2016年1月1日。
太平洋の初日の出を、一人拝んでいたのは、大家族、石田さんチのお父ちゃん、晃さんです。
いい年のはずだったのにね、前半はね。
ちょっと後半、つまずいちゃった。
いつになく沈んだ口ぶり。
それもそのはず、お正月のわが家に家族の姿がありません。
しかも家の中は、ただならぬ様子だ。
一体全体、何があったの?
住めんのかな…。
実は、容赦ない天変地異が、石田さんチにも牙をむいたんです。
それは、去年夏の終わりのことでした。
こちら茨城県常総市の上空です。
こちらの建物ですね、1階部分が半分くらい浸水している様子が分かります。
記録的な豪雨で、鬼怒川が決壊。
偶然このとき、常総市の石田家には、取材班がいたのです。
ニュースが伝える現場は、家から12キロの距離。
断水の可能性もありました。
なんかね、あの周り、水浸しになってるみたいで、市役所の周り。
だから、どうなるか分かんない。
なんだか不穏な空気。
あれ?誰?みさ子さん!やめて、やめて!お願いだから、行かないで。
連日の雨を避け、娘のもとに身を寄せていたみさ子おばあちゃんです。
どこにも行かないで!だめなんだってば。
今ね、水が出る、水が出るって言って、避難してくださいって言われてんの!
みさ子さんは5年ほど前から認知症。
目が離せない状態でした。
だって、ここからそのぐれえ歩くのにな。
ここからそこまでが命取り!
そうですか。
はい!
お母さん、すみません、避難はされないんですか?
しません。
おばあちゃん連れてったら大変だ。
すごい。
あれでしょ。
お母ちゃんにはためらいがありました。
はいかいを繰り返すおばあちゃんと共に、避難所へ移動するのは難しい。
けれど夜、濁流は不気味に膨らみ、次第に近づいてきた。
あっ、やばい。
やばいよ。
逃げたほうがいい。
うん。
お母さん、お母さん!やばいです。
なんで?
えっ、水、水、来てる。
決壊してる?
ついに避難を決断。
帰宅した次女、芽衣子さんとおばあちゃんを乗せて、避難所へ。
やばいよ。
やばい、急ぎますか。
ところが、道路は寸断され、近くの公民館にたどりつくのがやっと。
取材班ともども、孤立してしまいました。
じりじりと迫る水。
しかも、一帯は停電に見舞われます。
はからずもカメラは、水害の恐ろしさを体感することになったのです。
石田さんチの取材を始めて19年目。
去年9月、鬼怒川の決壊を招いた集中豪雨。
よもや取材中に、石田さんチが洪水に襲われるなんて。
私たちが最初に石田家にお邪魔したのは。
1997年の夏でした。
7男2女、11人の大家族。
皆さん、取材カメラを快く受け入れてくれました。
このころ石田さんチは、子育て戦争の真っただ中だったんです。
ちびっ子たち、飽きもせず、毎日のように兄弟げんかをしていましたっけ。
びっくりしたのは室内の様子です。
あらゆる所にあらゆるものがあふれかえっていました。
ピアノの周りもこのありさま。
当時の石田さんチは、何から何まで桁外れ。
1日35キロの洗濯物は、干す場所もないほどの量でした。
1週間の牛乳消費量、なんと20リットル。
大黒柱のお父ちゃん、晃さん。
結婚前は色白の好青年だったんだ。
こらー!何、裸でいんのよ!
教育方針は力ずく。
なんだと、なんだと、このやろー、なんだと、このやろー!
ほら、逆切れ。
友達にも絶対すんなよ。
でも、一方で。
愛情も力ずくでした。
こちらが肝っ玉母ちゃんの千惠子さん。
おーっと、こんな時代もあったのねぇ。
石田さんチ19年の映像遺産。
その筆頭は、やっぱりこれか。
割った。
あーあ。
高校受験のストレスで、次女、ぶち切れ。
続くお母ちゃんのことばは、今ならいいね!の嵐でしょう。
こういうこともないと掃除しないから。
ちょうどいいわね。
よいしょ。
母ちゃん。
おお、こんな時代もあったのね。
夫婦の間で飛び交う会話には、いつも笑わされたものです。
でも全部、自分の子だと思ってるってのも、ノー天気だと思わない?
うそー?
だって、もしかしたら、私の知らないところで取り替えられてるかもしれないじゃないねぇ!
