新春時代劇「信長燃ゆ」【東山紀之×織田信長 本能寺の変の真相が明らかに!】 2016.01.02


まあ次回です。
次回。
じゃあこの一年よいお年でありますように。
さようなら。
たどりつけなかった善光寺は初詣で客で賑わっていることでしょう。
(光秀)敵は本能寺にあり。
(一同)おお。
急げ急ぐのじゃ。
兄上。
敵襲じゃ。
(蘭丸)上様。
これは謀反か。
御意。
何者じゃ。
明智日向守と思われます。
(一同)おお。
坊丸女どもを連れて落ちよ。
しかし…。
余は死なぬ。

(蘭丸)上様落ちてくだされ。
お蘭奥に火を放て。
はっ。
必ず信長の首をあげよ。
上様。
お蘭任せた。
はっ。
森坊丸様ですね。
お捜しいたしました。
やっとお会いできました。
三十五年前の本能寺の変より生き延びられたのはあなた様しかおられませぬ。
話してはいただけませぬか。
あの天下一の智将であられた織田信長様がなぜ明智に討たれることとなったのか。
なぜたった百五十の手勢で本能寺に行かれたのか。
お教えください。
(坊丸)お言葉なれど私はこのようにもはや名も捨て世も捨てた身。
今更語るべきことはありませぬ。
お帰りくだされませ。
あなた様はもしや…。
お聞かせいただけるまで帰らぬ覚悟でまいりました。
この坊丸もここまで命長らえた意味があった気がしてまいりました。
お話ししましょう。
信長様と共に過ごしたあの最期の年月について。
坊丸:下克上の世にあって織田信長様は桶狭間の戦いをはじめとする数々の戦を破竹の勢いで勝ち抜きその勢力を東は関東北は北陸西は中国四国へと広げられておりました。
天正九年二月。
天下平定へいよいよあと一歩と迫った信長様のお姿は京にありました
遠路のご上洛大慶に存じまする。
いよいよ馬揃えじゃ。
名馬を揃え贅のかぎりを尽くして装束をあつらえた。
そのほうらの費用も不足とあらばいかようにも手当ていたす。
かたじけのうござります。
馬場につきましては吉田神社の近くに春日馬場がござりまする。
あそこならば広さも十分ございます。
余は洛中にて行うと申した。
春日馬場は洛外じゃ。
しかし洛中には数万の軍勢を留め置く場所がござりませぬ。
近衛太閤様の下屋敷から五町ほど北に火除け地がございます。
あそこなら造作なく馬場にすることができまする。
お待ちくだされ。
あそこは内裏の東隣にあたりまする。
(蘭丸)承知しております。
あそこなら帝も東の門からお出ましになるだけで馬揃えを御覧になることができます。
これ以上の適地はありますまい。
しかし一万の織田軍が内裏近くに陣取るなどとは。
加えて安土の馬揃えでは犬数百匹を矢で射ぬかれたと。
それが不都合か。
あっ。
教えを乞う身が上座にあってはなるまい。
どうぞこちらで御教授くだされ。
兼和控えよ。
ならば申せ。
尊い帝のお住まい近くに我らのごとく戦に戦を重ねた人殺しの一軍は置きたくないのだと。
されどこの太平の世はこの信長こそが血を流して勝ち取ったものぞ。
そのほうら公家衆はそこにあぐらをかいておるだけではないか。
ひらにひらにご容赦を。
そっ首叩き斬る。
晴豊兼和が首斬られたなら拾うてやれ。
近衛何故帰る。
急ぎの用もござりまして。
洛中での馬揃えこの前久がしかと承知つかまつりました。
近衛様無礼でござろう。
はははっ。
あれでよいのじゃ前久は。
このお方五摂家筆頭近衛家の当主前久様こそ信長様の宿敵であり同時に朋輩でもある運命の相手でありました
永禄二年信長様は将軍足利義輝殿に拝謁されました。
その折に出会われたのが近衛前久様でした
前久様は武術にも馬術にもたけておられる。
公家には珍しい。
少しは見直したか。
少しどころか学ぶところまことに多く。
このときすでに前久様は関白という藤原家一門の最高位に就かれていました
してそれは何でござる?では六歳ではや帝にお目通りなされたのか。
いかにも。
しかしわしは権門の上であぐらをかく気なぞ毛頭ないぞ。
次は鷹狩りについて教えを乞いたい。
餌は仕掛けは。
しつこい男じゃのう。
はははっ。
二人はときに味方としてときに敵としてこの乱世を生き抜いてこられました。
そして今天下布武を標榜し武家による国家支配を目指す信長様に対し前久様は朝廷の権威を守るために公家の知恵と朝廷の仕組みで信長様をおさえていこうとされていました。
天才と呼ばれたこのお二人は水面下では激しい権力闘争を展開しておられたのです
はぁ信長を左大臣にやて。
そんな阿呆な。
はははっ。
お考えなされ。
今褒美を与えておかねば馬揃えのあとあやつが何を言い出すか。
近衛太閤はんは信長に取り入ろうとしておじゃるのと違いますか。
(一同)はははっ。
あやつら朝廷の行く末など微塵も考えてはおらぬ。
まこと公家衆は己の保身にしか興味ござらぬ。
武家用の桟敷はどこじゃ。
あれではないかと。
お〜っははっ。
よし。
これなら帝もご満足じゃろう。
間違っても武家が帝を見下ろしてはならぬ。
よしよし気をつけてな。
はははっ。
なんや晴子おったんか。
晴子様わざわざのお渡り恐悦至極に存じます。
今日は月末のお祓いの日ですから。
親王様の御装束のお世話に参りました。
それでしたらこちらで準備万端整えますゆえご心配なく。
晴子様を差し置いて何を申す。
よいではないか。
康子様お子を無事に出産なさいますようお祈り申し上げております。
晴子。
いろいろ不本意なこともあろうが奥を束ねるのはそなたの他にはおらぬ。
心を広う持ってつとめてくれ。
何が心を広くですか。
あんな若い君にのぼせられて。
房子どの口が親王様をけなしているのです。
ひい様は悔しくないのですか。
お待ちなさいまだ袴をはいておりませぬよ。
いやぁ〜。
まぁ近衛様。
重たくなられましたのう。
言うことを聞かなくて困ります。
皆様おわかりになっておられぬのです。
近衛様の他に誰が今の信長殿に面と向かってものが言えるでしょう。
お方様にそう言っていただけると近衛は救われた思いです。
されど何故信長殿は内裏近くで馬揃えなど行うのです。
天下平定を目前に織田軍を天覧に供し将兵の士気を高めるのが狙いかと。
更に帝の御威光を後ろ盾に己の威勢を天下に示す。
それをけん制なさろうとしておいでなのですね近衛様は。
はははっ。
お方様はまことに聡いお方だ。
ここでは賢く回る頭など必要ない。
お子が産めればそれで。
いよいよ馬揃えの日が参りました
そこに信長は座るつもりか。
おそらく。
いかん止めねば。
上様勧修寺晴豊殿が前久様よりの伝言を持って参られました。
帝を見下ろすなと言いたいのじゃな。
お蘭任せた。
はっ。
屋形は安土城が見たいと仰せられた帝のために造ったもの。
今更撤去せよとは言語道断であると。
近衛様打ち壊せと命じましょう。
いかん。
事を荒げては向こうの思うつぼ。
考えよ。
何とする。
何としたならここを切り抜けられる。
あの南蛮から来た異人どもは牛や馬の肉を食らいその血を飲むそうです。
お前の話はあてにならぬ。
(一同)えいえいおお。
えいえいおお。
おぉなんと美しい。
あそこにおられるのが明智日向守光秀様ですよ。
