昔2人の商人が旅商いをしていました。
ある日越後の寺泊まで来ると。
だいぶ足もくたびれてきた。
まぁここらでひと休みしようじゃないか。
うんそうするか。
沖に浮かぶ佐渡を眺めていると。
オラ眠とうなった。
眠たかったら寝たがいいだ。
(いびき)そう言ったかと思うとはやグーグーいびきをかいて眠ってしまいました。
《なんとまぁ早く眠ったもんだ》と思って若い男が何の気なしに。
ん?その鼻の穴から1匹のアブが出てきて海のかなたに飛んでいきました。
《あ〜変わったことがあるものだな》しばらくするとさっきのアブが戻ってきて寝ている男の鼻の穴へ入っていきました。
あ〜!すると年上の男は目を覚まして。
オイラ変な夢を見た。
そそうかいどんな夢を見たんだい?う〜ん。
実はね佐渡にたいへんな長者がいてな。
その家の庭には白い花のいっぱい咲いた椿の木があってな。
その木の根っこから1匹のアブが飛んできてここを掘れと言うんだ。
オラその木の下を掘ったさ。
すると黄金のいっぱい入ったカメが出てきた。
とまぁこんな話だよ。
ほう。
若い男のほうは一心にこの話を聞いていましたが。
頼むオラにその夢を売ってくれろ。
夢なんか買ってどうするだ?何も聞かずに売ってくれや。
うんだばいくらで買う気だ?300でどうだ?ん?ということで夢を商う話がまとまると2人はにっこり笑って別々に旅をすることにしました。
夢を買った男は浜に出ると佐渡を目指しました。
二日二晩たらい舟をこいでやっとのことで佐渡へ渡りました。
その後あちこち探し回ってやっと大尽様の家を探し当てました。
私は越後の国から流れてきたもんで。
庭掃きでも何でも雇ってもらえんかのう。
庭掃きが1人欲しいと思っていたところだ。
都合よくそこに雇われました。
夢を買った男は毎日まいにちまじめに働いて椿の花が咲く春を待ちました。
だんだん暖かくなっていよいよ春です。
屋敷の庭いっぱいに花が咲き椿の木にも花が咲きました。
だがどういうわけか赤い花ばかり咲いて白い花は1つも咲きません。
夢を買った男はそれでも気を落とさないで次の春を待つことにしました。
また春がやってきました。
庭の花がポツポツと咲き始めました。
若い男は白い椿の花は咲いていないかと毎日気をつけているとある朝1本の椿の木に白い花がいっぱい咲いているのを見つけました。
お〜!男は喜びその夜誰にも見つからないようにそっと起きて白い花の咲いている椿の根元をつついてみました。
すると何か音がするのでそこを掘ってみると…。
カメが現れたのです。
これだこれだこれだ!すぐにフタを開けてみました。
お〜!目もくらむような黄金がいっぱい詰まっているのでした。
男はカメを掘り出したあと元のように土をかぶせカメは誰にもわからないように隠しておきました。
それから半年ばかり経ったある日。
わけあって国へ帰らねばなりません。
どうかお許しください。
そうかお前も長い間よう働いてくれた。
そう言っていくらかのお金をくれました。
思いもかけず中身が重いのにビックリした男は旦那様に深々と頭を下げました。
隠しておいた黄金のカメと旦那にもらった大金を背負い越後の国へと帰っていきました。
《でもこの大金をオラが独り占めにしていいのだろうか?もとをただせば…》よしこのお宝の半分はあの男にあげるとしよう。
