2016年01月07日
新種牡馬辞典 - キングズベスト
新種牡馬辞典、第三弾は*キングズベスト。なかなか思うように成績の上がらないダーレージャパンが送り出す最終兵器とも言うべき種牡馬です。近親に日本でもおなじみのビッグネームが並ぶ超大物で、ダーレーが日本に拠点を置いていなければ決して輸入されることの無かった種牡馬でしょう。すでにダービー馬エイシンフラッシュを出しているように日本競馬との相性も実証済みで、内国産優位の日本競馬に大きな風穴を開けることができるでしょうか。
*キングズベスト King's Best
米国産 1997年生 鹿毛 父系:キングマンボ系
父 Kingmambo は米国産馬で、通算13戦5勝。父にミスプロ、母にミエスクを持つ快速を武器にマイルGIを3勝した。種牡馬としての代表産駒は英愛2000ギニーなどGI4勝の Henrythenavigator 、ベルモントSなどGI4勝の Lemon Drop Kid 、仏オークスなどGI5勝の Divine Proportions など。日本でもダービー馬キングカメハメハ、ジャパンCなどGI3勝の*エルコンドルパサーなどを出しており、海外供用種牡馬として最高水準の成績を残している。
母 Allegretta は英国産馬で、通算9戦2勝。英GIIIオークストライアル(T11.5F)で2着がある。産駒に凱旋門賞を制した Urban Sea がおり、その Urban Sea は繁殖牝馬として英愛ダービーの勝ち馬で欧州最高の種牡馬の1頭 Galileo 、英ダービーや凱旋門賞などGI6勝を制した名馬 Sea the Stars 、GI2勝の Black Sam Bellamy 、米GIダイアナSの勝ち馬 My Typhoon などを出している。
祖母 Anatevka は独国産馬で、通算8戦4勝。重賞実績はなく、リステッドレースでの入着が目立つ程度である。産駒に独セントレジャーなど重賞4勝の Anno 、独GIIウニオンレネンなど重賞3勝の Anatas などがいる。
<競走成績>
2歳時はリステッドレースを制した程度だったが、3番人気で出走した英2000ギニーを快勝し、見事GIウイナーとなった。ただ、続く愛ダービーのレース中に故障を発症し、そのまま現役を引退することとなった。実績的にはGIを1勝しただけであったが、英2000ギニーでは当時無敗の Giant's Causeway に3馬身半もの差をつけて圧勝しており、競走馬として相当なポテンシャルを持っていたことは間違いない。
<海外での供用実績>
引退後は2001年よりアイルランドのダーレー傘下・キルダンガンスタッドにて種牡馬入り。すでに種牡馬として10年以上のキャリアがあり、世界各国で活躍馬を出しているが、特に著名なのは英ダービーを7馬身差で制した*ワークフォースだろう。他にもスプリンターの King's Apostle 、マイラーの Creachadoir 、クラシックのエイシンフラッシュ、ステイヤーの Royal Diamond と様々なタイプの産駒を送り出しており、芝ならオールマイティに走るといった印象。ちなみに中央芝での平均勝ち距離は2000mを軽く越え、2154mとなっている。
<供用実績>
2013年よりダーレージャパン・スタリオンコンプレックスに移動し供用が開始されると、すでにダービー馬エイシンフラッシュを出していたこともあって初年度から170頭を超える牝馬に種付けを行った。2年目以降は100万円増額されての供用となったが、エイシンフラッシュが社台で150万円で種付けできることもあって120頭ほどの数字に落ち着いている。元々の実績を考えれば150万はかなり格安(当時の*ストーミングホームと同額)だったわけで、すでに種牡馬としては高齢といえる年齢に差し掛かっていることもあり、このあたりの数字がむしろ適正とも言える。
<注目の産駒>
海外時代の産駒を見る限り、欧州系の牝系と良く合う。特に母父サドラーとの相性は抜群で(*ワークフォース、Creachadoir 、*コスモメドウなど)、注目は*ダンスドゥフォコン。今のところ繁殖馬として結果は残せていないが、母系の豊富なスタミナにスピードが乗れば。もちろんその意味で*ムーンレディも絶対にはずせない。逆に母系からスピードを注入するなら上に短距離GIの勝ち馬がいるタイキクラリティとロージーミストあたりだろうか。セクシーココナッツは母父ダンスインザダークで疑似ラブリーデイ配合。
