(富田寿子)「手をあわせてみつめるだけで」「愛しあえる話も出来る」「くちづけするより甘く囁ききくより強く」
(ため息)
(ノイズ)
(折原忠志)「うん明日のお昼過ぎには着くんじゃないかな。
秋穂の声聞きたいなぁ」
(寿子)プレゼント。
(リモコンを押す音)
(爆発音)
(爆発音)はあっ…!
(号泣)
(号泣)
(パトカーのサイレン)
(三浦信輔)さあどうぞ。
気をつけて。
(芹沢慶二)先輩。
奥さんと娘さん到着しました。
(伊丹憲一)遺体は?確認済みです。
(折原夏実)あ…ああ…!
(三浦)さあ行きましょう。
(伊丹)どうぞ。
お願いします。
大丈夫だよ。
ね?大丈夫。
(伊丹)さあ中へどうぞ。
(三浦)お願いします。
詳しい事はまだわかりませんがベッドの上で爆発したようで。
(嗚咽)奥さん。
京都に旅行中だったそうですね。
ご主人はあとから合流する予定だった。
う…うう…。
もう少し待ってやろう。
(米沢守)これはなんだと思いますか?
(杉下右京)電波の受信機。
つまりリモコン爆弾ですな。
そうなりますねぇ。
これはなんでしょう?電波の受信機。
ではこれは…。
電波の受信機…。
1つでよさそうなものですがねぇ。
たくさん付ければ感度がよくなると考えたのかもしれません。
興味深い。
爆弾としてはごく単純な作りですが構造が独創的というかユニークというか意味不明というか…。
とにかく見た事のない代物です。
実に興味深い。
(神戸尊)楽しかったですか?爆弾オタクの集いは。
君僕は楽しくてやっているわけではありませんよ。
テロじゃないかって騒いでますよ。
住宅街の一般家庭の寝室を爆破するのがテロなんですか?いやいや僕が言ってるんじゃなくて。
死亡した折原忠志は金融会社の営業担当で業績トップだったそうです。
恨みでも買ったんですかね。
しかし一般人を1人殺すためにわざわざ爆弾を使いますかね?
(角田六郎)ところがだただの一般人ではなさそうなんだなその折原って男は。
一課がうちにデータを要求してきた。
ご主人を恨んでるような人はいませんか?そりゃあいるでしょう…。
主人は人を殺した事があるので。
(三浦・伊丹)ええ!?人を殺した!?ちょっと…。
ちょっと。
本部から連絡があって12年前当時大学生だった折原さんはバイク事故を起こして相手を死なせてますね。
言語不明瞭だった折原の体内からはアルコールは出なかったがコカインが出た。
ラリッて人をひいちゃったんだ…。
4年の実刑をくらってるよ。
死なせた相手は富田広人。
工場作業員。
当時二十歳だ。
それで家族は?ああ…母親がいるね。
お待たせいたしました。
デミグラハンバーグでございます。
はい。
こちらカルボナーラでございます。
どうぞごゆっくり。
島田さん3番テーブルさげちゃって。
(島田)はい。
ちょっとごめん。
(岡部)富田君。
(寿子)はい。
(伊丹)富田寿子さんですね?はい。
あの…ニュースでもうご存じかもしれませんが…。
いらっしゃると思ってました。
(三浦)夫は3年前にガンで病死。
パートを掛け持ちしながら1人で質素に暮らしてる。
(芹沢)どこにでもいるただの主婦って感じでしたね。
爆弾なんか使えるかよ。
息子が死んだのだってもう12年も前の話ですからね。
女房だな。
(2人)え?
(伊丹)折原夏実気になってたんだ。
たまたま自分たちが旅行中に夫が爆殺されるなんて出来すぎてる。
家族を疑うのは鉄則か。
大変だこりゃ…。
天井も吹き飛ばされてますねぇ。
(咳)何やってるんですか?これ以上いきません。
ああ溝がつぶれてますからね。
爆発でこうなったのでしょうかね…。
え?このカーテンが最後まで閉まらないようになっていたって事ですか?まあレールを取り換えるほど生活に支障はありませんからね。
あれ公園でしょうかね?公園でしょうね。
おい。
(舌打ち)どうぞお気になさらずに。
奥さん失礼ですがあなたの経歴を調べさせてもらったんですよ。
離婚歴がありますね?お嬢さん折原さんの実の子ではない。
そうですね?奥さん他に何か我々に隠してる事はありませんか?風俗で働いていた事もあります。
麻薬にも手を出した事があります。
最低の母親です。
前の夫は暴力を振るう男でケンカが絶えず娘が1歳に満たないうちに別れました。
(夏実)身寄りのない私は娘を1人で育てていく事に疲れ果て借金にはまりお金を返すため風俗で働き…。
金融会社の担当だったのが折原で私に麻薬をやめさせ借金返済に協力し娘の父になりマイホームまで…。
(ため息)あそこが事件現場ですね。
ああちょうど寝室の窓が見えますねぇ。
例のカーテンが最後まで閉まらない窓ですね。
使用された爆弾は家をまるごと吹き飛ばす威力はありませんでした。
現に破壊されたのは寝室の…それも内部だけ。
実にご近所への配慮が行き届いた犯行ですね。
興味深い犯人像ですねぇ。
小規模の威力でも折原が即死したのは爆発物の至近距離にいたから。
という事は…。
犯人は折原が爆発物に接触するタイミングを狙って起爆させた事になります。
そのためにはどこからか目視する必要がある。
僕ならここ!ここにします。
リモコンの電波の飛距離を最大限に増強させたとしてギリギリ届く範囲ってとこですかねぇ。
何か?ビスケット。
…え?
