オフィスビルが立ち並ぶ…
周辺には国会議事堂や首相官邸もあり日本の中枢と言っても過言ではない
そんな東京の真ん中で今から33年前未曽有の大火災が起きたことをご存じだろうか?
近代的な外観。
東洋一の格式をうたい文句に海外からも多くの宿泊客を集めていた一流ホテルが瞬く間に…
地獄絵図と化したのである
炎にのみ込まれるホテル
消防隊による命懸けの救出活動
取り残され逃げ惑う人々
多くの死傷者と甚大な被害を出した大惨事
それは起こるべくして起きていたのである
当時の報道と貴重な証言
そして膨大な裁判記録から惨劇の裏に隠された驚愕の真実に迫る
東京オリンピック大阪万博と国際的なイベントが相次いだ60年代から70年代
宿泊客の増大で日本はホテルブームに沸いていた
大広間での豪華な披露宴も人気を集め都心には次々と高級ホテルがオープン
当時ホテル事業は金のなる木とまでいわれていた
その中でも…
ヨーロッパ製の格調高い家具にきらびやかなシャンデリア
ひときわ高級志向にこだわっていたのが…
創業は今から55年前の1960年
都心の一等地赤坂にそびえる地下2階地上10階のホテル
3方向に伸びる廊下の両側にある客室は…
東洋一の格式をうたい文句に…
大卒の初任給が12万円だった当時庶民にとっては高嶺の花
歌舞伎役者や芸能人が結婚披露宴を催すことも多く一流のホテルとして世間に知られる存在だった
さらに地下2階にあった高級ナイトクラブニューラテンクォーターは常連客に政治家や芸能人など各界の著名人が多く入店できるだけでもステータスだったという
誰もが認める超一流ホテル
そこで惨劇は起きた
(従業員)いいお式になると…。
(男性)当日はお願いします。
(従業員)承知いたしました。
(女性)よろしくお願いします。
(男性)失礼します。
行こうか?
(女性)はい。
(男性)そりゃ…。
今から33年前の2月8日
ホテルニュージャパンは運命の日を迎える
その日ホテルにいたのは国内外からの宿泊客368人と従業員35人の計403人
宿泊客たちはそれぞれの夜を静かに迎えていた
数時間後。
静けさに包まれたホテルが一転地獄絵図と化すとは夢にも思わずに
この日…
9階の部屋で夫が異臭を感じ目を覚ました
においの出元を確かめようとドアを開けると…
(男性)起きて。
早く。
(女性)何?
(男性)火事。
(女性)えっ?あっ!?煙。
(女性)どうしたらいいの?
(男性)何でだろう?
9階には他にも様々な人々が宿泊していたが…
炎が迫り廊下へは出られない
火の手は部屋の中にまで迫っていた
地方から出張に来ていた会社社長の部屋でも…
(男性)駄目か…。
窓が開かない
これでは助けを求めることすらできない
絶体絶命であった
10階に宿泊する老夫婦は…
(男性)に…逃げるぞ。
何の前触れもなく訪れた命の危機
誰もが憧れる豪華できらびやかな世界が今や脱出不可能な炎熱地獄と化したのである
脱出不可能な炎熱地獄と化したホテルニュージャパン
新婚夫婦が火災に気付く11分前
消防庁に通報が入っていた
真っ先に出動したのは麹町消防署の高野甲子雄隊長率いる第11消防特別救助隊だった
消防署員の中から試験によって選抜される
オレンジ色の制服を着ることが許されるのは特殊な任務を負う彼らのみ
中でも高野らの部隊は管轄に国会議事堂など国家の中枢施設がありエリート部隊と呼ばれていた
しかし…
ホテルの9階10階が巨大な炎に包まれていた
数々の火災現場をくぐり抜けてきた歴戦の高野たちですら見たことのない最悪の状況だった
通報を受けてわずか5分
このとき宿泊客の中には深い眠りに就き火災に気付いていない者もいた
(一同)はい。
窓から身を乗り出す宿泊客
(隊員)おーい。
(一同)はい。
だが…
熱さに耐えきれず自ら飛び降りてしまった
地上二十数mから飛び降りるほどの熱さ
現場はすでに地獄と化していた
さらに…
炎の勢いで割れた窓ガラスが降り注いできた
(一同)はい。
ロビーは逃げ惑う客でごった返しており通用階段も避難する人で身動きできない状況
高野たちは火災の影響で明かりの消えた非常階段を上り各階の扉を開け状況を確認
8階までは熱も煙も感じられなかった
そして火元と思われる9階に着いたときだった
扉が開かない
(高野)駄目だ。
(一同)はい。
鉄製の扉が熱で膨張し開けることができなくなっていた
これは現場が長時間高温になっているときに見られる現象だった
そして高野たちは10階へ
1秒でも早く救助に取り掛かりたかった
(一同)はい。
酸素を確保し…
暗闇の中で迷わぬように命綱をつけ10階ホールの捜索に当たった
・1・2・3。
暗闇と煙で作業が困難な中3名の救助に成功した
(一同)はい。
高野たちは残る人を屋上からロープで救出しようと考えていた
しかし…
窓から救助を求める人
外へ逃げ今にも落下しそうな人
9階と10階にはまだ100名以上の人々が取り残されていたのだ
通報から5分。
9階と10階にはまだ100名以上の人々が取り残されていた
通報からさかのぼることおよそ4時間半前
全てはこのイギリス人宿泊客が酔って部屋に戻ったことが始まりだった
裁判記録では…
彼の寝たばこが火災の原因とされている
それから4時間後
全ての宿泊客がチェックインを済ませた…
(従業員)代わるんで仮眠取ってきてください。
(従業員)分かった。
じゃああとよろしく。
(従業員)はい。
(従業員)ああ。
ありがとう。
痛っ。
(従業員)そうっすね。
(従業員)じゃあ。
(従業員)よろしく。
(従業員)はい。
フロントマンが仮眠部屋へ向かったときのこと
あのイギリス人が泊まる938号室から煙が出ていた
マスターキーを持ちフロントマンたちはすぐに9階へ
このとき時刻は…
実は消防への通報のおよそ20分も前に異変は発見されていたのだ
ベッドサイドから炎が
この直後。
廊下を挟んだ斜め前の部屋に宿泊していた受験生は…
いち早く火災に気付き避難した
消火器を取りに行っていたフロントマンはすぐに938号室へ戻り消火を行った
しかし…
いったんは炎が消えたように見えたが再び燃え上がったため急きょ他の消火器を取りに走った
そのころフロントマンから警備室に火事の一報が入った
(警備員)俺が見てくる。
非常ベル鳴らせ。
(警備員)分かりました。
だが…
裁判記録によると警備員らは火災報知のためのベルの鳴らし方を知らなかったという
さらに…
(従業員)くそ。
もはや冷静な判断ができる者などいなかった
9階で火災を発見した従業員
しかし冷静な判断ができる者などいなかった
裁判記録によると…
また9階へ向かった警備員については…
このころ客室では…
そして事態はさらに悪化の一途をたどる
(悲鳴)
火元である938号室の炎が廊下へ噴出
瞬く間に燃え広がった
しかもこの時点でもまだ通報はされていない
(一同)階段あっちだ。
階段はあっちだ。
こっちだこっちだ。
こっちだよ。
このころ…
しかしあの新婚夫婦をはじめ日系2世のビジネスマンや出張中の会社社長はまだ…
9階の廊下の炎は各部屋に燃え移り壁を焼きついには天井を落とした
そして各部屋の窓から炎が噴き出し始めた
最初に煙を発見してからおよそ20分が経過していた
そしてこのときようやく消防庁に通報が入ったのだ
(オペレーター)ホテル出火。
ホテル出火。
しかも裁判記録によれば最初に通報したのはホテルの者ではなく燃え盛る炎を目にした通行人だったという
さらにそのおよそ10分後に彼らはようやく火災に気付いたのである
(たけし)ホテルニュージャパンの大火災。
(たけし)いったいなぜこれほどまでの惨事に発展してしまったのでしょうか?そこには起こるべくして起こったといっても過言ではないこのホテルの驚くべき真実があったのです。
(剛力)はい。
甚大な被害を出した大惨事。
(剛力)一流といわれたホテルが瞬く間に地獄と化してしまいましたが。
(設楽)ホテルニュージャパンの火災ってのはもう僕らもちっちゃかったけど覚えてるし。
(日村)小学校ぐらいっすね。
知ってますね。
(設楽)貴理子さん。
ねえ?
(貴理子)覚えてますね。
(設楽)ものすごいこれやっぱり大惨事でしたもんね。
(貴理子)だからこの事故でホテルニュージャパンっていうホテルの名前を覚えましたけど。
(石原)信じられないです。
(設楽)知ってました?
(石原)知りませんでした。
(石原)でももうずさん過ぎる。
(設楽)そうですね。
今の最初の。
(石原)信じられないです。
(設楽)初動がまずかなりずさんですよね。
(剛力)そうですよね。
(中尾)僕も生まれる前なので正直そんな。
何となくは聞いたことあったんですけど。
(中尾)知らなかったんですけど。
いろんなどんどんどんどん悪い方に悪い方にいって。
大惨事になっちゃったのかなっていう感じですけど。
(貴理子)あれ布団で何とかはたくとかね。
(日村)何かね。
(貴理子)何かねできたような気もしますけど。
(泉)もうだって一流っていってるけど一流じゃなくない?全部が。
(貴理子)ホントですよね。
(設楽)ああいう使い方分かんないだとか警備員が警報鳴らし方が分かんないって。
(日村)いや。
これひどいね。
(設楽)あり得ないですけど。
あとあんなに一瞬でそこまで燃え広がるって。
(貴理子)20分ぐらいでね。
(石原)下カーペットっぽかったですね。
だからたぶん移りやすかったのかもしれない。
(泉)しかもすぐに電話するでしょ?
(設楽)いや。
ホテルの人が電話してないっていうのがね。
(貴理子)ねえ。
びっくり。
(石原)もしかしたら誰かしら電話したんじゃないかって思ってるのかもしれないですね。
(日村)誰かが。
誰かがやってるっていうこと?
(設楽)まず警備員がいる部屋で何か色々できますよね。
まず。
全部に通知したり。
(貴理子)だから宿泊客を守ろうという気持ちが全然ないですよね。
(日村)うん。
ホントっすね。
(泉)いや。
怖いね。
(剛力)はい。
都心で起こった未曽有の大火災
(男性)何で?何でだよ?
一流ホテルが一転…
実はそこには…
大惨事へとつながる驚くべき真実が隠されていた
火災を発見しながら消火栓の使い方も分からず非常ベルさえ操作できなかった従業員
実は彼らは…
裁判資料によると消火栓や非常時の設備の使い方はおろかまともに通報すらできなかったことが火災の拡大につながってしまったとされている
この対応は当時の新聞でも厳しく報道された
通常火災時にはスプリンクラーが作動するはず
だがこのホテルの場合一部を除いて…
裁判資料によればスプリンクラーの全館設置工事は事故の2日前に決まったものの事故当時工事はまだ進んでいなかったという
さらにこの時点で取り付けられていたスプリンクラーも一部配管がつながっておらず水が出ることはなかったという
その上非常ベルや非常放送も整備不足などでまったく鳴らなかったという
そのため宿泊客の多くが火災に気付かず結果100人以上もの人が取り残されてしまったのだ
(従業員)これ部屋の鍵です。
(従業員)ああ。
ありがとう。
痛っ。
(従業員)静電気ですか?