房子様。
なんと。
内裏におられたはずの五の宮と六の宮のお姿が見えないそうです。
えっ。
五の宮。
六の宮。
五の宮六の宮。
厠にでも行かれたのか。
それとも内裏が珍しくて歩き回っておいでになるのか。
晴子様いかがなされましたか。
二人の宮の姿が見えないのです。
お二人でしたら晴豊様とともに武家のお休み処のほうに行かれましたが。
まことですか。
ここはここは上臈の局様にお伝えしてお力を借りたほうが。
いえ私が参ります。
ひい様。
お待ちを。
五の宮。
六の宮。
五の宮。
六の宮。
上様の行く手を遮るとは無礼千万。
織田信長様とお見受けいたしました。
六歳と三歳の子供たちの姿が見えなくなったのです。
このまま見つからねば御成敗の前に自らこの喉突くしかありませぬ。
これが信長様と晴子様のその後の運命を大きく変えることとなる初めての出会いでした
お蘭よきにはからえ。
(蘭丸)はっ。
者ども続け。
(一同)はっ。
前久様は帝のまわりにしめ縄で結界を作られ帝の威厳を保たれたのでした
前久め。
一方晴子様の二人の宮たちは兄蘭丸と捜しても居所はわかりませんでした
ひい様。
宮たちはとっくに戻られております。
無事なのですか。
はい。
あれは。
たばかったのです。
丹波の局がひい様を。
親王様のお心を奪うは勝手。
されど子供たちへの手出しは許せぬ。
なりませぬ。
内裏で騒ぎを起こしては。
こらえてくださいまし。
ひい様。
皆の者上洛大儀じゃ。
(一同)ははっ。
盃を取れ。
無礼講じゃ。
心ゆくまで飲め。
(一同)はっ。
(光秀)柴田殿遠き道のりをよくぞ駆けつけなされましたな。
殿の御下命とあらば地の果てまで駆けるのが我らが務めじゃ。
この利家も一時も早く殿のお姿を拝さんものと駆けに駆けて参りました。
(光秀)いずれにせよめでたい。
越中の話などゆるり聞かせてくだされ。
(利家)おう。
(勝家)信忠殿。
しばらく見ぬうちに御立派になられた。
織田の跡目はこれで盤石よのう。
ありがたきお言葉。
いたみいります。
(利家)光秀殿。
天下平定も目前と相成った。
そののちはいくばくかの所領をいただき尾張で皆とゆるり余生を送りたいものでござるな。
たった今ゆるりと余生を送りたいなどとほざきおったのは誰じゃ。
某でござる。
利家か。
その歳で余生とはどういう了見じゃ。
天下平定まではあと五六年。
余生とはその先のことでござる。
たわけ。
天下平定が余のなすべきすべてか。
その先を何故見ぬ。
この利家の命は上様に捧げたもの。
生涯上様のために働く所存でございます。
しかし上様のお考えのその先とやらが愚かな利家には見えませぬ。
見ぬ者には見えぬわ。
皆にも申す。
馬揃えごときで浮かれるでない。
(一同)ははっ。
イスパニアがこのアメリカを発見したのでござるか。
いかにも。
そのイスパニアはポルトガルも制したそうじゃ。
我が国は勝てますでしょうか。
そのイスパニアに。
我が国には十万の兵と二万挺の鉄砲がある。
しかしこの国はまだ眠っておる。
そうだな弥助。
(弥助)はい。
国が目覚めるには民が目覚めねばならぬ。
尾張の民は目覚めておりまするぞ。
上様が楽市楽座を設け関所を撤廃され年貢を平等にされたおかげで皆豊かになりものの理にも明るくなり申した。
民が豊かになれば国も豊かになる。
もしや。
天下平定の先にあると仰せられたのはこのイスパニアのことでござるか。
イスパニアのみならず明インドマカオ。
このアメリカにまで余が進軍するとしたらどうじゃ。
愉快であろう。
馬揃えより一か月ののち朝廷より勅使として上臈の局様がおいでになられました。
局様は帝のお后であり朝廷としては破格の御使者でありました
ここに帝よりの左大臣推任の勅をお伝えに参りました。
大儀じゃ。
そなたらに褒美をとらす。
お蘭。
(蘭丸)はっ。
して信長殿の御返答は。
せっかくの左大臣への御推任にあれど現職の一条内基卿を押しのけての就任は心苦しい。
今一度信長の口上を申してみよ。
はっ。
正親町天皇の御譲位と誠仁親王の御即位を計らったのちにしかるべき官職に就かせていただくとそのような返答をしたよしにございます。
帝の御譲位とは。
なんとおそれ多い。
それが狙いで馬揃えを行ったのか。
して親王は何と仰せじゃ。
無論帝の御譲位には応じられぬと。
しかしここで信長の意向をはねつけてはどんな遺恨を残すやもしれぬ。
そのようにあやつの顔色ばかりうかがっていては。
信長を侮るな。
酒は。
酒はまだか。
誰じゃ。
酒がないなら離せ。
信基また飲んでおるのか。
おっこれは父上。
南蛮かぶれもいいかげんにせい。
何をなさる。
客人じゃ。
下がっておれ。
お返しくだされ。
このマントは日本の王となられる方からいただいたものでござる。
日本の王。
そうです。
秦の始皇帝は強大なる力によって周王朝の権威を乗り越えました。
信長様も王として君臨なさる。
あっと。
偉大なる偉大なる…。
ええい見苦しい。
こやつを連れていけ。
はっ。
さあささっ参りましょう。
マントマントマント。
兼和。
ははっ。
兼和。
ははっこれに。
もしや信長は帝の譲位の先の先まで見据えているのやもしれぬぞ。
先の先とは。
帝の御譲位のあとに誠仁親王が即位される。
さればすぐに退位を促し次いで五の宮を帝に据える。
五の宮は信長の養子となっております。
あやつ帝の父となる気ですか。
帝の父としてそれなりの地位に就けばすべてが思うがままじゃ。
かぁ。
我らが朝廷の上に立つ気か。
なんと。
そのような勝手をさせてはなりませぬ。
武士は刀で人を斬る。
我ら公家は策を用いて人を斬る。
晴子に勅使として安土へ参れというのか。
はっ。
今回は親王様の即位に関わることゆえ下御所からもしかるべき使者を立てたいと存じまする。
朝廷として最大の誠意を示していると信長殿に訴えるためですね。
いかにも。
あのような野蛮な男に誠意も何もないわ。
親王様。
これは朝廷の存続そのものに関わることなのです。
参ります安土へ。
晴子。
お方様。
私でお役に立つのであれば。
親王様はお見送りにも出られませんでしたね。
よいのです。
信長殿に会えるのですから。
子供たちのためにひと言礼を申さねば。
〜なんと高い。
私は地の底で暮らしてた。
そなたが京よりの勅使か。
内裏から参りました晴子です。
もしや。
馬揃えの折にはお心遣いかたじけのうございました。
おかげさまで二人の宮も無事でした。
そなた親王の御内室であったか。
はい。
されどこの安土に来て見事なるお城からの美しき眺めに我が身がもぐらであったと気づきました。
内裏は暗く狭い穴蔵のごとき場所。
ほう。
内裏をけなす勅使は初めてじゃ。
お忘れください。
あまりに広きところに連れ出されこの晴子取り乱しております。
先のお申し入れに対する朝廷の返答を申し上げます。
うむ聞こう。
御譲位の儀は本年は金神ゆえ先へ送らせていただきます。
また来年早々にも左大臣が空位となりますので御就任くださいますように。
金神とはいかなるものでございましょう。
金気を司る陰陽道の神でございます。