(クラクション)
(寿子)また来てるんですか!?ちょっと!あさらないで!ゆうべは仕事を終えて帰ってお風呂に入って寝て…。
いつもと同じです。
どうぞ。
あっお構いなく。
あんまりジロジロ見ないでください。
恥ずかしい。
ああ失礼。
昨日までおいしいカステラがあったんですけどこんなものしかなくて。
ほんとにお構いなく…。
どうぞ。
ビスケットお嫌いでした?いえむしろ大好きです。
1つつまらない事をお聞きしてもいいですか?はい。
これなんですがね。
これテレビのリモコンですよね?ええ。
これはエアコン。
これはDVDプレーヤーでしょうかねぇ?となるとこちらはなんでしょう?
(テレビ)「今晩の天気を…」商店街の景品で当たったポータブルテレビ。
ああ…なるほど!細かい事が気になる人で。
アハハッ。
どうぞ冷めないうちに。
恐縮です。
ありがとうございます。
やはり息子さんのものは大事になさってるんですねぇ。
捨てられなくて…。
野球チームに入ってらっしゃった?ええ。
ああ工具類もいろいろあるんですね。
広人の仕事道具でしたから。
寿子さんも使われるんですか?私がですか?そんなわけないじゃありませんか。
そうですよね。
お邪魔してすみませんでした。
お構いもしませんで。
あっ!これですね商店街のスタンプカード。
退屈なおばさんのささやかな趣味。
またいらしてくださいな。
ぜひ。
その時は手土産にカステラを持って。
では失礼。
失礼いたします。
信じがたいですが彼女でしょうねぇ…。
信じがたいですがそうでしょうね…。
(子供の声)すみません取ってください!
(寿子)はい!いくよ!
(子供たち)ありがとうございます!心臓が丈夫になったらいくらでも出来るんだから。
そうだ!元気になったら野球チームに入ろうか。
(富田邦夫)そりゃいい!な?早く治そうな広人。
(富田広人)うん。
(寿子・邦夫)12!12!
(寿子)そう腕振って。
(寿子・邦夫)12!12…。
どうした?どうした?広人。
(咳)座って座って。
大丈夫だよ。
はいゆっくり飲んで。
はい。
そうそう…。
深呼吸して。
(観客たち)広人!広人!広人!広人!
(打球音)
(寿子)わー!広人ー!いけ!いけ!走れ!広人ー!アウト!ああ…!
(子供たち)ドンマイ!
(拍手)
(寿子)惜しかった!
(担任教師)そろそろ学校来ないか?広人。
今のままじゃ受けられる高校ないぞ!
(担任教師)お母さんもあんまり甘やかさず力ずくで引っ張り出すぐらいの事が必要かもしれませんよ。
じゃあ今日はこれで失礼します。
また伺います。
ありがとうございました。
ご飯よ。
広人…。
ねえ。
何?このにおい。
ねえ!何してんの?ねえ!ちょっと!開けて!
(ドアノブを回す音)何?それ…。
リモコン爆弾。
村岡と駒田と伊藤…。
あとかばってる担任これで殺す…。
もういい…。
もう学校なんか行かなくていい…!作れっこないよ…。
(ドアの開く音)広人…。
こんな時間までどこ行ってたの?待ちなさい!毎日毎日何やってんの?蒲田の…村川電機製作所ってとこで部品作ってる。
え…?今日正式に採用になったから歓迎会。
機械に向き合ってる仕事だから続けられると思う。
もう心配かけないからさ。
今まで…ごめんね母さん。
ありがとう…。
(急ブレーキの音)
(衝突音)行くよ。
(邦夫)工場の社長さんが話してくれたよ。
面接の時広人に聞いたんだって。
君の夢は何かって。
広人こう答えたそうだよ。
母を幸せにする事ですって…。
(嗚咽)すみません…。
すみません。
わたくし折原忠志の弁護を担当しているものです。
折原から手紙を預かってまいりました。
贖罪の気持ちだそうです。
(弁護士)彼に伝言がありましたら承ります。
二度と…過ちを繰り返さないように…。
更生を願ってます…。
ご焼香をさせていただいてもよろしいでしょうか。
昨日からなんなんですか…。
富田さん何かあったんですか?いやいや大した事ではないんですよ。
ほんとによくやってくれてますよ。
明るくて愚痴ひとつ言わない。
彼女なしではうちは回らないくらいです。
ほんと変われば変わるもんです。
変われば変わるとは?いや入ってきた頃はいるんだかいないんだかわかんないような人だったんです。
今じゃ信じられませんけど。
変化の理由に心当たりは?そりゃ私の指導のたまもの…。
ハハハハ!…だといいんですけどやっぱり本人の努力じゃないですか?いつ頃でしょう?彼女が変わってきたのは。
いつ頃と言われてもね…。
例えば2年前の秋。
まあその頃だったかもしれませんね。
商店街のスタンプカード?スタンプの最後の日付は2年前の秋でした。
…え?だから?彼女の言う退屈なおばさんのささやかな楽しみなどとうに終わっているのですよ。
もっと夢中になれる何かを見つけた。
僕はそう解釈しました。
彼女に何があったのでしょうねぇ…。
ただいま。
会社…大変なんだよね。
俺もうヘトヘトなんだよ…。
寿子!!寿子体に気をつけろよ。
(ドアの閉まる音)すごかったんだってほんとに!嘘〜。
ほんとほんと!うちの地元じゃ有名だよ?嘘嘘嘘嘘。
聞いた事ないでしょ。
ねえ。
じゃあさそうやって言うけどさ…。
島田さんいっつも大袈裟なんだよね〜。
すいません。
雑誌『マダムモード』です。
急いでるんで…。
ああ…すいません。
あっすみません。
読者モデルをスカウトしてるんですけれども…。
(寿子)いつから?最初は4年ぐらい前かな…。
投薬でしのいでたんだけどな。
まだ一緒にいた頃ね。
うん。
君も大変だったから言わなかったよ。
今回で3回目の再発だ。
さすがに観念したよ。
遺産っていうほどのもんはないけど君に出来るだけ残したいと思ってる。
なんか望みがあったら今のうちに言ってくれ。
殺したいんですよね。
もうとっくに出てきてるはずでしょ…刑務所から。
やっぱりね…どうしても私…殺したいなって思っちゃうの。
捕まったっていいから殺しちゃおうかなって…。
毎日そればっかり…。
お待たせしました。
(夏実)わ〜おいしそう!