季節は冬
特にこの当時は乾燥注意報が頻繁に出るほど空気は乾ききっていた
にもかかわらず…
ホテルなどでは通常屋外の空気を取り込みそこに水を掛け加湿
その後適温に暖め暖房として各部屋に送る
だがこのホテルの場合外気を取り込み加湿する装置を停止し各階の空気を循環させ加熱だけを繰り返していた
そのため空気は徐々に乾燥していき火事が起こりやすい状態になっていたのだ
通常ホテルやマンションなどではどこかの部屋で火災が発生した場合炎はもちろん煙も通さないよう各部屋が密閉されるような造りになっている
仮に廊下に燃え移っても防火戸で一定区画を仕切り燃え広がりを防ぐ手だてがされている
だが今回炎や煙はフロアの全体に広がってしまった
その原因はこのホテルの内装にあった
これは…
客室の壁にご注目いただきたい
部屋を仕切る壁はブロック造りとなっているのだが…
裁判資料によると積み上げたブロックの所々に木製のれんがを配しそこへ角材を打ち付けその上にベニヤ板
そして可燃性の壁紙を貼り付けたものだったという
間仕切りにブロックを使うことに問題はないのだがその積み方が問題だった
ブロックを積む際通常は隙間をモルタルで完全に埋める
だがニュージャパンの場合隙間が完全に埋められておらず壁紙とベニヤを燃やした炎がその隙間と燃えた木れんがの穴を通り隣の部屋に燃え移ったという
さらに配管用に開けられた穴などもきちんと埋め戻しされていなかったため炎がそこを通り燃え広がる原因になったとされる
しかも客室のドアも木製だったため次々に焼け落ち延焼を食い止められなかった
また延焼を最低限に食い止めるための防火戸にもある重大な欠陥があった
裁判資料によると…
後にずさんな防火管理体制として大きく報道された
さらにもう一つ
ホテルのデザインにも問題があった
このホテルはエレベーターを降りるとY字形に廊下が伸びその先もまた同じY字形に分かれていた
そのため初めて来た者は自分がいる場所がどこなのか瞬時に判断できない
つまり方向感覚を失いやすい構造だった
非常口への誘導表示はあったものの宿泊客が火災を知ったときにはすでに煙が充満しており誘導表示を確認することができなかったのだ
幾つもの問題が重なり大惨事となったホテルニュージャパン
宿泊者の安全を約束するホテルとしてはまさに最悪の環境だったのである
東洋一の格式をうたい文句にし政治家や各界の著名人が愛した…
誰もが憧れるステータスシンボルだったホテルニュージャパン
だがその実態は見せ掛けだけの張りぼて
砂上の楼閣だったのだ
いつ崩れるとも分からない楼閣の中で取り残された宿泊客はそれぞれが命の限り闘っていた
逃げ遅れた外国人客の中には…
雨水の配管を見つけ…
それを伝って地上へと下りようとした人もいた
ある人はエレベーターで8階から1階へ降りようとしたのだが…
皮肉にもエレベーターは9階へ
しかも…
(男性)誰か!誰か助けて…。
ドアが開かず閉じ込められてしまったという
そして貿易会社を経営する日系2世の男性ムツトさんは…
迫りくる炎と煙の中で必死に宿泊客を誘導していた
(ムツト)さあ…。
(ムツト)早く。
ああ。
早く逃げるんだ。
・
(ムツト)急いで。
それを見た部下のクラハットさんはあることを思い出した
それはムツトさんの自宅で行われたホームパーティーでのこと
親切な心を失わないこと。
それが彼の誇りだった
実は…
(男性)遠いとこよく来たね。
(女性)ねえ?ムツトさん。
これ食べて。
煮たのよ。
(男性)まあまあまあまあ…。
その前に。
はい。
(女性)遠いところからよくいらしたわね。
(男性)立派になっちゃってね。
(女性)ねえ。
日系人である自分が訪れるたびいつも温かく接してくれる日本の人々に彼は心から感謝していたという
(ムツト)さあ急いで。
早く。
こっちだ。
早く。
(ムツト)ああ。
(ムツト)こっちこっち。
早く。
ホテルの従業員は誰一人いない状況
それでもムツトさんは一人誘導を続けたという
そして消防隊員もまた地獄のような状況の中で最善の努力を重ねていた
(高野)あと2m。
ああ。
(高野)1m。
よし。
つかんだ。
(一同)よし。
行くんだ。
よし。
よっ。
隊員たちは…
だが…
(高野)よし。
もう少しだ。
(隊員)頑張ってください。
(高野)よし。
ああ。
OK。
(隊員)よし。
(高野)頑張れ。
(韓国語)
部屋の中の人物と目が合った気がした
と次の瞬間隣の部屋で…
取り残された人物を発見した高野隊長
と次の瞬間隣の部屋で…
フラッシュオーバーだった
フラッシュオーバーとは…
その温度は最高で900℃に達することもあり防火服でも耐えられないという
宿泊客が一人取り残された部屋もいつフラッシュオーバーが起きてもおかしくない状況だった
救助できるのか?高野は迷っていた
そして…
(浅見)はい。
指名された浅見隊員は隊の中で最も俊敏だった
高温に耐えるため水をかぶっての決死の突入
フラッシュオーバーの危険がありながらも高野が突入を命じたのは浅見ならできる。
そう信じていたからだった
立ち込める煙
一刻も早く救い出す必要がある
すると…
それは確かに先ほどの男性だった
だがそのとき…
(浅見)しっかりしろ!
(ベルの音)
(ベルの音)
(ベルの音)・
(一同)戻れ!浅見!浅見!
それは…
浅見は10階で誰よりも激しく動いていた
そのため酸素の減りが早かったのだ
(浅見)くそーっ!すぐ戻るからな!
(ベルの音)
浅見はやむなく撤退した
(一同)隊長!隊長!
あの部屋で…
だが確かに助けを待つ人がいる
ぎりぎりの選択だった
高野は隊長になったときから最も危険な現場には隊長たる自分が行く。
そう決めていた
炎の中へ向かう高野
その思いは果たせるのか?
(男性)助けてくれ。
(女性)助けて…。
一方まだ多くの命が日本火災史上例を見ないこの大惨事の中で生きぬこうと懸命に闘っていた
ホテルニュージャパンの惨状
実はこれにある人物の存在が大きく影響を及ぼしていたのである
(剛力)一流といわれたホテル。
その実態は見せ掛けの城だったんですが。
ホテルとしては最悪の環境ですよね。
(設楽)うん。
ねえ。
部屋も仕切ってるのブロックでベニヤ板張って。
(剛力)ベニヤ板とブロック塀。
(設楽)穴が開いてるからまた火が。
(日村)工事の段階でもう駄目だったんだね。
ここまでひどいとはって感じですね。
もうね。
全部だもんね。
もう。
(設楽)ホントだね。
防火扉がじゅうたんで閉まらないってはなから防災の意識ゼロだから。
(日村)ないんだよね。
(中尾)だからこれホントになかなかわざとっつったらあれですけど。
やってもできないぐらいミスが多過ぎるから。
これちょっとひどいなと思いますね。
今回は最も被害が大きかった9階を再現した模型を用意しました
(貴理子)これ自分の部屋から…。
自分の部屋がどこにある…。
うわ。
これ分かんない。
迷うよ。
(剛力)火元の938号室がある西棟。
もうほぼ全焼。
(日村)西棟が全焼。
(剛力)中央ホールを挟んだ隣の南棟は一部。
(設楽)一部燃えちゃった。
(剛力)一部燃えて。
そして中央ホールを曲がった東棟の一部が。
(設楽)まあでも確かにこういう構造っていうのもまあより被害広げたっていうのは分かるね。
(剛力)そうですよね。
(貴理子)変わった造りだ。
(設楽)石原さんとか分かります?ホテル。
わりと。
仕事なんかで泊まったときにここがああだこうだっていうの。
(日村)ああ。
だからそういう人はね。
(石原)エレベーター降りて右に曲がって。
違う左だったみたいなことよくあります。
(日村)全然分かる。
そんなの。
(石原)ホントに。
(剛力)番号が書いてても分からなくなるときってありますよね?
(設楽)俺海外のホテルでおっきいところとか泊まったら俺戻れなくなるから携帯で自分の部屋のドアの番号撮ってとかやったことあるよ。
(石原)確かにカードだったら部屋番号書いてないの多いですもんね。
そうですよね。
(設楽)確かに。
非常口とか分かんないな。
(剛力)4カ所一応あるんですが。
(貴理子)一応あるんだ非常口ね。
(剛力)もう煙がまん延しており表示が分からない状態に。
(日村)分かんないですよ。
だって廊下がしかも燃えちゃってんだもん。
ここの廊下燃えてんだもんね。
もう無理ですよね。
(石原)すごい難しい。
(剛力)張りぼての一流ホテルで起こった惨劇。
実はそこにはある人物の思惑が深く関わっていました。
続きをご覧ください。
幾つもの問題が重なり大惨事となったホテルニュージャパン火災
宿泊者の安全を約束するホテルとしてはまさに最悪だった
誰もが憧れステータスシンボルだった超一流ホテルの実態はいつ崩れるかも分からない…
防災意識の乏しさ
数々の欠陥
一流とは思えない防火設備
そこにはある人物の存在が大きく影響していた
ホテルニュージャパンは高度成長期の1960年にオープン
東京オリンピック開催に伴う観光客の増加を期待し都内に高級ホテルが続々と開業したころだった
建築や設計は一流の設計士やデザイナーが手掛けたという
だが新しいホテルが次々と建設されると競争が激化し…
創業から20年がたとうとするころには存続の危機にひんしていた
そんなときホテルを買収しようという人物が現れる
当時株式の取得で幾つもの企業を買収していた実業家横井英樹だ
彼は独自の手法でホテル再建に取り組み買収から2年を待たずに見事一流ホテルとして復活させてしまった
だがその経営方針は驚くべきものだった
(従業員)予算の方が…。
彼の手法。
それは…
このホテルが建てられた60年代当時は今と違い消防法も厳しくなく防火設備が乏しくても営業に問題はなかった
しかし横井がホテルを買収する5年前消防法の改正によって…
つまりもともとなかった防火設備を新たに取り付ける必要があったのだ
もちろん新社長もこれらを知って買収したはずなのだが裁判記録によると彼は…
消防署に工事を督促されていた
全館にスプリンクラー設置の必要があることを聞かされホテル建物が老朽化しているため給排水電気関係などの全面的な改修の他防火区域の設置が必要である旨を説明されていた
だがその進言や上申に耳を傾けようとせず彼がしたことといえば…
消火器を買い増すように指示しただけだったという
彼は予算がないことを理由になかなか着手しようとしなかったのだ
だがその一方で…
高級インテリアは客の目に留まりホテルの豪華さを演出できる
宿泊客の増加につながりそうなことには惜しみなく資金をつぎ込んでいた
度重なる指導に応じない社長に対しついに麹町消防署長による面談が行われた
(署長)いったいどうなってるんですか?
(横井)分かりました。
営業停止の言葉に意見を翻し内装とスプリンクラー設置の工事を始めたという
しかしホテル内一部にのみ設置されたスプリンクラーは水の出ない見せ掛けのものだった
見栄えのするところには惜しみなく金をつぎ込み安全設備への投資はほとんどしない方針の社長
買収される前は定期的に専門業者による安全設備の点検が入っていたのだが…
買収後新社長は正規料金の支払いをせず業者は撤退
そのため火災当時安全設備は故障が放置されたままだったのだ
(従業員)部屋の鍵です。
(従業員)ああ。
ありがとう。
痛っ。
(従業員)静電気ですか?
加湿装置が止められていたのも電気代を節約するただそれだけの理由だった
また日銭欲しさに駐車場を有料化しあろうことかその受付を安全管理が本業の警備員にさせそれまで行っていた…
人員まで減らす徹底ぶりだった
そんな横暴な経営方針についていけない従業員は次々と辞め…
また社長の意にかなわない者は容赦なく首を言い渡された
開業当時320人いた従業員は火災時には134人にまで減っていた
フロント業務安全対策顧客対応などその人事は崩壊し社員たちは専門分野以外の仕事もしなければならなくなった
必要最低限の人員で業務をこなさなければならないため…
その結果災害時の指揮系統も確立せず緊急通報など訓練さえ受けていれば当然できることが…
何一つできていなかったのだ
過酷な仕事量。
給料の遅れなどから仕事への士気も低かった
常に社長の顔色をうかがい事故当時は宿泊客の安全よりも…
(従業員)火事です。
客室を軽くノックして回っただけだったという
一流ホテルとして見せ掛けを飾りその裏では客の安全を軽く見ていた社長
裁判記録には「客を欺くに等しいといわれてもしかたがない」とまで書かれている
安全よりも金もうけに執着したホテルニュージャパン社長横井英樹とは…
横井本人を直接取材した大下英治氏が後に出版した書籍を基に彼の人物像に迫ってゆく
横井英樹は…
本名は千一。
祖母が名付けたという
(産声)
千人に一人の大人物
文字も千に一で千一となった
しかし…
父は先祖代々守ってきた土地を手放し酒に浸り彼が生まれたころには一家は貧乏のどん底だったという
しかも…
(父)こら。
(父)ほら。
貸せ。
父は学校のかばんを隠したり教科書を破ったりしたこともあったという
それでも彼は…
(児童たち)「並びます」
(教師)まったく。
父の目を盗むようにして遅刻してでも小学校に通った
(児童たち)「子供が土手に…」
千一は頭も良く字もうまかったという
(児童たち)「立て札を見てそれを…」
また隣家の畑の端を借り自ら作ったジャガイモやハクサイを売り歩きその金で母にごちそうを買うこともあった
・
(千一)お母。
(母)まあ。
(母)まあ。
(母)お母じゃあ…。
そして11歳のとき出世をするまでは帰らないと告げ上京
繊維問屋に就職
商才を発揮し…
太平洋戦争が始まると軍需品に目を付け横井産業を設立
29歳で社員3,000人を擁する大企業の社長となった
終戦時彼の自宅には札束の詰まった大きなリュックが積まれていたという
英樹と改名したのはこのころだった
そして…
(横井)いいか?