本年は金神によって丑の方角は不吉ゆえ下御所から内裏への御移りは慎まねばなりません。
朝廷は上様の御意向を占いごときで覆すお考えか。
これが帝のお言葉でございます。
牛には四つの胃袋があるが公家にも四つばかりのはらわたがあるようじゃ。
返答は桑実寺でいたす。
この先はいっそう険しくなります。
しばらくお休みください。
お気遣いは無用です。
水を。
信長様は公家の非力を笑っておられるのでしょうか。
勅使を侮られては公家全体の恥となります。
すぐに参りますゆえ遠慮なくお進みください。
〜ここは風が気持よいですね。
幼き頃を思い出しました。
内裏に上がる前はこのような野山を駆けまわったものでした。
公家の身でか。
祖父が武家でしたので。
あっひばりが鳴いております。
信長様戦場で全軍の先頭をきって馬を駆けるときにはどのような心地がするものでしょうか。
そなたは強き母じゃ。
余は父にも母にも疎まれた子じゃった。
その母に愛されし弟をこの手で殺した。
数百人を斬った。
数千の僧を殺させた。
むごいと思うか。
わかりませぬ。
されど恐ろしいとは思いません。
ただそのお心を知るものは少ないかと。
この一時ばかりの間に何があったのかこの坊丸は知るよしもござりませぬ。
しかしこのあと御譲位の先送りを信長様はお認めになったのでございます
(房子)ひい様。
捜しましたよ。
このようなところは人目につきます。
お戻りくださいませ。
人目が何じゃ。
さぁさぁ。
いらぬ一人で歩ける。
まぁなんと邪けんな。
御病気とおっしゃるから心配しておるのに。
親王様。
晴子具合はいかがじゃ。
あはっかまわぬそのままでよい。
八朔の祝いに出たらぬしの姿がないではないか。
安土などへ行かせたのが悪かったのかもしれんな。
されどお方様のおかげで信長は帝の御譲位を先延ばしされたのでござります。
金神を理由に先延ばしした前久もさすがじゃがそれを信長にのませた晴子も大したものじゃ。
わしも鼻が高いわ。
長居はお体にさわります。
これにて失礼いたします。
上臈の局の使者も見舞いに来るはずや。
機嫌ようお迎えなされや。
そういえばひい様がおこもりがちになったのは安土より帰ってからのこと。
あちらで何かありましたか。
ひい様もしや桑実寺で何か。
ひばりが鳴いていました。
いい声でした。
(笛の音)〜
天正九年九月。
信長様は信雄殿の率いる五万の軍勢で伊賀征伐に乗り出されました
〜おしのおしのしっかりせよ。
(おしの)子らを子らをお守りくだされ。
おしの。
おいおい。
きすけきすけ。
起きろ起きろ。
逃げろ。
伊賀の惨状は惨憺たるものでわずか一日で三万の伊賀軍が死滅し村々が焼き払われました
あぁっ。
なんとむごい。
光秀覚えておるか十七年前のこと。
近衛様と初めてお会いした折のことでございまするな。
あのとき共に誓い合った。
朝廷と足利幕府をあるべき姿に戻してこの国のために働かねばと。
あれから我らは将軍義昭様の御上洛に力を注ぎましたがその甲斐もなく今の幕府にはまったく力をなくしてしまいました。
そしてかくのごときありさまよ。
今天下を平定する胆力と才覚をお持ちなのはやはり信長様です。
あの方は天に選ばれしお方です。
しかし六十六か国平定するまでにどれだけの戦を重ねねばならんのだ。
父上公家のなかでただ一人上様の軍に加わっていることをなぜ誉れと思わぬのですか。
ふん笑止。
信長が近衛を参陣させておるのは帝の名代が己の軍におると知らしめるためじゃ。
織田の軍は帝の軍も同じと言いたいのよ。
あっ。
信雄。
はっ。
よう伊賀を落としたの。
大儀であった。
ははあありがたきお言葉。
信忠。
信雄に遅れをとってはならぬ心せよ。
ははっ。
一益。
はっ。
そちにも褒美をとらす。
はっ。
一益ありがたき幸せ。
申し上げます。
羽柴秀吉様からの早文でございます。
あやつめ。
二日に一度は文をよこしおる。
(秀吉)美作をたいらげた拙者は毛利方吉川経家を攻めて鳥取城に籠城させ上様に教わったとおり兵糧攻めにいたしました。
すると経家から己の命と引きかえに城中の者らのお命を救ってほしいとの嘆願書が出されただいま降伏の交渉をしてるところだて。
おおやりおったな秀吉。
これで毛利をたいらげる日も間近かと。
めでたい無礼講じゃ。
心ゆくまで飲め。
(一同)はっ。
さぁ飲もうぞ。
翌日信長様は安土に戻ろうとなさいました。
事件はそのとき起きたのです
信長め子らの仇じゃ。
うっ。
前久何故助けた。
おぬしはかつて一向一揆を裏で操り我が命亡きものにしようとしたであろう。
あの頃とは違う。
貴殿は大きくなられた。
今はこの国になくてはならぬ武将じゃ。
きれいごとはよい。
腹を見せよ前久。
馬が赤子を蹴り殺そうとしたなら迷うことなく助ける。
それが人じゃ。
余を赤子だと申すのか。
はははっ食えぬやつめ。
褒美をとらす何なりと申せ。
ならば一つ願いが。
公武の相剋はここまでとしてこれからは朝廷と力を合わせ天下平定への道を進まぬか。
朝廷の上に立ってはならぬ。
高みを目指すなら足利家のように将軍職となる道もある。
ならば聞く。
朝廷とは何ぞ。
まず帝は高天原の昔より神々に礼を尽くすという尊い責務を担っておられる。
我ら五摂家はその帝の執政を補佐するのが役目。
これがこの日ノ本の国に千年前から伝わるしきたりぞ。
誰が決めた。
太古の神じゃ。
古きならわしには皆意味がある。
古きもの壊さねば新しきものは生まれぬ。
連綿と受け継がれてきておる政のかたちを変えては人心が乱れる。
人心じゃと。
着飾って遊び暮らす己らに民百姓の気持がわかるのか。
余は帝に盾つく気はない。
余が壊したいのは朝廷の仕組みじゃ。
今の仕組みの何が不足じゃ。
朝廷は政に口を挟みこの国を勅旨で動かしている。
しかるにその勅旨は帝の御意志にかかわらず出されておるではないか。
おぬしら近衛家をはじめとした五摂家が朝廷のすべてを牛耳り限られた者しか帝と対面できぬようにしておる。
それも帝の権威を守るため。
たわけ。
おぬしらのみが帝の権威を振りかざしたいだけであろう。
そのようなことはない。
我らとてこの国の先々を思い憂い。
かたちなき神天照がおっても世は乱れ戦は絶えぬ。
天下を治めるにはもっと強大で確固たるものが必要じゃ。
天照を超えるものなどない。
余は超える。
天照大御神を。
余はこの日本国で唯一の神となる。
なんと。
余が神じゃ。
そして天正十年の年明け。
安土城内にある総見寺には一つの石が祀られました。
民衆はそれを拝みに殺到していました
年始の祝いは無用じゃ。
世辞には飽き飽きしておる。
お見かけしたところ日頃の兄上とお変わりなき御様子。
心あるものは皆兄上はお狂いあそばせたと申しておりますゆえお顔まで変わり果てておられるのではと思いましたが。
己を神と言わせるに加え一尺ばかりの石を御神体として拝ませるなど尋常とは思えませぬ。
まどろっこしいわ。
お市余が憎いのなら刺せ。
愛しき夫浅井の仇を討ちたいのであろう。
おやめくだされ。
あの石を拝む者どもは強き武将が好きなのじゃ。
今石を拝んだとしても余が浅井のごとく戦に敗れればすぐに余を打ち負かした武将になびき媚びる。