あっ、そういう意味か。
そういう意味。
そういう意味よ。
子どもたちも個性豊かに育ちました。
初めて会ったころは高校生だった、長男の孝之君。
嫌な顔一つせず、弟たちの面倒を見てました。
あれから19年。
今、見つめているのは。
一人娘、ほのかちゃん。
もうすぐ、ぴっかぴかの小学1年生です。
時がたつのは早いもの。
働き盛りのパパは、お父ちゃんにそっくりです。
四男、智広君。
ハムの人。
ハム!
シュールな芸風が売りでした。
製鉄所で働き始めて9年目。
そろそろ結婚を考えてもいいんじゃない?
うちの助手席は、レジ袋しか入れないからな。
あー、こりゃ、春は遠いな。
もうそろそろ春だから、それ捨てるの忘れてた。
ぶち切れで一躍、注目を集めた次女、芽衣子さん。
お父ちゃんも手を焼いてました。
食べてっつって。
いらない。
食べろー!
いらない。
市役所勤めも早11年。
こちらも春は遠そうだ。
おはようございます。
もう帰っていいよ。
俺がすげー考えて、めっちゃ考えてくるから。
今井が質問してきた時点でむかついて何も答えない。
辛口ですけど、本当はいい子なんですよ。
膨大な洗濯物の山から、毎朝、自分の靴下を探していたのは、次男、和寛君。
自衛隊に入隊して、もう13年が過ぎました。
五男、元基君。
裸になるのが大好きだったなぁ。
ちょっと待って、しょんべんしている途中なの。
三つ子の魂百までと言いますが。
え?なんで撮るの?
安心してください、モザイクかけてますよ。
寒いんだけど。
去年、夢をかなえて、IT企業に就職することができました。
あいーん。
笑顔がかわいかった六男の有志君。
目下、一人前の美容師を目指して、一生懸命働いてます。
真剣そのものだ。
すごい、こうやってたじゃん。
こう生えてるんだったら、ここから出しちゃえばいいから。
なるほど!
そして、末っ子の隼司君。
絵に描いたような反抗期がありました。
眠い…。
おい、撮ってんじゃねーっていうの、わかんねえのかっつってんだよ。
だから分かったから、もう、撮らないで!
あれほど周りを困らせていた隼司君が、去年はお母ちゃんに誕生日プレゼント。
あっ、ありがとう。
今は美容学校2年生です。
長かった子育ても、もうあと一息。
61歳になるお父ちゃんもまた、38年間の会社勤めに終止符を打とうとしていました。
退職金は何に使うんですか?
何に使うって、俺の宝物だから、これ。
優越感に浸る、ある一部分な。
振り返れば、何もかもがいとおしい家族の歴史。
スウィートホームは、石田さんチのすべてを知っています。
それなのに。
水害は容赦ありませんでした。
ビニールハウスがあったの、昔。
でももう、左、あれ?
こっち、左っ側、ないっすか?
ない。
肩、肩。
人生って、なんだろう。
これ、だめだねぇ、まだ。
ご自宅どっちですか?
向こうのほうだよ、向こうのほう。
海になってる。
ありゃ、2階までつかってるかもしれないな。
思い出が詰まったわが家は、壊滅的な被害を受けてしまったのです。
うわ、くせー。
運命の残酷さに、夫婦の絆もきしみました。
別れようか?ねぇ。
別れようか?もう俺、どう、どうでもいいな、もう、だめだわ、もう、こんなのもう…。
いやぁ、冒頭からちょっと大変なことになってしまいました。
大家族、石田さんチなんですが、新春3時間半スペシャルで。
密着19年目を迎えていますけれども、石田さんチには最大の危機が襲いかかりました。
ちょっとこれは驚きましたね。
いよいよ石田さんチとしては、もう子どもたちも巣立っていって、いよいよ夫婦でゆっくりと、といったさなかだったじゃないですか。
そしてさっきの夫婦の会話をちょっと見ると、何やら、別れようなんていうことばもあったから。
何かこう、どきどき、そしてまた、わくわくしてしまいますね。
これから一緒に見ていきましょう。
そして、実際に一緒に見ていく、豪華なゲストの皆さんにもお越しいただきました。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします!
さあ、というわけで、斎藤工君、冒頭から非常に衝撃的な映像が流れてしまいました。
そうですね、僕、長男の孝之さんと同い年なんですよ。
なのでちょっと、その石田家の過ごしてきた時間というのは、ひと事とは思えないんですけど。
斎藤さんのご家族というのは、どういったご家族なんでしょうか?
