(作動音)
(宮部たまき)今年の暮れも忙しいんですか?
(杉下右京)さあどうでしょうねぇ。
世の中物騒ですからね…。
「犯行声明文を発表」空港爆破事件の記事ですね?エコテロリズム。
地球を救うために行動してるんですって?新しい形態のテロです。
糸口をつかむのも困難な状態のようですね。
環境とテロ…私には水と油としか思えませんけどね。
確かにそうですね。
(伊丹憲一)おい…ホントに3階がアジトなのかよ?
(芹沢慶二)ええ。
情報提供者は確かに羽田空港爆破グループのアジトに間違いないって。
(伊丹)大体実態のわからないテログループに何で俺達が出張らなきゃならないんだよ。
(三浦信輔)うちの部長が公安を出し抜くって気合い入れてる事件だからな。
仕方あるまい。
ああ寒い…。
まったく…イブの夜だってのによ。
そもそも先輩予定ないでしょ?
(三浦)おい!見ろ!
(内村完爾)ジャッカロープのアジトに間違いないのか?
(中園照生)はあ。
ただいま慎重に確認中です。
(内村)厳重警備の羽田空港でテロを起こされるなんて警視庁の恥だ。
しかし公安の連中もまったく察知していなかったようです。
面目丸つぶれですな。
何?足の引っ張り合いなどしている場合ではありませんでした。
申し訳ありません!刑事部が警視庁の中心そう知らしめるチャンスだ。
これはちょっとしたクリスマスプレゼントだな。
(作動音)そろそろお茶漬けにしますか?そうですねぇ。
あっわさびは多めに。
わかってます。
(爆発音)
(一同)おっ?
(一同)おお?
(内村)停電か?
(中園)すぐに自家発電に切り替わるはずですが。
おや?クリスマスイブに停電ですか?
(たまき)イルミネーションで電気使いすぎちゃったんでしょうか?ちょっと待ってくださいね。
イテッ!おお…ついた。
外はまだ停電のままです。
えっ?
(たまき)こっそり買っていたのが役に立ちました。
これお1人で食べるつもりだったんですか?…にしては大きくありませんか?
(中園)ジャッカロープは地球温暖化阻止を提唱する環境保護団体。
CO2削減のためには直接行動も辞さずとうたっている。
前回発生した羽田空港爆破事件の時の犯行声明文では旅客機など大量のCO2を排出する空港は環境破壊のシンボルであると主張。
そして昨日発生した停電事件においても同様の犯行声明文が届いた。
警視庁宛に届けられた声明文の内容です。
「契約の虹を失った時代へ告ぐ」「京都議定書が発行されたにも関わらず日本のCO2排出量は削減どころか増加している」「意識の変革が為されるまで我々は直接行動を繰り返す」
(内村)もういい!後は各自手元の資料を見ろ。
羽田空港爆破グループジャッカロープの手掛かりは未だつかめておらん。
昨日も偽の情報に踊らされている間にさらなる犯行を許してしまった。
もうこれ以上の失態は許されん。
いいか?何があっても年が明けるまでには解決しろ。
わかったか?
(一同)はい!
(角田六郎)いやぁしかし昨日は驚いたね。
(角田)いきなり真っ暗になっちゃうんだもん。
港区と千代田区の全域が停電したようですね。
ああ。
完全に復旧するまで4時間かかったそうだ。
それだけじゃないぞ。
暗闇に便乗した空き巣が7件コンビニ強盗が3件だってよ。
中には盗んだ品物を袋に詰めて担いでるところを逮捕された奴もいたんだと。
とんだサンタクロースがいたものですね。
仕掛けたのはこの前空港でコンテナ爆破した連中だろ?犯行声明文読んだよ。
「契約の虹」ってやつ。
聖書の『創世記』にある「ノアの方舟」の中の言葉だそうだ。
大洪水によって人類を滅ぼした神がもう二度と人類を滅ぼすようなことはないと約束する証しに空に架けた虹のことだったと記憶しています。
さすが物知り警部殿。
しかしまあこんな言葉を使うなんて最近のテロリストは文学的なんだね。
まあ何にせよエコのためだからってさ…テロまでやるかね?環境問題を口実に破壊活動を行う団体をエコテロリスト。
アメリカなどではFBIも目を光らせているようですね。
(瀬田宗明)お久しぶりです。
(小野田公顕)おっしゃってくださればこちらから出向きましたものを…大臣。
折り入ってご相談したいことがあります。
はい。
(米沢守)こちらが厳重な空港で爆破を成功させ今度は都市機能を麻痺させる停電を起こした大胆な連中ですなぁ。
停電事件もやはり爆弾を使われた犯行でした。
(米沢)停電の原因は地下坑道の送電ケーブルの断線です。
港区の東芝浦にあるマンホールから何者かが侵入して時限爆弾を使って送電ケーブルを切断したものと思われます。
(爆発音)マンホールの蓋は普通J型フックと呼ばれる特殊な工具じゃないと開かないようになってるんですがちょっと待ってください。
インターネットの個人売買では普通考えられないような物まで出回っているようでして…。
まるで闇市ですね。
で爆弾の種類は?恐らくANFO…「ANFO」と呼ばれるものではないかと。
確か空港事件の時はスラリー爆弾でした。
はい。
形状は違えど主成分は同じ硝酸化合物です。
CO2を連想する施設を攻撃するという目的も一致してますし恐らく同一犯でしょうな。
うん…。
で気になることがあるとおっしゃってましたが。
ああ…ちょっと妙なことがありまして。
妙なこと?実はですねマンホールの爆破現場に落ちていた証拠品の1つが警察庁によって持っていかれてしまいました。
警察庁に持っていかれた?妙ですね。
ええとこれなんですけども。
腕時計ですか?はい。
地下坑道に下りるはしごの途中に壁から鉄芯が飛び出た部分があるんですがその先端を調べたところこのベルトと同じ物質が検出されました。
恐らくそこに時計を引っ掛けてしまってこのベルトが切れたものだと思われます。
うん…。
(携帯電話の振動音)失礼。
(携帯電話の振動音)杉下です。
僕だけど。
暇?はい?暇だよね?ちょっと話できない?今すぐ。
わかりました。
ここ座ってて。
これ知ってる?エコバッグっていうんだって。
娘夫婦がくれたんだけど結構するみたい。
「エコ」って付ければ布袋が売れるっていうんだからエコロジーってエコノミーだよね。
そのような四方山話をなさるためにわざわざお呼びになったのでしょうか?相変わらず気が短いね。
じゃあ本題。
瀬田和哉君。
瀬田法務大臣のご子息。
それが何か?クリスマスのちょっと前に休暇を取ってどこか行っちゃったっきり連絡取れないんだって。
大臣随分ご心配なさっていてね。
捜してくれない?隠密裏に。
民間登用組の瀬田大臣からの要請をなぜ官房長がお受けになったのでしょう?昔ねある冤罪事件でお会いして。
でもその時あの方は弁護士だったから敵味方なんだけどねでもねあの人素敵じゃない。
それから仲良くしてもらってるの。
多くの国家賠償裁判や冤罪事件を担当されていたそうですね。
一方で法学者として大学の名誉教授も兼任されていたとか。
なかなかの人物ですよ。
例の不法投棄裁判知ってるでしょ?ええ。
長年にわたる産廃業者の不法投棄によって健康被害を受けた方々がその状態を放置していた国に対して一審で勝訴した裁判でしたね。
確か上告するという国の決定に対して瀬田大臣は異議を唱えていると聞きましたが。
そう。
上告すれば時間かかっちゃうじゃない?その間被害者の負担が増えるでしょ?国の体面より被害に遭った方への償いを政府は考えなければならないって。
なるほど。
ではもう1つ。
なぜ隠密なのでしょう?鈍いねぇ。
今話題の法務大臣の息子が家出したって人聞き悪いじゃない。
しかしそれならば他にいくらでも適任がいると思いますが。
昨日の停電。
地下ケーブルが切られた場所に腕時計が落ちていたの。
それがこれ。
あっ知ってた?なら話は早い。
実はこれ和哉君が持ってた腕時計と同じ物でねお父さんからの贈り物で相当手に入りにくいものなんだって。
証拠品を持っていかせたのはやはり官房長でしたか。
これがどれほど珍しいものかはわかりませんが腕時計が同じというだけでテロ事件にかかわっていたとおっしゃるのですか?それが和哉君自身も熱心な環境活動家でね。
まずいことに学生時代ジャッカロープのメンバーと面識があったみたいなのよ。
ひょっとしたら誘われちゃったのかもしれない。
(ノック)どうぞ。
失礼します。
(姉川聖子)失礼します。
大臣の指示でまいりました。
お待ちしてました。
こちら法務省官房長補佐官の姉川聖子さん。
姉川です。
今回はお世話になります。
はい?キャリア入省して8年目の若手。
でもとても優秀らしくてね。
何より大臣の信任を得ておられる。
警視庁特命係の杉下右京さんですよね?大臣の置かれている状況は大変微妙です。
時間がない中で事実を突き止めなければなりません。
まだお受けしたわけではありませんが。
うん?1人より2人のほうがいいんじゃない?人捜しだもん。
ご協力お願いします。
(ため息)あっ警視庁には彼女法務省からの人材交流ってことで話通してあるからよろしく。
(ため息)瀬田和哉さん32歳。
帝都大学地球環境学研究科の准教授として勤務。
帝都大学を卒業後アメリカのノースカリフォルニア大学に入学。