お許しを。
さすればまた世は乱れる。
謀略と裏切りなき世を作るためにも余は神にならねばならんのじゃ。
神ではない。
兄上は鬼じゃ。
血も涙もない鬼じゃ。
ならば憎め。
余の命の絶えるときまで存分に。
夫を亡くした不運に続き兄を憎むは不幸の極み。
かなしゅうございます。
一月三日近衛の前久様と信基様が年賀の祝いを述べに訪れになりました。
信長様はお二人を新築した清涼殿にご案内なされました
どうじゃ信基。
結構この上なきものと存じまする。
(前久)まこと見事な造り。
玉座じゃ。
誠仁親王が即位なされたあとにお移りいただく。
信基そちが内大臣として帝の移徒を取り仕切るがいい。
移徒。
なんと。
余は狂うてはおらぬぞ。
帝の移徒とは住まいをお移りいただくことを言います。
信長様は都を京からこの安土に移そうとお考えなのでした
遷都。
都を移すと。
安土にです。
なんと。
しかもあやつは五の宮の即位までも念頭に置いております。
五の宮の即位。
そのような大事を帝を差し置いて信長様が決めてよいのですか。
いいわけありませぬ。
だがあやつは一度朝廷に盾ついて上京を焼き払うという暴挙に出た男。
要求に応じなければこの御所にすら火を放つやもしれませぬ。
そんな。
あやつは我らに揺さぶりをかけておるのじゃ。
不安を煽る術にはまるでない。
我ら朝廷を守るため一丸とならねばならぬとき。
お方様の力もお借りするやもしれませぬ。
私にできることがあれば何でもいたします。
安土に行けと言われれば参ります。
ありがたきお言葉。
では今日はこれにて。
何事ですか。
お二人とも強張ったお顔をなされて。
ええ。
ひい様また安土へ行くおつもりですか。
信長様にお会いになりたいのですか。
そんな浮ついたことを言うてる場合ではない。
信長様は大それたことをなさろうとしておられる。
それが子供たちのためによきことなのか悪しきことなのか見定めねばならぬ。
(笛の音)〜ひい様安土に行かれて以来お変わりになりましたな。
何やて。
強うおなりになった。
よきことなのかどうか。
しかしひい様安土でのことは決して人にもらしてはなりませぬぞ。
ひい様のお命にも関わりますことゆえ。
(前久)肩の傷はどうじゃ。
まだ痛むか。
あやつは悪魔じゃ。
我が親を殺し我が女房を殺し我が子らを殺戮した。
あやつはいずれこの国を滅ぼす。
その前にこの俺があやつを殺す。
黙れ下郎。
わしが何故お前を生かしておると思う。
こののちはわしの命によって働け。
この雪が溶ける頃には備中高松城は落ちておろうな。
もちろんでござる。
上様近衛様が参られました。
待たせておけ。
はっ。
前久大儀じゃ。
これは太閤様羽柴秀吉でござる。
西国でのお働き都にも聞こえておりまする。
滅相もない。
百姓出のこの秀吉近衛太閤様からじきじきにお言葉をいただき我が誉れにございます。
猿。
はっ。
世辞はよい。
前久の横につけ。
はっでは。
猿。
はっはっ。
この近衛は油断ならぬ男での。
わしは貴殿が天下布武を成し遂げるために朝家として力を貸しておるだけじゃ。
なんの。
余が朝廷の存続を脅かす挙に出たらその従順な仮面をかなぐり捨てようぞ。
だがそんな男だからこそおもしろい。
なおさら捨てがたいのよ。
過分な言葉いたみいる。
上様は百姓出のこの秀吉にお役目をくださった。
かつ朝家を代表される近衛様も織田の一員としてお働きになっておられる。
これこそ上様が身分や出生を問わぬお方であられる証しかと。
猿くどい。
前久聞こう。
譲位の後の遷都の一件でござる。
都を安土に移すもよしとの帝の仰せである。
しかれど帝は伊勢神宮の遷宮の制を御譲位の前に復したいとお望みでござる。
(前久)式年遷宮は大嘗会と並ぶ朝廷の重要な儀式。
この儀をなにとぞ聞き届けられよ。
見損なったわ。
金神だの遷宮だのこざかしき理由で譲位を先延ばしにしおって。
またもや見え透いた言い逃れをする気か。
滅相もない。
朝家に仕える身として伝えねばならぬことを申しておるだけで。
余はこの雪が溶けたら武田を攻め滅ぼす。
(秀吉)ははっ。
いよいよ兵をあげられまするか。
毛利征伐は猿に任せた。
ははっ。
東西の平定が終わったらすぐに即位の礼じゃ。
前久譲位の先延ばしは許さぬ。
しかし。
逆らう者は首が飛ぶばかりじゃ。
父上先ほどより信忠様がお越しになっております。
信忠が。
待たせた信忠殿。
父上に会われましたか。
先ほどな。
武田攻めが始まるとか。
私は父上に殺されまする。
武田攻めは織田家にとって宿願です。
その大将を命じられ私は少しでも父上に似ようと言葉遣いを真似ました。
行いも真似ました。
しかし。
私は父上のようにはなれませぬ。
狂ったように人を殺し謀略と裏切りの限りを尽くして天下をとる。
あのように野心に満ちたお方の真似はできませぬ。
父は私の首を斬る。
万一武田征伐に失敗したなら父は即刻私の首を。
偉大なる父上のもとその肩にかかる重圧はわかる。
しかし信忠殿おぬしに代わる者はおらぬのじゃぞ。
心を強く持ちなされ。
近衛様。
うむ。
茶を飲んでいかれるがよい。
天正十年二月三日。
信長様は御一門や重臣の方々を集めて出陣の下知を出されました
甲斐信濃への出陣は以下のとおりでございます。
伊那口より中将信忠卿の軍勢五万。
飛騨口より金森長近殿の手勢三千。
駿河口より徳川家康殿の軍勢三万。
関東口より北条氏政殿の軍勢三万。
なお上様は諸方の仕置きを終えたのちに七万余騎を率いてご出馬なされます。
信忠近う。
こたびの戦は織田家の命運がかかっておる。
承知いたしております。
敵に倍する大軍といえどもかの国は山深き要害の地。
信玄坊主の遺徳もいまだ生きておろう。
くれぐれも侮ってはならぬ。
敵地に馬を進めたのちは早馬にて日ごとに戦況を伝え父上の下知を仰ぐ所存でございます。
すべては伊賀の国のごとくじゃ。
(一同)はっ。
刃向かうものはことごとく斬り捨てい。
神社仏閣は残らず焼き払え。
(一同)はっ。
武田のにおいたりともかの国に残してはならぬ。
(一同)はっ。
いざ出陣じゃ。
(一同)おお。
織田軍は勇猛に戦い武田軍は敗走しました。
三月一日信忠様は武田の軍勢が立てこもる高遠城を包囲なさいました
申し上げます。
団忠直殿の軍勢が九段木の坂下まで退いておりまする。
申し上げます。
殿坂口の水野勢苦戦中。
馬鹿な。
こちらの十分の一しかおらぬ手勢で我らを押しているとは。
総大将殿。
敵は城を枕に討死と覚悟を決めた者ばかり。
このような相手に力任せに攻め込むとは得策ではござらぬ。
ここは兵を引いて陣容を立て直すべきかと。
一旦下した命令を引っ込めて総大将の面目が保てるか。
殿。
このような小城に手間取るとは何事じゃ。
ひと押しに押し潰せ。
高遠城はほどなく落ちました
近衛お上がお召しでございます。
帝は武田の行く末を案じておられます。
なんとか家名を残す手立てはございませぬか。
臣は明後日信長とともに出陣いたします。
その道すがらそのことについて話をする所存にござります。