うちは4人家族なんですが、姉と僕と両親なんですけど、非常に仲はいいほうだと思います。
子どもが20歳になるまでが、親の義務だっていうことで、下の僕が20歳になったとたんに、両親は2人でまた世界の放浪の旅に出たり。
えー!
すごい自由に。
そんな斎藤さんの家族写真、こちらです。
あら、かわいい。
僕と姉なんですけど、母がカーテンで、あのおむつを作ってくれて。
カーテンなの?
手作りおむつ?
余ったカーテンで。
お姉ちゃんが?
左で、マルコメが僕です。
まだこれ、1歳とか?
そうですね。
そのぐらい?愛梨ちゃん、石田さんチ、ご覧になって、いかがですか?
私も8人家族なので、やっぱり、そうですね、兄弟が多いと、なんかその、やっぱ世の中で、一番大変なのはお母さんって、ずっと昔から思ってきてて。
6人兄弟の何番目だっけ?
3番目です。
3番目。
構成は?
男、男、女、男、男、女です。
カスタネットじゃないんだから。
男、女、男、男、男、女。
その平愛梨さんの家族写真をご覧ください。
あら、かわいい!どんな女の子だったの?
私はもう、おてんばってすごく言われて。
じゃあ、このカンフーファッションなんか、どっちかっていうと、ねぇ。
これ、両親が沖永良部島なんですけど、その沖永良部島に行くときに、なぜか母が、チャイナ服を着せて行くっていう、母のこだわりがあって。
毎回、チャイナ服で行ってたんですよ。
毎回ですか?
おもしろ一家なんですね。
いろいろありますけれども、はい。
本当、人の数だけ家族の形がありますけれども。
ではVTRの続きいきましょう。
今回は、放送直前まで取材した最新の映像と共に、19年にわたって取材してきた、石田さんチの名場面も併せてお送りします。
それではご覧ください。
去年3月、めでたいことがありました。
といっても、石田さんチじゃありません。
家族も同然のおつきあいとなった取材スタッフ、今井ディレクターが結婚。
すでに報告は済ませていましたが。
お邪魔しまーす。
この日は、取材に事寄せて、お母ちゃんに個人的な相談です。
あ、いらっしゃい。
だったらカメラ回すなよって?固いことは言いっこなし。
お母さんにちょっとお伺いしたかったんですけど、夫婦円満のこつ…。
ないないない!3つ、奥さんのことばで、切れるっていうので、やってたけどね。
えっとね、1つはね、あっ、役立たず。
次が稼ぎが悪い。
最後はね、なんだっけ?あんたみたいな人と結婚しなきゃよかった、この3つが。
いや、それは妻の心得でしょ?
要するに、嫌いになるっていうのは、まだ嫌いになるのはいいんだって。
無関心になるのが一番悪いんだって。
私、無関心じゃないから、一応、関心はあるから。
気にしないだけで!
本当は夫の心得を聞きたかったんだけど、まあ、いっか。
お父ちゃんも、お母ちゃんには関心があるようで、あちこちに落書きのメッセージ。
石田さんチに増殖する、お父ちゃんの落書きメッセージ。
次女の芽衣子さんには、毎度のことらしく。
何これ、おやじ?帰ってきたの?
家族の掲示板には、サラダは何人分ですか?余って捨てる?とか、あなたのレベルでは庭はあれで広々なんですね?とか。
みんなお父ちゃんの不平不満。
でも、よーく見るとあちこちに誤字がありますよ、誤字が。
これも昔からでしょ。
今に始まったことじゃないと…。
そう?変化がない、何も変わってない。
赤ペン先生みたい。
今さらだからだよ。
おや?
お母さん、猫!
猫、ニーナです。
ニーナちゃんは、石田さんチのニューフェースみたいです。
この猫ちゃん、どうしたんですか?
拾ったのよ。
えっ?
拾っちゃったのよねー。
うちにいるの、全部、私が拾ったの。
ニーナを含めて、家には3匹の猫が暮らしていました。
思えば、石田家の子どもたち9人のうち、残っているのは次女と末っ子の2人だけ。
子どもの数より猫のほうが多いんだから。
そうそう、アリーを忘れてました。
帰ってくると、いつの間にか増えていく動物たち。
これも、お父ちゃんにはちょっぴりいらだちの種なんです。
連れて帰ってきて。
なんかすっごいね。
掲示板にあったお母ちゃんへのメッセージ。
ずばり、真意を尋ねてみると。
いっぱい字があるじゃないですか?