そこで早くから環境問題に取り組んでいました。
その後開設されたばかりの地球環境学研究科に移り研究者に。
今回もその研究のためのフィールドワークに出ると言って休暇を取ったそうなんです。
ところで瀬田大臣は今回の事件とご子息とのかかわりをどうやって知ったのでしょう?停電事件で危機管理センターが設置され各省庁連携して原因究明が行われました。
瀬田大臣も参加したんですがその資料の中に写真がありました。
それが和哉さんの物と思しき腕時計だった。
小野田さんに瀬田和哉さんがその腕時計を持っているという情報は止めてもらっています。
珍しい腕時計だからといって所有者全員が判明するまでに時間がかかります。
その間に和哉さんがテロメンバーかどうか見極めたいというわけですね?いえテロリストではないということを証明しなくてはなりません。
(ノック)はい。
(磯部事務次官)失礼します。
例の不法投棄裁判の件で国交大臣がぜひ話したいとのことです。
わかりました。
国交省は相当強硬ですよ。
まだ大臣として経験も少ない今やるべきことでしょうか?弱い立場にある人達を守ってこそ法です。
時期は問題ではありません。
しかしお立場もお考えください。
あなたは我々法務省のトップでもあるんですよ。
私は大臣になったからといって考えを変えるつもりはありません。
ご迷惑をおかけします。
いえそういうつもりでは…。
(物音)12月21日以降留守にされているようですね。
今日は28日ですね。
21日からの8日間行方がわからないことになりますね。
そういうことになりますね。
あっスーツケースがあります。
フィールドワークに行く準備をしてたんですね。
おや…データが消されているようですね。
えっ?パソコンのデータも消えてる。
まるで自分の消息を消してるみたいですね。
大学へ行けば何かわかるかもしれません。
行きましょう。
はい。
官房長補佐官のお仕事は長いのですか?いえ入省以来訟務部におりました。
訟務…国家賠償など国の利害に関係のある争訟について国の立場から裁判を行う部署ですね。
よくご存じですね。
では捜査経験はないわけですね?ええ。
裁判には慣れているんですが。
そのような方がなぜこの仕事を受けられたのでしょう?はい?何か特別な事情があるのかと思いましてね。
瀬田大臣は民間から入られた方で省内に信頼する人間がおりません。
ですから私が志願しました。
なるほど。
ここが…?ええ停電事件の犯行現場です。
ひと通り資料には目を通していますが実際にこの目で見たかったものですからね。
これが犯人の侵入経路になったマンホールですね。
ええ。
犯人はここに盗難車を止めそれを目隠しにしてJ型フックでマンホールの蓋を開け中に忍び込みました。
そしてマンホールの蓋も開けたままここを逃げ去ったそうです。
だからわかったんですね。
確か電線管理用のトンネルに入るマンホールは都内だけで1万1千個ありますもんね。
よくお調べになってますね。
それだけの数のマンホールです。
中に入り込んでしまえば監視の目は届きません。
悪意を持っている人間にとって東京のライフラインというのは意外にも脆弱なものなんですよ。
簡単にテロリストの真似事ができてしまうんですね。
その可能性はありますね。
では中へ入りましょう。
えっ?すみません。
中へ入ります。
はいどうぞ。
大丈夫ですか?頑張ります。
バッグをお持ちしましょう。
助かります。
恐れ入ります。
あっすいません。
腕時計はちょうどこのあたりに落ちていました。
捜査資料によると…この鉄芯に引っ掛けてベルトを切ったようですね。
この鉄芯から腕時計の革ベルトと同じ物質が検出されています。
暗闇で腕時計を捜すのをあきらめたんでしょうね。
人が来る前に現場を立ち去らないといけなかったでしょうから。
爆弾が仕掛けられたのはこの先の下ですね。
こっちですね。
はい。
2系統の主線ケーブルが破壊されています。
これが主線ケーブルでこの下が主線が切れた時のバックアップ用ですね。
ええ。
爆弾の種類はアンフォ。
アンフォ?つまり肥料爆弾です。
科学的知識が多少あれば比較的簡単に作れる爆弾です。
では和哉さんの大学へ行きましょうか。
はい。
和哉さんは留学時代のアメリカの大学でジャッカロープのメンバーと面識があったそうですね。
アメリカのノースカリフォルニア大学時代のことです。
同じ学科に樋口秀和という男がいました。
彼は現在ジャッカロープのメンバーとして確認されています。
それを知っていた大臣が和哉さんの事件への関与を心配されたわけですね?ちょっと違うんです。
ここだけの話にしてもらえますか?はい?和哉さんと大臣は十数年絶縁状態だそうです。
爆破現場にあった腕時計は唯一親子のつながりが見える品物なのにそれが疑惑の元になるなんて何だか切ないですよね。
ごめんなさい。
余計なことでした。
(ノック)失礼します。
瀬田先生はいらっしゃいますか?
(根津秀雄)瀬田先生は休暇中ですが。
フィールドワークに出かけられたと聞いているんですが行き先ご存じでしょうか?あれは個人の活動なものでそこまでは…。
失礼ですがどういうご用件でしょうか?申し遅れました杉下と申します。
姉川です。
実はご家族から予定日を過ぎても連絡が取れないと相談がありまして。
旅先で事故に遭われた可能性もありますので。
心配ないと思いますよ。
フィールドワークなんて連絡取れないのはしょっちゅうですから。
でも念のために研究室を拝見させていただけないでしょうか。
私達も調べないわけにはいきませんので。
わかりました。
…って僕鍵出せないんですよ。
非常勤講師なもんですから。
竹中君鍵もらってきて。
(竹中)わかりました。
瀬田さんはどういった研究をされていたのでしょう?「大気海洋結合モデルによる水位上昇値予測」…。
要するに温暖化で氷河が溶けてその増えた水で陸がどれだけ沈むかってやつですよ。
個人的には准教授にふさわしい研究かなって思いますけどね。
やはりお父さんの力があるんでしょう。
今や大臣ですもんね。
お父さんが有名になるにしたがって瀬田君も大出世ですよ。
(根津)こちらです。
大学もお休みなんですか?いえ突然休むと言い出して。
(根津)年末休暇ですか?
(瀬田和哉)あっいえ。
環境活動をやっている仲間から誘われましてね。
おもしろそうな題材なんですよ。
新しい研究テーマにもなるかもしれない。
(根津)仲間ってどこの?あっいや…根津さんはご存じないかと思いますよ。
仲間ですか…。
ええ。
そうですか。
瀬田准教授宛に窒素肥料ですか?研究で使うんですよ。
どうかしたんですか?いえ…。
(ノック)
(野上昶)こんにちは。
あっ野上さん。
(野上)瀬田先生は?今休暇中なんですよ。
(野上)ああそうですか。
書いてもらった原稿ね記事にしたんで届けに来たんですけど…。
じゃあ机の上に置かせてもらいます。
あっ…。
どちらさん?刑事さんだそうです。
刑事さん?何かあったんですか?瀬田先生と連絡が取れないそうなんですよ。
心配ないと言ってるんですけどね。
ああ…。
僕野上と申します。
フリーライターをやっていまして今はこの雑誌の編集を。
和哉さんがこの雑誌に書かれてるんですか?ええ。
ご覧になりますか?なかなかおもしろいですよ。
これです。
よろしいですか?ああどうぞ。
「温暖化で氷河が溶け始めいくつかの島国が水没の危機に瀕している」「歯止めをかけるにはなんらかの直接行動が必要だ」直接行動って…?ふふ…まあ身近な環境活動ってことだと思いますけどちょっとドキッとしますよね。
でも最近どうしたのかっていうぐらい急進的な言葉が多くなってきて大臣の息子さんなんだから立場考えないとなんて茶化したら本気で怒られちゃいました。
はははは…。
瀬田さんが最後にこちらにいらっしゃった日何かお気づきになったことはありませんか?いえ特に。
あっプレゼンだって言ってましたね。
菱河コーポレーションに行くって。
菱河コーポレーション?確か石油化学製品の製造を行っている会社でしたね。
石油化学製品ってプラスチックとかナイロンとかですか?そうですよ。
環境学の先生が何をしに?菱河コーポレーションって今環境活動に対して助成金を出すプロジェクトをやっているんですよ。
自分のところでCO2を出す罪滅ぼしみたいなもんですね。
まあ今風で言えばカーボンオフセット。
そうですか。
瀬田さんはそのプロジェクトに応募してらっしゃった。
瀬田先生最近CO2を減らすための里山再生っていうのに力を入れてましたからね。
たぶんその提案に行かれたんじゃないのかな?そういえばあちこちの助成プロジェクトに応募してましたよ。
ご案内いたします。
今度は何です?いえ行きましょう。
(山本平蔵)社長の山本です。
こっちは環境事業推進部長の…。
(遠藤室人)遠藤です。
警視庁特命係の杉下と申します。
姉川です。
お忙しいところ恐縮です。
(遠藤)どうぞ。
(山本)で私どもにお話とは?先日この方がこちらに来たと思うんですが。
(山本)あああの大学の先生。
菱河サポートファンドにご応募いただきまして。
その際何か変わったことはありませんでしたか?