甲府の恵林寺には快川和尚がおられます。
こちらの計らいもよろしくお頼み申します。
そちの他に信長にものを言える者はおらぬ。
公武の間が穏やかにいくように力を尽くしてくれ。
ははっ。
織田軍の勢いにのまれ新府城を捨てた武田勝頼様は敗走に継ぐ敗走でわずかな手の者と死を目前にしておられました
皆の者見よ。
とうとう信玄坊主の領地が我がものとなったわ。
(一同)おお。
まことにめでたき限りにございます。
この見渡す限りの山々がすべて我がものぞ。
(一同)おお。
信忠殿の御使者が持参なされました。
武田勝頼殿ならびに信勝殿の御首でござります。
信玄坊主も勝頼も都へのぼるが宿願であったはず。
せめてその首に都を拝ませてやれ。
ははっ。
近衛様帝は武田家の者らの助命を望まれていたとか。
再三信長に申し出たのだがあやつは聞く耳持たずだ。
これで武田家は根絶やしだ。
上様は容赦なきお方ですから。
はぁ帝のお嘆きを思うと気が重い。
信長様はな年貢を平等に取るそうじゃ。
飢える心配はなくなるぞ。
もう戦のない世になるぞ。
そうだな。
信長様。
信忠よき面構えになったのう。
おかげをもちまして無事に役目を果たすことができました。
武田は長年の宿敵じゃ。
それをかくも鮮やかに攻め滅ぼした功績は大きい。
信忠それをもってそちを織田家の世継ぎとする。
では織田家の跡目は信忠殿に。
いかにも。
我らとて異存はござらぬ。
近う寄れ。
盃を取らす。
案ずるな。
信忠。
余も重き責任を背負いて心も体も重き日があった。
その戦いは外ばかりではなく己の胸の内にもある。
たった一人で切り抜けねばならぬ孤独な宿命じゃ。
そなたはよう耐えた。
こののちも恐れることなく信じたとおりに生きるがよい。
お前に天道の加護があれば必ず道は開ける。
〜信忠飲め。
〜鬼のごとき殺戮をし人とは思えぬ振る舞いをいたしたかと思えば海のごとき深き情愛を見せて人心を掌握する。
あのような男こそ天下人の器であろうか。
父上今何と。
おぬしの信長への傾倒も今日ばかりは納得がいったわ。
まことでござるか。
ああ。
とうとう…とうとう父上が上様を認めなされた。
今日はよき日じゃ。
晴子様が甲斐の国まで信長の戦勝祝いに行かれると。
荒くれ男らの集まる陣へや。
前久も無茶を言いよる。
晴子様もお気遣いされぬと。
あらぬ噂が立っておりますから。
噂。
なんでも勅使として安土へ行かれた折寺の庫裏で信長様と二人でずいぶん長く共に時を過ごしておられたとか。
信長やと。
ほんの噂でございますが。
東国を束ねるのはそなたしかおらぬ。
励んでくれ。
この身は上様に差し上げたものでございます。
老骨ではござるがいかようにもお使いくだされ。
うむ皆の者無礼講じゃ飲め。
(一同)はっ。
(前久)天正三年のことを覚えとるか。
忘れるはずがありませぬ。
近衛様は丹波黒井城におられました。
わしは反信長の旗印をあげて織田軍と戦っておった。
あのときわしと信長殿の仲介を取り計らってくれたのがおぬしじゃった。
早いものであれから七年。
天下平定の日も近い。
天下統一がなったなら朝廷の御威光も津々浦々に行き渡りましょう。
我らも苦労した甲斐がありました。
光秀今何と申した。
苦労した甲斐があっただと。
お前ごときがどんな苦労をしたというのだ。
たわけ。
言わぬか。
よいか光秀そのきんかん頭によく叩き込んでおけ。
余は朝廷ごときのために天下統一をするのではない。
この国を守らんがためだ。
朝廷の威光を津々浦々に広めたいなら余を倒して天下をとれ。
わかったか。
うわっ。
御無体が過ぎまするぞ。
無礼者下がっておれ。
うわっ。
光秀。
晴天から一挙に雷鳴を轟かせる空のように信長様のお心変わりは激しいものでした。
のちに思うとこの日のこの出来事によって歴史の歯車は大きく回ることとなったのです
信長殿恵林寺が信忠軍に包囲され焼き討ちされようとしているとはまことであるか。
快川和尚らが武田の残党を匿っておったのじゃ。
和尚は帝の師に当たるお人じゃ。
京を出立する際も和尚の身は守ってくれとのお言葉をいただいておる。
処遇にはなにとぞ格段のご配慮を。
すべては総大将信忠に任せてある。
信忠殿快川和尚に手出しはならぬ。
近衛殿我らはたびたび使者を送り和尚には寺から出るように申しております。
されど立ち退きには応じられぬと立てこもっておるのでござる。
わしが和尚と話をする。
和尚。
近衛殿ではないか。
なぜここに。
国師様の御受難と聞いて駆けつけました。
なにとぞ寺を出てくださいまし。
その前に織田の軍勢を退去させよ。
面目なきことながらそれはなりませぬ。
ひとまず御退去を。
ここは信玄公の墓所ゆえ織田の恨みを買うはいたしかたなし。
されど寺社には世俗の力が及ばぬこと古来よりのしきたり。
その理信長には通用いたしませぬ。
そなた僧侶を殺し仏の道をないがしろにする信長の走狗と成り下がったか。
お叱りはいかようにも。
ですがここはひとまず御退去を。
さあ。
今は信長に力がある。
時の流れが味方しておるのは承知しておる。
だが勢いある者になびいて己を曲げる快川ではない。
信長だ。
もはやこれまで。
火を放て。
(一同)はっ。
和尚逃げてくだされ。
信忠様父上は。
和尚を説得すると山門へ。
何じゃと。
うつけめ。
信基前久を連れ出せ。
はっ。
和尚逃げてくだされ。
(読経)
(読経)逃げてくだされ皆々様。
お願いでござる。
火が回る前に。
早く。
父上父上。
ここを出てくだされ。
このままでは皆焼かれてしまう。
和尚早くここから。
くどい。
我らは三界不変の法輪に仕える身。
信長が許さんとあればこの寺と運命を共にするのみ。
父上危のうございます。
離せ離せ。
火はまさに迫っておる。
生死を超脱する境地を極むるはこのときである。
心頭滅却すれば火おのずから凉し。
(読経)ああ。
信長は極悪非道。
信長様に対して前久様が殺意を持たれたのはこのときが初めてだったのではないでしょうか。
ともかくこの出来事のせいで御両者の間に大きな亀裂が走ったのでした
このたびの勝ち戦まことにおめでとう…。
祝いはよい。
上様は先ほど恵林寺に立てこもりし不届き者を成敗されたのです。
では僧侶を。
あの者らをありがたがるは無知蒙昧たる証しじゃ。
地獄も極楽もあやつらの作り上げた偽りよ。
それのみならず寺を引き渡しとうないと罪なき信徒まで道連れにしおって。
許せぬ。
死にたくば己ひとりで死ね。
勅使殿しからば今宵はこれまでに。
お待ちください。
信長様晴子にはどうしても確かめたきことがあります。
聞こう。
都を移されるというのはまことですか。
都におります我が子供たちや親王に仕えし女御らに大事が及ぶことはないのでしょうか。
(蘭丸)お控えくだされ。
上様は本日お疲れで…。
よい。
母が子を守るように余はこの国を守らねばならぬ。
その妨げとあらば寺も焼く都を動かす朝廷のしきたりも変える。
天下布武が目指すは戦なき世じゃ。
叶うはずのない夢じゃと申す者も多い。
されど余は変えてみせる。
必ずこの国を。
刃向かう者はなぎ倒して進むのみ。
お詫び申し上げます。