(折原秋穂)いただきまーす!あっ!
(忠志)秋穂大丈夫?熱くない?ちょっとしっかりしてくださいよおばさん!娘がヤケドしたらどうするんですか!
(岡部)申し訳ございません!ああ…あ…。
ほら君も謝って。
(夏実)大丈夫?謝って。
すみません…。
もっとちゃんとほら!
(忠志)もう大丈夫ですから許す許しますから。
(嗚咽)
(急ブレーキの音)
(衝突音)
(嗚咽)
(弁護士の声)彼の贖罪の気持ちが書き連ねてあります。
そうか…。
捕まらなきゃいいんだ…。
捕まらなきゃいいんだ。
(チャイム)
(チャイム)どうも。
カステラです。
あっ!どうも。
おいしい。
お口に合ってよかったです。
疑ってるんですよね?私の事。
え…?いいんですいいんです。
疑うのがお仕事でしょうし。
でも私見てのとおりただのおばさんよ。
爆弾なんて…ハハハ。
まあそうですよね。
しかし人間本気になって何かに向かえば自分でも思わぬ事が出来るようになったりするものですよ。
ところでこちらのリビングきれいですねぇ。
は?こう言ってはなんですが息子さんの部屋とはだいぶ違います。
掃除嫌いでもリビングぐらいは。
人目につくところだし。
玄関も人目につきますがお世辞にもきれいとは…。
(寿子)ほんとそうね。
玄関も掃除しなくっちゃ。
アハハハ…。
掃除…。
掃除。
これじゅうたん新しいですね。
テーブルクロスも新しい。
あ…カーテンは新品です。
全部ごく最近買い替えられたんですね。
これは掃除というよりなんでしょう…。
もはやリニューアル。
模様替えって普通言いますけど。
僕の悪い癖でついあらぬ妄想をしてしまいます。
仮にもしここが何かの犯行現場だとしてこれほど完璧なクリーニングをされたらどんなに精巧な科学捜査をもってしても証拠物質の1つも検出出来ないだろうと。
特に繊細な物質が付着しやすいじゅうたんは処分するに限ります。
フフ…。
なんだかほんとに私が犯人みたい。
もしそうだとしたら自首をおすすめします。
(笑い声)そんなにおかしいですか?だってそうじゃないですか。
杉下さんのおっしゃるとおり私が犯人で証拠を消すために部屋をクリーニングしたんだとしたらそんな人物が自首しますか?おっしゃるとおりですね。
でしょ?矛盾してますよ。
もし私が犯人だとしたらこう言いますね。
だったら証拠を持ってこい…。
フフフフ…。
アハハハ…!ごもっとも。
ね?ここからが本当の勝負ね。
広人…お母さん絶対に捕まらないから。
応援してね。
初めてですよただのおばさんに寒気がしたのは。
あまり見くびらないほうがよさそうですねぇ。
あの時僕らにビスケットを出したのもわざとかもしれません。
なんの証拠にもなりえない事をわかっていて。
(三浦)部屋に女といるらしい。
(伊丹)こいつは限りなくクロに近い。
引き締めて行くぞ。
(芹沢)女房が怪しいって言ったの誰でしたっけ?
(伊丹)うるせえ。
行くぞ。
(一同)はい!
(江上健造)あれ?行くの?
(女性)帰るわもう。
ちょっと置いてってよ。
(ため息)1万円…。
いやよ!
(江上)じゃあ5千円5千円…。
頼むよー。
ダメ!なあ頼む。
ちょっとでいいからさ。
(女性)あっ…!?
(伊丹)江上健造だな。
ちょっと話を聞きたいだけですから。
ね。
(女性の悲鳴)
(芹沢)江上ー!
(三浦)江上!待てー!
(芹沢)あー!
(伊丹)おい捕まえろ!江上!おとなしくしろ!何やってんだ!待て!待て!待てー!