船から降りると夢を売ってくれた男の家を訪ねました。
なんとたいそう立派な屋敷からあの男が出てきました。
若い男がここを訪ねたわけを話すと。
なに礼には及ばん。
あのとき夢を売った代金を元手に商売を替えたんだよ。
それが当たってのう今じゃこの村の大尽様じゃよ。
ハハハハハ。
夢を買った男は夢を売った男の隣に大きな屋敷を建てて2人とも一生安楽な暮らしをしたということです。
昔増尾村というところに鷲山と呼ばれる山がありました。
この山に1匹のむじながいました。
小さい子供の頃に母親を亡くしずっと一人ぼっちで暮らしていました。
(足音)むじなは山小屋に住む母親とおもという娘の姿をいつも見ていました。
フフおものやつまた母ちゃんにおんぶしたまま寝ちゃってる。
気持よさそうに寝てるな。
母ちゃんの背中ってどのくらいあったかいのかな。
おもの母ちゃん。
はっ!お前はむじなじゃないのなんだい?人の背中なんかに乗っていたずらっ子のむじなだね。
フゥ…。
おもの母ちゃん。
ん?誰だい?近くにおもがいないのを見るとむじなは母親のもとへとやってきて背中に飛びつくのでした。
こらこら私の背中からおりなさい。
そしてすぐに帰っていくのでした。
(おも)ごちそうさま。
フゥこの頃なんだか肩がこって困るわ。
またオラがいないときにむじなが来たの?そうさなんでまた私の背中にばかり乗りたがるんだろうね。
ウフでも悪さはしないんでしょ。
そりゃそうなんだけど…。
きっとね母ちゃんのことが好きなんだよ。
そうかね。
母ちゃん肩たたいてあげる。
あらあら嬉しいね。
おもの母ちゃん。
またかい?これむじなお前はどうして毎日私の背中に乗りにくるんだい?だって母ちゃんの背中とってもあったかいんだもの。
オイラもおもみたいに母ちゃんの背中で寝てみたかったんだ。
なんだいそんなことだったのかい。
最初からそう言えばいいのに。
さあ私の背中でゆっくり眠りなさい。
いいのかい?あぁいいとも。
ムニャムニャ…。
ゆっくりお眠り。
よしよしよしよし。
母親は我が子に聞かせるように子守唄を歌い寝かせつけました。
ねぇ母ちゃん。
まるでおもに弟ができたみたいだね。
そうだねおんぶしてあげたんだからもううちの子だね。
母ちゃんにおんぶされたかったんだね。
ぐっすり眠れたかい?うんポカポカして気持よかったよ。
おもの母ちゃんありがとう。
またおいで。
どうして母ちゃんの背中ってあんなに気持がいいんだろ。
オイラあんなに眠ったことないよ。
むじなは生まれて初めて母親の温もりを感じることができたのでした。
(物音)何の音かしらね。
まあこれはいったい!?あっもしかして…。
いたずらっ子のむじなだね。
それからは毎日のようにむじなが食べ物を持って訪れるようになりました。
今までひとりぼっちだったむじなは母親の温もりを知ったことで思いやりの心が芽生えたのでした。
それからもむじなはたびたびやってきては母親におんぶされていました。
けれどある日突然ぱたりと姿を見せなくなりました。
それからあっという間に1年の月日が流れました。
母ちゃんむじなが来なくなってさみしいねぇ。
そうだねぇ。
食べ物は毎日置いてあるから元気でやってるんだろうけど。
あら?