晴子は狭き内裏のことしか考えておりませなんだ。
広きお考えに眼開かれる思いでございまする。
されど私は朝家の女。
しきたりを変えると言われてはとても穏やかではおられません。
御内室。
不思議じゃ。
そなたの声を聞いておると荒ぶる心がしずまる。
明日富士へ行く。
ついて参れ。
富士へ。
甚助か。
(甚助)信長のもとに晴子が来た。
知っておる。
信長は晴子を富士に誘ったぞ。
それが。
信長は晴子に執心じゃ。
まさかあの二人。
お方様。
鬼を潰す悪魔となるか。
火傷はひどいのですか。
お気遣いなくこれしきの怪我戦ではままあること。
それより信長殿の御様子はいかがでした。
戦勝祝いの品をお納めして参りました。
それは何より。
ただ明日からの富士遊覧の旅に付き添うよう命じられました。
なにとぞ前久様より親王の内室の身で同道はできぬとお伝えくださいまし。
さていかがいたしたものか。
お方様その申し出受けてはもらえませぬか。
(房子)そのようなことをすれば親王様が何と思われるか。
武田を討った信長は朝家にとっても一層手ごわき相手となりました。
ついては政を離れて信長と気心の知れた者が朝家にあれば万一の際両者のいさかいを止める手立てともなりましょう。
そのお役目を私にやれと。
(前久)お方様以外にはできぬこと。
(房子)されど親王様には何と。
近衛のほうからお方様は伊勢参りに行かれたとお伝えいたしましょう。
親王様に偽りを。
朝家のためでござる。
近衛殿。
何が起きても子供たちは守っていただけますね。
必ずや。
天正十年四月十日。
信長様は甲府をたって富士遊覧の旅に出られました。
その狙いは武田攻めの功績で駿河の国の大半を与えられた家康様との結束を内外に示すことにありました
ひい様よくもそんな平気な顔をしていられますね。
後宮にはひい様を追い落とそうとしている女房衆がたくさんいるのですよ。
この道中のことが万一漏れたら親王様はもとよりすべての方々に顔向けができなくなります。
もしそうなったら私は髪を下ろします。
何と。
覚悟なしにここまで来てはおらぬ。
おお。
富士か。
見事じゃ。
(家康)ぜひこれを上様にご覧いただきたかったのでございます。
美しい。
まことに日本一の名山じゃ。
家康よき働きをした。
ははぁ。
まあすばらしい。
なんと大きなお山だこと。
きっと神がおつくりになったのです。
来てよかった。
ここまで。
富士の神様なにとぞひい様をお守りくださいませ。
上様は舟遊びをすると仰せでございます。
晴子笛を聴かせよ。
(笛の音)〜伸びやかな音色じゃ。
信長様のおかげです。
旅に同道させていただきさまざまなものを見聞きして晴子の心は明るくなりました。
朝家の立場を忘れた罰がいつか当たるやもしれませぬが。
今しばらくこのままでいよ。
振り向いてはならぬ。
まあきれい。
もうよい。
後ろを見よ。
〜なんと美しい。
〜余は誠仁親王が即位なされたのちしかるべき時に五の宮に譲位していただく。
そうなればそなたがこの国の母じゃ。
あまりにおそれ多きこと。
よい。
そなたはそなたじゃ。
しきたりなぞ忘れよ。
母たることも忘れよ。
生きるも死ぬも己一人。
ならば思いのまま生きるのみじゃ。
朝家では一人でも多くの子を成せとそれだけを求められる日々でした。
今のようなお言葉をいただいたことはありません。
ならば空を飛ぶひばりにさえなれるような気が。
ひばりとなりて余とともに参れ。
異国の地までも。
〜これは武田征伐の戦勝祝いの品でござる。
これに加えて帝は信長様に恩賞として望みの位を授けると仰せでございます。
関白太政大臣。
征夷大将軍のいずれでも許すと。
その前に勘修寺殿。
昨年約束いたした帝の譲位の件お聞かせ願えますか。
もちろんでござる。
ただし官位の授与のあとでなければ帝の譲位は応じられませぬ。
さすがじゃ。
考えたのう。
帝が退位される前に冠位を頂けば余は次の帝となられる誠仁親王の後見人の立場となる。
さすれば誠仁親王に終生仕えるのがしきたりであろう。
ならば誠仁親王に退位いただきそののち五の宮に御即位いただくことができぬようになると。
そのように勘ぐりなさいますな。
帝は信長様に早く冠位をお与えになりたいだけでいらっしゃいますゆえ。
(蘭丸)勘修寺殿上様を愚弄する気か。
お蘭控えよ。
(蘭丸)しかし。
勅使殿ならばこの信長喜んで恩賞を受けよう。
ただしそれだけの御意あらせられるならこの安土へ帝の行幸を仰ぎ冠位の授与の儀式を行っていただきたい。
ならぬなら誠仁親王に名代としてお越しいただきたい。
五の宮は余の養子であるゆえ連れだって参られるがよかろう。
信長を誅する。
近衛様信長を誅するとは。
幾人かの武将を巻きこんで謀反を起こさせるのじゃ。
お気は確かでござるかそのようなこと。
あやつはただの武将ではござりませぬ。
天下をとろうという男でござる。
今やつを誅さねば朝廷はやつの足で踏み潰される。
それでもいいのか。
あやつに恨みは山のごとくあれど。
迷うな。
一度口にした以上この前久は引かぬぞ。
ならばならばこの吉田も。
この晴豊も。
うむ。
まず備後の義昭を呼び戻し足利幕府を再興するとふれて旧幕府勢力を結集する。
はあ。
幕府再興を大義名分とすれば細川藤孝や明智の賛同も得やすい。
それに義昭を庇護しておった毛利を味方につけることもできる。
はあすでにそこまでお考えとは。
初めに細川じゃ。
続いて。
日向守殿を。
うむ。
光秀は信長に近い。
誘いをかけるのは慎重にせねば。
最も難題たるは羽柴秀吉よ。
上様誠仁親王を安土にお招きして王朝を立てられるというのはまことでござりまするか。
猿地獄耳じゃの。
いえ僭越ながらそこまで強硬たる態度をお示しになれば公武の間に遺恨が残るのではありますまいか。
いや帝は上様にいかなる位を与えてもよいと仰せと。
足らぬのじゃ征夷大将軍では。
足らぬ。
蘭丸。
はっ。
猿。
はっ。
我が国はいずこにある。
はっ。
ええ。
ああこの小さき国でござります。
日本がイスパニアや明の属国にならずにおられるのはこの小ささゆえ。
されど国力が増せばいつ異国が侵略してくるやもしれぬ。
おそれながら上様は異国との関わりをお考えで。
国内の戦や政の権限は武家にある。
されど外交のすべては朝廷が保持し動かしておる。
しかるにあやつらはいまだこの地が丸いことも知らぬ。
はっ御意。
さればこそ余が朝廷の上に立ち異国との交渉事すべてをこの手に掌握せねばならぬ。
この国が攻め滅ぼされる前にこの国を一つにまとめ信長の軍ありと知らしめるのじゃ。
応じぬぞ。
安土へ来いとはもってのほかじゃ。
ごもっとも。
しかし信長は行啓か御譲位かと迫っております。
思い切った御意が必要かと。
信長は五の宮の即位まで考えておる。
帝の父太上天皇となる気よ。
そんな無体なことを許せると思うか。
では信長を征伐なさいませ。
あほな。
そないなことどうやったらできる。
親王様のお覚悟一つで。
近衛そなた本気でそんなことを。
無論。
このわしに何ができるというのじゃ。
おそれながら。
このような令旨を出されるべきかと。
