大地の緑そこに万物を意味する「天地人」の文字があしらわれている。
作ったのは京菓子の老舗3代目主人の山口富藏さん。
和菓子職人にとって御題菓子は特別だと言う。
日本にはね春夏秋冬というのと他にね新年といわれるものすごく大事な季節感がある。
その中にあるのがこの御題菓子。
何か自分の持ってる思いをそのお題にのせて表現したい。
毎年歌会の最後に次の年のお題が発表されると職人たちの挑戦が始まる。
お題が出た途端に来年どないしたらいいかなという事を。
一年間の宿題ですわ僕らの。
山口さんはこの一年「人」をテーマに試作を繰り返してきた。
(山口)これね「二人」という。
「人」ですからね。
男の人と女の人を表したつもりなんです。
でこれこうひっつけたら「恋人」や。
これもお題ですわ「人」です。
お菓子ってねそういう遊び心がものすごく大事なんですよ。
そんな山口さんが最終的に選んだのがこちら。
緑色のきんとんに色とりどりの玉を飾りつけている。
春の野原に人が集まる情景を表現した。
単に食べ物ではないんだという事日本のお菓子は。
だからしゃれがあったり掛けことばがあったり作る人も食べる人も遊ぶわけです。
日本の文化の神髄を表してると僕は思う。
マイケル日本の正月には遊び心も重要なんだぜ。
本日は最後までご覧頂き誠にありがとうございました。
新しい年が皆様にとって良い年になりますよう家族一同お祈り申し上げます。
(リスンアスガー)お祈り申し上げます。
(エミル)…ます。
2016/01/01(金) 22:00〜22:50
NHK総合1・神戸
英国一家、正月を食べる[二][字]

イギリス人フード・ライター、マイケル・ブースとその家族の日本食べ歩きの旅をコミカルに描いた「英国一家、日本を食べる」の特別編。おせちや餅など正月料理の魅力に迫る

詳細情報
番組内容
ロンドンに戻り100日に渡る日本食べ歩きの記録を出版したマイケルは一躍時の人に。そして、記念のトークショーで得意になって日本の食文化について語っていると、突如現れた日本料理界の重鎮・鬼塚に「おせち」についてたずねられる。全く答えられず落ち込むマイケルだったが、親友のトシから電話が入り「おせちの意味を知りたいなら稲刈だ!」と言われ、単身、秋の福島・郡山へと向かう。アニメと実写で正月料理の魅力を紹介!
出演者
【声】竹本英史,満仲由紀子,広橋涼,徳山靖彦,荒井聡太,滝藤賢一
原作・脚本
【原作】マイケル・ブース,【翻訳】寺西のぶ子
監督・演出
【監督】ラレコ
キーワード1
おせち
キーワード2
正月料理

ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
情報/ワイドショー – グルメ・料理
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
英語
サンプリングレート : 48kHz

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