しゃべりたくないから。
無言は何も伝わらないから、字で書いた。
ここの庭もそうだもん。
もう全部、すべてなんだよ。
ちいとはさ、変えてくんねぇ?
だって私、超、まつもとさんちとか、もりぐちさんちとかは、ちゃんと花壇があって、そこの部分だけで使ってるよって。
なんでうちは、こうやって汚いの?って言ってるのに、超昔からだよ。
そう。
ジャングルなの。
すごいびっくりして、奥にいちごがあるからって言うから、えっ?ってすって言って、足置いたら、ふっと足元見たら、蚊の出会い場になってた。
お母ちゃんは蚊の出会い場、ああ、じゃなくて、庭も愛してるんですね。
手の付けられない、施しようがない。
この庭でバーベキューするようなことしてたんだよ。
えー!
そう、前、してたな、バーベキュー。
芝生、俺が植えたんだ。
おやじが、俺の命は、この芝生だって言ったの。
芝生植えたばっかりのとき。
芝生の周りに、おかんの鉢が隣にあったんだけど、どんどんどんどんこうね、周りに置いていくんだよ。
お父ちゃんの命を下敷きに、もはや庭はジャングル状態。
芝生は見る影もなく、そこには実に雑多な植物が勢いよく茂っていました。
取材当初から、庭ではよーくもめてましたよね?
鉢の上に鉢を載せるなよな。
鉢の上に鉢載ってる。
きらら!
なんでこうやって広げるの?せっかくここん所、とんとんとんってやったのにさ。
なんで、こういうふうになってしまうんかね。
びーびーびーびー言ってんだったら、庭はなんだよ、お前、ぐちゃぐちゃでさ。
誰もいじってないでしょうが。
足の踏み場もねえし。
自分でしょう?
財布はいじってないって、じゃあ、なんだよ?
結婚37年。
お2人の歩みには、愉快な夫婦げんかが絶えませんでした。
石田さんチの映像遺産を、また少々。
ここなんか、どうやって歩くのよ。
けもの道だよ、けもの道。
いいじゃない。
裕福そうで。
ここ、通れねえんだから、ここ。
通んないで。
もっこり、もっこり。
あのね、ここに物置くじゃん、誰もいじらないんだよ。
でも、雪のようにこうなってくると、もう分かんなくなるんだよ。
半年くらいになって、こうやってると、もう腐ってるからないんだよ、もう。
もっとすごいのは、こうやって移動するから、この間に挟まってるものは、もう分からない。
ここに幸せあるのにさ、もう積んでるんだよ、俺のTシャツ、どこあるか分からないし。
私着てる、今。
だからお前は、必要以上のことをやり過ぎてるんだよ。
よーく考えてみろ!
考えてみろも、6年生は1人しかいないの。
いや、1人とか2人とか0とか、関係ねえって。
だからうちのことだったらいいけど。
…1人だから全部しなきゃ、すべてやんないといけない。
違う、人数の問題じゃない。
お互い強い関心を抱きあっていたんです。
ねぇ、なんで父ちゃんがさ、最初に結婚してくださいって言っ
お母ちゃんの大腸がんが発覚したのは14年前。
だから、一応、がんですって。
で、検査を15日からやりましょうって。
あんた、2リットルも飲むんだって。
メールで病名を知らされたお父ちゃん。
その夜は、機嫌が悪かった。
何、痔だって?
え?
痔?大体ね、花、ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃやってるからよ。
鼻がケツに刺さって痔になるんだよ。
ばか、お前。
ジャングルがお前、ほっつき歩いてるから、まぬけやろう。
自業自得って言うんだよ。
痔ないでしょ、がんでしょ。
私は痔じゃないよ。
なんで痔の話してるの?
痔って書いてあったから。
がんって書いてあった!ほら見ろ!絶対あれは、漢字を読めてないって。
本当だったんだよ。
ほら!痔はこれでしょ。
いいじゃない。
一緒じゃん、これ。
違うでしょ、がんは。
カタカナで、がんって。
漢字で癌なんか見たことねーよ、ばか!
私でも分かる、読むくらいできる。
間違って怒ってないで、ほら、見て。
今思い返せば、あれは、お父ちゃんの精いっぱいのギャグだったのかも。
これさ。
はい?