(角田)一課が任意で引っ張ろうとしたのはこいつだ。
江上健造…。
(角田)うん。
(角田)当時折原に麻薬をすすめたのがこいつで折原がパクられて芋づるに自分も捕まった。
以来出たり入ったりの生活だ。
つまり折原に恨みがあると。
しかもだ当時このアホは革命家にかぶれて運動もどきの事をやっていた。
パクられた時も爆弾を製造しようとしてたってさ。
なるほど。
爆弾製造の能力もあるんだ。
まあどの程度の能力かはわかんないけどなぁ。
ともかく犯人に仕立て上げるには格好の人物ですね。
仕立て上げる?富田寿子にとって江上は折原に次いで復讐したい相手でしょう。
ほう…2人はそう見てるわけか。
これでわざわざ爆弾を使用した理由がわかりましたね。
しかしこの経歴だけで犯人に仕立てる事は出来ませんよ。
(米沢)この物質とこの物質とこの物質。
爆弾に使用された成分と完全に一致します。
あの部屋で爆弾が作られた証拠として決め手になり得ます。
どう解釈したらいいんですかね。
可能性は2つでしょう。
我々の見立てが間違っていて江上が真犯人だった。
もう1つは…。
富田寿子が想像以上の相手である。
そういう事ですねぇ。
(テレビ)「先日東京練馬区で会社員宅が爆破され男性1人が死亡した事件の続報が入りました」「昨日午後事件の参考人である男の自宅アパートに警察官が訪れた際警察官らの制止を振り切り逃走しました」「警察によりますと男は過去に爆弾の原料に転用可能な化学薬品を不正に所持していたとして爆破物取締罰則違反での逮捕歴があり警察では今回の爆破事件にかかわった可能性が高いとみて行方を追っています」
(忠志)よーしじゃあいってくるね。
バイバーイ!いってらっしゃい。
いってきます。
バイバーイ!気をつけてね。
(忠志)はーい。
あ。
「あ」あ。
「あ」
(叩く音)「
(叩く音)」
(叩く音)「
(叩く音)」秋穂。
うがいと手洗いでしょ。
(秋穂)はーい!
(笑い声)あっ…!
(リモコンを押す音)あっ!
(芹沢)いえですから…お母さんに直接お話を伺いたいんです。
弟さんが現れる可能性だってあるわけですから。
(江上恵理子)現れないって言ってるじゃないですか。
(ため息)現れなくていいのが現れる。
江上健造さんのお姉さんですね?帰ってください。
これ以上母に心労をかけないで。
(江上初子)恵理子。
私は…大丈夫だよ…。
入っていただいて。
(伊丹)すいません。
(三浦)どうもすいません。
(初子)息子がとんでもない事をしましておわびの…言葉もありません…。
申し訳…申し訳…ありません。
申し訳…ありません。
わかりました。
申し訳ありません…。
(三浦)はいわかりました。
申し訳ありません…。
(三浦)もう結構ですから…。
も…申し訳ありません…。
申し訳…ありません…。
はっ…申し訳…ありません。
申し訳ありません…。
申し訳ありません…。
あと何日持つかわからない状況です。
バカな弟のせいで母は散々苦労してきました。
とっくの昔に絶縁してもう連絡もとっていません。
母がここに入院してる事も知りません。
ですから弟がここに現れる事はありません。
まだ決まってませんから。
弟さんが犯人だって。
気休めは結構です。
犯人じゃなきゃどうして江上は逃走したんです?特命係の神戸警部補殿。
それは…麻薬の所持の可能性とか…。
まっ捕まえりゃあわかる。
富田寿子の周辺をもう一度洗い直しましょう。
神戸君。
江上を救ってやりたいとは思いません。
しかし息子が殺人犯だと思い込んだまま死のうとしてる母親の心ぐらいは救ってあげたいです。
同感です。
だったら悠長にやってる暇ないんじゃないですか?はい?僕は僕で勝手にやらせていただきます。
(ため息)わかりません…。
よく思い出してください。
あなたたちの生活を調べ上げご自宅に侵入していた可能性もあります。
この人が富田寿子なんですか?江上という男が犯人なんじゃないんですか?
(秋穂)ただいまー!おかえり。
お邪魔しています。
ごゆっくり。
いい子ですね。
あの…それでご自宅のほうは?手放そうと思っています。
住むのはあまりにも辛くて…。
あ!この人知ってる!えっ!?あの人に間違いない?うん。
(夏実)本当に間違いない?
(秋穂)うん。
あの人だよ〜。
おうちにいたのね?
(秋穂)うん。
それはいつ頃の事かな?うーん…去年か…その前。
ありがとう。
お送りします。
戻るんですか?彼女を逮捕してくださいよ。
いや…そうしたいけど子供の証言だし古い記憶だし…証拠としては弱いんですよ。
そんな…!じゃあ彼女と話をさせてくださいよ。
いや…それ…。
私がじかに話せば彼女だって冷静ではいられないはず。
必ずボロを出す。
うまくやってみせますから!私が勝手にした事にすればいい。
失礼。
このボタンを押すと録音されます。
気をつけて。
(スイッチを押す音)いらっしゃいませ。
ご注文はお決まりですか?ご気分は?は?本当はビクビクしてるんでしょう?いつ警察に捕まるんじゃないかって。
なんの事でしょう?娘が見てるのよ。
うちに侵入したあなたを。
爆弾を仕掛けるための下見?申し訳ありません。
なんの話だか…。
女同士腹割って話しましょうよ。
ああ…ご注文がお決まりになりましたら…。
主人は罪を償ったのよ!それなのに…。
ご注文がお決まりになりましたらこちらのボタンでどうぞ。
待って!!落としましたよ。
(電源を切る音)お客様落としましたよ。
最高の気分よあんたの亭主をバラバラに出来て。
待ちなさいよ!
(寿子の悲鳴)
(岡部)ちょっとやめてください!ちょっとやめてください!夏実さん…!夏実さん!
(岡部)ちょっと…!何があったの?落ち着いて。
急に襲いかかってこられて…興奮してるみたい。
言ったのよこの女が。
自分がやったって!え?バラバラに出来て最高だって!何言ってんですか?
(叫び声)落ち着いて。
病院で診てもらったほうがいいんじゃないですか?すいません…。
(夏実)ああ…ああーっ!
(夏実)ああーっ!ああーっ!