(遠藤)さあこれといって特に…。
参加者が大勢いましたし個人的な話を聞くというわけではなかったので。
そうですか。
この方が何か?いえありがとうございます。
ところで先ほど廊下で警察らしき人間とすれ違いましたが。
ああ不法侵入の件で通報しまして。
不法侵入?どのような事件でしょうか?停電の時に誰かが侵入してあちこち物色した形跡がありまして。
つまりあの停電でセキュリティーが解除されてしまったわけですね?盗まれたものはないんですけどもただここにはデータがあります。
重要なデータがコピーされて持ち出された可能性があるんです。
(山本)新聞で見たんですがあの停電テロリストの仕業じゃないんでしょうか?私ども空港事件では被害に遭っていますし…。
空港事件でも被害に?とは言っても3つやられたうちの1つがうちのコンテナだったっていう話なんですが…。
中に入っていたのがたまたま環境省から助成を受けて進めていたバイオマスガス化装置の試作品だったということもありまして。
それは災難でしたね。
…となると助成金は返還しなければならないわけですか?いえ。
幸いテロ天災などの不可抗力による場合は免除という特約がありまして今回は不問に付すということになりました。
しかしおかしいですよね?2度続けてですよ。
ひょっとしてジャッカロープの標的はうちじゃないんですか?とうとうジャッカロープまで出てきましたね。
調べれば調べるほど最悪な状況に近づいている気がします。
今さらですが1つ質問してもよろしいでしょうか?何でしょうか?今我々が調べていることはいずれにしても警察が調べることです。
警察と法務省との関係からすれば情報は迅速かつ秘密裏に伝わるはずです。
特に我々が隠密で調べる必要があるとは思えないのですがね。
不法投棄裁判はご存じですか?ええ。
被害者の方々が国を相手取って訴訟を起こしいったんは勝訴しましたが負けた国側は上告を考えている。
しかし瀬田大臣は上告をやめるように指示なさっているとか。
あの裁判は省内でも大変な波紋を呼んでいます。
省全体でつぶそうとしている。
こんな時に息子さんがテロ事件にかかわっているかもしれないなんてことになれば大臣更迭はもちろん上告中止自体も葬り去られてしまう。
大臣はそのことだけは避けたいとお考えなんです。
なるほど。
(携帯電話の振動音)失礼。
(携帯電話の振動音)杉下です。
ジャッカロープのアジトが判明しました。
これから強制捜査が行われますので我々も待機してます。
どうもありがとう。
どうしたんですか?ジャッカロープのアジトが判明しました。
(ノック)
(三浦)開けてください!
(芹沢)おい!開けろほら!
(山岸)パソコン!パソコン隠せ!早く!
(樋口秀和)クソー!警察だ!
(争う声)おらー!てめえ!ふざけるなこら!
(芹沢)あっ?
(伊丹)えっ?ああー!取れ取れ取れ!
(樋口)ざまあみろ。
(三浦)水切れ水切れ。
手離せ!おい車回せ車!もたもたするなほら!
(伊丹)お前はこれに乗れほら!
(物を踏む音)
(米沢)あっ!ああダメダメダメ!あっ…失礼しました。
ご連絡ありがとうございました。
こちら法務省の姉川さんです。
人事交流で来てます。
お邪魔にならないようにしますね。
こちらこそ失礼しました。
現場を守るのが我々の仕事なものですから。
つい声を荒げてしまいました。
いいえ私の不注意です。
すみません。
ところで何か見つかりましたか?
(米沢)1つ大きなものが。
爆弾の起爆装置が発見されました。
これから鑑定に回すところですが空港爆破に使用されたのとほぼ同一なものだと思われます。
つまりジャッカロープの犯行だった。
はい。
そして今この部屋の指紋をとっています。
逮捕者のものと比べれば恐らくこの部屋に出入りしていたメンバーかどうかはわかると思います。
なるほど。
パソコンは?実は彼らが風呂の水の中にぶちこんでしまいまして。
データは?ハードディスクは水でいかれてしまいました。
そうですか。
米沢さんこれもお願いします。
ああ指紋ですか?いえよく見ると表面に凹凸が残っています。
恐らく何かメモを取った際に下敷きにしていたのでしょう。
ああ…なるほど。
承りました。
さっさと吐け!!コンテナやったのお前らだろう!停電事件はどうなんだよ?ええ!?声明文まで出しておいてだんまりか?全員大学関係者だそうです。
所属大学はそれぞれバラバラだそうですが。
6名全員示し合わせたように完全黙秘…。
しかし逮捕者の中に和哉さんはいませんでした。
まだはっきりしませんか?でもきっと大丈夫です。
「わかりましたらすぐにご連絡いたします」姉川さん。
何でしょうか?事実だけを教えてください。
はい?私はどんな事実でも受け止めるつもりです。
わかりました。
よろしくお願いします。
(米沢)指紋鑑定の結果が出ました。
結論から言いますとあと1人いますね。
あと1人?はい。
指紋からわかったわけじゃないんですが…。
…とおっしゃいますと?手袋をした人間がいたようなんです。
えっ?どうしてわかったんですか?これ手袋紋といいまして手袋をしていても物に触ると付く紋があるんです。
使うと皮脂など移りますからね。
それでもう1人の人物がいると?いやそれからもう1つ。
ジャッカロープの資金が入った口座があったんですが全額引き出されていました。
引き出されたのは捕り物があった最中ですから逮捕者の中の誰かということはありえません。
口座を自由にできるということはすなわち…。
ええ実質的なリーダーといっても差し支えないでしょうね。
最後の1人がリーダー。
あっここを見てください。
ここ。
ここ。
ここ。
他はすべて振り込みなのにこの3か所だけ現金で預け入れがされています。
150万。
現金で受け取った寄付金じゃないですか?それからジャッカロープの口座から引き出す際にATMの防犯カメラに映っていた男なんですが…。
これだと特定は難しそうですね。
雑誌に残っていた凹凸の分析は進んでいますか?はいこちらへ。
これらの文字を角度によって分解してみました。
「500万」「地球環境科学」「エコ」これは読めますね。
ですがこれは何でしょう?「北新宿WE1900OABクモ720」暗号みたいですね。
確かに…。
捜査本部にも報告しておきます。
「北新宿WE1900OABクモ720」…。
(芹沢)連中吐く気配まったくありませんね。
(三浦)しかしよりによってリーダーだけ逃がしちまうとはな。
恐らくメモ書きでしょうねぇ。
誰かからのメールを書き留めたのだと思いますよ。
おい何だあの女。
新しい相棒?亀の後釜?
(2人)ええっ?
(芹沢)ああ〜あの人なら法務省から来たみたいですよ。
えっ?法務省?ええ。
人事交流だそうです。
(三浦)何でまた特命なんかに…。
大臣にはどのように報告なさっているのですか?大臣にはすべてを伝えてはいません。
なぜでしょう?この不利な状況では大臣は辞任を決断されてしまうかもしれません。
進退をお決めになるのは大臣ご自身です。
今辞任されたらあの裁判が…。
ひょっとしてあなたも不法投棄裁判にかかわってらっしゃった?はい。
地裁での裁判を担当していました。
でもやりきることができませんでした。
どうしても被害にあった原告達と戦うことができなくて。
そうですか。
しかし大臣への報告はありのままにすべきだと思いますが。
あと1人のメンバーを確かめた後でします。
おい暇か?あっ?あんた誰?法務省から人事交流の姉川さんです。
はじめまして。
ああ!女だったのかい。
ええ?あんた何かやらかしたのか?はっ?杉下右京は人材の墓場。
一緒に組んだ奴は次々と辞めていくんだよ。
あんたも何か上司に恨みでも買ったのかい?えっ?まあただ今が辞め時かもな。
大変そうだもんな法務省。
(角田)現役大臣の息子がテロリストだもんな。
しかしまあ大臣もどこで育て方間違えたのかねぇ。
そんな…。
(記者)真相はどうなんです?