それ以外にもアサヒライジング(クイーンS)、オースミコスモ(関屋記念など重賞3勝)、サンデーピクニック(クレオパトル賞、兄トーセンキャプテン)、ソリッドプラチナム(マーメイドS)、タバサトウショウ(姉スイープトウショウ)、テイエムプリキュア(阪神JF)、レッドアゲート(フローラS)といった実績馬・重賞馬の母が目白押しである。
<傾向予想> 芝:◎ ダ:△ 距離:中〜長 ピーク:3歳〜
ミスプロ系だが、現時点で中央の芝が24勝に対しダートはわずか1勝。息子の*ワークフォースもそうであるようにダートは走らない。ただ、マル外の大半が欧州系の牝馬を母に持つ産駒なので、ミスプロやヌレイエフのクロスがあればダート巧者が出る可能性は十分ある。海外ではスプリンターも出しているが、母系に眠るドイツ系の血は日本ではいかにも重く、ベストは2000m以上。最低でもマイルはほしいところ。仕上がりは遅く、2歳戦は不得意とするはず。逆に古馬になってからの成長力にはかなり期待できそう。
海外供用時代にそれなりの結果を残して後に日本に種牡馬として輸入されるケースは多々あるが、それがダービー勝利であったのは同馬が初めてである。さらに父系はキングマンボ、近親にガリレオやシーザスターズと一昔前なら大騒ぎになるようなレベルの種牡馬であるはずだが、それを押しのけて今新種牡馬の話題の中心にいるのが父内国産馬勢だというのが今の日本競馬のレベルの高さを表しているのではないだろうか。もちろん種牡馬としての実績は随一だけに、若造たちにその力をまざまざと見せ付ける可能性も十分ある。いずれにせよ産駒のデビューが待ち遠しい。
米国産 1997年生 鹿毛 父系:キングマンボ系
<血統構成> 5代内クロス: | Alchimist 5×5 |
Kingmambo USA 鹿毛 1990年 | Mr. Prospector | Raise a Native |
Gold Digger | ||
Miesque | Nureyev | |
Passadoble | ||
Allegretta GB 栗毛 1978 | Lombard | Agio |
Promised Lady | ||
Anatevka | Espresso | |
Almyra |
父 Kingmambo は米国産馬で、通算13戦5勝。父にミスプロ、母にミエスクを持つ快速を武器にマイルGIを3勝した。種牡馬としての代表産駒は英愛2000ギニーなどGI4勝の Henrythenavigator 、ベルモントSなどGI4勝の Lemon Drop Kid 、仏オークスなどGI5勝の Divine Proportions など。日本でもダービー馬キングカメハメハ、ジャパンCなどGI3勝の*エルコンドルパサーなどを出しており、海外供用種牡馬として最高水準の成績を残している。
母 Allegretta は英国産馬で、通算9戦2勝。英GIIIオークストライアル(T11.5F)で2着がある。産駒に凱旋門賞を制した Urban Sea がおり、その Urban Sea は繁殖牝馬として英愛ダービーの勝ち馬で欧州最高の種牡馬の1頭 Galileo 、英ダービーや凱旋門賞などGI6勝を制した名馬 Sea the Stars 、GI2勝の Black Sam Bellamy 、米GIダイアナSの勝ち馬 My Typhoon などを出している。
祖母 Anatevka は独国産馬で、通算8戦4勝。重賞実績はなく、リステッドレースでの入着が目立つ程度である。産駒に独セントレジャーなど重賞4勝の Anno 、独GIIウニオンレネンなど重賞3勝の Anatas などがいる。
<競走成績>
年 (歳) | 戦 | 勝 | 主な実績 |
1999年 (2歳) | 3 | 2 | 1着 エイコムS(GB-L) T6F 1着 未勝利戦 T7F 5着 デューハーストS(GB-I) T7F |
2000年 (3歳) | 3 | 1 | 1着 英2000ギニー(GB-I) T8F 2着 クレイヴァンS(GB-III) T8F |
計 | 6 | 3 |
2歳時はリステッドレースを制した程度だったが、3番人気で出走した英2000ギニーを快勝し、見事GIウイナーとなった。ただ、続く愛ダービーのレース中に故障を発症し、そのまま現役を引退することとなった。実績的にはGIを1勝しただけであったが、英2000ギニーでは当時無敗の Giant's Causeway に3馬身半もの差をつけて圧勝しており、競走馬として相当なポテンシャルを持っていたことは間違いない。