(岡部)すいません。
申し訳ございませんでした。
すいません。
すみません申し訳ございませんでした。
すみません。
夏実さんは?はい。
なんとか落ち着きました。
向こうが事を荒立てていれば君の処分は免れないところです。
江上健造だな。
(江上)ちょっと待って…ちょっと会わしてくれよ。
ちょっとだけ会わして…ちょっとだけ会わして…頼む!俺じゃないよ本当に。
(三浦)お前の部屋から爆弾に使われた成分が出てる。
知らねえよ。
(伊丹)知らねえって事はねえだろ。
革命家先生。
俺じゃない。
だったらこそこそ逃げ回るべきじゃなかったな。
(江上)久しぶり。
何しに来たんだ?絶縁したんだろ。
お母ちゃんあと何日持つかわからないからこのまま会わなかったらお互い後悔するんじゃないかと思って一応伝えに来ただけ。
でも少しはまともにやってるかと思った姉ちゃんがバカだった。
もう来なくていいから。
お母ちゃんにあんたなんか会わせないから。
俺だって変わりたいよ!まともになりたいと思ってるよ。
(ドアの開閉音)正直にしゃべったら会わせてやるよおふくろさんに。
「俺じゃないよ」逮捕されたんだね。
私あかぎれがひどかったろ?冬になると。
え?あの子が軟膏を塗って手をこうやってもんでくれたもんだよ…。
毎晩毎晩…。
優しい子だったのにね。
いつの話よ?どこで間違えたんだろうねぇ。
(ノック)
(恵理子)どうもすみませんでした。
はい?弟にここを伝えていたのに嘘つきました。
その事はどうでもいいんです。
我々はただお母さまのお加減が気になっていたものですから。
お加減も何もありませんよ。
無実だったって言いましょう。
はい?だからあなたの息子は犯人じゃなかった。
警察の間違いだったってお母さんに言うんです。
僕たちが言えば信じるでしょう。
君は何を言ってるんですか?だって杉下さんだってそう思ってるわけだから。
しかし事実はまだそこに至っていません。
時間がないんですよ。
嘘をつくに等しい行為です。
嘘だったっていいじゃないですか。
この嘘で誰が困るんです?誰が傷つくんですか?死んじゃうんですよ。
自分の息子は人殺しじゃなかった。
そう思って息を引き取らせてあげられるならそれでいいじゃないですか。
警察官の矜持に反します。
あなたの言う矜持ってなんですか?あの…いいですよ。
嘘なんかついてほしくありませんから。
どなただったの?起きてたの?お客さんだろ?警察の方。
あのね取り調べた結果健造無実だったって。
警察の間違いだったって謝りに来たの。
そう。
うん。
ありがとうね。
小さい頃からあんた嘘をつく時そうやって腕を組むね。
僕たちのやるべき事は一刻も早く真実をただす事です。
では聞きますが昨日1日何してたんですか?富田寿子の古い知り合いや亡くなった息子さんの旧友などに話を聞いて回りました。
で収穫は?いいえこれといって。
捜査本部のあとをなぞってご苦労さまです。
これからNシステムのデータを調べようと思います。
N?過去2年間に及ぶ彼女の車での行動を考察します。
手伝ってもらえると助かります。
現場付近で確認されていたとしてそれが証拠になりますか?それこそ一課がやってた事だと思いますが。
僕の興味はそこではありません。
僕は人を捜しています。
花園インター…二度行ってますね。
あの…人を捜してるって証人の事ですか?富田寿子がたった一人ですべての犯行を遂行出来たでしょうか?人間その気になれば出来るんでしょう?しかしまた限界があるのも事実です。
何かしらの協力をした人物が必ずいる。
僕にはそう思えてなりません。
ですからその人物を捜してるんですよ。
神戸君。
はい。
花園インターから西に5キロに採石場があります。
採石場?爆弾を使って完全犯罪をなそうとするならば爆破実験は欠かせないんじゃないでしょうかね。
(夏実)えぇ?一緒に行けそうもないの?
(忠志)接待が入っちゃったからさ。
前から決まってた事じゃない。
仕方ないだろ。
2日遅れで行くからさ。
(夏実)「秋穂楽しみにしてたのに」
(忠志)「ごめん。
京都着いたら必ず穴埋めするから」
(夏実)「うん…。
しょうがないな」
(テレビ)「
(爆発音)」「
(爆発音)」
(テレビ音声)「
(爆発音)」南雲プロダクション…。
(寿子)突然お邪魔してすみません。
伺ったのはぜひお聞きしたい事がありまして。
まず爆破シーンなんかで使う爆薬の配合ですね。
あと破壊力。
それとこっそり爆破実験が出来る場所なんかがどこにあるか…。
(南雲幸次郎)いや…ちょっと待ってくださいよ。
そんな事を聞いてどうすんの?私どうしてもやり遂げなければいけない事がありまして南雲さんに協力していただきたいんです。
私の事情を知ればきっと力を貸したくなるはずです。
お願いします。
あっ…いやぁ…困ったなぁ。
まずあんたどこの誰?私は…。
南雲さんあなたのストーカーですよ。
はぁ?フフ…うらやましい生活なさってますね。
理想的。
この会社の出資者の令嬢でいらっしゃるきれいな奥様と目下就職活動中の女子大生のお嬢様。
そのお嬢様よりも若いきれいな愛人さんに囲まれて…。
女優さんですってね。
理想的な暮らしだわ。
うらやましい。
あなたただいま。
あらお客様?お邪魔しています。
あなた理奈内定ですって。
東京中央銀行第1希望。
すみません。
いえ…。
協力していただけますよね?