(一同)はい。
買った土地は次々に値を上げ戦後3年でその資産は当時の価値で20億円に膨れ上がっていた
その後も不動産取得に専念
そんな中百貨店の先駆け的存在であり当時日本橋に存在した老舗デパート白木屋が経営不振で倒産寸前であることを知る
商才に自信があった彼は白木屋の株式を買い集めた
老舗の経営に関わることで一流の財界人として認められるという野望を抱いたのだ
しかし…
横井の顔色が変わった
(横井)もっと高値で売らなきゃ意味がないんだよ。
彼は金しか信じない野心家となった
そして多くの財界人を巻き込み時には法すれすれの手段を用いて…
1954年。
江戸時代から引き継がれた白木屋の経営陣を一掃することに成功した
この事件で乗っ取り屋として名をはせた横井はその後実業家としてホテル経営に乗り出した
その一つがホテルニュージャパンだったのである
ホテルニュージャパン社長就任時の訓示ではその経営方針が次のように語られた
(横井)経済とはそういうものなんです。
もうけのみを優先した社長の方針の中ホテルニュージャパンは運命の日を迎えてしまったのだ
信用を欺かれた客は炎の中懸命に脱出を試みた
脱出に成功した者もいたが無念にも地上にたたきつけられた者もいた
そして命を懸けていたのは消防隊員たちも一緒だった
(一同)隊長。
隊長。
隊長!
生存者の元へ
部屋で…
高野は隊長になったときから「危険な現場には自分が行く」そう決めていた
窓から客室に飛び込んだ高野
(高野)大丈夫ですか?
救助ロープを結び付け後は運びだすだけ
とその瞬間…
(高野)大丈夫ですか?
救助に向かった高野隊長
と次の瞬間…
フラッシュオーバーだった
煙の中部屋に入った高野を炎が襲った
しかも…
立て続けに二度
一度でも耐え切れないほどの炎を二度も浴びてしまったのだ
(一同)隊長!隊長!隊長!隊長!
惨劇の現場に響く隊員たちの声
果たしてその声は高野に届いているのか?
(日村)あら。
びっくりした。
(設楽)うわー。
びっくりしたね。
どうなったのかな。
(剛力)高野隊長。
すごく気になりますが。
(設楽)気になるけどね。
(剛力)そうなんです。
まずは社長の利益を優先したこの経営でやっぱり大惨事が起こってしまった。
(設楽)だからいろんな挫折とか味わって金しか信用できないって。
(日村)そうだね。
(貴理子)賢かったんですけどね。
(設楽)利益優先利益優先でここまで。
要はだってずっと止まらずにきてるわけだから。
(貴理子)誰からも優しくされたことがなかったのかな。
人の心みたいなのがなくなっちゃってるもんね。
(日村)人の命が関わったらお金優先じゃなくなりますよね?もう苦しいですね。
人間の何かこう…。
ちょっと黒い部分というかかわいそうな部分がすごく見えて。
何かもうこの人の人生ホントに幸せ感じる瞬間あったのかなと思うぐらい苦しくなりますね。
(設楽)でもね貧乏だったけど。
お父さんは酒癖悪かったけどお母さんにさ自分が野菜売ったお金で何かごちそう買ってきたりとかさ。
そういう人を思いやる気持ちとか…。
(貴理子)あったのにね。
(設楽)あったんですよね。
(剛力)ただ…。
(設楽)いや。
ホントだよね。
(剛力)高野隊長は。
(設楽)消防隊員はあそこで命懸けてさ。
(貴理子)自分の命を懸けてね。
(泉)無事だといいな。
(日村)無事であってほしいね。
(泉)ケガしてるよね。
(剛力)結婚式を挙げたばかりの新婚夫婦もいらっしゃいましたし。
ホントに多くの方々が。
(設楽)いや。
最悪だよね。
一番幸せの絶頂のその夜が。
(石原)ホントですよ。
(日村)ねえ?
(剛力)胸が締め付けられますね。
(設楽)どうなったんだろう?色々何人か最初言ってた人たちの安否はどうなったのかってのも気になるし。
取り残された客を救うため部屋にたどりついた高野隊長。
しかし彼を待ち受けていたものは…。
二度のフラッシュオーバー現象でした。
防火服をも焼き尽くすという爆発。
果たして…。
部屋に響く隊員たちの声
その声は高野の耳に届くのか?
高野は生きていた
炎に焼かれた高野は…
高野を動かしたのは「目の前のこの人を助けたい」その思いだけだった
そして高野は仲間の待つ屋上へつながるはしごをつかんだ
懸命に命綱を引く隊員たち
そして…
自らの命もぎりぎりの中高野は男性の救助に成功したのだ
(隊員)はい。
(隊員)いくぞ!
(一同)はい。
高野は全身にやけどを負いながら救助続行を志願したが同行していた救急隊に止められ病院に搬送された
悪化の一途をたどる事態に消防庁は空前の指令に踏み切った
それは第4出場
東京23区全域の消防力を総動員するという最高ランクの出動形態だった
さらに救急など他の部隊からも応援部隊を出場させる増強特命出場も同時発令
消防総監が直々に現場の指揮を執るというまさに消防庁の総力を挙げての消火救助活動となった
助ける側もそれを待つ側も決して諦めず炎と闘っていたのだ
だがその惨状を目にした社長は…
(従業員)そうですか。
また報告をお願いします。
社長。
これ以上犠牲者が出る前に…。
当時の雑誌報道の中で何の指示も出さずただ黙っていたと元部下が語っている
そしてあの新婚夫婦
誘導に当たっていた日系2世のムツトさん
このときまだホテルに取り残されていた彼らの運命は?
夫婦が死を覚悟したそのとき…
・
(外国語)
(男性)シーツ?
(外国語)
10階の宿泊客がシーツをつなぎ火の手の回っていない下の階へ下りようというのだ
実はこのホテルには隣の客室が見えないよう各コーナーに目隠し用の壁が取り付けられていた
10階から下ろしたシーツを下の部屋のものとつなぎ合わせそれを持ちながら目隠し用の壁を足場にして下りようというのだ
まずは外国人が壁伝いに7階まで下りることに成功
夫婦も同じように下りる決意をしたが足場の壁まではわずか数cmの窓枠を伝っていかなければならない
慎重に壁へと向かう
そして…
壁をつかむと妻へと手を伸ばした
壁へとたどりついた妻はシーツを使い無事7階へ
その後夫も7階へたどりつき火の気のないその階の階段から脱出に成功した
高野隊長の離脱後も懸命の救助が続いた
地方から来ていた会社社長は自ら窓ガラスをたたき割って活路を開いた
エレベーターに閉じ込められていた男性は…
その後応援に駆け付けた高野たちとは別の消防隊によって救助された
雨水の配管を伝って下りていった外国人は何とか地上へとたどりついた
長年連れ添った老夫婦は…
2人で体を寄せ合って亡くなっていた
そして日系2世のムツトさんは…
部下を逃がした後も宿泊客を誘導し続け亡くなった
それでも…
出火元のイギリス人は廊下でその遺体が発見された
その他台湾からのツアー客は帰国を翌日にして13名が亡くなり激しい炎に炭化し性別の分からない方や…
高野が救助した男性は残念ながら後日搬送先の病院で息を引き取った
33名の貴い命が失われた
そのうち13名は転落死だった
早朝横井英樹社長はようやく取材陣の前に姿を現しこう話した
(横井)しかし…。
彼は火災から11年後業務上過失致死傷の罪で禁錮3年の実刑判決を言い渡された
そして午後0時36分鎮火
火災発生からおよそ9時間後のことであった
こうして前代未聞の壮絶な炎との闘いは終わった
決死の救助で自らも大やけどを負った高野甲子雄隊長は現在どうしているのだろうか?
私たちは高野さんの元を訪ねた
高野さんは現在66歳
消防署長まで務めあげ引退していた
今はボランティアで東日本大震災の被災地を巡り支援活動に尽力
防災や救助の講演活動も行っている
高野さんにフラッシュオーバーの中で行ったあの救助について伺った
(高野)これはねやっぱりね消防をやっている人の使命みたいなもんで。
そこに人がいて助けてくれって言えばそういう行動は条件が揃いさえすればできるっていうのはあったんですけど。
(高野)ただ一番最後にもう1回自分が入ろうとしたときにやっぱりオレンジの服っていうのが自分の…。
カッコイイ言葉で言えば使命感みたいな感じで俺は何のために今までそういう訓練をしてきたのかっていうのを思ってうちらがやらなきゃ後は誰もやれないからやるんだって。
(高野)そういう気持ちで助けたと自分では記憶してますけどね。
最終的には技術じゃなくて気持ちがものすごく左右すると思うんです。
だからその人を絶対助けたいという気持ちがないとそういう行動には移れないし。
でやっぱり一人の命から10人20人30人の命というのは助けられるんで。
まず一人を助けないとそのプラスアルファってのはないと自分たちは思ってますから。
だからまず一人っていうのをものすごく大切にしていますね。
(剛力)安全よりも利益を重視した経営者。
一方で命懸けで救助に向かう消防隊。
もちろん助かった人も亡くなった人もこの一つのホテルの大火災が様々な思いを抱かせてくれましたが。
いやぁ。
消防士ってすごい仕事ですね。
ホントに医者も看護師もそうですけど人の命を救うって。
やっぱり思いがないと。
気持ちがないとできない仕事だし。
ホントに一人の目の前の人を救えるってやっぱり私にはなかなかできないことだからホントに貴い仕事をされているなとすごく思いましたね。
今回でいうと社長がもう少しちゃんとねホテル経営のことを考えてくれれば。
もちろん今回亡くなった方もいるわけだし。
その命って絶対に救われたものだから。
そういう意味ではホントに。
(設楽)おなかん中に赤ちゃんいる人もいたっていうからさ。
それ考えたらちょっとね。
(貴理子)普通のビルだったらあんなふうに燃えないってことですよね。
(設楽)あれだからたぶん1960年から。
それで法整備も変わったり。
要はその時代のちょうどはざまの建物だったりしたから。
(設楽)だから買収してそこからホントは色々なことしなきゃいけなかったのを利益利益でいったからっていう。
時代もあるとは思うんです。
今の建物だったら…。
(貴理子)大丈夫だよね。
(設楽)そういうのも思いますよね。
もちろんホテル側もちゃんとやんなきゃいけないけどあらためてこっち側もねちゃんと把握して泊まる。
泊まらないといけないなと思ってね。
(設楽)でも装飾品が豪華だとかそういうとこに確かに目いくからね。
(日村)分からないな。
当時直接社長の横井を取材し後に書籍にまとめた大下氏は彼の人生をこう語る
(大下)しかしまあやっぱりしょうがない。
(大下)自業自得で…。
火災当時仮通夜が行われた港区の増上寺には命を落とした33名の冥福を祈るための観音像が建てられている
これは事故から5年後に横井によって建てられたものである
事故当時ホテルに宿泊し煙にいち早く気付いて避難することに成功した受験生は今…
(滝野)まあ初めはねホントに若いころは…。
(滝野)やはり年とともに…。
私は助かったけれども助からなかった人たちもいるっていう事実を重く。
やっぱり自分自身も思うようになってきたなと思いますね。
自らの命と引き換えに最後まで…
彼がアメリカに残した娘たちを訪ねた
父親の行動を彼女たちはどう思っているのか?
2015年。
戦後70年を迎える日本
社会や経済の発展とともに私たちは快適で便利な暮らしを手に入れた
しかし忘れてはならない
平和と繁栄に満ちた毎日が常に凶悪な事件と隣り合わせだったことを
(正木)やるしかないんだ。
日本の歴史を変えた首なし事件とは?
東京。
名古屋。
福岡を渡った謎の遺体
伝説の刑事が結んだ点と線とは?
いったいなぜ起こったのか?
(隊員)家庭では夜間戸締まりを厳重にし…。
平和な町が突如大パニックに
住民を襲った恐怖の正体は?
(たけし)2015年最初の放送となる『アンビリバボー』は時代時代に起こった…。
(たけし)あなた自身の目で確かめてください。
あなたは歴史の目撃者
(剛力)さあ始まりました。
『アンビリバボー』今夜は日本で起きた実録事件を3時間半にわたってお送りしたいと思います。
(設楽)映像では色々見たことあるなっていう。
でもそれすらも知らない世代の方もたくさんいると思いますし。
(剛力)ということで今夜はたくさんの方々がスタジオにお越しくださいました。
皆さんよろしくお願いします。
(一同)よろしくお願いします。
そしてですね今夜はスタジオもいつもと少し雰囲気を変えてお送りしたいと思ってます。
(設楽)あれ?何かモニターがいっぱいある。
(剛力)そうなんです。
これです。
まずですね皆さんにこちらをご覧いただきたいのですが。
こちらに。
(設楽)白黒だもんねまずね。
(剛力)そうですね。
(日村)全部古いね。
分かんない。
いつだろこれ。
(剛力)全て1950年代のもの。
(設楽)全て?
(日村)50年ぐらい前だ。
(剛力)こだま。
1958年の国鉄初の特急電車こだまが登場します。
でもそれでも東京から大阪まで6時間50分もかかりました。
(日村)6時間50分!?
(設楽)東京大阪6時間50分!?でもこれできた当時はもう?
(剛力)そうですね。
(日村)これ何?電話?
