92回目を迎える箱根駅伝
幾多のランナーの魂を今につなぐ、全長217.1km
心を揺さぶる、この継走にはランナーを支え、導いてくれた人々との絆が秘められています
最高の仲間
兄の大きな背中
親子でたどる道
監督への恩返し
母がくれた言葉
箱根駅伝が紡ぐ絆の物語
箱根駅伝を2週間後に控えた、青山学院大学の寮
キャプテン神野大地を中心に4年生だけが集まり、あらためて箱根への誓いを立てた
4年間、一緒に夢を追い続けた
その道のりには、同級生の支えがあった
2012年の春
青山学院の門をたたいた時から、今の4年生達は、最強の学年と期待されていた
監督が、こう断言すれば、神野も、こんな決意を語っていた
優勝争いさえしたことがないチームだったが、1年生達は誓った
4年生になったら、大学駅伝3冠を取る
壮大な夢を打ち立てた彼らは、がむしゃらに先輩に食らいついて行った
当時の神野の練習日誌には、1年生全員の思いがつづられていた
「1年で箱根メンバーを独占する気持ちでいく」
しかし1年目、箱根16人のメンバーに神野の姿はなかった
12月、エントリー発表直前に、けがをしてしまったのだ
初めての箱根駅伝
1年生では久保田和真と小椋裕介の2人だけが出場
神野は付き添いに回っていた
今度こそ2人と同じ、あの舞台へ
2年生になると、積極的に久保田と小椋の前を走った
ところが、その久保田が右膝のけがで離脱
小椋とも話してたりもしてたんで。
同級生への思い
そして芽生え始めたエースの自覚が、神野と小椋を成長させた
2年生の箱根
神野はデビュー戦にもかかわらず、花の2区に抜てきされ区間6位の力走
待ち受けてくれたのは久保田
自分のことのように喜んでくれた
2年連続出場となった小椋も、区間2位と成長の証しを見せていた
時にライバル、時に仲間として支え合いながら3年生となった去年
久保田も、けがから復帰
初めて箱根駅伝で3人がそろった
迎えた前回大会
青山学院は1区・久保田で好スタートを切ると、5区・神野が逆転し、初の往路優勝
小椋も7区で区間賞
そして…
青山学院大学!悲願の箱根、初優勝!
だが神野の目は、すでに次を見据えていた
入学時に誓った3冠へ、挑戦は始まった
最終学年、勝負の年
しかしキャプテンとなった神野に待ち受けていたのは試練
6月までに2度の疲労骨折
走れない日々が続いた
焦りで押しつぶされそうな心を救ってくれたのは、4年生の存在
7月のユニバーシアードで金メダルを獲得した小椋は、走れないキャプテン神野の代わりに積極的に練習を引っ張った
10月の出雲駅伝
夢の3冠へ、大事な初戦
神野は欠場
寮でレースを見守った
実は小椋に、こんな手紙を送っていた
「小椋がいなかったら、もっともっと焦っていた」
「小椋には、本当に感謝しています」
神野の気持ちに応えるように、小椋は1区2位の快走
すると…
はいはい…、どうした?あっ、小椋?お疲れ。
お疲れお疲れ。
その電話の間、3区の久保田がトップの駒澤を追い上げ…
逆転!
中継所手前で、かわしました!
4年生の活躍で三大駅伝の初戦を制し、3冠への挑戦権を勝ち取った
神野は宣言通り、11月の全日本大学駅伝で復帰
2区を任された小椋が、粘りの走りを見せると4区の久保田も区間賞の力走
そして、アンカーの神野へ
2位で襷をもらうと、トップの東洋を懸命に追った
しかし、力及ばず
道半ばで、ついえた夢
キャプテンとして自分を責める神野に声を掛けたのは、小椋だった
心が通じ合う仲間達
それこそが最強学年の強さ
神野は再び、前を向いた
4年間、同じ夢を追いながら育んで来た絆
最後の箱根、思いは一つ
狙って勝ちに行きたいなという。
今大会注目ナンバーワンの兄弟ランナー、兄・服部勇馬と、弟・服部弾馬