もう、増やすなって、前から言ってんだけどさ。
不安が講じて、お母ちゃんに八つ当たりしたこともありました。
まあ、私が死んだら、何やっても結構ですよ。
違うよ。
欲しいって言ってる人もいるからさ。
死んだら何やってもいいっていうんじゃなくてさ、死ぬ前に処分してほしいんだよ。
思いっきりできるんじゃない。
そういう意味じゃねーんだからさ。
あれ欲しい人にさ。
違うんだよ!そうじゃねーんだよ。
だから欲しい人がいっぱいいるって。
いいよ、話しねえよ。
じゃあ、今のうちに欲しい人に全部やれよ。
そういう意味じゃねぇんだってば、わかんねぇな。
お前、もうしゃべんない、もういい。
手術の朝。
お父ちゃんが、お母ちゃんにかけたことばを、私たちは聞き逃しませんでした。
しっかりね。
本当は、心の底から心配していたお父ちゃん。
発見が早かったこともあって、手術は無事成功しました。
愉快なかけ合いは、退院とともに、また始まったんです。
おい、しゃばの空気はどうだ?
え?
しゃばの空気は。
ほら、お天道様が。
何言ってんの、毎日、窓開けて外見てたわね。
そうねって言うんだよ、普通は。
なんでよ。
久しぶりに日に当たるわって、言えよ、このやろう。
嫌だな、親父と一緒にいなくちゃいけないの、あー、嫌だ。
何、その化粧。
悪魔みたいな化粧して。
ばっかやろう、この世のものとは思えないほどの、とんでもない化粧だよ。
あれだね、やっぱりけんかが笑いになるっていうのは、桝君、いいね。
本当ですね。
がんと痔、間違えないでしょう。
あれはね、あれはねらいなのか、本気なのか。
たぶん、あれは、彼の心遣い、お父さんの心遣い、そのような気がしてきますね。
そうだと思います。
それが本当に伝わってきますよね。
家族の在り方ってのは、健介さんもご覧になって感じたことがあったんじゃないですか。
少しでも忘れさせてあげたい。
それがね、厳しい言い方かもしれない、でもその裏には、優しい思いがすごくあるっていうのは、僕、すごく今、理解できるんで、そういうのがやっぱり、子どもたちにも伝わってると思うんですよ。
お父さんの本当の気持ちっていうのがね。
なんかこう、励ましてあげるっていう、変にこう、しんみりしてもいけないわけでしょう?
うちの女房ががんになって、子どもたちに最初に伝えなくちゃいけないじゃないですか。
で、伝えました。
仕事から帰ってきた北斗に会ったときに、どうすんのかなと思ったら、普通にしてたんですよ。
それがうれしかったですね。
僕、何も言わなかったんです、あえて。
でも普通に、お帰りって、普通、いつもどおりの関係でいてくれた。
そういうのが一番うれしいと思って。
そうか。
佐々木さんの家族写真、こちらです。
あー、いい!
これはなんの写真ですか?
これはアメリカのモニュメントバレーっていう所なんですけど、それは北斗がずっと行きたいって言ってた所だったんですよね。
ここはもう、本当、上が今、高校生なんで、あともう1年、2年しかないじゃないですか。
親と一緒に。
一緒にいられるっていうのがね。
北斗さんも喜んだでしょう?
もう本当に、もうなんて言うんでしょう、古くさいですけど、抱き合って、ここすごいな!って抱き合って、その時間がすごく幸せでしたね。
やっぱこうやって一緒にいる時間っていうのに、やっぱり限りがあるもんね。
そうですね。
さっきの石田さんのところもそうですけど、親から離れて巣立っていくっていう、その寂しさがあるから、今を頑張れる。
外資系化粧品会社で働くお父ちゃんは、60歳の定年を過ぎたあと、会社との契約を延長。
部署は変わり、去年は親子ほども年の離れた部下たちから、新製品の特徴を教わる日々でした。
スウィートオレンジで。
何?
スウィートオレンジ。
水筒?
甘いオレンジのエッセンシャルオイル。
あっ、スウィート。
けれど、会社との契約も9月まで。
その先に、人生の第2章が待っていたんです。
もう、申し訳ありませんが、私は9月で終了させていただきます。
はっきりしないんだ。
え?
だからもう終わり。
私はこれからね、美と健康と幸せを皆さんに与える仕事をこれから、引き続きさせていただきます。
じゃあ、お母さん、何もじゃあ、仕事、どうするということに関して、伺ってないの?