(剛力)これはそうですね。
電話なんですが当時の固定電話の加入率がおよそ十数%ほどでした。
そのために一般家庭に電話が普及するまでの間電話局はお店に電話の管理を委託して電話がかかってくると出た人が近くの家まで呼びに。
(日村)マジで?
(設楽)これは?
(剛力)三種の神器と呼ばれる。
(設楽)三種の神器ね。
(剛力)テレビ冷蔵庫洗濯機が豊かさのシンボルといわれていた。
(設楽)三種の神器って3つなんだけど分かる?
(設楽)ストップストップ。
(渡辺)正しいね。
もう1個何だろ?
(日村)もう1個何か知りたい。
(一同)健康。
安全。
(渡辺)素晴らしいね。
(日村)日本は明るくなりますね。
(設楽)じゃあ何で今ここで冷蔵庫の話してる?はい。
そんな1950年代後半日本を震撼させるある事件が起きました。
ご覧ください。
今からちょうど70年前の1945年
あの敗戦で日本の国土は焦土と化し住む家を失った人は900万人にも及びました
しかしその後日本は奇跡的な復興を果たし終戦からわずか11年
1956年の経済白書には「もはや戦後ではない」と記述されました
しかしその一方でコンピューターによる科学捜査も行われていなければ電話などの通信技術も発達していないこの時代
後に長く語り継がれることになる難事件を見事解決に導いた一人の刑事がいたのです
殺人など凶悪犯罪を扱う警視庁の花形部署捜査1課の中でも検挙率は群を抜き刑事にとって最高の栄誉警視総監賞を十数回も受賞した伝説の刑事だ
彼の行くところ新聞記者が特ダネを求めて群がる
上層部の期待を一身に背負った男
彼の真骨頂とも呼ばれる事件がある
完璧に行われた犯行
しかし彼はたった一つの証拠を基に遺体の人物を特定
しかも殺害した犯人までも割り出したのである
果たしてそんな彼のアンビリバボーな捜査とはいったい?
事件が発覚したのは警視庁が管轄する東京ではなく福岡だった
博多駅構内にある運送会社の貨物倉庫で…
(男性)おい。
(男性)おい。
(男性)はい。
その箱から異常な悪臭を感じた係員は不審に思いひもを解いた
荷物の中に赤い血痕のようなものが見えた
中身は布団だった
しかし…
布団にくるまれていたのは…
博多駅の倉庫で発見されたもの。
それは布団にくるまれた死体だった
荷物は2カ月前駅に配達されたものだったが受取人が現れないまま倉庫に保管されていた
駆け付けた福岡県警がすぐに検視に入った
頭部を殴られたことによる他殺死
死後およそ2カ月が経過し人相の判定は不可能
小柄な男性で…
だが所持品から身元につながるものはなかった
運送会社を当たったところ死体の入った荷物は東京から名古屋を経由して福岡に送られたことが判明した
つまり…
犯行現場は…
直ちに殺人事件として各地に捜査本部が設置された
遺体が発見された博多の福岡県警
遺体が経由した名古屋の愛知県警
そして事件が起こったとみられる東京の警視庁にも捜査本部が設置され第一線で活躍する腕利き刑事たちが招集された
その中の一人があの伝説の刑事竹井正治だった
(課長)ではまず…。
(課長)愛知福岡両県警が運送会社を捜査したところ遺体を包んだ荷物はまず東京汐留駅の運送会社支店に持ち込まれて発送された。
荷札に書いてある発送人は東京都中央区新富町の前田とある。
届け先は前田一夫宛て。
名古屋駅止めとなっている。
物流が発達していなかったこの時代
駅止めとして荷物を指定した駅へ発送
後日それを受取人が駅まで取りに行く方法がしばしば使われていた
(課長)翌11日。
名古屋駅の運送会社支店に前田一夫と名乗る人物が現れて荷物を引き取った。
東京から前田一夫が発送した荷物を名古屋駅の運送会社で前田一夫本人が引き取る
ここまではさほど不思議なことではない
ところが…
・すいません。
(男性)はい。
それは例の荷物だった
前田一夫なる者が引き取った荷物を再び名古屋の運送会社に持ち込んだ人物がいた
男はその荷物を福岡に宛て送ったという
応対した係員が異なるため証言に多少の違いはあるものの身長およそ165cm前後。
面長の二枚目という特徴は一致していた
これらの事実から荷物の発着に関わった男は全て同一人物と思われた
だがこのときの発送人は前田ではなく東海レントゲンKKとなっていた
送り先は神野良三宛て。
博多駅止め
差出人がレントゲンの会社なら重いこともあるだろうと係員は不審に思わなかった
翌日荷物は名古屋から博多に送られた
だが…
間もなく福岡県警の調べで神野良三なる人物は福岡に存在しないことが分かった
(竹井)課長。
(課長)ああ。
実在したが東海レントゲン側は例の梱包についてはまったく知らなかったそうだ。
愛知県警の見立てでは事件とは無関係だ。
・
(ドアの開く音)
(竹井)ほら来た。
(一同)よし。
福岡県警から事件が起こった東京に証拠品が届いた
被害者は身元不明
犯人の手掛かりをつかむには荷物の中にあった遺留品を当たるしかない
遺体を包んでいた3枚の布団
ビニールで作った手製の布団袋
縄。
荷札。
そして被害者が着ていた服がそれだった
(鈴木)はい。
(田中)はい。
(課長)竹井君は…。
(課長)分かった。
早速当たってくれ。
(一同)はい。
(課長)ああ。
それと一つ。
(一同)はい。
全国にその存在を誇示したい地方警察と誇り高き東京の警視庁
絶対に負けられない闘いがそこにあった
竹井刑事の担当は…
まず向かった先は…
そこでビニールの種類が分からないか聞いてみると…
そうですか。
(従業員)あっ。
(竹井)チャック。
ありがとうございます。
(従業員)いいえ。
あまりお役に立てませんで。
竹井刑事は下町蔵前の卸問屋に向かった
(竹井)すいません。
(男性)しかもね…。
YKK?そうですか。
YKKは当時も今も国内で90%以上のシェアを有するチャックメーカーである
故にYKK以外のメーカーの場合製造元を探すのは困難だった
(竹井)貧乏くじだったか?
(竹井)《いや。
待てよ。
俺は何落ち込んでるんだ?》《残り1割しか出回ってないチャックならそのチャックを見つけだせば犯人をすでに10分の1に絞れたことになるじゃないか》《これはむしろ運がよかったんじゃないか》
その瞬間竹井の刑事魂に火が付いた
(竹井)《残り1割しか出回ってないチャックならそのチャックを見つけだせば犯人をすでに10分の1に絞れたことになるじゃないか》
その瞬間竹井の刑事魂に火が付いた
だが…
(記者)竹井さん。
竹井さん。
(記者)どうもどうもどうも。
(記者)遺留品の捜査の方はどうですか?
(竹井)ないない。
君らに話すことは何にもないよ。
(記者たち)えっ?そんなことでいいんですか?
(記者)愛知県警の方は捜査順調のようですよ。
(記者たち)ちょっ…。
竹井さん。
竹井さん。
待ってくださいよ。
愛知県警は前田一夫と名乗る男が福岡に荷物を送った5日後市内の旅館に宿泊していたことを突き止めていた
同じ偽名を使った同一人物と思われた
(課長)そうだ。
いや。
それが…。
他の遺留品の聞き込みも進展はなかった
製造元すら分からないチャックを頼りに犯人を捜す
雲をつかむような話だった
どれだけ歩いても手掛かりは得られない
それでも諦めるわけにはいかない
その執念だけが竹井刑事を支えていた
そして…
(竹井)あのう。
すいません。
(男性)うーん。
いやぁ。
(男性)おい。
(男性)いや。
ちょっと…。
(男性)ああ。
(男性)ほれ。
(男性)ああ。
あの人。
(竹井)えっ?
(男性)なあ?
初めて聞くその言葉が一筋の光に思えた
初めて聞くその言葉が一筋の光に思えた
だが…
(課長)失礼します。
(男性)刑事課長。
(課長)はあ。
上司たちは焦っていた
マニアだという男は蔵前から程近いチャックの製造会社に勤めていた
(男性)いやぁ。
お待たせいたしました。
チャックの収集を始めてからチャックのことを聞きたいなんて言ってくれる人初めてですよ。
さあ何でも聞いてください。
(竹井)よろしくお願いします。
(男性)これか。
(竹井)ホントですか?
(男性)これが…。
2人は遺留品のチャックの写真と山のようなサンプルとを一つ一つ照らし合わせた
だがこうしている間にも愛知県警は着実に犯人へと迫っていた
本物のレントゲン機器を実際に梱包してみたところ…
これにより犯人は医療機器を扱う会社と接点がある人物と推測していた
(課長)くそっ。
着々と犯人像を絞りこんでいる愛知県警に比べ警視庁の遺留品の捜査に進展はなかった
(刑事)何でも…。
そのころ竹井刑事はチャックの製造元を突き止めるべく黙々と奮闘を続けていた
(男性)ああー。
(竹井)えっ?
(男性)よし。
竹井刑事は思った。
この若者に懸けてみようと
やがて…
(男性)あっ。
(男性)間違いない。
ビニール専用チャックスライダーと呼ばれるものです。
ついに犯行に使われたチャックと同一のものを見つけたのだ
これにより犯人は自ら用意したビニールにこの専用のチャックを取り付け布団袋にしていたということが明らかとなった
(男性)この手の商品は…。
製造元の会社までは分からなかったもののその所在を銀座かいわいにまで絞ることができた
初めて得た手応え
(男性)やった。
(竹井)やった。
地道な捜査でようやく犯人に近づいた瞬間だった
しかし…
(竹井)えっ?
(竹井)えっ?
(課長)ああ。
(竹井)何でですか?
(竹井)お言葉ですが…。
(課長)だがな…。
遠回りな捜査は別の人間に引き継がせ有能な竹井には他を当たらせるべきという上からのお達しだった
(竹井)《よその捜査に惑わされるべきではない》《与えられた遺留品捜査を各自が必死にやるべきなのに》
上からの命令に背くことは警察社会では許されない
しかし…
いいえ。
課長。
(記者たち)竹井さん。
上司に盾突いた以上結果を残さなければ責任問題となるのは必至
しかしもう後戻りはできなかった
以来連日竹井刑事は…
だが以前のような雲をつかむ話ではない
(男性)この手の商品は…。
マニアからの情報によってエリアは絞られている
そしてある会社でのこと
(男性)あのう…。
実はビニール専用のチャックを製造する会社には…
そして…
何!?
竹井刑事はついに…
さらにその製造元によれば都内には10カ所問屋があるが生産したチャックの大半は新宿にある決まった問屋に卸しているという
しかもそこは販売店も兼ねていた
となれば犯人が直接チャックを買った可能性もある
そして事件はここからさらに…
(剛力)正体不明の遺体と共にあったチャックが事件を解決する鍵となるのでしょうか?
(設楽)これ時代なんですかね?この死体をね東京から名古屋。
名古屋から福岡ってこういうふうに送るっていう感覚すごくないですか?
(一同)そうですね。
(八代)送る意味が分かんないですよね。
(設楽)確かに。
(八代)当然送ることに発見されるリスクも伴うわけで。
(設楽)何で送ったんすかね?
(水川)知りたい。
あと愛知県警と警視庁の闘いみたいなものも昔はきっともっと激しいですよね?きっとね?
(設楽)メンツの勝負っていってますもんね。
(水川)そうそう。
(日村)でもやっぱり竹井さんの遺留品を調べるっていう信念。
(剛力)そうですね。
(設楽)でもさチャックが分かったとこでさ買いに来た人だって…。
防犯カメラもたぶんないだろうし。
(設楽)チャックだってさ誰か他人が買ったのをもらってきた可能性もあるわけだし。
(渡辺)科学捜査がまったくといってほぼないぐらいだからそれこそ多方面から調べられなくてこの一本の線をたどるしかないみたいな。
きっと。
(設楽)線っていうか点ですよね。
(渡辺)点ですね。
(設楽)それを一人一人が分かれてやってるんですもんね。
(日村)すごいわ。
(渡辺)足で捜す。
ようやく突き止めたチャックの卸問屋
しかもそこは販売も行っていた
竹井刑事の胸は高鳴った
・
(ドアの開く音)・
(社長)やあ。
刑事さん。
ずいぶんお待たせしたようで。
(竹井)とんでもございません。
社長。
お忙しい中ありがとうございます。
(社長)いやいや。
どうぞどうぞ。
竹井刑事が今までの経緯を説明すると…
(社長)おい。
(竹井)そうですか。
(社長)じゃあこちらですね。
(竹井)あっ。
はい。
社長によればこのビニール専用チャックスライダーは自衛隊員やある町内会へ景品として販売したという
(竹井)《動作がのろくなった》《まだ何か思い出せるのではないか?》
(竹井)あのう…。
(社長)そういや…。
さかのぼること半年
本田は3カ月ほど勤めたこの会社を突然退社したという
(社長)いや。
実はですね…。
その後社長は本田の行方を追ったが結局その居所はまったくつかめず本田と親しかった中野和雄という人物の勤め先に連絡したという
中野和雄はとある生地問屋と契約しているセールスマンだった
勤め先の人の話では巣鴨に下宿しているという
(社長)ごめんください。
社長が早速行ってみると…
(社長)あのう。
中野さんいらっしゃいますか?