優勝候補、東洋大学が誇るダブルエース
しっかり者の兄に対して、やんちゃな弟
兄は頼もしく、ずっと憧れの存在
しかし弟は、そんな兄の背中を追い掛けることをやめました
新潟県の十日町市で育った服部兄弟
弟の弾馬は、兄・勇馬を追って走り始めました
大学も兄と同じ東洋大学へ進み、兄弟で箱根駅伝優勝を経験
その兄が大きな決断をしたのは、3年生の夏
東京オリンピックでメダルを取るために、兄はマラソン練習を開始
2年生の弾馬には、大き過ぎる出来事でした
自分も変わらなければいけない
固い決意で挑んだ去年の全日本大学駅伝は、区間10位
エースと呼ぶには程遠い走り
兄に追い付きたい気持ちが空回りしていました
前回の箱根駅伝
中継所に現れた弾馬は、気合の丸刈り
前の年、1年生で区間賞を取った7区
しかし同じ学年の駒澤大学・西山にも競り負け、区間3位に終わりました
兄は、ひと言
チームは連覇を逃し3位
涙に暮れる弟
この時、兄は…
兄に追い付くためには、何が必要なのか
答えを模索する弾馬は、2月前の年に兄が学生新記録を出した30kmのレースに出場
記録も順位も、兄には遠く及びませんでしたが、この敗戦が弾馬にとって大きな転機となったのです
トラック競技でオリンピックを目指す
迷いが消えた弾馬は、トラックレースに重点を置き徹底的にスピードを磨きました
すると、その成果が実りとなって表れます
9月、学生日本一を決める日本インカレ5000m
各大学のエースが集うこのレースで、弾馬の真骨頂が
ラスト200m
留学生ランナーを置き去りにして…
自己ベストも更新しました
11月の全日本大学駅伝
この一年やって来たことが、駅伝で試されます
エース区間の2区は、兄ではなく弾馬が任されました
1区の兄からトップで襷をもらうと、後続をどんどん突き放し、去年この2区を走った兄の記録を上回りました
よし!よし、よし、よし!今回は区間賞かな?
手応え通り、区間賞
弾馬のつくった流れはチームに勢いを与えます
後ろ、キツイな、行け行け…。
アンカー上村の走りには…
全日本、初優勝
弾馬のエースとしての走りが、最高の結果につながりました
弟の成長を兄は…
兄の背中をずっと追い続けて来た弟は、兄とは別の、わが道を見つけて成長
兄のように高い志を胸に、箱根に挑みます
エチオピアからやって来た拓殖大学の留学生…
彼をつきっきりでサポートするのは…
井田がデレセに託した夢
井田は、チームを縁の下で支えるマネジャー
監督、コーチと選手をつなぐパイプ役でもあるが元はチームの将来を担うランナーだった
群馬の強豪・前橋育英高校から体育推薦で拓殖大へ入学した
しかし…
2年生の時、坐骨神経痛でドクターストップ
選手の道は絶たれた
胸の奥に押し込んだ箱根への思いが再び大きくなったのは、今年の春
長距離王国エチオピアからデレセが入学
上級生の1人がデレセとの相部屋を任されることになり…
自ら手を挙げて始まったデレセとの共同生活
井田はデレセの母国語であるアムハラ語を勉強
デレセも日本語を必死に覚えている
ここがアムハラ語。
競技歴わずか半年で来日したデレセ
慣れないレースに備え細かくスケジュールを伝える
しかし…
レースまでの流れを理解させるのには少し時間がかかったようだ
チーム一丸で打ち込む駅伝の練習はデレセにとって初めてのこと
最初は戸惑ったが、やがて笑顔が
足をけがした時は…
うわっ!痛い痛い、絶対痛いから。
日々、チームに解け込んで行くデレセ
いつも隣でサポートしてくれる井田について聞くと…
お〜!
井田をはじめ、4年生のためにも負けられないレース
デレセのチームプレーが見られたのは残り3キロ手前
キャプテン金森が苦しそうな表情を浮かべると何度も手招きして引っ張った
デレセが伝えたかった思いとは?