(内閣官房長官)現在調査中です。
もし記事に書かれたことが事実だとしたら首相の任命責任はどうなるんですか?あなたまだ決まったわけじゃないんですよ。
明日首相が会見しますから。
(電話)「もしもし姉川です」先ほど総理と相談しました。
辞任するつもりです。
私のせいで…。
あなたが責任を感じることではありません。
あなたは自らこの仕事に手を挙げてくれた。
その気持ちだけで十分です。
何たる失態だ!瀬田和哉ですが停電事件前から行方不明になっています。
さらに学生時代ジャッカロープのメンバーと接点があることが判明しました。
警察がマスコミの後塵を拝するとはな。
瀬田和哉を一連のテロ事件の最重要参考人として自宅及び研究室の強制捜査を行います。
(内村)急がせろ。
そうですか。
辞任を決意されましたか。
私本当は法務省を辞めるつもりでした。
そんな時瀬田さんが大臣に就任した。
(磯部)不法投棄裁判上告はしないとおっしゃるんですか?反発は大きいと思いますがご協力お願いします。
(姉川の声)自分のできなかったことを瀬田さんが実現してくれると思ってしまった。
だからこの調査に名乗りを上げた。
和哉さんの無実を証明してこのまま瀬田さんに大臣でいてほしかったんですね?無理だったんです。
私が大臣を守るなんて。
短い間でしたがお世話になりました。
まだ真相は明らかになっていませんよ。
しかしもうあきらめるというのであればどうぞお引き取りください。
後は僕1人で調べます。
あっお引き取りいただく前に1つ質問をしてもよろしいでしょうか?何でしょうか?和哉さんの利き腕をご存じですか?利き腕ですか?和哉さんの研究室にあったマウスはキーボードの左側に置かれていました。
ちなみに僕は右利きですからこのカップの耳を手前にすると左側が飲み口に当たります。
しかし和哉さんの研究室にあったコーヒーカップは右側に飲み跡が残っていました。
でも左利きだったとしたら何だっていうんですか?妙だとは思いませんか?左利きの人間は右腕に時計を巻くんです。
…ああ!ええ。
はしごの左側にあった鉄芯でベルトを切るなど僕には到底納得がいかないんですよ。
でも鉄芯の先端からは革ベルトと同じ物質が出たんですよね?例えば何者かが地下に爆弾を仕掛けた後和哉さんの腕時計をわざと鉄芯で切り下に落としておいた。
そして腕時計を発見されやすくするために車は放置したままマンホールの蓋も開けたまま逃走した。
(爆発音)誰かが和哉さんを爆弾テロリストに仕立て上げようとしてるってことですか?おっしゃるとおり。
でもどうやって和哉さんの腕時計を手に入れたんです?例えば和哉さんがフィールドワークへ出かけようとしているところを何らかの方法で荷物を奪ったと考えればつじつまは合います。
でもスーツケースは部屋に置いてありましたよ。
恐らく何者かがこの筋書きを作るためにスーツケースを持って外出していた和哉さんを襲い奪った荷物を和哉さんの部屋に運び込み和哉さんはフィールドワークなどへは出かけずテロ活動を行っていたように見せかけた。
何より僕が気になるのは至るところに和哉さんが怪しく見えるような作為に満ちた証拠が置いてあったということなんですよ。
もしも和哉さんが本当にテロリストならばもっと周到に偽装するとは思いませんか?でもどうして今までそういうことを言ってくれなかったんですか?これまではあらゆる可能性の1つに過ぎなかったからです。
しかしこの記事を読んで確信に至りました。
この情報を流したのはどなたでしょう?この事実を知っていたのは瀬田大臣と小野田官房長そしてあなたと僕だけです。
もし杉下さんの言うとおりだとして一体誰が和哉さんを陥れようとしてるんです?順当に考えれば瀬田大臣に恨みを持つ人間。
弁護士という職業柄恨まれている可能性がある人間を数えればきりがないんじゃ…。
なるほど。
では現段階で最も可能性があるのはジャッカロープのリーダーということになりますね。
リーダーを捜しましょう。
先輩!ちょっと見てもらえますか?フォルダの中にこんなものが保存されてました。
(伊丹)空港に電気…さすが研究者だな。
こっちもせっせと研究してたってわけか。
(芹沢)まだありますよ。
これです。
鉄道?鉄道はまだやられてないはずだぞ。
おいこの下にあるの何だ?
(芹沢)これですか?「日本国内の鉄道使用の頻度は世界でもトップクラスの頻度である」「この電車を仮に5時間運行停止にした場合削減される電力量はとてつもない量になるであろう」「今回の運行停止によって削減されたCO2は2t」「契約の虹はもはや見え」…。
おい…これじゃまるっきり犯行声明文じゃねえかよ!
(中園)瀬田和哉の部屋から発見された各資料及び犯行声明文から考えて次回のテロは鉄道であると考えられる。
(内村)今度は絶対に阻止しなければならん。
何としても奴らの計画をつかみ先回りするんだ。
(一同)はい!
(内村)何だね大河内監察官。
(大河内春樹)部外者の私がでしゃばるのは恐縮ですがテロリストのアジトから見つかったメモ書きに計画をつかむ手掛かりがあるかと。
(内村)よかろう。
説明したまえ。
まず「北新宿」ですがこれは言うまでもなく駅名を表しています。
次に「クモ720」に注目しました。
これはいわゆる列車記号と呼ばれるものです。
(中園)この「OAB」というのは何だね?その点につきましてはまだ推論の域を出ませんが例えば「O」はオペレーション「A」はアタック「B」はボムと読めばどうでしょうか?
(中園)つまり北新宿駅を発車する列車クモ720を爆弾によって攻撃する計画か!
(内村)テロの対象はわかった。
しかしいつ行われるんだ?その答えはこの「WE1900」にあります。
「WE」はウエンズデーつまり水曜。
「1900」は「19時00分」。
北新宿駅の時刻表を調べたところまさに水曜日19時に到着するクモ720が存在しました。
(中園)水曜日といえば12月31日。
(内村)何!?今日ではないか!
(ざわめき)まさか今度は駅がテロに狙われるんですか?鉄道は他の輸送機関と比べCO2排出の少ないエコな乗り物です。
もちろんまったくCO2を排出していないわけではありませんから可能性としては排除できませんがね。
じゃあ何しにここへ?この「WE」というのはあれのことではないかと思いましてね。
あれ?「北新宿駅西口WestExit」確かにそうとも考えられますけど…。
ジャッカロープのアジトでいくつか時刻のメモ書きを見かけましたがどれ1つとして24時表記のものはありませんでした。
普段12時表記で書く人間がこのメモに限って24時表記で書くなどということがあるでしょうか?つまりこの数字は時刻ではないと考えるほうが自然です。
時刻じゃないとしたら何なんですか?ジャッカロープの口座に150万の現金預け入れが数回にわたってありました。
なぜあれだけが振り込みではなく現金だったのでしょう?振込元の人間が記録を残したくなかったから?そう!例えば後ろめたい仕事の報酬だったかもしれません。
さらに依頼人としてはジャッカロープのリーダーに会って直接手渡すことがはばかられたのではないでしょうかねぇ。
それが?そのような人物がリーダーと接触するにはどのような手段が考えられるでしょう?うーん…。
「北新宿駅西口WestExit」4桁の数字「1900」。
んっ?考えてましたらねアジトにあったあるものを思い出しました。
あるもの?100円玉です。
100円玉?コインロッカーですか?あっ…。
あっ!ありましたよ1900。
ありました?何もありませんけど。
「北新宿駅西口WestExit」「1900」うん…。
蝋でしょうかね?蝋燭の蝋ですか?いえいえ単なる蝋ではありません。
よく見てください。
これは封蝋ですね。
封蝋?日本ではあまり見られませんが英語ではシーリングワックス。
封筒の蓋に溶かした蝋を垂らしてスタンプで押し込んで封をするためのものですね。
じゃあ連絡の手段は手紙ですか?いえいえ単なる手紙ならば電話やメールで済みますからね。
この封蝋今や実用品ではありません。
そう…いわば格調を演出するためのものですね。
格調を演出するためのもの?ええ。
この時期ですからねパーティーの招待状というのはどうでしょう?リーダーと依頼人がそのパーティーの参加者に紛れ込んで会うことになっているとしたら…。
この時期ですよ。
いくつパーティーが開かれているかわかりませんし封蝋の欠片だけで探せるんですか?不可能でしょうねぇ。
ふふっ。
やはりこの残りのメモの謎を解くしかないようですね。
しかしなぜこんなところに封蝋が…。
「北新宿西口WestExit」「1900」封蝋…。
第1班は駅構内の乗客を避難させろ。
(第1班一同)はい!第2班爆発物の捜索。
(第2班一同)はい!第3班は不審者の捜索に当たれ。
(第3班一同)はい!