これは武将らに挙兵を命ずる勅命ではないか。
いかにも。
時期を見てお出しくだされ。
親王様。
これは余談ながら信長は晴子様と通じております。
重ねて申し上げます。
信長は将軍職に就く前に我らの手で誅伐いたします。
五月十五日。
徳川家康様は信長様の招待で安土に来られました。
饗応役を命ぜられたのは光秀様でした
ああ。
ほうこれは何という料理でござろうか。
テンポラスというポルトガルの料理じゃ。
なかなか美味であろう。
いやぁこのようにうまい料理初めていただきました。
ぜひ当家の膳部の者にも作り方を教えていただきとうございます。
(前久)なんと鴫ではないか。
近衛どうした。
いえ。
許す。
申せ。
しからば申し上げます。
日向守ともあろう者がこのような献立をあつらえるとは解せませぬ。
何故でござりましょう。
賓客をもてなすときには鶴雁雉の三鳥を用いるもの。
しかるにこれでは四鳥。
しかも青鷺や鴫のようなげすな鳥を使っては客に対し礼を失することになりましょう。
(光秀)おそれながら申し上げます。
うむ。
この鳥はいずれも今日の鷹狩りの獲物でございます。
三鳥の格式ありとは言え旬の品々を新しきうちにお召し上がりいただきたくこのような献立にしたのでございます。
(前久)これは日向守の言葉とも思えぬ。
四鳥は死に通じ鴫は死期に通じることを知らぬわけではあるまい。
その禁を犯すとは他意あってのことか。
めっそうもない。
決して祝儀の席に出してはならぬものを。
黙れ前久。
つまらぬ決め事を申し立ておって。
食う気が失せたわ。
はあ。
上様家康殿申し訳ござりませぬ。
いやなんの。
(蘭丸)申し上げます。
備中高松の羽柴筑前殿よりの早馬にござります。
ほう。
毛利の本隊五万が高松城の救援に出張ったそうじゃ。
猿め。
出馬を乞うなどと抜け目なく機嫌を取りおるわ。
いかがなされます。
毛利を叩く。
おう。
光秀饗応役はもうよい。
急ぎ丹波へ戻り戦の支度をせよ。
ははっ。
加えてその方から近江丹波の所領を召し上げる。
なっなんと。
代わりにぶんどった西国二か国を与えよう。
おそれながら二か国とはどこでございましょう。
毛利平定を終えてから決める。
それでは…。
不服か。
めっそうもござりません。
しかれど丹波は治政に着手したばかりゆえ今しばらくの猶予をいただきたく。
ならん。
天下平定を急がねばならぬ。
そちにもますますの忠勤を命ず。
ははっ。
明智殿お話があります。
ついてまいられよ。
丹精こめた領地をお取り上げとは信長殿も無慈悲なことをなさるのう。
上様は昔とは違う。
わしはもう用済みなのじゃ。
御免。
近衛様。
その方に聞きたきことあって参った。
何事でござりましょう。
光秀信長が命じたとおり毛利を攻める所存か。
いかにも。
毛利は足利義昭を奉じておる。
毛利を討つは足利幕府の息の根を止めることとなるぞ。
十七年前のことを覚えておるはずじゃ。
わしとそちで将軍義輝を間に誓い合ったではないか。
朝廷や幕府をあるべき姿に戻そうと。
義輝は討たれたが義昭はまだ幕府再興の志を強く持っておる。
しかれど信長は朝廷や幕府の秩序を打ち壊して己の意のままになる天下を築こうとしておる。
それに従い毛利征伐に出るのはわしや義輝への裏切りではないか。
めっそうもない。
この光秀は信長様に仕える身ゆえお言葉に従うまで。
近衛様を裏切るなどとは。
もしや近衛様は上様と心を一つにしてはおられぬのですか。
信長は朝廷の敵じゃ。
なんと。
そちの軍勢で滅ぼせ。
そして義昭を都に呼び戻し幕府を再興するのじゃ。
上様を滅ぼす。
うん。
そちは土岐一族の末えいであろう。
朝廷を打ち壊さんとする信長を誅すべき立場にあるはず。
さあ討つと誓え。
近衛様にそのようなお考えがあるとは思いもしませんでした。
しかし。
我が力となれぬと申すならここでわしを斬れ。
そのようなことが私にできるはずがござりませぬ。
近衛様は父とも兄とも慕うお方。
では。
明智殿お一人ではござらぬ。
我らとともに幕府再興を誓った方々でござる。
(前久)どうじゃ光秀。
されど近衛様今上様を亡き者としたなら天下平定がならんとしているこの国がまた乱れるのでは。
その前に都は焼かれ朝廷は灰となる。
それでもよいのか。
信長を討って幕府を救うことこそ武士たる者の取る道じゃ。
見よ。
誠仁親王よりのお言葉でござる。
ははあ。
ははあ。
ははあ。
信長を討てと命じてある。
ははあ。
挨拶は無用。
用件を申せ。
はい。
六月一日に内裏で御譲位の儀が執り行われます。
ついてはその翌日に将軍宣下を行いますので至急上洛くださいますようお願い申し上げます。
(蘭丸)譲位ののちに将軍宣下するとおっしゃるのですね。
はい。
誰の計らいじゃ。
近衛太閤様です。
勅使殿近衛殿も親王様もあれほど強く宣下の前の御譲位に反対しておられたのに急なお心変わりはなぜでござる。
近衛様のお言葉をお伝えいたします。
信長様は武田を滅ぼし東国を支配下におさめられた。
中国の毛利も四国の長曾我部もじきに織田の軍門に下るであろう。
それならば中国征伐を前に将軍に任じて公武の関係を円満に保つべきであろうと。
朝家の方々もその意見に従ったとか。
親王もか。
はい。
事ここに至ればやむなしと。
上様とうとうお望みが叶いましたな。
坊丸嬉しゅうございます。
騒ぐな。
(蘭丸)お許しください。
これまでの朝廷との経緯を思いますと喜び抑えがたく。
浮かれてはおれぬ。
こののちも過酷な責務を負わねばならぬ。
異国にも目を配らねば。
(蘭丸)はっ。
とは言え…。
愉快じゃ。
はははははは…。
お蘭扇を持て。
(蘭丸)はっ。
「人間五十年」「下天のうちを比ぶれば」「夢幻の如くなり」「一度生をうけ」「滅せぬもののあるべきか」「滅せぬもののあるべきか」わしは朝敵信長を討つ。
勅命とあればぜひもございますまい。
されど。
何じゃ。
足利幕府の再興を阻むつもりはございませぬが我が軍は天下布武を夢みて戦ってまいりました。
時の歯車を昔に戻す戦となれば兵らの士気が鈍るのは必定。
信長公を討つのなら我に天下人となれと言うのか。
殿にその御覚悟あれば我が軍は決死の覚悟で団結しましょう。
わしにそのような野心はない。
事をなす前に全軍に下知してくだされ。
天下をとると。
わしに野心は…。
お心に正直になられませ。
殿こそ天下人の器。
〜この国を我が手に。
〜敵は二十九日に上洛。
貴様何者。
二百にも満たぬ供揃えなり。
まことか。
余を倒して天下をとれ。
わかったか時は今あめが下しる五月かな。
なんと近衛様が上様に謀を。
どえりゃあことだ。
すぐに上様に使者を。
馬鹿。
その書状はこのわしに動くなと命じておるのじゃ。
動けば斬るとな。
近衛様はそこらへんはよう考えておいでの方よ。
では我らはこの備中にて指をくわえて見ておれと言うのでしょうか。
心配はいらにゃあで。
上様は不死身よ。
兄上お呼びと聞きました。
明日本能寺へ参る。
うかがっております。
帝の御譲位と同じくして征夷大将軍におなりになるとか。
めでたきことにございます。