私、頑張ろう。
個人2位のデレセに引っ張られ金森も5位でフィニッシュ
拓殖大学は見事箱根駅伝への切符をつかんだ
箱根を前に井田に芽生えた確かな思い
2人の部屋には、ずっと右目が空いたままのだるまが
現役時代、井田が母親からもらったものだという
書かれているのは井田の夢
まぁ、走りたかったんで。
走りたくて来たので、6区を。
線引いて…、まぁ新たにデレセ箱根で区間賞取ってもらいたいから入れ替えて、今の目標にしてます。
チームのためを思うデレセの走りに井田は自らの夢を託して最後の箱根駅伝へと臨む
1995年、第71回大会は山梨学院大学、最後の総合優勝
上田誠仁監督は歓喜の輪の中にいました
その6か月後に誕生した息子・健太はチームの主力として今度の箱根駅伝に挑みます
上田健太が、山梨学院大学の門をたたいたのは去年の春
全国高校駅伝で山梨学院大学付属高校を初優勝に導きました
10000mの持ちタイムは高校ランキングで堂々のトップ
練習では、もちろん選手と監督
でも、2人きりになると親子になることも、しばしば
入学直後、去年5月の関東インカレ10000mで健太は早くも大学デビュー
その3000m地点でした
右すねの筋肉を負傷
入院生活を余儀なくされました
本格復帰は秋になってから
それでも16人のメンバーに入り1区にエントリー
しかし、往路の朝山梨学院の1区は上田健太から先輩の名前に変わっていました
その頃、健太は鶴見中継所に
初めての箱根は、選手の付き添い
変更を告げられたのは、3日前
クラブハウスで、監督から直接
父としての思いを断ち監督として決断したエントリー変更
上田監督の涙の理由
それは現役時代にさかのぼります
1977年、父は順天堂大学に入学
ハーフマラソンでは高校最高記録をマーク
1年生の箱根駅伝ではアンカーの10区にエントリーされました
すぐ正座して「はい、います」と。
「…っていうことだから、よろしくね」って。
前夜に先輩を介して突然告げられたメンバー変更
自分が切るはずだったフィニッシュテープは仲間が
あまりにも同じ、父と子の運命
これが、上田監督の涙の理由
2年生になった健太は順調に練習を重ね結果に結び付けて行きます
初の大学駅伝となる10月の出雲駅伝では区間2位の好走
11月の全日本大学駅伝では順位を3つ押し上げる走りを見せました
全ては、箱根路を駆けるために
健太が生活する寮
部屋の玄関にはあの日、自分が着けて走るはずだった1区のナンバーカードが
父の話には続きが
エントリーを外された翌年、第55回大会
初めての箱根では5区を任され、区間賞
順天堂大学を総合優勝へ導きました
父の功績に、次は息子が続く番
全日本大学駅伝
重要区間の1区で各校のエースを従える走りを見せた早稲田大学・中村信一郎
彼は、ほんの数か月前までもがき苦しんでいた
どん底のふちからなぜ劇的に変われたのか?
そこには今シーズンからチームを率いる相楽駅伝監督の言葉が
早稲田のえんじに憧れて競走部に入部した中村
1年生の頃は、Bチームながら少しずつ力をつけ練習では誰よりも頑張り2年生で、ついに箱根路へ
任されたのはアンカー
しかし、日体大との3位争いに競り負け…
3年生になるとチームの主力として1区の大役
ところが先頭争いに加われないまま結果は…
大事なレースではいつも結果を出せなかった
4年生になった今シーズン早稲田は、10年間参謀を務めた相楽コーチが駅伝監督に就任
Bチームから、はい上がった中村のことを誰よりも知っている
迎えた6月の全日本大学駅伝予選会
中村は、チームを引っ張る走りを期待されたが失速
他のメンバーの頑張りで本大会出場はつかんだものの監督の期待には応えられなかった
そのレース後…
中村の心に、相楽監督の言葉が突き刺さった
「本気で変わりたい」
中村の気持ちを察した相楽監督は…
監督が提案したのはメンタルの強化
世界で活躍するトップアスリート達によってその効果が注目されるが大学駅伝では、まだまだ未知の領域
実際に中村を指導する西畑トレーナーにどんな内容か聞いた
メンタルトレーニングを始めてから日誌に変化が表れた
以前は弱気な言葉ばかりだったが今はポジティブな思いであふれている
全日本大学駅伝の朝
1区を任された中村に不安な様子は見られない
大会前日の日誌には…
強い気持ちでスタートを迎えられた
そしてレースでは混戦の先頭集団で積極的に仕掛ける強気の走り
解説の渡辺康幸前監督も…
結果は…
チームのシード権獲得に大きく貢献した
やっと結果を出せた中村に相楽監督は…
ありがとうございます。
思わず笑顔がこぼれた中村
自信を持って、最後の箱根へ
中村の日誌には、毎日欠かさず書き込んでいる言葉がある
翔大!負けるな!
天下の嶮に挑む箱根駅伝5区・山上り
前回、この厳しさを誰よりも味わったランナーがいます
もう、やめたいっていう気持ちが強かったですね。
走ることをやめようとまで考えたこの1年
彼を支えたのは…
いつでも全力で応援してくれる故郷の母でした
生まれは岡山県岡山市
姉と兄を持つ3人きょうだいの末っ子で母・文子さんによって女手ひとつで育てられました
姉が中学で陸上を始めると母に連れられて、馬場も応援に
やがて馬場自身もマラソン大会に参加するようになったのですが…
ご褒美がうれしかった少年時代を経て中学で陸上部に入り本格的に競技をスタート
母は必ず応援に駆け付けてビデオカメラを回してくれました
箱根の優勝メンバーになりたくて強豪・駒澤大学へ
初めての箱根駅伝は2年生の時
任されたのは5区・山上り
2位で襷を受け取ると必死に前を追いました
そこには岡山から駆け付けた母の姿
手作りの大きな旗を振っての大応援
母を確認することはできませんでしたが2位を守って芦ノ湖へ
区間3位
みんながたたえてくれました
1年後、前回の箱根駅伝
馬場は2年連続で小田原中継所にいました
優勝候補の5区
期待が寄せられます
後輩の工藤がトップでやって来ると…
工藤、ラスト!