(爆発音)
(寿子の嬌声)
(爆発音)
(寿子の嬌声)えーっと…11月の3日と14日ね。
ああ南雲さんに貸した日だ。
南雲さんって?南雲プロダクションってドラマとか映画を作ってる人だよ。
爆破シーンを撮るのにうちを使うんだ。
その日もこの裏のほうでドカンドカンやってた。
そこにどなたか見知らぬ女性はいませんでしたか?会ってないんだよ。
会ってない?南雲さんいつもはこの事務所に顔出すんだけどその時は2日とも顔を見せずに帰っちまった。
ああっ…ほい名刺。
助かります。
どうやら見つけましたね。
ええ。
しかしやたらバカでかい爆破やってたな。
バカでかい爆破ですか?ああ。
いやぁこの3日のほうはそれなりに小さいのをやってたけど14日のほうはもうバカらしいほどでかいやつを何度もやってたよ。
まったくどんな爆破シーンを撮るつもりなんだか。
ハハハハ…。
11月3日に小規模な爆破実験14日に大規模な爆破実験を行った。
そういう事ですよね?ええ。
事件に使われたのは小規模な爆弾。
という事はつまり必然的に恐ろしい結論に達しますね。
まだ大規模な爆弾がある。
第2の爆破はなんとしても阻止しなければなりません。
南雲幸次郎の証言が取れれば富田寿子を落とせるはずです。
こちらの女性なんですが…。
ご存じではありませんか?ご存じですよね?知らない。
南雲さん正直に話してくれませんか。
あなた彼女に爆破実験の協力を頼まれたんじゃありませんか?ハハッ…なんの話かわからん。
なぜかばうんですか?彼女の作った爆弾は殺人に使われたかもしれないんですよ。
しかも彼女はもう1つ爆弾を所持している可能性があります。
事態は切迫しています。
ご協力いただけませんか。
南雲さんあなたは彼女に利用されたにすぎない。
あなた自身の罪を問おうという話じゃないんです。
我々が望むのはあなたの証言です。
南雲さん。
刑事さん知らないって言ってるだろ。
ちょっと…。
(南雲)お帰りください。
何度来ても無駄だ。
私は証言する事など何もない。
杉下さんあの人富田さんに口止めされてるんですよ。
しかしこれ以上はどうしようもありません。
(携帯電話)はい神戸です。
あっ…え?そうですか。
江上健造の母親がたった今息を引き取りました。
はぁ…。
後悔してますよ。
あなたに逆らってでも嘘をつくべきでした。
ああっ…。
なんすか?少しよろしいですか?ん?はい。
おい。
富田寿子ですか…。
第2の爆弾ね…。
あなた方は殺人捜査のエキスパートです。
既に十分感じているはずです。
江上は単なる生け贄であり捜査は誘導されたと。
しかし江上は状況的に真っ黒なんだ。
放り出すわけにいきませんよ。
江上の部屋に富田寿子が侵入して爆薬を散布した可能性だってあるでしょ。
侵入なんてそんな簡単には…。
芹沢令状取れ。
(芹沢)なんの?富田寿子にガサ入れるぞ。
おい伊丹。
責任は俺が取る。
言われたからやるんじゃありませんよ。
やろうと思ってたんです。
もちろんそうでしょうとも。
(寿子)なんですか?
(伊丹)警視庁捜査一課です。
強制家宅捜索を行います。
ご協力を。
失礼。
失礼します。
失礼します。
ご迷惑をおかけします。
いくらでも調べてください。
気がお済みになるなら。
息子さんの遺品は大事に扱いますから。
こちらのバッグもよろしいでしょうか?財布などは早急にお返しいたしますので。
口紅もお願いします。
口紅?息子の形見なので。
承知しました。
せいぜい頑張ってください。
はい?証拠を持ってこいって言ったのは私ですものね。
証拠は必ず見つけます。
どんなゲームにも終わりは訪れます。
バカにしないでほしいわゲームだなんて。
私はゲームなんてしてるつもりはないの。
これはね…戦争よ。
聖なる戦い。
それは自白と受け取る事も出来ますが。
なら逮捕しなさい。
裁判でひっくり返すから。
だから言ってるのよ杉下さん頑張ってって。
ハハハ…。
いかがですか?今のところこれといって…。
そうですか。
どうぞ。
「そうですか」じゃないですよ。
家宅捜索の狙いはなんだったんです?もちろん証拠を見つけ富田寿子を逮捕し第2の爆発物を確保する事です。
ここまで完璧にクリーニングしたら証拠物質ひとつ検出出来ない。
そう言ったのは杉下さんです。
そうでしたね。
爆弾もそうです。
もう1つあったとしても家の中に隠しているわけがない。
確かに。
さらに僕の考えを言わせてもらえればその爆弾だってもう存在してないと思いますよ。
ほうなぜ?第2の爆破なんてあると思います?富田寿子は既に目的を達成しています。
爆弾を2つ作ったのは1つ目がうまくいかなかった時のためのスペアです。
今となってはもう必要ない。
だから破棄した。
なるほど。
捜査一課はじゅうたんなど廃棄物の行方も追ってるようですが望みは極めて薄いでしょう。
つまりもう物的証拠はない。
僕たちの負けです。
無視かよ。
(夏実)うん?とってもいいわお天気もよかったし。
そっちは?明日来られそう?明日のお昼過ぎには着くんじゃないかな。
秋穂の声聞きたいなぁ。
とっくに寝てるわよ。
少しだけでもさ起こして。
明日会えるんだからいいじゃない。
じゃあおやすみ。
おやすみ。
あれ?