(社長)えっ?
(家主)はい。
転居先を聞いたが家主にも分からなかった
やむなく社長はそれ以上本田を捜すことを諦めたというのだ
(社長)えーと…。
(社長)ええ。
遺体は発見時死後およそ2カ月が経過していた
それは中野がいなくなった時期と一致している
(社長)ああ。
もちろん。
おい。
誰か。
おい。
(竹井)《本田と中野。
この2人怪しい》
今から半世紀以上前のこと履歴書に写真はなく顔は確認できなかったが履歴書と荷札に書かれた文字。
その筆跡はそっくりだった
履歴書と荷札に書かれた文字。
その筆跡はそっくりだった
お世話になりました。
あっ。
それとあと1つ。
(社長)えっ?そうですね…。
社長の証言は遺体が入った荷物を名古屋に引き取りに来た前田一夫の特徴とも一致する
竹井はこう推測した
前田一夫と名乗った男は本田彰でありそして遺体は中野和雄であると
(記者)竹井さん。
いよいよ犯人を?
(竹井)なに。
捜査はまだまだ五里霧中だよ。
(記者たち)竹井さん。
(竹井)《報告はやめた》《嗅覚鋭い新聞記者にもしスクープされたら犯人が証拠隠滅や高飛びなどしかねない》
しかも怪しいとはいえ本田が中野を殺したという証拠はまだ何一つつかんでいないのだ
そこで竹井刑事は捜査本部には何も報告せずさらなる情報を集めるため問屋の社長が以前訪れた中野の下宿先へ
すると驚くべき証言が飛び出す
えっ?
(家主)ええ。
(家主)はい。
(本田)ああ。
大家さん。
(家主)ああ。
(本田)中野さんがセールスの仕事で忙しくて代わりに頼まれました。
よろしくお願いします。
(家主)大変だね。
(本田)いえいえ。
(家主)どうぞ。
(本田)はい。
失礼します。
よく遊びに来ていた本田を信じ大家は何も疑わず…
竹井刑事の脳裏に一つの考えがよぎった
このときすでに本田は中野を殺害していたのではないか?
とすれば下宿に戻らないことを心配した大家や中野の親族によって失踪届が出される可能性もある
それを防ぐために本田は引っ越しを装い荷物を運びだしたのではないか?
だが残念ながら大家はそれ以上は何も知らなかった
そこで竹井刑事は…
(男性)ええ。
(竹井)そうですか。
じゃあ…。
そこは…
(男性)アパートでしたね。
(竹井)何でここに運んだか知ってます?
(男性)本田さんの下宿していたところです。
それホントですか?
(男性)ええ。
だって僕…。
(竹井)えっ?
(竹井)何でここに運んだか知ってます?
(男性)本田さんの下宿していたところです。
(竹井)それホントですか?
(男性)ええ。
だって僕…。
えっ?
何と本田は中野の下宿先から運びだした荷物を自分の部屋に一度運び入れるとその翌日今度は台東区にある新しい下宿先に運んだというのだ
(男性)いいえ。
そう言われれば…。
重い荷物?
(男性)ああ。
これです。
もし荷物の中身が布団袋で包んだ遺体だとしたら本田が住んでいた下宿で何かが起きた可能性がある
しかし証拠がない以上まだ逮捕はできない
そこで竹井刑事はまず本田が荷物を運びだした最初の下宿に向かった
(竹井)実は本田さんのことで。
(女性)あっ。
あの方に何か?
それは…
(中野)こんばんは。
(女性)あら。
中野さん。
(中野)お母さん。
お元気でした?
2階に下宿していた本田の元を中野が訪ねてきたという
(女性)どうぞ。
それから間もなく…
・
(物音)・
(言い争う声)
何か言い争う声が聞こえた
しかししばらくして…
部屋は静かになったという
(本田)ご心配なく。
(女性)そうかい。
(本田)はい。
いいえ。
それだけではない
2日後。
本田から突然…
(本田)すいません。
そう。
はい。
あっ。
それと…。
(女性)はあ。
はい。
どうぞどうぞ。
本田が住んでいたその部屋で…
本田が住んでいた部屋で…
ある一面だけが…
(女性)ええ。
(竹井)《後は…》
(竹井)《ついに物証を得られる》
犯行を確信した竹井刑事はその足で本田の新たな下宿先へと向かった
本田はすでに逃亡した後だったがそこで驚くべき事実が明らかとなった
本田はレントゲン機器が入った箱だと言って重い荷物を運送屋を使い運びだしたというのだ
点と点が線で結ばれた瞬間だった
たった一つのチャックから真犯人を突き止めたのである
(課長)みんなよく聞け。
(一同)はい。
そして遺体発見から19日後。
本田彰は逃亡先の叔父の家で逮捕された
竹井刑事の執念が実り福岡愛知両県警よりも先に犯人へとたどりついたのだ
こうして警視庁のメンツは保たれた
犯人は逮捕されたが事件はまだ終わってはいない
なぜ一見好青年の本田が殺人を犯したのか?
その動機とはいったい?
その言葉を聞いて本田は…
父は戦死し間もなく母も病死した
両親を失った彼は…
孤児としての劣等感からか見えっ張りになり…
一度ついた癖は大人になっても抜けることはなく上京後洋服生地のセールスマンとなったが世話になったあの社長の会社から生地を持ち逃げ
その後かねてからの知り合いだったセールスマン仲間の中野と2人で生地を売りながら全国を回った
やがて…
自分より商売上手だった中野の…
裁判資料によれば本田はあるとき一人で行商をした先で生地取引の相場を知った
そこで自分への分け前が少ないことに気付き中野への不信感を少しずつ募らせていったという
にもかかわらず…
自分を利用し続けようとする中野に堪忍袋の緒が切れた
そしてついに…
(本田)この野郎!
(中野)何だよ放せ。
やめろよ!
(本田)くそー!
あらかじめ…
その後業者に頼み…
さらに失踪届が出されるのを防ぐため…
通帳など金目のものを手に入れるため全ての荷物をいったん自分の下宿先に運びこんだ
そして遺体を布団でくるみチャックを取り付けた布団袋に入れ2人分の荷物と共に新たな引っ越し先へ
さらに本田は…
医療機器であれば重い荷物でも不自然ではない
そこで彼は同じサイズの箱を作りまず前田一夫名義で名古屋へ郵送
なおも犯行の発覚を恐れた本田は翌日…
今度は名古屋にある実際のレントゲン会社を装い福岡に送ったのだ
犯行現場の東京から遠い福岡に送ればもはや自分へはたどりつけまい
荷物の受取人が現れなければやがて遺体は腐乱し身元の特定もできなくなるだろう
それらを見込んでの犯行計画だった
裁判によって本田には逮捕時二十歳に満たず育った境遇にも原因がある。
反省もしているとの理由から死刑ではなく無期懲役の判決が下った
完璧に行われたかに思えた犯行は名刑事竹井の執念の捜査によって見事解決したのである
(剛力)地道な捜査を重ねることでようやく犯人を逮捕することができましたが皆さんいかがでしたか?
(設楽)竹井さんがすごいっすね。
(一同)うん。
一緒に捜査をしてる感じで見ちゃいましたね。
(日村)社長さんの動きがちょっとのろかったってところから。
あれすごいよね。
(日村)まだ出るって。
(八代)あそこで待つというね。
(藤本)今も同じような犯罪起きてますけどやはりこの時代だからこそやってしまった被害者も加害者も不幸な事件だったなって思いますね。
(設楽)あれ放置したことで完結してたんですね。
(日村)当時でいったら名古屋とか福岡なんてホントに遠いんでしょうね。
(八代)結び付けて考える人がなかなかいない。
(剛力)ただ今科学が進歩しただけではもちろん犯人を逮捕することはできないですよね。
(設楽)だからああいう現場の人が。
言ってもね。
最終的には色々こうだああだってぴんとくるとかもあるし。
(日村)最後はそうでしょう。
(剛力)後は執念だったりとか。
(日村)執念執念。
ホントそう。
(剛力)大切だなって。
さて時代は布団包み事件から10年ほど先に進みます。
そのころ若者の間ではやっていたのはこんなものでした。
こちらですね。
(設楽)色が付いた。
カラーになった。
(日村)ホントだカラーになった。
(設楽)カラーと白黒交じってんな。
(剛力)まず1つ目が1960年代後半にミニスカートが大流行しました。
(日村)そうなんだ。
(剛力)女性がこぞってミニスカートをはき始めてその後定番のファッション。
今ももちろんはかれてます。
(日村)そうだよね。
今みんなはいてるもんね。
(剛力)そして1966年。
ビートルズが来日して3日間で3万人の観客を集めました。
すごいですね。
(ダレノガレ)3万人。
(剛力)そしてこちらの映像が1970年。
銀座に日本初の歩行者天国が誕生。
(日村)70年。
(剛力)そしてそのよくとしにマクドナルド1号店がオープン。
(水川)銀座からなんですね。
(日村)銀座からなんですね。
(剛力)その後その歩行者天国を歩きながらハンバーガーを頬張る若者が増加したそうなんですね。
(設楽)あきさん。
ハンバーガーできたときはどんな感じでした?
(あき)やっぱりニュースで見て買いに行って歩行者で食べるのはカッコイイんだってこうやってむしゃむしゃね。
やったわよ。
(設楽)銀座で?銀座で食べました?
(あき)食べたよ。
新宿とか。
(日村)カッコイイ。
(あき)カッコイイんだから。
(日村)すげえカッコイイ。
今から45年前の1970年に行われた大阪万博
開催期間3カ月で入場者は実に6,400万人
豊かになった日本を象徴する出来事でした
しかしその一方で当時深刻な問題となっていたのが…
豊かさを追求する社会への反発
偏った思想を持つ過激派による一連の暴力事件でした
1970年。
赤軍派を名乗る9人によって日本初のハイジャック。
よど号ハイジャック事件が発生
そして2年後にはあのあさま山荘事件が起こりました
NHKと民放を合わせた総世帯の最高視聴率は89.7%を記録
国民の誰もがテレビに釘付けとなりました
それと前後するようにしてまたもや過激派による凶悪事件かと誰もが信じた出来事が起こります
それが…
1970年。
一人の青年が船を乗っ取り人質を盾に逃亡を繰り広げた…
事件はテレビ中継のさなか…
(銃声)
衝撃の結末を迎えた
その光景は今なお多くの人々の記憶に残っている
だが…
その背景を知る者は多くない
当時二十歳だった青年と警察の2日間にわたるすさまじい攻防戦
日本中を釘付けにした…
そのアンビリバボーな全貌に迫る
事件の始まりは山口県の国道だった
追い越し禁止の国道で前の車を追い越した車両を警察官が取り締まった
通常なら違反切符を切るだけで終わるはずだった
しかし…
男たちの…
不審に思った警官がナンバーを照会したところ彼らの乗った車が…
3人はその場で逮捕される
パトカーと盗難車に分乗して護送されることになった
1人はパトカーに
残る2人は警官が運転する盗難車に乗せられた
そして先にパトカーが走り去った直後…
挙動不審だった理由は盗難車だっただけでなく銃を所持していたからでもあったのだ
(悲鳴)
警官は命に別条はなかったが…
被疑者の方が人数が多い場合本来であれば応援の…
しかしそうしなかったがためにこの後…
銃やナイフを所持した犯人が逃走
その事実は直ちに県警本部へと知らされた
(一同)はい。
間もなくパトカーに乗せられた男の供述から…
逃亡した2人の名前が判明
そのうちの一人が後に日本初のシージャック事件を起こす杉山直人だった
県警は800人を超える…
県内全域の旅館やホテルなど逃亡犯の潜伏先を捜した
だがその足取りは一向につかめなかった
しかし翌日になって事態は大きく動きだす
(警察官)はい。
この110番通報により…
杉山らが山口から広島市内に移動していることが明らかとなった
実は彼らは盗難車を早々に乗り捨て再び別の車を盗み簡単に検問を突破していたのだ
逃亡犯が広島にいる
その連絡は市内をパトロールしている警察官にも入った
そして現場に向かった警察官がついに…
だが杉山は通りすがりの軽トラックの…
そして事件はさらに恐るべき展開を迎える
(本部長)くそっ。
(捜査員)しかもそのライフル銃象を一発で殺せるほど強力だそうです。
警察は市民への警戒を呼び掛けるべくラジオやテレビなど…
銃を持った犯人が広島市内を逃亡している
かつてない恐怖に市民は震えた
そのころ杉山は軽トラックを乗り捨て…
はぐれていた仲間が捕まった
今逃げているのは杉山ただ一人だった
(杉山)くそっ。
午後4時すぎ。
広島港へとたどりつく
このとき停泊していたのは広島今治を結ぶ…
こうして杉山は船を乗っ取った
(船員たち)はい。
船長の中向氏は指示に従いすぐさま船を出港させた
予定よりも早い出発に…
(男性)動いてる?