(電話)はい。
「小野田です」捜査本部は今日北新宿駅でテロが行われると見ています。
犯人は和哉ですか?重要参考人であることは間違いありません。
今回テロという事件の性質上…。
「発砲許可も下りることになると思いますが」ですが実際にはそういう事態にはさせませんのでご安心ください。
相手がテロリストである限りそれが誰の息子であるかは問題にすべきじゃないでしょう。
お気遣いありがとうございます。
OAB…「O」オフェンス…。
オーガニゼーション…。
どちらへ?私パーティー会場を当たってみます。
今はこちらに集中したほうがいいと思いますが。
私杉下さんのように推理なんてできません。
なら封蝋の付いた招待状を探して東京中のパーティー会場を当たれば見つかるかもしれないじゃないですか。
東京ではなかったらどうするんですか?ましてや日本ではないかもしれません。
私待ってられません。
行きます。
何かわかったら連絡ください。
オキペーション…。
オブジェクト…。
(警笛)
(捜査員)はい急いで急いで…!おい上下しっかり見ろよ!
(一同)はい!ちゃんと見ろ!
(一同)はい!
(捜査員)急いでください。
落ち着いて。
今のところ北新宿駅構内では爆発物不審者とも発見されておりません。
いくつか前の駅から乗客に紛れて爆弾を持ち込むつもりじゃないでしょうか?警視総監に連絡しろ。
ボム…。
警部殿。
バイオ…。
えっ?バイオ…。
俺もう帰るよ。
バース…。
よいお年をな。
バース!えっ?バース…。
バース…バース…。
(フロント係)招待状をですか?お願いします。
こちらですが何か?いえ…ありがとうございました。
(携帯電話)もしもし?今どちらでしょうか?横浜のコンチネンタルホテルです。
電力関係のパーティーがあったので。
でもここもダメでした。
そうですか。
それは好都合です。
えっ?メモ書きの謎が解けました。
ホントですか!?「OAB」の「B」はバース。
つまり「O」という頭文字の付く埠頭のAバースという意味です。
そこにテロリーダーが来るんですか?恐らく。
ですが問題は「O」です。
「O」の頭文字の付く埠頭は2つあります。
2つ?1つは東京港お台場ライナー埠頭。
もう1つは横浜港大さん橋埠頭です。
調べたところ大さん橋埠頭に午後6時出港のロイヤルウイングというクルーズ船があります。
そちらへ行って招待状を見てきていただけますか?わかりました。
ちょっとちょっと…!おい全員降ろしたらすぐに車内捜索するぞ。
(警笛)わあきれいだね〜。
あっすいません。
ちょっと招待状見せてもらってもいいですか?はい。
すいません。
ありがとうございました。
杉下さんビンゴです。
ちょうど今電話しようと思っていたところです。
そのパーティーの主催は菱河コーポレーションです。
必ず関係者が来ます。
姉川さんは危険ですから戻ってください。
なぜですか?私も船に乗ります。
姉川さんいいですか?テロリストの乗る可能性のある船ですよ。
捜査員ではないあなたを危険にさらすわけにはいきません。
杉下さんが間に合わなかった場合私だって役立てることがあるかもしれません。
「姉川さん」私乗ります。
(船内アナウンス)「本日はロイヤルウイングにご乗船いただきまして誠にありがとうございます」「お客様にお願い申し上げます」あっあの…確か『エコミミ』の…。
ああ刑事さん。
瀬田先生のことびっくりしましたよ。
ええ…。
瀬田先生最近ちょっと変でしたからねぇ。
よくエコフェローズ通ったものだと思ってたんですよ。
ああ環境省の助成金の1つです。
環境省も大変だろうなぁ。
助成金出すこと決まった人間がああなっちゃって。
ところでどうしてこちらに?このパーティーの取材です。
環境省の人間も来るんでね。
パーティー?ええ。
菱河コーポレーション主催のチャリティーエコパーティーです。
環境関係の有名人が集まるんですよ。
それで来られたんじゃないんですか?えっええ…。
はははっ。
じゃあお先に。
(演奏)いらっしゃいませ。
こちらにご記入をローマ字でお願いいたします。
いらっしゃいませ。
(係員)どうぞごゆっくり。
(係員)こちらにローマ字でご記入をお願いいたします。
ごゆっくりどうぞ。
いらっしゃいませ。
あのお客様招待状はお持ちでしょうか?いいえないんですが…。
申し訳ございませんが招待状をお持ちでない方はお乗せできない決まりになっておりまして。
(山本)ごめんなさい。
あなた瀬田君のことを聞きに来た警察の方?
(遠藤)ここで何なさってるんですか?社長こちらの方招待状をお持ちでないようでして。
私警察の人間ではないんです。
瀬田さんと同じ大学で研究していてこのパーティーに興味がありまして。
ほお菱河サポートファンドに興味がおありで。
環境支援としてはかなりの大きい金額を扱ってますしまあ世間的にも評判ですから。
ええ。
環境に先進的な企業のかかわり方だと思います。
ありがとうございます。
君入れてさしあげて。
(係員)はい。
ありがとうございます。
(山本)さあどうぞ。
いや〜しかし驚きましたよ。
あの瀬田って先生までテロにかかわっていたとは。
あの先生のプランをサポートファンドに採用しなくてホッとしています。
あっもう1人の刑事さんは?いえこちらには…。
(遠藤)社長我々はそろそろ…。
ああそうだね。
この上がメーン会場になってます。
どうぞごゆっくり。
ありがとうございます。
(遠藤)失礼します。
(演奏)
(警笛)
(警笛)
(警笛)
(警笛)
(警笛)あれ?刑事さん。
どうしたんです?ええ山本社長に招待していただいて。
ああ。
なかなか立派な式ですよね。
あれ報道カメラでしょう。
菱河コーポレーションも本気ですよね。
ところで瀬田先生大変ですよね。
詳しいこと教えてほしいな。
テロなんてしそうに見えなかったのに…。
いえまだわかったわけじゃありませんから。
へえ…。
あっそろそろ始まるみたいだ。
じゃあ僕はこれで。
はい。
(遠藤)「ええ…この度はチャリティーエコパーティーにご出席くださいまして誠にありがとうございます」「皆様の参加費は経費を除きましてすべてアフリカの植林事業に使われます」「ええ…それではまず環境問題に真っ向から取り組んでおられる衆議院議員笠村由紀子先生にご挨拶をいただきます」「先生どうぞ」
(拍手)
(笠村由紀子)「ハリウッドでは多くのスターがハイブリッド車に乗り寄付をして環境への取り組みをアピールしています」杉下さん!間に合ったんですね。
あなたが横浜にいてくれたお陰で事実確認が思いの外早く済みましてね。
招待状は?どうやって乗れたんですか?僕はこれを見せて乗せてもらいました。
ところで和哉さんは見つかりましたか?見当たりません。
ただ和哉さんが乗っているのならこれだけ報道されている中で顔を見せるとは思えません。
確かに。
この大勢の中から捜すのは不可能かもしれませんね。
いえ捜す方法はあります。
何ですか?この船には環境にちなんでそれぞれの部屋に自然物の名前が付けられています。
例えば1階客室には「海」「風」2階ホールには「太陽」などです。
なるほど。
探してみたところ4階に「雲」と名付けられたダイニングルームがあることがわかりました。
それが?ああ!じゃあこの「720」っていうのは…。
このメモを書いたのは時間を24時表記ではなく12時表記で書く人物。
つまりこれは午後7時20分にダイニングルーム雲で待ち合わせということになりますね。
じゃあ早速行ってみましょう。
いえまだ開場されていませんでした。
先ほど係の方に訊いたところこの受賞セレモニーが終わるまでは乗客はすべてこのフロアに集められているそうです。
ですからそれまでは犯人もダイニングルーム雲には入れないはずです。
じゃあここで待つしかないんですね。
ええ。
さてセレモニーもいよいよ佳境のようですよ。
「環境省地球環境局課長補佐の中田一郎様からご支援をいただいております」「皆様どうぞ盛大な拍手でお迎えください」
(拍手)課長補佐さんが…?どうかしましたか?いえ法務省では課長補佐はなかなかこのような席には来れません。
省によって違うんですね。
場違いといえば笠村議員も1年生議員ですね。
環境問題を旗印に掲げているとはいえこのような大きな企業のパーティーに参加されるとはいささか不自然な気がしますね。
「革新的な廃プラスチックの再利用を提案されました天野克久様どうぞ」
(拍手)おめでとうございます。
(天野克久)ありがとうございます。
「ありがとうございます」
(伊丹)クソッ!見つからねぇなおい。
(三浦)おいもう時間ねぇぞ!
(警笛)
(内村)もう時間がないぞ!
(中園)まだ見つかってはいません。
(内村)ここまでわかっているのになぜ見つからんのだ!
(伊丹)クソッ…ダメだ時間だ!おい出るぞ!急げ!急げこの野郎!早く!
(三浦)早く早く!