(夏実)ん?いやなんか当たるんだ。
秋穂のおもちゃかな?ベッド?うん…あれ?何どうした?なんだろう?これ。
プレゼント。
(リモコンを押す音)
(爆発音)もしもし?ねえあなた?うっ…うっ…。
最高の気分よあんたの亭主をバラバラに出来て。
やっぱり視界が悪い。
もう少し向こうで張り込みましょうよ。
ここで結構。
どこ見てるんです?わずかな可能性にかけています。
はい?君は彼女は既に目的を達成したと言いましたが僕はそうは思いません。
折原を殺す以外に目的があるんですか?折原を殺害しなおかつ自分は絶対に捕まらない。
それが彼女の本当の目的です。
であるならば第2の爆弾はそのためにこそ用意しているはずです。
それはどういう…?
(自転車の音)神戸君。
はい。
ちょっといいですか。
返す…返すよ!ああ違う違う。
あなたをどうこうしようっていうんじゃないんです。
ここからどんなものを持ち去った事があるか教えてほしいんですけど。
どんなものって…。
例えば最近じゅうたんとかカーテンとか大量に出てた日ありませんでした?あああった。
じゅうたんが割とものが良かったんで。
持ってったんですね?持っていこうとした。
けどそこの家のおばちゃんに見つかっちまって…。
ちょっと…!ちょっと!何してんのよ!何してんのよこれ!私のよ!すいません…。
何持っていくの!すいません。
ダメ!ここのは。
すいません。
もう行って早く!早く!は…はい…すいません。
おっかねえんだ…。
あのおばちゃん。
(エンジンをかける音)もう1つだけよろしいでしょうか。
このようなものを持っていった事はありませんでしたか?おはよう!いや…!
(パート女性)富田さん。
(寿子)いや…やだ!言ってくださいよ早く〜!やだ何これ〜。
何が何これ〜。
お返しが遅くなりまして申し訳ありませんでした。
いいえ〜。
少しだけお話しさせていただいてよろしいでしょうか。
ようやくご期待にそう事が出来そうな状況になってきまして。
あ…証拠ですよ。
あなたが持ってこいとおっしゃった。
うちから何か出てきたんですか?いいえ出ませんでした。
帽子も。
帽子?ええ野球帽です。
ずっと気になっていたんですよ。
あなたは広人君の遺品を実に大切に保管なさっていました。
当然でしょう。
少年野球のグローブやバットそれにユニホームスパイク…。
しかし何かが足りない。
ええそうなんです。
野球に帽子は付き物のはずです。
帽子だけ紛失するというのは考えにくい。
結局家宅捜索でも出ませんでした。
そこでダメもとで聞いてみたんです。
よくゴミ置き場から持ち去っていくご老人に。
確かに野球帽を持っていったそうです。
衣類があるととりあえず古着屋に持っていくんですって。
野球帽は買い取ってもらえたそうですよ。
大事な息子さんの遺品をどうして捨てなければならなかったのか。
僕の貧困な想像力では1つくらいしか理由が思い浮かびません。
(地震の音)
(物が落ちる音)あっ!
(物が落ちる音)あっ…。
ああ…。
あっ…!?ああ!心中察するにさぞお辛かったでしょうねぇ。
古着屋に行ってみたんですが残念ながらそれらしき野球帽は既に売れていました。
ちなみにどんな人が買っていったのか店の人は覚えていませんでした。
しかしその店を利用する客は近隣の住人がほとんどで中でも子供用の帽子を購入する可能性のある世帯は絞り込む事が出来ます。
捜査本部が総力を挙げてしらみつぶしに当たればいずれ必ず出てきます。
時間の問題ですよ。
では結果をお楽しみに。
神戸君。
はい。
(岡部)ええそういう事ではい。
そのままで…はい。
ええよろしくお願いします。
はい。
富田さん大丈夫?ようやくわかりましたよ杉下さんの意図が。
でもこれ危険な賭けですよ。
こちらも危険を冒さなければ彼女には…。
でも乗ってきますかね。
神戸君。
はい?夏実さんですよ。
行きましょう!はい!本気じゃありませんよね?警察が捕まえられないなら私がやるしかないじゃない!復讐の連鎖は断ち切るべきです。
うっ…うっ…。
大丈夫ですか?うっ…うっ…。
お送りします。
(ノック)
(寿子)お疲れさま!あっお疲れさまです。
島田さん。
はい。
ちょっといい?あ…はい。
富田だ。
あれ…?おかしいな。
(ノック)はい?富田寿子は?あの…一杯飲みたいから車家に届けてほしいって。
富田寿子が消えた!?見張りは何やってんだよ!おい緊急配備だ。
はい!もう心配かけないからさ。
今まで…ごめんね母さん。
はい。
そうですか。
どうもありがとう。
米沢さんですか?ええ。
富田寿子が所轄刑事の監視をあざむき逃走したそうです。
逃げられたんですか?安心してください。
逃がしたんです。
神戸君。
はい。
蓼科方面ですね。
我々が勝つか彼女が勝つか正直わかりません。
ですがいずれにせよまもなく決着がつきます。
行きましょう。
(足音)こちらでしたか。
いいところですねぇ。
幼少時心臓が弱かった広人君の療養のために毎年訪れていた貸し別荘。
広人君が一番好きだった場所…。
そうですね?広人君の旧友に聞き回りましたから。
まいたつもりだったんですけどね。
どうしてもこれを返さなければと思いまして。
実は別件の押収品の中にそっくりな口紅がありましてね僕とした事がついうっかりそちらを渡してしまいました。
あなたのはこちらです。
(発信機の音)
(ため息)ずいぶん卑怯な手を使うのね。
戦争ですから。
ついでに僕からも1つ謝ります。
息子さんの野球帽が見つかるのも時間の問題だと言いましたがあれは希望的観測で実際そう簡単にはいかないようです。
つまり私をここへ来させるための芝居だったわけだ。
我々に残された切り札はあなたが所持しているかもしれない第2の爆弾でした。
それこそこれ以上ない証拠です。
警察に捕まらない事に恐ろしいほどの執念を燃やしているあなたにとって第2の爆弾の使い道はただ1つ。
追い詰められた時の自爆用でしょう。
あえてあなたを追い詰めその在りかに案内してもらう。
我々が仕掛けた最後の勝負です。
捜査一課と爆弾処理班がこちらに向かっています。
この別荘と周辺の捜索令状を持ってね。
ここから何も出なければ今度こそ僕たちの敗北です。
とりあえず到着するまであなたの身柄を拘束させていただきます。
(寿子)来ないで!捜す手間省いてあげますよ。
はったりだと思ってる?いいえ。
もっと離れないと巻き込まれますよ。
こっちの爆弾はちょっと大きいから。
お別れを言う前に1つ訂正させてもらうわ。
あなたたち大きな勘違いをしてるから。
私はね追い詰められてここに来たんじゃないのよ。
だって広人の野球帽は絶対に見つかりっこないって私知ってたもの。
(寿子の声)あのホームレスがじゅうたんを持っていこうとした時私が考えないと思った?野球帽も持ち去られてる可能性を。
古着屋巡りしたら2軒目で見つけたわ。
そう!買い取ったのは私。
とっくに燃やしたわ!