(男性)動いてるね。
ぷりんす号に起きた異変はすぐに捜査本部にも知らされた
(一同)はい。
警察は捜査員を増強
瀬戸内海の各港に配備させた
また警備艇やセスナを出動させ…
港にはマスコミが押し寄せ熾烈な報道合戦が始まった
上空にはスクープを狙うヘリが旋回
一人の逃亡犯によって…
・
(ヘリのローター音)
標的まではかなりの距離があった
だが…
杉山が放った弾丸は警備艇や上空を旋回していたセスナに命中
パイロットは無事だったが緊急着陸を余儀なくされた
(杉山)わーっ!
象をも殺すライフル銃
その威力はすさまじかった
杉山が放った弾丸は警備艇やセスナに次々と命中
言い知れぬ恐怖が船内に立ち込めていた
だが…
(中向)《船長の自分がおどおどしていたら誰が乗客や乗組員の安全を守るんじゃ?》《腹をくくるしかない》
中向船長は努めて平静を装った
船長は杉山を興奮させないよう穏やかに話した
こうして船は松山に向け舵を切った
このときぷりんす号には船長を含め…
そして33名の乗客が乗っていた
彼らは階下で息を潜めラジオで事件の動向をうかがっていた
船長はずっと気になっていた質問をぶつけた
(杉山)もうええんじゃ。
(捜査員)はい。
このときぷりんす号は…
それは通常の定期客船の運航速度に比べるとはるかに遅かった
犯人が船に不慣れであると踏んだ中向船長は警備艇が追跡しやすくなおかつ松山港で警察が万全な態勢が取れるよう…
この機転が功を奏し船よりも早く松山港にたどりついた捜査員は一般人を避難させるとともに銃撃戦を想定した準備を整え…
だがこの後思いも寄らぬ事態がぷりんす号を待ち受けていたのである
船が停止した訳。
それは…
港に着く直前
いちるの…
いちるの…
いったいなぜこのとき警察側の情報がラジオで流れてしまったのか?
(飛松)指揮命令権っていうのがあるんです。
警察。
縦の社会ですからね。
その点でねいわゆる指揮命令権がね確実じゃなかったと。
その当時いわゆる縦の線がね1本じゃなかったと。
その結果ねマスコミに情報が流れたと。
また当時は今と比べ…
マスコミ各社は常に熾烈なスクープ合戦を繰り広げていた
しかしこうした事情が積み重なり結果的に…
それは希望をつなぐための作戦だった
(中向)けど…。
実はこのとき燃料はじゅうぶんに足りていた
だが何としても港に停泊するために中向船長はとっさに嘘をついたのだ
ぷりんす号は松山港に到着
燃料補給を要請するため船長は港で待機する捜査官の元を訪ねた
(本部長)ただし…。
(中向)はい。
(本部長)それと…。
警察は燃料補給の隙を見て乗組員に扮した捜査官を船に乗り込ませ杉山を取り押さえようとしていた
だが…
そこで警察は捜査員を船内に入れるのではなくゆっくりと給油を行い犯人が隙を見せた瞬間乗り込む作戦に切り替えた
だが杉山は銃を握り締め警戒を解くことはなかった
3時間後…
給油作業が終わったことを杉山に伝えた
間もなく杉山は中向船長の読みどおり人質を解放
33人の乗客と未成年の乗組員が船を下りた
そしてぷりんす号は中向船長を含む7名の乗組員を乗せて再び死と隣り合わせの航海を始めたのである
だが本当の恐怖はこの直後に待ち受けていた
きっかけはまたもやラジオのニュースだった
(アナウンサー)今ぷりんす号は再び出港しました。
最悪の事態が起きようとしていた
(剛力)最初は交通違反を取り締まっただけのはずがシージャックという大事件へと発展してしまいましたが。
(設楽)何でラジオであんな言っちゃってね。
全部。
(ダレノガレ)何であんな冷静でいられるんだろう?
(日村)船長さんね。
(ダレノガレ)びっくりしちゃうよね。
(あき)やっぱり船長は冷静でいないとね駄目なのよ。
(渡辺)だけどラジオ通じてっていう。
今は報道規制って当然の言葉でありますけど。
(渡辺)でもやっぱりマスコミが育っていくっていう時間も。
50年前40年前っていうと…。
今テレビが何周年ですか?50とか60とかですよね。
そうすると記者クラブっていうのができていく過程だったりどうやって情報を統制していくかとか。
でも情報ってホントは統制するものじゃなくてどんどん抜いていくものだったりするわけですよね。
(設楽)全部が最初のケースになってくってことですね。
(渡辺)ホントにそこから学ぶっていう。
学んじゃいけないんだけど。
推測をしてそんな危ないことっていうのを起きさせちゃいけないんだけどそこから学んでいかざるを得ないような事実。
(八代)ちょうどこの時期っていうのは身代金目的の誘拐事件が相次いでて。
このマスコミとの報道協定っていうのが出来上がっていく時期だったんですよ。
でも今回のケースはやはり地元の人たちに知ってもらうためにラジオもともと使ってますよね。
(渡辺)そのツールとしてね。
(八代)ねっ?ですからこれから報道控えてくださいってことになかなかなりにくかったんだろうと。
(一同)そっか。
そうだね。
複雑。
犯人逮捕のためわざと時間が費やされた給油作業
そのことを知った杉山は…
追跡してくる警備艇に向けて…
・
(叫び声)
(アナウンサー)しかし…。
幸い杉山の耳に届くことはなかったがもし中向船長の嘘がバレていたら銃口はどこを向いていたか分からなかった
深夜になっても海上をさまよい続けるぷりんす号
周囲を警備艇や巡視船など20隻もの船が取り囲んでいた
(中向)これからどこに向かうんじゃ?
杉山に何か明確な目的があるわけではなかった
初めは車を盗んだ罪から逃れたい
ただそれだけだった
それが今では日本で初となるシージャック事件を引き起こし警察や海上保安庁の船に追われる立場にまでなってしまった
そのとき聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた
(父)おい。
直人。
聞こえるか?
警察は最後の手段として肉親による説得を試みたのだ
だが杉山は…
(杉山)帰れ!
説得に応じる代わりに…
このままではいつ人質や一般市民に危険が及ぶか分からない。
警察は一つの決断を下した
特殊銃要員
それは腕利きの狙撃手を意味していた
このとき初めて日本の警察は狙撃を目的としたライフル部隊を出動させたのだ
特殊銃要員
それは腕利きの狙撃手を意味していた
このとき初めて日本の警察は狙撃を目的としたライフル部隊を出動させたのだ
シージャックされてからおよそ12時間
杉山は初めて行き先を指示した
そこは…
ぷりんす号が最初に停泊していた港だった
逃亡する際ナイフで警官を刺したのは杉山だった
しかし報道されるニュースでは仲間の男が刺したと言われていたのだ
船長は広島港に戻ることを警察に告げた
そして杉山の要望をかなえるために…
シージャック発生から16時間余り
ぷりんす号は広島港に戻ってきた
(杉山)おい。
(杉山)おう。
確認のため中向船長は警察が待機している場所へと向かった
(本部長)船長。
中の様子はどうですか?
しかしいくら待っても一向に動きはない
船長の脳裏に最悪のシナリオが浮かんだ
(中向)《銃撃戦になる》
船長の脳裏に最悪のシナリオが浮かんだ
(中向)《銃撃戦になる》
事実このとき広島港の桟橋付近では特殊銃要員たちが身を潜め杉山の動向をうかがっていた
(隊員)はい。
(隊員)はい。
今から何が起きようとしているのかは想像に難くなかった
仲間の姿が見えないことに腹を立てた杉山は港にいる…
すると…
・
(捜査員)杉山君。
これ以上説得の余地はなかった
まだ実弾はじゅうぶん船の中に残されている
杉山が放った銃弾で広島港ではすでに5人が重軽傷を負っていた
このままでは人質や付近の住民に死者が出る可能性もある
(銃声)
一発の銃弾が胸を貫いた
杉山はすぐさま警察官たちに取り押さえられ病院に搬送された
その後手術を受けたが間もなく死亡
事件で唯一の死亡者となった
テレビで生中継された狙撃の瞬間
それは国民に大きなショックを与えるとともにこれは裁判抜きの公開処刑だという警察を批判する声も上がった
だが…
事件後杉山の父が語った
この言葉から警察を批判する声は小さくなっていく
しかし事はこれで終わりではなかった
狙撃した警察官が一部の弁護士によって殺人罪で告発されたのである
裁判で後に正当な行為と認められ無罪が確定したが判決まで数年間彼は精神を病むほどつらい生活を強いられたという
事件はいったいなぜ起こったのか?
犯人の杉山に全ての非があるのは言うまでもない
だが…
もしあのとき警察が…
もしあのとき…
(アナウンサー)現在続々と警察が駆け付けています。
もしあのときマスコミに…
誰も傷つくことはなかったかもしれない
最後に事件の当事者である中向船長はこう語ってくれた
(中向)それでなかったら…。
多くの人の人生を狂わせた若き青年の無謀な暴走
歴史に「たられば」は存在しない
しかし時代が生んだ悲劇といって割り切ってしまえるものでないこともまた事実である
(剛力)日本中を釘付けにした2日間はこうして幕を下ろしましたが。
(日村)撃っちゃうってすごいっすよね。
(八代)撃った後は急にやっぱり警察批判にもいくでしょうね。
人命尊重どうなってるんだって。
(剛力)実はこの事件の後あさま山荘事件が起こるんですが。
警察は銃を使うことができなかったそうなんです。
(渡辺)あっそっか。
それでなんだ。
(設楽)そうなんだ。
(渡辺)そっか。
これがあったから。
(剛力)人質を取って立てこもる犯人に対して放水などの手段で対抗するしかなかったそうです。
(日村)撃てなかったんだ。
(剛力)はい。
(八代)だからこの事件きっかけに撃てない警官っていうのが非常に増えましたよねって言われてますよね。
逆に警察官が殉職してしまうケースというのも増えて。
徐々に徐々に平成になってやっぱり外国人犯罪であるとか凶悪犯とか増えてきてこれではいかんということで警察官の銃の使用規範っていうものを改正してもっと明確に。
いつ抜いていいのか。
いつ威嚇射撃していいのか。
いつ相手に対して発砲していいのかっていうのを明確に定められるようになってきたんですよね。
(設楽)水川さん。
さっきね見てて言ってたけど。
あの映像も今は考えられないですよね?
(水川)撃たれる瞬間のですよね。
あれって中継でずっと流してた?
(設楽)生中継。
(水川)じゃあ生で見てる方もその瞬間を見てるってこと。
(日村)ものすごい見てんじゃないですか?ねっ?考えられないですね。
衝撃的っていうか何ていうか。
何ともいえない。
(日村)すご過ぎますね。
(八代)今の報道じゃこういったとこは伝えないし。
歴史的な資料映像になってるから流せるという。
(渡辺)病院に運び込まれるときにライトこうこうにたいて撮ってるじゃないですか。
カメラで。
あれも今では。
(八代)今撮れない。
(渡辺)絶対にない。
(八代)警察が全部ブルーシートで囲っちゃいますからね。
(日村)そうですよね。
(渡辺)だからいわゆるホントにこのころって昭和のころって人権っていうのがまだ確立されてないから確立されてくるときですよね?
(八代)報道と人権と。
(設楽)犯人にも人権っていうのもどんどん長い年月でできてきたってことなんですか?
(渡辺)はい。
こういうのを経て出てきたっていう。
シージャック事件から9年
1979年に発売され70万部を超す大ベストセラーとなった…
日本がこの数年後名実共に世界一の経済大国になることを予言した書として知られています
終戦から30年余りを経て日本人は快適で安全な社会を実現しました
しかしこうした生活にも盲点は必ず存在します
それだけではありません
長い年月を経て築き上げた繁栄
その繁栄を脅かすのもまた私たち自身であるかもしれないのです
・
(犬の吠える声)
その日に限ってまだ明け方だというのになぜか犬が激しく吠えていた
・
(犬の吠える声)
声のする方をのぞいてみると…
(女性)はっ!?
(悲鳴)
いったい…
それは民家の庭先に…
(悲鳴)
いったい…
それは民家の庭先に…
今から36年前
ワイドショーがその模様を連日報道
平和な町を突如襲った戦慄
果たしてその正体はいったい何だったのか?
(刑事)暑いな。
(刑事)暑いっすね。
・
(刑事)はい。
刑事課。
・
(署員)たった今110番通報…。
恐怖の始まりは猛暑が続く8月3日午前4時
一本の110番通報
捜査員が向かったのは千葉の郊外にある寺だった
(刑事)えっ?