(伊丹)おい!外行けほら!ああっ!!おい7時回ってるよな?はい。
(三浦)こちらクモ720外現場。
ただいま19時を回りました。
異常ありません!空振りでしょうか?駅からは何の連絡も入ってないか!?入ってません。
こっちにも入っておりません!あっ。
そろそろ行きましょうか。
はい。
ここですね。
杉下さん…。
はい?もし中に和哉さんがいたら…。
その時はその時です。
入りますよ。
はい。
あっ…。
(演奏)失礼ですがこちらにお集まりの皆様は…?
(阿藤富士夫)この度サポートファンドを獲得した天野さんの契約書を交わす会ですよ。
この会は最初からこちらの部屋で…?実は使う予定だった部屋の空調に不具合が出ました関係で急遽こちらのお部屋に変更させていただきまして…。
そうですか。
ではもともとこの部屋は…?本日は使う予定がなかったんです。
通常はカフェスペースになっております。
ありがとうございます。
和哉さんはいないようですね。
でもこの中の誰かがテロリーダー…。
その可能性はありますね。
議員と官僚は違う…。
根津さんは大学の非常勤講師だし山本さんと遠藤さんはテロの被害に遭った会社の人間。
野上さんは雑誌の編集者。
あとはもうあの受賞者くらいしか…。
(山本)「先生どうもホントに今日はありがとうございました」
(笠村)「いいえ。
まあ盛大なパーティーで…」「いえいえ…気に入っていただけましたか?」「ええ」「はははは…」「どうぞ」「あっどうも」
(山本)これは刑事さん。
やっぱり一緒にいらしてたんですね。
先ほど受賞セレモニーを拝見いたしました。
船上でのパーティーは初めてでしたがすばらしいですねぇ。
気に入っていただけましたか?実はこの船は50年前の船でしてね。
もともとは瀬戸内海で新婚旅行や何かに使われていたのをこっちへ持ってきたんですよ。
古いものも捨てずに使うこれもまたエコですね。
ははは…。
(遠藤)私も何度かあっちで見たことはあります。
乗るのは初めてなんですけどね。
随分モダンに改装されてますね〜。
ああ瀬戸内海でですか?ええ。
四国工場で工場長の経験があるんです。
彼は若い時から優秀でしてねこれから環境に力を入れていくためにも彼をこのポストに就けたわけです。
(遠藤)どうぞごゆっくりお楽しみください。
(2人)ありがとうございます。
(山本)いえ…。
あっ船長。
だけどこれだけの人間がいたんじゃ誰がジャッカロープのリーダーか特定できません。
何か絞る手はないんですか?1つあります。
えっ?これが?この「O」の字を見てください。
普通「O」の字というのはこのように上から書くことが多いと思いますがしかしこの「O」の字は下に結び目が来ています。
つまりこのように下から書き始めているんです。
私もこう書きます。
でもよくこんな細かいことに気づかれましたね。
筆跡鑑定とはこのようなものです。
じゃあ警察だって名乗ってここにいる全員に筆跡鑑定してもらいましょうよ。
いえいえ筆跡というのは自然な状態で書いてこそ書き癖が表れるものなんです。
まして相手は潜伏中のテロリスト。
警察を名乗って書き癖を素直に出してくれるとは思いません。
じゃあどうすれば…?受付を思い出してください。
受付?あっ!乗客名簿!こちらにご記入をローマ字でお願いいたします。
急ぎましょう。
はい。
ご協力をお願いします。
パーティー出席者名簿をお借りしたいのですが…。
あっはいお待ちください。
こちらになります。
こんなに!?相当時間かかりますよ。
いえ探すのはダイニングルーム雲にいた人物だけです。
そうか…。
(警笛)「O」の字の結び目が下にきているのは2人。
「HideoNezu」。
「KatsuhisaAmano」。
天野さんと根津さん…でもどちらかわからない。
戻りましょう。
はい。
ありがとうございました。
(係員)はい。
(演奏)天野さんちょっと…。
(笠村の悲鳴)
(山本)どうした?
(笠村)死んでるの。
(野上)根津さん…。
残念ながら手遅れのようですね。
根津さんが?なるほど。
ジャッカロープのメンバーは全員が大学関係者でした。
非常勤講師としていろんな大学に行っていた根津さんならばメンバーを集めることも可能です。
警視庁特命係の杉下と申します。
すぐにこの階を封鎖してください。
はい!もう1つ!犯人はこの船の中にいます。
犯人の逃走を防ぐためにしばらくの間船を止めていただけないでしょうか?はい。
この部屋を通らなければ甲板には出られないようですね。
じゃあ犯人はこの中にいた人間…。
間違いありません。
刑事さん船が港に戻ったら我々は解放してもらえるんでしょうか?社長は明日大事な取引があって上海に飛ばなければならないんです。
申し訳ありませんが先ほど神奈川県警に連絡を入れました。
皆さんにはこのままご同行願って事情聴取をお願いすることになると思います。
(中田一郎)冗談じゃない!それじゃあ殺人の容疑者じゃないですか!
(山本)取り調べって我々はどれぐらい拘束されるんですか?そんなに長くはかからないと思いますよ。
もう犯人はわかっていますから。
わかってる?これから皆さんにいくつか質問をします。
まずこのパーティーの間に外へ出られた方。
はい。
笠村さんはなぜ外へ?船酔いして外に空気を吸いに行ったんです。
他には?いらっしゃいませんね?ええ。
出てません。
ではこれまでにこの船に乗ったことのある方。
では中田さん。
あなたは環境省の課長補佐でいらっしゃる。
課長補佐の方がこのようなパーティーに参加されるのはかなり珍しいことですよね?何か特別な理由があってのことなのでしょうか?環境省からいただいた助成金の仕事の時にお世話になったので私がお呼びしました。
なるほど。
では中田さんも空港爆破事件にかかわりがあるということになりますね。
それがこの事件とどう関係あるというんです?これまでの調べで空港爆破事件の首謀者が根津さんだということはわかっています。
この中で空港爆破事件にかかわりのある方は山本さん遠藤さんそして中田さんの3名です。
さらに根津さんは駅を使ってある人物と連絡を取り合っていました。
その人物こそが根津さんを殺した犯人です。
遠藤さん。
はい。
これはあなたがお使いになっていたグラスです。
指紋が残っています。
これを駅に残っていた指紋と照合させていただいて構いませんか?待ってください。
駅のコインロッカーなんて1日何人の人間が使うと思っているんですか?おや?なぜコインロッカーだとわかったのでしょう?僕は駅とは言いましたがコインロッカーとはひと言も言ってませんよ。
いや…何となくそう思っただけですよ。
だったら私がこの部屋を出たのをあなたは見たとでも言うんですか?先ほどあなたはこの部屋を出ていないとおっしゃいました。
ええ。
覚えてませんか?悲鳴があった時です。
あなたのドアの開け方がいささか気になりましてね。
ドア?普通この手のドアを開ける時には押すか引くかしますよね。
しかし押しても引いても開きません。
このドアは横にスライドさせるタイプなんです。
戸惑いますよね。
ところが遠藤さんは迷うことなく…。
このようにドアを横にスライドさせて外に出ました。
僕には初めてドアを開けたようには見えなかったのですがね。
1度外へ出られたのではないですか?根津さんを殺害した時犯人の手には血液が付着したことが十分考えられます。
きれいに拭き取ったつもりでも検査をすれば必ず反応は出ます。
下手に隠し立てをすると罪が重くなるだけですよ。
違う!違います!これは事故なんです。
遠藤…お前!僕を売るつもりなのかと思いましたよ。
さっきの2人刑事でしょ?でもまあそんなことしたらあなたも道連れですけどね。
どうしてこの船にいるんです?どうしてって…あなたが招待してくれたからでしょ?私が招待するわけない。
そんなこと冗談でも誰かに言わないでください。
相変わらず用心深いですね。
じゃあまあそういうことにしておきますよ。
どうして停電事件なんか起こしたんですか?お陰で社長が疑って警察も来ました。
これがきっかけで空港爆破のことまで表に出たらどうするんですか?停電事件についてなんて知りませんよ。
あんなバカなこと他に誰がやるっていうんですか?新聞見たでしょ?僕らの皮を被ってる奴がいるってことですよ。
とにかく金輪際私に近づかないでください。
こっちはまだ金の話が残っているんですが。
金?約束の金ならもう払ったでしょう。
あれは手付けみたいなもんですよ。
嫌ならマスコミにでもタレコミましょうか?コンテナ爆破は不正隠しの自作自演だってね。
お前…最初からそのつもりで!