<海外での供用実績>
馬名 | 生年 | 主な実績 |
エイシンフラッシュ | 2007 | 1着 ダービー(GI) T2400 1着 天皇賞(秋)(GI) T2000 |
*ワークフォース | 2007 | 1着 凱旋門賞(FR-I) T2400 1着 英ダービー(GB-I) T12F |
Proclamation | 2002 | 1着 サセックス(GB-I) T8F |
Royal Diamond | 2006 | 1着 愛セントレジャー(IRE-I) T14F |
Sajjhaa | 2007 | 1着 ジェベルハッタ(UAE-I) T1800 1着 ドバイデューティフリー(UAE-I) T1800 |
King's Apostle | 2004 | 1着 モーリスドゲスト賞(FR-I) T1300 |
Creachadoir | 2004 | 1着 ロッキンジS(GB-I) T8F |
Dubai Surprise | 2002 | 1着 リディアテシオ賞(ITY-I) T10F |
*コスモメドウ | 2007 | 1着 ダイヤモンドS(GIII) T3400 2着 阪神大賞典(GII) T3000 |
引退後は2001年よりアイルランドのダーレー傘下・キルダンガンスタッドにて種牡馬入り。すでに種牡馬として10年以上のキャリアがあり、世界各国で活躍馬を出しているが、特に著名なのは英ダービーを7馬身差で制した*ワークフォースだろう。他にもスプリンターの King's Apostle 、マイラーの Creachadoir 、クラシックのエイシンフラッシュ、ステイヤーの Royal Diamond と様々なタイプの産駒を送り出しており、芝ならオールマイティに走るといった印象。ちなみに中央芝での平均勝ち距離は2000mを軽く越え、2154mとなっている。
<供用実績>
年度 | 種付料 | 種付数 | 生産数 | 登録数 | 供用場所 |
2013 | 150万円 | 174 | 121 | 118 | ダーレージャパン |
2014 | 250万円 | 128 | − | 85 | 〃 |
2015 | 250万円 | 124 | − | − | 〃 |
2016 | 250万円 | − | − | − | 〃 |
2013年よりダーレージャパン・スタリオンコンプレックスに移動し供用が開始されると、すでにダービー馬エイシンフラッシュを出していたこともあって初年度から170頭を超える牝馬に種付けを行った。2年目以降は100万円増額されての供用となったが、エイシンフラッシュが社台で150万円で種付けできることもあって120頭ほどの数字に落ち着いている。元々の実績を考えれば150万はかなり格安(当時の*ストーミングホームと同額)だったわけで、すでに種牡馬としては高齢といえる年齢に差し掛かっていることもあり、このあたりの数字がむしろ適正とも言える。
<注目の産駒>
母名 | 性 | 備考 |
セクシーココナッツ | 牝 | 松田牧場の生産馬。母はダンスインザダーク産駒で、中央1勝。半兄に新潟2歳Sの勝ち馬ザラストロがいる。社台ファームが2400万円で落札。 |
タイキクラリティ | 牡 | パカパカファームの生産馬。母はスペシャルウィーク産駒で、中央1勝。半兄にNHKマイルCの勝ち馬クラリティスカイがいる。ダーレージャパンが3400万円で落札。 |
*ダンスドゥフォコン | 牝 | 田湯牧場の生産馬。母は愛国産馬で、不出走馬。全兄にシングスピールの父 In the Wings 、同じく全兄にホットシークレットの父*ハンティングホークがいる。下河辺行信氏が620万円で落札。 |
*ムーンレディ | 牡 | 社台ファームの生産馬。母は独国産馬で、GII独セントレジャーなど重賞4勝。全兄にエイシンフラッシュがいる。社台サラブレッドクラブにて7000万円で募集されている。 |
ロージーミスト | 牝 | 杵臼牧場の生産馬。母は*サンデーサイレンス産駒で、中央1勝。半兄にNHKマイルCなどGI2勝のグランプリボスがいる。ユニオンオーナーズクラブにて1800万円で募集されている。 |