(刑事)えっ?
(女性)そうですね。
1歳にして体長1.5m体重90kgに達する大きな虎だった
いったい…
実はその寺では…
動物園のように参拝客を楽しませていた
当時は猛獣であっても特別な許可は必要なく誰でも飼育できたのだ
中でも虎は目玉の動物で全部で12頭も飼われていた
前日の午後6時に見回ったときはおりはきちんと閉まっていたという
(住職)よし。
ところが…
おりの扉が開いていることが発覚
3頭が姿を消していた
警察は何かの拍子に虎が打ち掛け錠をはね上げ扉が開いたのではないかと推測
しかし詳しい原因については分かっていない
1頭はすぐおりに戻ったが他2頭の行方は分からず寺が通報したのは6時間後だった
事件が発生したとき寺には…
さらに…
周辺には80世帯の民家があった
それだけではない
夏休みということもあって…
想像してみてほしい
家の外に凶暴な肉食獣が潜むという恐怖を
虎は短距離なら時速50キロから60キロで走るといわれ標的になればたとえオリンピック選手でも逃げることは不可能
2007年に記録された映像を見てみよう
家畜が虎に食われるという被害が出たため捜索していたときのこと
茂みに身を隠し…
そして一歩で4m進むことができるという瞬発力で獲物に襲い掛かる
そんな猛獣が逃げ出したのである
(チャイム)
(女性)山?
(警察官)はあ。
(警察官)そうなんですが。
前代未聞の虎騒動はこうして始まった
直ちに交通規制が敷かれ住民たちも戸締まりを厳重にするなど対策を取った
そして…
地域住民の人命を守るべく警察は現地対策本部を設置
機動隊や猟友会が招集された
(一同)はい。
射殺やむなし。
それには訳があった
現場は深いやぶが多く捕獲は困難
麻酔銃も命中してから動きが止まるまで数分かかってしまう
かくして山一帯を捜索する作戦が始まった
しかし視界が悪く一瞬たりとも気を抜けない
一方寺では高校生たちを脱出させるべく…
すると…
・
(吠える声)
(悲鳴)
(隊員)落ち着いて。
ようやく…
しかし…
住民の中には虎が逃げたという情報を外出先で知った者もいた
自宅に戻るには山道を通るしかない
・
(うなり声)・
(物音)
(悲鳴)
夏休み中の子供たちも外へは一歩も出られず退屈に耐えねばならなかった
・
(物音)
(子供)お母さん?・
(物音)
(子供)嫌!
(母)怖かった。
(子供)脅かさないでよ。
ごめん。
住民たちが見えない恐怖におびえる中捜索隊がついにその影を捉えた
(男性)どこだ?
20cmもある虎の足跡
猟友会も初めて相対する虎の存在に不安を隠せなかった
飼い慣らされた虎も…
山中でひとたび狩りの楽しみを覚えれば人を襲うのは必至
事は一刻を争う
そこで対策本部は数頭の…
虎を捕獲する作戦に出た。
だが…
実は虎やライオンなどネコ科の動物には汗腺がないため体臭もほとんどない
それ故たとえ犬でも居場所を特定することは困難とされる
こうした事実は当時ほとんど知られていなかった
そして…
無念の日没
街灯もまばらなこの地区は夜暗闇に包まれる
対策本部は住民の外出を一切禁じた
安全のためシャッターまで下ろす人々
だが虎脱走2日目。
住民を本当の恐怖が襲う
・
(犬の吠える声)
まだ明け方だというのにその日に限って激しく吠える犬
(悲鳴)
ついに…
民家に虎が現れるという衝撃の事態を受け捜査人員を大幅に増強
800人に及ぶ人海戦術となった
寺の周囲1kmに絞って包囲網を敷き虎大捜査線2日目が始まった
当時猟友会員として捜索に参加した荒木さんはそのときの恐怖をこう語る
(荒木)結局いつどっから出てくるか襲われるか分かんない恐怖。
そういうあれはみんな持ってたんじゃないかね。
もし急所を外してしまったら最悪の場合反撃されかみ殺される危険もあるのだ
命を懸けた虎狩り
捜索開始から1時間ほどがたったときだった
ついに猟友会メンバーが虎を発見
すると…
前方5mという至近距離に
さらに…
2発とも命中した。
それでも…
不死身なのか?そのとき…
回りこんでいた仲間の銃撃に…
(男性)やったか?
(男性)ああ。
これが射殺された虎である
猟友会の3人が計4発
発見から射殺まで1分ほどの攻防だった
命懸けの虎狩り
だがこれによってハンターたちを思わぬ悲劇が襲う
・
(男性)はい。
もしもし。
(男性)えっ?
射殺に対して非難の声が全国から寄せられたのだ
だがなぜハンター個人の…
実は彼らの名前と住所が新聞などで報道されてしまったのだ
嫌がらせの電話は昼夜を問わず鳴り響き…
・
猟友会撤退も危ぶまれた
しかし…
もう1頭を仕留めるまで住民の安全はない
男たちは闘い続けた
近くのゴルフ場では自衛策として…
ありがとね。
車のない住民たちは生活必需品を親戚に買ってきてもらうなどして当座をしのいだ
だが虎脱走から2週間が過ぎたころ…
再び恐怖が…
・
(水音)・
(水音)
目撃されたのは重点的に捜索を行っていた地区から2kmも離れた山の麓の民家だった
(チャイム)
それまで虎が出没した山あいの地区とは違い住宅街に姿を見せたのは初めて
人ごとだと思っていただけに住民はパニックに陥った
そして虎脱走から26日目。
ついに恐れていたことが起きた
場所はとある…
・
(犬の吠える声)・
(犬の吠える声)
愛犬の異様な声を聞いた男性は声がした庭へ向かったのだが…
残されていたのは首輪と鎖だけだった
(男性)エス?
目にしたのは愛犬とは比べものにならない大きな獣の足跡だった
通報を受けた警察が早速付近の山を捜索
すると…
犬のものと思われる…
ついに恐れていたことが
(男性)どうしてうちのエスが。
エス。
エス。
虎が狩りを覚えた瞬間だった
(男性)どうしてだよ!
(チャイム)
(女性)ああ…。
それまで具体的な被害が出ていなかっただけに生き物が襲われたという知らせに衝撃が走った
(女性)怖い!
(男性)どこへ逃げりゃいいんだ?
恐れおののく住民たち
そこへ現れたのは…
実はさかのぼることおよそ10日
警察学校で射撃テストが実施されていた
そこで選ばれた腕利きの警察官により虎捜索選抜隊が結成されたのだ
彼らが装備したのはスラッグ弾と呼ばれる殺傷能力の高い銃弾
現場の山に詳しい猟友会員たちが先導
そして…
そのとき選抜隊の前に突然何かが飛び出してきた
(虎の鳴き声)
虎の脱走から26日目。
午後0時20分
寺からおよそ4km離れた山中で2頭目の虎が射殺された
こうして前代未聞虎の逃走劇は幕を閉じた
翌日町はすっかり活気を取り戻した
ゴルフ場は再開され住民の顔にも笑顔が戻った
騒動のきっかけをつくった寺の住職は「警察側の適切な措置で騒ぎが解決したことに感謝する」と語った
そして猟友会員として捜索に参加後いわれなき誹謗中傷を受けた荒木さんは…
この一件をきっかけに全国で条例の制定が相次ぎ…
われわれは文明を発展させ快適な社会を実現した
だが平和な日常はいとも簡単に崩れ去ることもある
そこには人間の怠慢と思い上がりがあるのかもしれない
(剛力)こうして26日間に及ぶ虎騒動は幕を下ろしたわけですが。
今の映像では虎がゆっくり動いてこっちに向かってきた映像だったんですが実際もし自分が銃を持って虎に対峙したときにたぶんそういう状況ではなくもっと恐怖感もたくさんあって。
しょうがなくたぶん殺してしまったのかなと自分でもやっぱりかわいそうですけれどもたぶん撃ったのかなと。
(剛力)渡辺さんいかがでしたか?住民の方の…。
自分がそこに住んでたらという恐怖とか。
猟友会の方と捜査員の方のご苦労っていうのはホントに並々ならないって思うけど人って勝手だなっていう気しか残らないんですよね。
もちろんこれをきっかけに飼わなくなったっていうことはそうなんだけど勝手だなっていう気はすごく残っちゃうんですよね。
(あき)だけど住人はホント怖かったね。
(設楽)これは怖いっすよね。
(あき)怖かったね。
(設楽)虎ってやっぱここで見たら怖いっすもんね。
(日村)分かる。
(設楽)もう怪物だよね。
(日村)ねっ。
思ってるより…。
(設楽)ガウッ!
(日村)何だよ!?何だよ。
(ダレノガレ)怖い。
(日村)怖いよね?
(ダレノガレ)怖い。
怖い。
(日村)突然「ギャッ!」なんて。
(設楽)だからみんな住人もそうだよ。
虎逃げてるってこういう状況ででいるかなと思ったらいるんだから。
(日村)そうか。
(水川)ガウッ!
(日村)何だよ!?何だよ。
何だよこの女優!ギャグじゃないんだよ今。
戦中から戦後の混乱期
日本中をある恐ろしい言葉が駆け巡りました
それは…
「首なし」とはいったい何のことだったのか?
歴史に埋もれた事件が今明らかとなります
ここで時は第2次世界大戦の真っただ中にさかのぼります。
ある事件の真実を追求するため全身全霊を懸け闘った男。
その生きざまは未来を生きるあなたの目に果たしてどう映るでしょうか?
事の発端は今から71年前
東京で活躍する弁護士正木ひろしの元に舞い込んだ一つの依頼だった
依頼者は茨城県にある加最炭鉱の女社長佐藤と現場責任者の氏家という男だった
(佐藤)はい。
実は…。
(男性)猪鹿蝶とくらぁ。
(男性たち)おいおい…。
その日加最炭鉱の大槻徹は若い坑夫たちと花札に興じていた
(男性)こうか。
(男性)うん。
うん。
(黒沢)おうおうおう。
派手にやってるな。
(大槻)いや…。
(男性たち)いや。
えっ?
だが逮捕の目的は花札賭博の摘発ではなかった
(黒沢)大槻。
(大槻)知らねえ。
知らねえ。
そのころ日本は太平洋戦争の真っただ中
国民の誰もが貧しい生活を強いられ食料は配給のみと法によって厳しく決められていた
しかしその量はごくわずか
庶民の多くが配給以外の米いわゆる闇米を法を犯し手に入れざるを得ない状況だった
当時石炭の出る長倉村には採掘場所を巡り加最炭鉱と対立するもう一つの炭鉱があった
大槻を連行した巡査は敵対する炭鉱側と親しく闇米容疑をでっち上げて加最炭鉱をつぶそうとしていると噂されていた
(佐藤)それで…。
(氏家)顔には殴られたようなあざもありました。
(氏家)それからでも…。
(黒沢)いいから!
(正木)ですが…。
(氏家)それだけじゃないんです。
それは氏家が警察に遺体を引き取りに行く直前
地元の運送会社の社長四倉のところに立ち寄ったときのことだった
氏家は警察と関係の深い四倉に…
(四倉)えっ?
(四倉)そっか。
(四倉)昨日巡査に会ったとき…。
そう言ってたんだよ。
「やき」とはすなわち拷問のこと
戦前戦中は…
自白さえあれば後の証拠は付け足しにすぎない
そのため警察が容疑者を拷問して自白させるのは日常茶飯事
しかもそれは必要悪として黙認されていたのだ
逮捕から間もなく大槻は帰らぬ人となった
(助手)先生。
何をされてるんですか?