(2人の争う声)
(刺す音)
(根津)ううっ…!どうしてそんなことを!任されたプロジェクトで損失が出て穴埋めに金が必要だったんです。
環境新技術開発と称して官庁から助成金を受け取りその実何も開発などしていなかったのでしょう。
しかし開発しなくてどうやって納品を…!契約書に天災テロの場合は助成金を返還しなくてもよいとあるのですから納品時にバイオマスガス化装置とは名ばかりのガラクタを発送し輸送時にジャッカロープに襲わせればいいわけです。
そうすれば助成金はまるまる手元に残ります。
恐らくあなたは助成プロジェクトのメンバーを通して根津さんと知り合ったのでしょうね。
なぜそんなことを…!助成金免除の特約など…。
官庁の協力なしにできるものではありません。
助成金の一部を返してもらえれば十分見返りのある話です。
違う!私は金なんか受け取っていない!笠村先生に頼まれただけだ!おや?流れていたのはそちらでしたか。
私は紹介しただけです!いずれにしてもこの件については遠藤さんを通していずれ追及させていただきます。
それにしても環境問題に乗じて私腹を肥やすなどあなた方もエコテロリストと何ら変わらないじゃありませんか。
港に到着するまであなたには部屋にいてもらうことになります。
ああ…1つよろしいでしょうか?根津さんを呼んだのはあなたではないとおっしゃっていましたがそれは本当ですか?ええ私じゃありません。
今神奈川県警が港に向かっています。
わかりました。
本当にありがとうございました。
もしも遠藤さんの言っていることが本当だとしたら一体誰が根津を呼び寄せたのでしょう?でも遠藤さんが少しでも罪を軽くするために嘘をついているかもしれませんよ。
だとしたらわざわざ船の上で会う必要があるでしょうか?確かに…。
じゃあ遠藤さんじゃないとすれば誰が何のために根津を…。
そう!誰が何のために根津を…。
(捜査員)契約の虹?おいおい…この電話どこからか調べろ。
はい!もしもし?はい…はいはいはいはい…。
えっ?あああの…もしもし?もしもし!どうしたんだ?切られました。
おいおいわかったか?東京湾です!
(一同)東京湾?東京湾だ!
(内村)何で東京湾だ?
(天野)僕達の命にかかわる問題です!説明責任があるでしょう!誰かが爆弾見たっていう話もあるんですよ?
(マネジャー)落ち着いてください!今事実確認を行っておりますので…。
お客様はどうぞ前方のレストランへお願いします!どうかなさいましたか?テロリストが船に爆弾を仕掛けたって話が出回ってるんですよ。
悪質ないたずらということも考えられます!今スタッフ総出で船の中を確認させていますので…。
船長は?操舵室にいます!お客様どうぞ前方のレストランでおくつろぎください!どうぞ前方のレストランへ!どうしてですか?テロリーダーの根津はもういないんですよ?根津を呼び寄せた人物が何かを仕掛けようとしているようですね。
携帯の所有者は瀬田和哉でした。
何?瀬田和哉だと?はい。
東京湾の船に爆弾を仕掛けたと。
もしかしたら電車は船を襲うための陽動では…?何たることだ。
(阿藤)了解しました。
ああ刑事さん。
船に爆弾が仕掛けられたと乗客が混乱しているようですが…。
今海上保安庁から連絡が入りました。
警察のほうに脅迫電話が入ったそうです。
じゃあ事実なんですか?いえ…。
船内から爆弾が見つかったという知らせはまだありませんが…ただ…。
ただ?何でしょう。
脅迫電話はこの船からかけられたようなんですが瀬田和哉というテロの容疑者の携帯電話だったそうなんです。
最悪の場合は乗客を救命ボートで避難させることも考えなければならないでしょう。
ボートは全員乗れるんですか?もちろんです。
(爆発音)
(爆発音)
(乗客達の悲鳴)
(爆発音)あっ…何だ?何があった?我々が見てきましょう。
ケガ人は?爆発の時は誰もいませんでした。
ただいま確認しております!今爆発があって救命ボートボックスが流されて…。
恐らく停電事件で使用されたものと同じ爆弾でしょう。
まさか和哉さんが…?操舵室へ戻って状況を聞きましょう。
はい!爆弾が爆発したって言ってるでしょ!?早くヘリ出しなさいよ!先生私も…。
私もお願いします!うるさいわね!私を裏切っておいて何言ってるのよ!そっちこそ何言ってるんだ!!あんたのためにどれだけ尽くしたと思ってるんだ!せっかく金がもらえたのに…。
どうしてだよ!またも爆破を許してしまった…。
犯人はまだ爆弾を持っているとのことです。
いかがしましょう?特殊班を港に待機させろ。
ただし犯人を刺激するなよ。
(マネジャー)ご安心ください!皆さん順番に係員に従ってください!危険ですので並んでください!
(機関士)皆様の数はありますので!数発の爆弾を仕掛けたという脅迫電話が入ったと。
数発の爆弾?瀬田和哉というテロの容疑者からの電話だったそうです。
(山本)何?あんた瀬田和哉がこの船にいるのを知ってたんだろ?いえ。
そうか…。
うちの助成金が取れなかったんで恨んでるんだな。
そんなことありません。
和哉さんは准教授として実績もあります。
環境省の助成金だって自分で取ったと聞いています。
自分で犯行を予告してきたんだぞ。
やってない証拠でもあるのか?証拠はありません。
でも確信しています。
信頼できる刑事さんが導いた結果ですから。
もういい!姉川さん。
1つ重大なことをお訊きします。
はい?
(マネジャー)救命胴衣こちらでお配りしております。
皆様の分ございますので!危ないですから!おい!おい!何があったんだ!おい開けてくれ!!なるほど…そうでしたか。
それが何か?あなたの言葉がすべてをつなげてくれました。
私何か言いましたか?すぐに瀬田法務大臣に連絡を取っていただけませんか?はい。
(電話)もしもし。
突然のご無礼をお許しください。
「警視庁特命係の杉下と申します」大臣にどうしてもお伺いしたいことがあります。
(ドアをたたく音)
(遠藤)開けてくれ!おい!おい…。
(係員)急いでください!何が起きてるんだ?船内に爆弾があるとの情報が!爆弾!?
(係員)さあ早く!そしてついに最後の1人が亡くなられたと聞きました。
そうでしたか。
ありがとうございました。
一連の事件の犯人がわかりました。
えっ!?先ほど僕はあなたに尋ねましたね。
あなたは今和哉さんが助成金を自分の力で取ったと聞いていますとおっしゃいました。
ええ。
どなたからお訊きになったのでしょう?えっと…野上さんから聞きました。
瀬田先生最近ちょっと変でしたからねぇ。
よくエコフェローズ通ったものだと思ってたんですよ。
ああ環境省の助成金の1つです。
しかしそれは大変妙なことなんです。
なぜならば野上さんはその事実を知ることができないはずだからです。
どういうことですか?我々が和哉さんの部屋に入った時環境省の助成金決定の通知がファクスで届いていましたね。
しかしあの通知は留守の間に届いたもので本人も知らなかったはずなんです。
つまり助成金決定の事実を知っているのは和哉さんの留守にあの部屋に入った者だけ…。
ということは…。
そう一連の事件の真犯人は野上さんです。
でも野上さんがなぜそんなことを?野上さんを止めなければなりません。
(阿藤)どうした?爆弾を持った男が山本社長と笠村議員達それと報道の人達を連れて4階の雲に…。
爆発させると脅されて…。
まさか野上さん?どのような爆弾でしょう?胸に巻きつけてます。
そうですか。
行きましょう。
はい!カメラを回してください。
カメラを回せ!爆発させるぞ!!ううっ…。
(野上)回せ!