最高の笑顔で襷を受け取り2度目の山へ
しかし、10kmすぎ
関東インカレ、関東学生…。
前に出ました!さぁ、出ました。
神野が前に出た。
青山学院の神野に逆転を許してしまいます
懸命に食らいつこうとする馬場
しかし、山上りの本当の厳しさはここからでした
残り2キロの所で…
センター平川さん!センター平川さん!何とか足は、前に、前に走りだしている!
遠のく意識の中で、必死に歩を進めます
そして残り1キロ
沿道には、大きな旗を握り締めた母が…
襷をつなぐ
馬場を最後まで走らせたのは箱根駅伝に挑むランナーの本能だったのかもしれません
救護テントに運ばれた馬場
母も、すぐに駆け付けました
優勝候補だった駒澤大学は総合2位
悔しさの中で、翌朝新チームは始動しました
この時、馬場の心はまだ止まったままでした
朝練習が終わると最寄りの駅まで母が会いに来てくれました
…っていうのを、すごい言われたんですけど。
東京に残ることを決めた息子に母は…
…っていうのを言われたのはすごい、あの…、改札だったか、すごく覚えてます、はい。
母の言葉が背中を押してくれました
あれから10か月
出雲駅伝に馬場の姿がありました
仲間と襷をつなぐのは箱根駅伝以来
笑顔で受け取ると…
母校の襷の重みを感じながらの力走
沿道には、母・文子さん
手作りの旗を振って息子の背中を押します
襷は、しっかりとつながりました
あの日の試練に立ち向かう息子
その姿を見守り続ける母
最後の箱根、願うことはただ一つ
どこの区間、走るにしても、多分…。
いい顔して終わってほしいです。
そして、息子は…
新春の箱根路を舞台に1本の襷が幾多の思いをつなぐ箱根駅伝
エース達の躍動
鮮やかな逆転劇
シードをめぐる明と暗
水卜
おはようございます。
箱根駅伝スタートの朝を迎えました。
東京・大手町、読売新聞社です。
こちらでは1区を走る選手達が思い思いのウオーミングアップをしています。
まずは前回、初優勝を飾った青山学院大学、前回1区で2位の久保田和真の姿が見えます。
リラックスした表情でアップしていましたので、このあと6時50分に提出される最終エントリ−の締め切りがありますので、そこで変更ということですと、連覇への道、スタートは久保田に任されることになります。
奥には前回優勝の立役者、神野大地、前回の優勝メンバーがエントリーされています。
一方連覇を阻む東洋大学はアップの姿が見られたのは上村和生、キャプテンの服部勇馬、弟・弾馬が変更で入るかも注目です。
優勝奪還はなるでしょうか。
早稲田大学は相楽新監督、初の箱根です。
主将の高田がエントリーされています。
どのようなスタートとなるでしょうか。
92回目の継走、それぞれの思いを胸に仲間の汗と涙が染み込む2016/01/02(土) 05:50〜06:45
読売テレビ1
箱根駅伝直前生情報&絆の物語[字]
箱根駅伝を駆ける選手たちにとっての心の支え。仲間、兄弟、恩師、母、父…そんな絆の物語をご紹介。直前に迫った大会の生情報もスタート地点から交えてお伝えします。
詳細情報
おしらせ
第92回箱根駅伝 2016年1月2日「往路」3日「復路」あさ7時から生中継!
番組内容
神野大地(青学)と同期との4年間、馬場翔大(駒澤)の5区山上りでの苦しみからの復活を見守る母、服部弾馬(東洋)が誓った兄・勇馬からの自立、中村信一郎(早大)の心を強くした新監督、上田健太(山学)と父・上田誠仁監督の交錯する運命、留学生デレセ(拓大)にマネジャーが託した夢…箱根路を走るランナーたちが、次の一歩を踏み出す力となる、襷に宿る絆の物語をご紹介。スタート直前の生情報を交えてお伝えします。
出演者
神野大地(青山学院)
馬場翔大(駒澤大)
服部勇馬&弾馬(東洋大)
中村信一郎(早稲田大)
上田健太(山梨学院)
ワークナー・デレセ(拓殖大)
【進行】
水卜麻美
音楽
【箱根駅伝中継テーマ曲】
「Runner of the Spirit」久石譲
ジャンル :
スポーツ – マラソン・陸上・水泳
ドキュメンタリー/教養 – スポーツ
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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