(寿子の声)それを得意げな顔で見つかるのは時間の問題だとか言っちゃって。
時間の問題ですよ。
(寿子の声)笑いこらえるのが大変だったわよ。
(笑い声)
(車のドアを開ける音)
(寿子)なぜここに来たか…?ここがゴールだからよ。
この2年間折原を殺すって決めてからすべてが変わったわ。
こんな自分になれるなんて思わなかった。
最高よ。
私は今最高に幸せ。
だって広人の敵を取ったんだもの。
だから今ここで全部終わらせるの。
広人が大好きだったこの場所で…。
最高に幸せな私をあの子に会わせてあげるの。
あの子もきっと喜ぶわ。
それが私の本当のゴール。
わかった?だからあなたたちの役目はもう終わったの。
出てってください!
(寿子)ああ!ああー!夏実さん!
(寿子)きゃあー!いやー!
(寿子)頭がおかしくなった?いいわよ。
一緒に吹っ飛びましょうよ!寿子さん…!落ち着きましょう。
夏実さんどうしてここに?
(夏実)蓼科って聞いてここだと思ったわ。
ここは折原が罪の告白をしたところ。
この場所が大好きだった人を殺してしまったって。
そんな自分でもいいかって。
え…どうして折原は…。
僕と同じように折原さんもまた広人君の旧友などに話を聞き回ったのでしょう。
自分が殺めた相手の事を少しでも知りたくて。
寿子さんあなた以外に広人君の事を一番心に刻んでいたのはあなたが殺した折原さんだったのかもしれませんね。
リモコンこちらに…。
くだらない!なんなのよその言い訳は!いいわよ。
4人で一緒に死にましょうよ!4人じゃありません!夏実さんの体には新しい命が宿っています。
そうですね?わかるでしょ?広人君に言えるんですか?無垢な命も道連れにしたと。
それが広人君の望みですか?広人君喜びますか?ヤケドするところだったって何よ…。
ヤケドぐらいなんだっていうのよ!
(秋穂)いただきまーす!あっ!しっかりしてくださいよおばさん!娘がヤケドしたらどうするんですか!すみません…。
もっとちゃんとほら!もう大丈夫ですから!あのぐらいで死にはしないわよ!広人はね訳もわからず殺されたのよ!あんたの夫はね…絶対に幸せになんかなっちゃいけない人間なのよ!彼は自分が幸せになったんじゃない。
私と秋穂を幸せにしたのよ!
(嗚咽)
(夏実)これが私の復讐よ…。
(三浦)一番奥へ。
「手をあわせてみつめるだけで」「愛しあえる話も出来る」
(三浦)やめなさい。
すいません…。
(寿子)「UFO…」
(寿子)「愛しあえる話も出来る」「くちづけするより甘く」
(邦夫)なんだまた歌ってるのか〜?だってこれが一番好きなんだもんね〜。
ねぇ〜広人。
(邦夫)変わった子だね〜。
ほんとだね。
(邦夫)うん。
(宮部たまき)なんだか元気ありませんね。
僕にはついに富田寿子という人物がわからなかったように思います。
そりゃあわかりませんよあんな人。
しいて彼女を言い表すならば母親…。
その一言に尽きるのかもしれません。
確かに。
夏実さんにしてもそうですよね。
まさかあんな行動に出るなんて。
お二人にも理解出来ない事まだまだあるんですね。
もとより人の心など完全に理解出来るとは思っていませんが。
結局僕たちは傍観者でしかないんですかね。
人間はしょせんわかり合えないって事ですか。
かもしれません。
しかしわかり合えないからこそわかり合おうとする努力が大事なのでしょう。
そうですよね。
人は誰しも心の中では自分の事わかってもらいたいって思ってますから。
なんだか悲しいけど人間って愛しい生き物ですね。
2016/01/03(日) 13:00〜15:12
ABCテレビ1
相棒 season9[再][字]
『聖戦』最愛の息子を奪われた母親が仕掛ける極限の完全犯罪!右京すら解決を危ぶむ特命係史上、最も危険な戦いが今、始まる!
詳細情報
◇出演者
水谷豊、及川光博、益戸育江
川原和久、大谷亮介、山中崇史、山西惇、六角精児
小野了、片桐竜次
【ゲスト】
南果歩、白石美帆
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
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日本語
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