(カメラマン)はっ…はい…。
野上さん!あなたの目的はこの場所で遠藤さんに過去の事実を認めさせることだったんですね?なぜそれを?当初は「クモ720」…つまりここ雲の部屋に7時20分に根津さんを呼んでいました。
そこに遠藤さんを連れて行き爆弾で脅し空港爆破事件を白状させようとしました。
そしてパーティー会場に連れて行きそこで過去の事実を公表させようとしたんです。
しかし計画に狂いが生じました。
この部屋雲には大勢の人間がいることになりさらに遠藤さんが根津さんを殺して捕えられてしまった。
慌てたあなたは計画を変更してパニックを引き起こそうとしたんです。
和哉さんを装って爆弾を仕掛けたと警察に電話をかけ乗客に噂を流し救命ボートボックスを爆破して船中をパニックにさせようとした。
そうすれば監禁されている遠藤さんを外に出すことができますからね。
なぜそこまでして?この船には菱河の人間も議員もマスコミの人間もいます。
恐らく日本中の人々に過去の事実を知ってもらいたかったのでしょうね。
遠藤さんあなたはかつて四国で工場長をやっていたとおっしゃいました。
四国…?まさか…。
ええ。
すべては四国のあの村から始まったんです。
そこまでご存じでしたか。
(野上)そうです。
30年前僕の家族はこの男の工場が流していた毒に殺されたんです!!うちの工場が…毒を!?あんなに…。
あんなにきれいなところだったのに…。
(野上の声)1978年だ。
あんたの工場がうちにやって来た。
親父もおふくろも村の人達もこぞって工場で働き始めた。
工場のお陰で村は潤ったし生活は豊かになった。
でもそんな幸せな時間はあっという間に終わった。
おふくろが死んだ。
病名は甲状腺未分化癌。
未だ原因が解明されてない病気だ。
おふくろの後工場で働いてた人間や近所に住んでいた人間が同じ病気で死んでいった。
疑った親父は近所の大学に頼んで原因物質を突き止めて言いました。
なのに工場が相手にしなかった!こんなもん何とでも書けるでしょう。
(野上孝三)ちゃんと大学で分析してもらったんです。
もしこれが正しいならうちの奴が死んだのは…!これから生活もいろいろ大変でしょう。
お金の相談には乗りますよ。
(野上の声)親父は裁判を起こすことにした。
しかし相手は地域経済を担う企業。
手を貸そうとする地元弁護士がいなかった。
そんな中でたった1人引き受けてくれた弁護士。
それが…。
瀬田大臣…。
(野上)でも瀬田の立ち合いの下で調査した時もう原因物質は発見されなかった。
瀬田はあきらめて親父の前から消えやがった!消えた?逃げたんだ!親父達を捨てて!そんなまさか。
結局一度も裁判にならないまま親父はおふくろと同じ病気で…。
あんたは知ってたはずだ。
原因が工場の排水にあったことを。
そしてそれを隠したことで死んでいった人間は闇に葬られた。
公害の隠蔽…。
これ大問題じゃない?あの時…あの時隠さなければ工場はつぶれてたんだ。
そうしたら村もつぶれてた。
工場ができてみんな豊かになれたじゃないか。
みんなのため?嘘をつくな!あんたはただ自分のために罪もない人間を犠牲にしたんだ!遠藤さんとジャッカロープのつながりに気づいたあなたはそれを遠藤さんと瀬田大臣2人への復讐に利用しようと思いついたんですね?仕方なかった…。
終わらせるためにはそれしかなかった。
(野上の声)遠藤の身辺を探ってた時遠藤の奇妙な行動を見て…。
(野上の声)それからすぐにコンテナ爆破事件が起きた。
事件は遠藤の指示とまるで同じだった。
環境誌の編集者を騙って瀬田和哉に接近してフィールドワークに出かける前に水質汚染の工場の話をして誘ったんだ。
水質汚染の工場ですか?
(野上)僕が誘ったことは内緒で瀬田先生だけに見せたいものがあるんです。
わかりました。
ここです。
(和哉)この地下水が汚染されてるっていうんですか?
(野上)ええ。
地下の水路も行ってみましょうか。
はい。
(野上)こっちです。
(野上)どうぞ。
(和哉)はい。
荷物置いていきましょうか。
あっはい。
(和哉)うっ!
(和哉)うっ…うう…!よし…。
(作動音)
(野上の声)そしてわざと瀬田和哉の腕時計を現場に残した。
停電事件の後ジャッカロープの名で声明文を送り和哉さんの鍵を使って自宅や研究室に侵入しさも和哉さんがジャッカロープの一員に見えるように偽装をした。
そしてマスコミに情報を流し瀬田大臣を失脚寸前まで追い込みました。
裁判を起こした自分が悪い。
そのせいで村人同士がバラバラになった。
親父はそう言って死んでいきました。
あの弁護士のせいだ!あの弁護士が逃げたせいで親父は謝りながら死んでいかなきゃならなかったんだ!そんな人間が法務大臣になるなんて許せなかった!そんな30年も前の話だろ?どうして今頃…?僕だって忘れたかった。
忘れたつもりだった…。
半年前に都内で1人の女性が亡くなりました。
病名は甲状腺未分化癌。
野上さんの妹でありあなたが隠蔽した公害の最後の被害者です。
何でそれを…?瀬田大臣がすべてを話してくれました。
両親を亡くしてから怒りを向ける場所もなく絶望の中にいた俺を妹は救ってくれた。
村のことは忘れて生きよう…必死に生きた。
でもあの病気は妹の体の中で時限爆弾みたいに生きていやがった。
(野上の声)忘れたかった…。
妹の言うとおり忘れたかったんです。
だけど家族をすべて失ってしまった。
その時決心したんだ。
許せないと。
野上さんもういいでしょう?あなたの目的は達成されました。
爆弾を捨てなさい。
(ガラスが割れる音)
(野上)うわっ!
(野上)離せ!爆発させるぞ!大丈夫ですか?はい。
野上さんあなたの行った行為は決して許されるものではありません。
しかしそれ以上に許されないのは罪を償うこともせず命を絶って自らを終わらせようとすることです。
僕にこれ以外の終わり方はなかったんです。
(すすり泣き)皆さんご安心ください。
爆弾は無事回収されました!
(乗客の歓声)ご安心ください。
犯人は確保されました!
(歓声)装置回収されたそうです!
(中園)誰からの報告だ?特命係の杉下警部です。
(内村)何!?特命係の杉下警部です。
特命係の杉下がなぜ…?毎年毎年…ああもう!姉川さんあなたの勇気に感謝します。
(警笛)
(パトカーのサイレン)
(伊丹)おいこっちだこっち!おい!そこだよ!その中!中急げおら!
(伊丹)あっいた!おい!生きてろよおい。
(三浦)おい回り込め。
大丈夫ですか?大丈夫ですか?
(芹沢)おい!おい!
(三浦)救急車!救急車だ救急車!
(芹沢)おい!おい!大丈夫か?
(三浦)瀬田さん!瀬田さん!
(芹沢)あっ目開けた…!
(伊丹)生きてる生きてる…!
(芹沢)急げ!
(三浦)救急車!
(たまき)法務大臣結局辞職せずに済んでよかったですね。
お食事を取られていないそうですね。
27年前菱河石油化学に対する裁判ができなかった本当の理由がわかりました。
遠藤さんが当時のことを話してくれました。
遠藤さんは原告団にお金を渡していたんです。
お金?どうしても工場を存続させたかった。
そのためにもみ消しに必死だったのでしょう。
ある人には100万ある人には50万ある人には何も渡さず…。
あえてそのように差をつけることで原告団の間に猜疑心を生まれさせようとしたようです。
原告団はバラバラにされてもう裁判ができる状態ではなかったんです。
だから瀬田大臣は裁判をあきらめなきゃならなかった。
違う。
あの時村では噂になってた。
弁護士が…瀬田が逃げたから裁判ができなくなった。
だから親父は絶望して死んでいったんだ。
それは瀬田さんのおつきになった嘘だと思いますよ。
嘘…?あの裁判を始められたのはあなたのお父様です。
当時前へ進もうにも菱河石油化学の思惑どおりお仲間達はバラバラにされていました。
しかし裁判をあきらめてしまったら世間の非難を浴びるのはリーダーであったあなたのお父様です。
瀬田さんは自分を悪者にすることでお父様を守ろうとしたのだと思いますよ。
瀬田大臣はあなたのお父さんを裏切ったんじゃないんです。
だから僕が悪い。
えっ?あなた達はそう言いに来たんですね?違います!私はただ…。
帰ってください。
(足音)大臣!瀬田宗明と申します。
法務大臣がこんなところに何の用ですか?犯人の顔を見に来たんですか?大臣は辞任します。
辞任…?大臣どういうこと…。
あなたに謝らなければならないことがあります。
謝る?27年前です。
まだ裁判を取り下げる前病院であなたのお父さんと会いました。
(孝三)村に工場が来た時子供におもちゃ買ってやれるって喜んだんです。
みんなそうだった。
なのに私のせいで村がバラバラになった。
私が悪いんです。
私は誰ともケンカはしたくない。
先生…!もうここまでにしてもらえないでしょうか?それが野上さんとの最後でした。
どうしてあのような方が謝りながら死んでいかなければならないんでしょう?弁護士の私は何があっても最後まであなたは正しいと叫び続けなければならなかった。
しかし私にはそれができなかった…。
大切なことを歪めたまま終わらせてしまったんです。
だからあなたにこんなことをさせてしまった…。
そうだ!あんたのせいだ!全部あんたが悪いんだ!!野上さん…。
本当に…。
(泣き声)本当に申し訳ありません。
謝らないでもらえますか。
それじゃ親父と一緒じゃないですか。
僕だってわかってますよ。
あなたのせいじゃないってことぐらい。
(野上の泣き声)杉下さんこの度は息子を救っていただきありがとうございました。
恐縮です。
どうしてお辞めになるんですか?上にいて待っているだけではダメなんです。
そばへ行ってこの手で探し出さないと見つけることはできません。
また人々の小さな声なき声に耳を傾けるお仕事をされるのでしょうね。
じゃあ失礼します。
(携帯電話)杉下です。
(小野田)「僕だけど…」Dialogue:0,2:31:00.41,2:31:02.76,Default,,0000,0000,0000,2016/01/02(土) 14:30〜17:05
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三浦浩一 浜田晃 中本賢 三田村賢二 渡邉邦門
神保悟志 川原和久 大谷亮介 山中崇史 六角精児 山西惇
片桐竜次 小野了
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
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