将軍宣下を賜ったらその足で毛利征伐じゃ。
御武運お祈りいたしております。
お市安土のこの城そなたにくれてやるわ。
なんと。
余は六十六か国を平定したなら大坂に新しき城を建てる。
そこから大船団を従えてローマ教皇に会いに行くのじゃ。
なにやら市にはわからぬ話にござります。
そなたも嫁ぎたければ嫁げ。
思いのまま生きよ。
おやめくだされ。
そのような優しき兄上など我が兄らしくありませぬ。
信長は終生鬼であらせられませ。
鬼か。
よう言うた。
はははははは…。
五月二十九日早朝。
信長様はわずか百五十の手勢で安土を出立されようとしていました
上様。
うん。
供の者の数が今少し。
御譲位の祝賀に軍勢を動かすのは好まぬ。
はっ。
出立じゃ。
(一同)おお。
こうして本能寺に向かう信長様の手勢は百五十とあいなったのでございます。
私はあのときの信長様の笑顔を今でもまざまざと思い起こすことができます。
まことに晴れやかなお顔でした
御践祚の儀先刻御所にて無事執り行われましたことここに御報告いたします。
大慶である。
前久の計らい大儀であった。
明日は将軍宣下の運びとなります。
出陣前の慌ただしい時期ゆえ大儀とは存じまするが午の刻までに御参内なされよ。
あいわかった。
祝儀の引き出物に名物を持参した。
眼福を得るがよい。
思えば前久とも長いつきあいよのう。
ここまでこぎつけたはそちのおかげじゃ。
礼を言う。
めっそうもない。
すべて貴殿の力によって成し遂げられたこと。
わかっておろうがこたびのこと一個の野心からではない。
この国を新しくつくりかえるためには公武すべての力を我が手に掌握する必要があったのじゃ。
はっ。
この国のために今後も力を貸してくれ。
御尊意重々に承知しております。
〜よいのじゃこれで。
(笑い声)何をしておられるのですか。
御践祚の儀が終わったあとはおこもりになられるしきたりではございませぬか。
皆下がれ。
それに明日は将軍宣下の儀が。
見事に騙されおって。
明日信長が将軍になることはない。
何と。
ははははっ。
何をお隠しなのです。
お話しください。
はぁ恐ろしい女子や。
信長と通じおって。
何を計らっておいでなのです。
そなたの恋しい男を誅するのよ。
信長を討てと明智日向守に勅命をくだした。
なんと。
そなたを失いたくないんや。
何もかも忘れるなら無念を忍んで許すゆえ。
行かさぬわ。
我は天下のために立つ。
我が殿は天下人となられるのじゃ。
僧を殺め寺社を焼き討ちにする朝廷の逆臣を征伐するのじゃ。
敵は本能寺にあり。
(一同)おお。
官兵衛。
万が一上様に何かあれば心ならずもこの猿めは天下の謀に加担したことになる。
されば明智を討ち天下をとるしか上様へのお詫びのしようがにゃあで。
天下。
近衛殿など恐れるにあらず。
これは千載一遇の好機じゃ。
殿ならば。
すぐさま京に返し明智を討つ。
はっ。
さっさとあの城の主清水宗治に腹切らせい。
兵糧を集め死ぬ気で京まで走るのじゃ。
この猿一世一代の大博打よ。
はっははっ。
信長様。
うっ。
この身に。
信長様。
(房子)ひい様ひい様どこに行かれました。
房子ここです。
早く。
信長様。
(坊丸)兄上。
(蘭丸)敵襲じゃ。
(蘭丸)上様。
これは謀反か。
御意。
何者じゃ。
明智日向守と思われます。
(一同)おお。
坊丸女どもを連れて落ちよ。
しかし。
余は死なぬ。

(蘭丸)上様落ちてくだされ。
お蘭奥に火を放て。
はっ。
父上明智様が御謀反ですぞ。
父上。
父上が謀反を仕組まれたのですか。
何故。
何故。
答えてくだされ。
何故信長様を。
わかりまする。
父上は偉大なる信長様に嫉妬しておられたのじゃ。
超えられぬ相手がゆえ成敗を。
この国であやつの偉大さをいちばん知っておったのはわしぞ。
信長をいちばん崇拝しておったのもわしぞ。
あいつの唯一の朋輩もわしぞ。
父上。
朝廷のためこの国のため。
あやつら火を放ったか。
必ず信長の首をあげよ。
信長様。
〜信長。
前久め。
上様御座の間へ。
お蘭任せた。
はっ。
〜何人もここから先には通さん。
〜「人間五十年」「下天のうちを比ぶれば」「夢幻の如くなり」「一度生をうけ」「滅せぬもののあるべきか」「滅せぬもののあるべきか」是非に及ばず。
〜信長様。
〜信長様。
(坊丸)これが信長様が葬られることとなった野望のすべてです。
秀吉様は備中からの大返しを果たされ自ら天下人となられました。
前久様の足利幕府再興の野望は挫かれたのです。
また本能寺の変に前久様が関わっていたことのすべての記録も消し去られました。
よくお話しくださいました。
私のほうこそお礼を申し上げねば。
生き残った私は恥多き日々を送ってまいりました。
されどこうして信長様と晴子様の燃える思いをあなた様にお伝えできて積年の胸のつかえが取れました。
これも信長様のお引き合わせかと。
信長様。
兄上。
おそばに。
ひばりです。
母上がお好きだった鳥です。
2015年世界中から2016/01/02(土) 21:00〜23:58
テレビ大阪1
新春時代劇「信長燃ゆ」【東山紀之×織田信長 本能寺の変の真相が明らかに!】[字]

東山紀之×織田信長!原作直木賞作家・安部龍太郎!本能寺の変を新たな視点で描く歴史大作!天才二人の哀しき運命、許されぬ愛…天下統一を志した信長の野望の真実とは?

詳細情報
番組内容
天正九年(1581年)。天下布武を掲げる織田信長(東山紀之)は、京での馬揃えで己の威勢を天下に示そうとしていた。関白で信長とは朋輩の近衛前久(寺尾聰)は、朝廷の権威を守るべく信長の動きをけん制していたが、天下平定の先に見据えた信長の恐ろしい野望に気づく。それは朝廷、国を越えた野望…。一方、信長と誠仁親王(太川陽介)の内室・晴子(栗山千明)は許されぬ恋に落ち…。刻々と迫る本能寺の変。そこには意外な真相が!
出演者
織田信長/東山紀之、勧修寺晴子/栗山千明、近衛信基/佐藤隆太、織田信忠/早乙女太一、森蘭丸/中島裕翔(Hey! Say! JUMP)、吉田兼和/笹野高史、お市/高岡早紀、快川和尚/津川雅彦、甚助/的場浩司、上臈の局/萬田久子、羽柴秀吉/北村有起哉、明智光秀/石丸幹二、近衛前久/寺尾聰
出演者つづき
勧修寺晴豊/渡部豪太、坊丸/神山智洋(ジャニーズWEST)、誠仁親王/太川陽介、丹波の局/芦川よしみ、房子/川俣しのぶ、前田利家/風間トオル、柴田勝家/伊吹吾郎、徳川家康/山田純大、滝川一益/金山一彦、細川藤孝/池内万作、若草の君/白鳥羽純、斎藤利三/四方堂亘、闘鶏場の見物客/蛭子能収、35年後の坊丸/内藤剛志
原作
安部龍太郎『信長燃ゆ』(新潮文庫刊、日本経済新聞出版社刊)
脚本・音楽・監督
【脚本】塩田千種
【音楽】栗山和樹
【監督】重光亨彦

制作
【制作協力】東映
【製作著作】テレビ東京

ジャンル :
ドラマ – 時代劇

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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