海外時代の産駒を見る限り、欧州系の牝系と良く合う。特に母父サドラーとの相性は抜群で(*ワークフォース、Creachadoir 、*コスモメドウなど)、注目は*ダンスドゥフォコン。今のところ繁殖馬として結果は残せていないが、母系の豊富なスタミナにスピードが乗れば。もちろんその意味で*ムーンレディも絶対にはずせない。逆に母系からスピードを注入するなら上に短距離GIの勝ち馬がいるタイキクラリティとロージーミストあたりだろうか。セクシーココナッツは母父ダンスインザダークで疑似ラブリーデイ配合。
それ以外にもアサヒライジング(クイーンS)、オースミコスモ(関屋記念など重賞3勝)、サンデーピクニック(クレオパトル賞、兄トーセンキャプテン)、ソリッドプラチナム(マーメイドS)、タバサトウショウ(姉スイープトウショウ)、テイエムプリキュア(阪神JF)、レッドアゲート(フローラS)といった実績馬・重賞馬の母が目白押しである。
<傾向予想> 芝:◎ ダ:△ 距離:中〜長 ピーク:3歳〜
ミスプロ系だが、現時点で中央の芝が24勝に対しダートはわずか1勝。息子の*ワークフォースもそうであるようにダートは走らない。ただ、マル外の大半が欧州系の牝馬を母に持つ産駒なので、ミスプロやヌレイエフのクロスがあればダート巧者が出る可能性は十分ある。海外ではスプリンターも出しているが、母系に眠るドイツ系の血は日本ではいかにも重く、ベストは2000m以上。最低でもマイルはほしいところ。仕上がりは遅く、2歳戦は不得意とするはず。逆に古馬になってからの成長力にはかなり期待できそう。
海外供用時代にそれなりの結果を残して後に日本に種牡馬として輸入されるケースは多々あるが、それがダービー勝利であったのは同馬が初めてである。さらに父系はキングマンボ、近親にガリレオやシーザスターズと一昔前なら大騒ぎになるようなレベルの種牡馬であるはずだが、それを押しのけて今新種牡馬の話題の中心にいるのが父内国産馬勢だというのが今の日本競馬のレベルの高さを表しているのではないだろうか。もちろん種牡馬としての実績は随一だけに、若造たちにその力をまざまざと見せ付ける可能性も十分ある。いずれにせよ産駒のデビューが待ち遠しい。
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この記事へのコメント
1. Posted by ノエルザブレイヴ 2016年01月07日 23:55
下にずらっと並ぶ「A」の文字がドイツっぽいですね。(素人丸出し申し訳ないですけど)
しかし確かに競走実績血統は本場の一流でこれまで持ち込みや○外として走った馬にも一流どころが多いのにそこまで種牡馬日本デビューをわくわくしなくなってしまっているのがマヒしているのかなあと。
本筋とは関係ないですけど「週刊種牡馬ニュース 12/21 - 12/27」辺りの記事からカテゴリ分けが錯綜しているようにお見受けしますので修正していただいた方がよろしいかと思います。
しかし確かに競走実績血統は本場の一流でこれまで持ち込みや○外として走った馬にも一流どころが多いのにそこまで種牡馬日本デビューをわくわくしなくなってしまっているのがマヒしているのかなあと。
本筋とは関係ないですけど「週刊種牡馬ニュース 12/21 - 12/27」辺りの記事からカテゴリ分けが錯綜しているようにお見受けしますので修正していただいた方がよろしいかと思います。
2. Posted by Organa 2016年01月08日 00:04
どうもブログ側の不具合のようで、おそらくこれで直っていると思います。ご指摘ありがとうございます。
3. Posted by だらぶち 2016年01月08日 08:22
本文とは直接関係ない質問で申し訳ございません。
種牡馬のデータとして公表されている種付頭数なんですが、これは「種付回数」のことなのか「種付した牝馬の頭数」のことなのか、どちらでしょうか。
たとえば、ある牝馬に種付して受胎しなかったので、同じシーズン中に同じ牝馬にもう1回種付した場合、種付回数には2とカウントされるのか1とカウントされるのか。
ご存じの方がおられましたらご回答いただけましたら幸いです。
種牡馬のデータとして公表されている種付頭数なんですが、これは「種付回数」のことなのか「種付した牝馬の頭数」のことなのか、どちらでしょうか。
たとえば、ある牝馬に種付して受胎しなかったので、同じシーズン中に同じ牝馬にもう1回種付した場合、種付回数には2とカウントされるのか1とカウントされるのか。
ご存じの方がおられましたらご回答いただけましたら幸いです。