(助手)まさか…。
(正木)確かに…。
正木が弁護士になったのは30歳を過ぎてから
しかも親しくする雑誌社が抱える裁判を仕方なく手伝ったのがきっかけ
特になりたくてなった職業ではなかった
以来民事専門の弁護士として活躍する一方で…
無謀な戦争へ国民を駆り立てる政府を批判していた
当時は国家の方針を否定するような発言をすれば容赦なく逮捕される時代
だがかつて画家を目指していた正木は雑誌主催で美術展を定期的に開催しておりそこには現在の法務大臣に当たる時の司法大臣をはじめ検察官や裁判官なども多く出品していた
そのため批判的な記事を書いても逮捕されることはなかったという
こうした経験や交友関係から法に仕える人間ならば自分の主張を分かってくれるはず。
そう思っていた
だが正木はこのとき気付いていなかった
事件の裏に広がる巨大な闇の存在に
法に仕える人間ならば自分の主張を分かってくれるはず。
そう思っていた
だが正木はこのとき気付いていなかった
事件の裏に広がる巨大な闇の存在に
翌日早速検事局を訪ねると…
(神谷)今回担当することになった神谷です。
それで…。
(神谷)先生は…。
なぜか神谷検事は事件のことを一切聞かず正木と司法省のつながりについて根掘り葉掘り聞いてきたのだ
本来であれば正木ら弁護士が携わる司法にはどんな権力も立ち入ることはできない
だがこの当時は国の機関である検事局現在でいう検察庁が公然と介入することがあった
不穏な空気を感じ取った正木は翌朝水戸へ急行
現地の検事局を訪ねた
だがそこで聞かされたのは驚くべき知らせだった
(男性)いや。
だから…。
まるで正木の先回りをするかのように現地の検事が息のかかった警察医を使って…
検察が証拠を隠蔽しようとしていることは明らかだった
そこで正木は自ら現地を駆け回り事件を調査
すると…
大槻が亡くなった日警察に呼ばれた医師は駆け付けたときまだ体温がいくらか残っていた気がすると証言
だがこれは…
遺体を引き取りに行ったときに氏家が聞いた警察の証言と食い違う
運送会社の四倉にも聞き込みを行うと…
氏家の証言どおりだった
そして…
(正木)しかし…。
(神谷)そこまで言うなら…。
正木の武器は地元の人々の証言だけ
決定的な証拠が一つもないまま告発状を出しても神谷検事が不起訴の判を押して事件を闇に葬ってしまうのは明白だった
警察組織がいくら腐っていようとも検事や司法関係者は正義を貫いている
正木はそう信じていたがそれさえも腐っていたのだ
警察組織がいくら腐っていようとも検事や司法関係者は正義を貫いている
正木はそう信じていたがそれさえも腐っていたのだ
このとき正木はかつて自分の助手を務めていた若い弁護士が出征の報告にやって来たときの言葉を思い出した
(正木)そうか。
警察の不祥事を国家ぐるみで隠蔽し闇に葬り去る
そんな国のために若者が命を投げ出して戦っている
そう考えると怒りが込み上げてきた
正木は闘う決意をした
そして…
(教授)それは…。
(正木)では教授。
真実を明るみに出すため東京帝大法医学教室の最高権威に独自に鑑定を依頼しようとしたのだ
(正木)では教授。
真実を明るみに出すため東京帝大法医学教室の最高権威に独自に鑑定を依頼しようとしたのだ
(教授)残念だがうちは…。
あと1週間もたてば…
一刻も早く司法解剖をしなければ
そこで正木は思い切って司法大臣を訪ねた
大臣は美術展の常連出品者だったのだ
(正木)大臣。
(司法大臣)うん。
大臣の思わぬ反応に正木は驚いた
だがこうしている間にも遺体は腐敗していく
・
(ノック)・
(正木)失礼します。
(教授)はい。
どうぞ。
正木はわらをもつかむ思いである場所を訪れた
それはかつて彼がデッサンの勉強をするために骨格模型を貸してもらっていた解剖学の教授の元だった
そこでアドバイスをもらおうと考えたのだ
(正木)ええ。
ただ…。
(教授)何だか知らんが…。
(教授)分かった。
(正木)ただ…。
次の瞬間教授が思わぬことを口にした
(正木)ああ。
(正木)しかも…。
死体損壊は犯罪ではあるが当時は裁判の重要な証拠など正当な理由が認められれば罪には問われない場合があった
だが首を切るところで見つかったり裁判で脳溢血を覆せなかったりすれば死体損壊罪で起訴される可能性が高い
正義どころか犯罪者というレッテルを貼られ正木の弁護士生命は間違いなく終わってしまう
危険な賭けであった
しかし…
(正木)これは…。
そして正木は依頼者である佐藤にもこのことを話した
首切りが成功しても失敗しても炭鉱は現地の警察から憎まれ報復を受ける可能性があったからだ
翌日
正木は首を切ってもらう動物解剖専門家と共に茨城県の水戸へ向かった
手に首を入れるためのバケツを持って
首を研究室に持ち帰り正確な鑑定結果を得るまでは絶対に見つかってはいけない
もし途中で警察に見つかれば正木は即刻逮捕される
(男性)先生。
先生。
(正木)よし。
(落ちる音)
無事汽車に乗ることはできたが…
(においを嗅ぐ音)
車内の温度により…
(男性)何でもない。
(男性)怪しい物は入ってません。
(女性)怪しい物ではありません。
そのとき…
(警察官)中を見せろ。
(警察官)来い。
来い。
何とか難を逃れた
後にこの事件は再び医療関係者によって墓が掘り起こされたとき…
翌朝。
早速持ち帰った首を法医学教室に持ち込んだ
法医学の最高権威による司法解剖は30分で終了した
鑑定の結果は…
(教授)間違いない。
これは…。
決死の覚悟で持ち帰った首がついに…
(正木)ありがとうございます。
そしてこの結果を基に正木は正式に告発状を提出
東京の検事局がそれをついに受理した
間もなく疑惑の巡査黒沢は傷害致死の罪で起訴された
(正木)大臣。
(正木)これは…。
そして…
ついにその日はやって来た
この裁判には一つ特徴があった
検事局と弁護人が有罪無罪を争う点では通常の裁判と何ら変わらない
だがこのとき被告は警察官であり検察にとっては身内のようなもの
つまり検察と弁護人双方共に警察官の罪をなかったことにしたい
その目的は一緒だったのだ
だが告発した正木には警察官を罪に問う自信があった
暴行死を裏付ける確固たる証拠を検察は受理している
裁判所が正しい判断さえ下せば全ての不正を白日の下にさらし国家権力という殺人者を浮き彫りにできる
正木と佐藤以外は全て警察関係者という異様な空気の中裁判は始まった
(一同)よっしゃ。
よし。
(裁判長)よって…。
(裁判長)よって無罪。
正木が相手にしたものはあまりに巨大な闇だった
実は当時検察と裁判所は共に司法省の管轄下に置かれていた
故に検察が圧力をかければ判決を左右することすら可能だった
そう。
告発した正木以外は全て身内だったのだ
・
(足音)
(正木)ひきょう者!
だがこの裁判問題は関係者全てが身内だったからだけではない
正木の聞き込みでも有力な証言をした運送会社の四倉
しかし…
(四倉)いえ。
警察と水戸の検事たちから圧力を受け証言を翻していた
さらに…
死後10日近く経過していたため信ぴょう性が低いとして採用しなかった
(警察官)中身は何だ!?
幸い心配された死体損壊罪による起訴は免れたが首なし事件はこうして闇に葬られた
だがその後正木は諦めることなく…
するとこの記事が思わぬ展開を生んだのだ
国家に盾突いたと逮捕されるどころか…
その一人が…
警察とグルだった水戸の検事局は上告せず無罪のまま裁判を終わらせようとしていた
それに対し東京の検事局から上告をしろという行政命令が下されたのだ
異例中の異例ともいえる命令により首なし事件の審議は継続となった
さらに終戦からわずか3カ月後のこと
新聞に驚くべき見出しが躍った
首なし事件は空襲での記録焼失を理由に最初からやり直し
つまり無罪という判決さえ無効になったのだ
このころ正木は現地の長倉村や近隣の村々でたびたび…
その中で首なし事件についても触れたのだがそこで…
(男性)なっ?
(一同)うん。
そうだ。
そうだ。
いつしか正木の正義を追求する姿勢は多くの共感を呼んでいたのだ
そしてさらに3年後
東京控訴院。
現在の東京高等裁判所で…
警察官による傷害致死
それを訴え続けた正木を後押しする世論によって…
(正木)ああ。
告発から4年半
ついに…
一弁護士が日本にはびこる闇を白日の下にさらしたのだ
しかし事件から11年後の12月
巨大な権力によって正しいことが正しいと言えない時代
そんな中で正木は…
自由に考え自由に物が言える現代
その礎は彼の孤独にして壮絶な闘いによって築かれた
その後数々の反権力裁判冤罪裁判を手掛けた正木を人々は日本の良心と呼んだ
そして1975年12月6日
肝臓がんのため79歳で世を去った
正木は「義を見てなさざるは勇なきなり」という孔子の言葉を引用しこんな言葉を残している
(剛力)亡くなるまで自らの信念を貫き通した方だったんですね。
水川さん。
いかがでしたか?
(水川)そうですね。
何かある意味で国が変わった瞬間でもあったりもするわけですよね。
何か戦争が伝えられていくようにこうやって伝えるべき事件とか事故っていうのはすごく大事なことなんだなっていうふうに思いましたね。
(渡辺)1個思うのはどうして警察がそうなったかっていうその前の時代を考えるとやっぱり日本をつくっていくときに今でない最初の憲法っていうのを学びに海外にホントに岩倉具視とかが出ていったっていうそんなすごい古い時代からいくと国つくるっていうことが大変だったと。
そうすると警察の権力をしっかりしないと治安も守れないみたいなところから始まっているっていうことは…。
(設楽)日本が滅んじゃうみたいな。
(渡辺)こういう行き過ぎもどんどん出てくるわけで。
それを修正していくっていうのが自分たちで修正できればいいけどやっぱりこういう事件で犠牲っていうものが出ないと修正できていけないっていう。
何かやるせないとこはすごくありますよね。
何か。
(設楽)でもさある程度これつながってるわけじゃん。
人間の歴史で。
それでルール改善されて平和になるように。
戦争なんかもうみんな国のためにやって平和になるように。
昔子供たちがおいしいもの食べられるようにとかやってきて。
今みんな知らないけどそうやって生活してそれがそういう人たちがつくったものだとしたら今度俺らは次の世代に考えさせない平和な暮らしをやるっていうのが一番ホントはベストはベストだよね。
ルールをどんどんよくしてくっていうのが。
そう思った何か。
(剛力)そうですね。
それでは最後にこちらをご覧いただいて今夜はお別れです。
1957年に起きた殺人は大量消費の時代を象徴するかのような事件だった
それを解決に導いたものは捜査官たちの執念に他ならない
シージャック犯が射殺される瞬間を私たちはテレビの画面で目撃した
それは高度成長期を突き進む日本人に冷水を浴びせるようなショックを与えた
1979年に起きた虎脱走事件は安全を信じきっていた私たちの日常に警鐘を鳴らした
平和で文化的な社会を脅かす原因はわれわれ人間自身の営みの中にある
そのことにあらためて気付かせてくれた
戦後70年を迎える今私たちはこれらの事件から何を学ぶことができるのでしょうか?人間という時に愚かで時に残酷で時に弱く優しい生き物。
過去の人間たちの営みを見て…。
問われているのは私たち一人一人なのです。
2016/01/03(日) 06:55〜11:50
関西テレビ1
奇跡体験!アンビリバボー 傑作選[字]【ホテル大火災/日本を震撼させた衝撃事件SP】
国内史上最悪!ホテルニュージャパン火災悪夢の一夜(秘)全真相▽木箱の中に腐乱死体チャック1つで犯人探し当てた執念の捜査▽トラが逃げた!住民恐怖の26日
詳細情報
番組内容
(前半)オフィスビルが立ち並ぶ東京・赤坂。周辺には首相官邸もある日本の中枢のこの地で、かつて、史上最悪といわれた未曾有の大火災が起きた。近代的な外観、一流のインテリア、海外からも多くの宿泊客が訪れていたそのホテルがある日、瞬く間に地獄絵図の舞台と化してしまった。だがこの大火災は起こるべくして起きていたのである!!
(後半)1950年代後半、敗戦後驚異的なスピードで復興を遂げた日本、そんな時代を象徴
番組内容2
するような事件…。博多駅の貨物駅構内の倉庫の荷物の中から腐乱死体が発見される。捜査で、荷物は東京から発送、名古屋で引き取られていたが、同じ人物によって発送・引き取りがなされ、さらに同じ人物が名古屋に現れて福岡まで発送していたのだ。捜査は困難を極めたが、担当刑事が執念で目をつけたある遺留品から、事件は思いがけない展開に…。
1970年、日本が豊かになり青春を謳歌する若者が増えた一方で、歪んだ思想を
番組内容3
持つ過激派による暴力事件が社会問題となった時期。ある日警察が交通違反で取り締まった車が盗難車だった。乗っていた3名は逮捕されるはずだったが、その内1人が逃亡の上、銃砲店を襲いライフルを強奪し、港に向かい定期客船をハイジャックしてしまう。その後犯人の指示で松山港に向かおうとしていたが、船は緊急停止。なんと船内ラジオから松山港に捜査員が集まっているという情報が!この後事態はさらに緊迫した状況に…。
出演者
【ストーリーテラー】
ビートたけし
【スタジオメンバー】
剛力彩芽
設楽統(バナナマン)
日村勇紀(バナナマン)
【前半スタジオゲスト】
石原さとみ
磯野貴理子
中尾明慶
森泉
【後半スタジオゲスト】
あき竹城
ダレノガレ明美
水川あさみ
藤本隆宏
八代英輝
渡辺真理
スタッフ
【プロデューサー】
角井英之(イースト・エンタテインメント)
【演出】
藤村和憲(イースト・エンタテインメント)
【編成企画】
清水麻利子
【制作】
フジテレビ
【制作著作】
イースト・エンタテインメント
ジャンル :
バラエティ – その他
ドラマ – 国内ドラマ
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 1/0モード(シングルモノ)
サンプリングレート : 48kHz
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