(戸が開く音)あらあら久しぶりに来たのかい?元気そうだねぇ。
あらずいぶん小さくなったね。
ほんとだ。
あれもう行っちゃうの?おや家族を持ったんだね。
よかったね。
よかったね。
ひとりぼっちのむじなにあたたかい家族ができました。
よかったねぇ。
昔むかしある村に文吉という男が営むそば屋があった。
そば屋の前にはこぶしほどの石が地面から顔を出していてどういうわけかつまずいて転ぶ者が多い。
子供も…。
大人も…。
娘も…。
あれ〜。
侍も…。
おっ!馬も…。
ヒヒヒ〜ン。
犬や猫までも。
文吉は気になってしようがない。
(文吉)おい気をつけねえと…。
あいたっ!まったくしようがねえなぁ。
いつまでも石をどかねえからいけねえんだ。
フン!なんだこいつは固えな。
あっこりゃダメだ。
文吉は庄屋に頼んで若い衆を呼び石を動かそうとしたが押しても引いても石はびくともしなかった。
ダメか。
ある日文吉がそばを切っていると…。
お?エッサエッサエッサエッサエッサ…。
ん〜。
ヒヒ〜ン。
荷車に乗せたカメが落っこちて。
わぁ〜!その勢いで若者がピュ〜ンと飛んだ。
ヒヒ〜ンヒヒ〜ン!わぁ!こっち来るな。
ん〜いつかこんなことが起こるんじゃねえかと思ってたんだ。
ヒヒ〜ンヒヒ〜ン。
たくもう…。
今度こそわしがこの石を掘り出してやる。
エッサホイサ。
ハァハァ…どんだけ大きい石なんじゃ。
こうなったら!文吉はまた村の若い衆を集めた。
それ始めてくれ。
ところが掘っても掘っても石はどこまでも続いている。
まだ掘るかね?いったいどこまで掘ればええんじゃ。
ん?うっ。
あれどうかしたか?顔が青いぞ。
う〜急に寒気がしてきた。
こりゃかなわん帰らせてくれ。
なんだ?さてその夜のこと。
う〜んう〜ん。
すっかり高い熱を出した文吉がうんうん唸っていると…。
ん?わわわわ!だ誰だお前は!?ん?わし?わしは石ぶみ神と申す。
石ぶみ神?そう神様じゃ。
あ〜この頃腰がいとうてかなわんアイタタタ…。
神様がいったい何の用ですか?あぁそうそうお前が掘ってる石なあれわしの頭なんじゃ。
え!?まず掘るのをやめてくれんかの。
え?でな村の者にわしの頭の上をやたらまたぐなと言ってくれぬかの。
またぐからしょっちゅう転ぶ者が出るんじゃ。
そそれじゃあみんなただ転んでるんじゃなかったんだ。
そう神様の上を通ってはいかんのじゃ。
わかったか?へへぇ…。
よっしゃそれさえ気をつけたら村の足腰の痛い者は全員治したろ。
へぇご自分のは治せねえのに?なんじゃと?いやなんでも…。
ほなら頼むぞ。
へぇ。
あ〜腰が痛うてかなわんのう。
こりゃえらいことだぞ。
あくる日文吉は朝から庄屋さんを訪ねゆうべの出来事を話した。
庄屋さんもビックリしたが文吉の話を信じることにした。
文吉の言うとおり村の者を集め昨日掘った穴を埋め戻し元のように石の先っちょだけ地面から出した。
そしてそこにしめ縄を張り神様として祀ることにした。
すると…。
腰の痛みや…。
あら?足の痛みに悩んでいた者が…。
おっおぉ〜!すっかり治ってしまった。
いや〜ハハハ!この頃足腰の調子がいいんだよ。
オラもだ。
文吉は石ぶみ神との約束を果たせたとホッとした。
やがてこの話が方々に伝わり遠くからも足腰の痛みを治してもらおうと大勢の人がやってくるようになった。
おかげで文吉のそば屋もたいそう繁盛した。
あの石の上には立派な祠がたち今でも大切にされているということだ。
皆さんあけましておめでとうございます。
仲間由紀恵です。
2016/01/03(日) 06:30〜07:00
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし[字]
「夢を買った男」
「鷲山のむじな」
「病気をなおす石ぶみ様」
の3本です。みんな見てね!!
詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。
この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
語り手
柄本明
松金よね子
テーマ曲
『一人のキミが生まれたとさ』
作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
歌:中川翔子
コーラス:INSPi(Sony Music Records)
監督・演出
【企画】沼田かずみ
【監修】中田実紀雄
【監督】鈴木卓夫
制作
【アニメーション制作】トマソン
ホームページ
http://ani.tv/mukashibanashi
ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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