うん、全然。
全く?
全く。
うん。
ただ、隼司はあと半年あるよっていうことは、あるんで、それは親の務めとして学校は出さなくちゃいけないわけでしょ。
気がかりは、美容学校に通う末っ子、隼司君の学費。
でもこれから、国家試験用のウィッグが、1台3000円ぐらいするのが、やっぱり10台、20台かかるんで。
親ができることは、もうここまでなんだけど、それ以上はちょっと無理だし。
こちらがただいま人気急上昇
長く続いた子育ての、そのラストスパートというときに、額は減っても、毎月、確かにあったお父ちゃんの給料が消えちゃうのか。
ほら、マヨネーズ大好きなお坊ちゃまに。
あ、下手くそ、下手くそ。
好き嫌いの多い隼司君に、マヨネーズをたっぷり使ったオムレツを作るのは、やっぱり愛情でしょう。
愛情を注がれる息子には、就職活動と国家試験が待っています。
うーわ。
ここまでマヨネーズかけるのか。
なんだよ、それ。
さっきね、マヨネーズで炒めてたよ、それ。
うそ?
本当だよ…。
たらねぇんだな、きっと、マヨネーズが。
隼司特別のオムレツ。
ね、特注だもん。
分かってるのかな?親心。
お前、性格は悪いけど、顔はいいぜ。
だから黙ってりゃジャニーズいける。
しゃべったとたんに、奈落の底におっこっちゃう。
しゃべんねぇジャニーズなんていねぇよ。
いるよ、しゃべんねぇやつ、中に。
3列目のやつは絶対しゃべんねぇから。
にこにこしてるだけ。
3列目でやってけって言うのかよ。
そりゃそうだよ。
いいじゃん、3列目だって。
3列めだっていいじゃん。
隼司、いい?このパンツさ、チェリーじゃん。
これ、どういう意味なの?
しらねぇ、母ちゃんが買って来た。
お母さん買ってきたの?そうなんだ。
すごいハイセンスな。
俺のこと、まだチェリーボーイだと思ってんの?
違うの?逆に。
え?
逆に違うの?
俺、茨城県の自主規制って言われてる。
これ、絶対乗せるよ。
チェリーボーイの意味は、皆さんで調べてくださいね。
お前、吉本行けよ。
お前、美容師無理!
ところがどっこい、隼司君は、毎朝、50分かけて真面目に学校に通っていました。
はい、じゃあ、よーい、はい、始め。
ウィッグと呼ばれる練習用のマネキンを使った授業では、家で見せるだらだらした様子など、少しもうかがえません。
はい、真ん中を切り終わったら、今度は…。
お父ちゃんもお母ちゃんも、若かりしころは共に美容師。
そのDNAを受け継いだのか、腕は悪くなさそうだ。
先生がチェックするのは、クラスメートのウィッグから。
チェックまで全部終わった?
先生、がっくりです。
25。
めっちゃ引かれてる。
続いて、隼司君のウィッグ。
カットした髪の長さがちゃんとそろっているか。
先生は入念に確かめていきました。
10か、15点。
おおっ。
悪くないね。
なかなか。
えっ、そんなもん?
でもさ、カットはうまいよね。
美容師に向いてんだろうね。
しかしながら、美容師にはカラーリングの薬品などに関する専門知識も必要です。
でも、これがだめなんだなぁ。
寝てるよ。
長ーいかたかなと漢字を見ると、たちまち睡魔に襲われるようです。
学科むずいな。
むずいだろ?
見違えるように生き生きするのは、地元の友人たちと遊ぶとき。
ははあ、カラオケねー。
じゃあ、お前ら一曲も歌うなよ。
やだよ。
友人たちは、みんな就職してるんです。
たまの息抜きならいいけど、のどばっかり鍛えても、国家試験には受からないぞ。
国家試験だよ、国家試験、問題は。
うん。
それは大丈夫なのか?
えっ、相当やばいよ。
実技がなんとかなったとしても、頭だよな。
けろっと、1日でけろっと忘れちゃうんだよな。
あれ、勉強したことを?
スポンジのように吸収は早いんだけど、やっぱり押されると、全部、出ていっちゃうんだよね。
小学校からずーっと、ろくな勉強してないから、勉強のしかたが分かんないわけ。
石田さんチの映像遺産には、隼司君の成長記録が収められています。
ご覧ください、19年前の隼司君。
でも、かわいかったのはこのころだけ。
このあと、
美容師を目指して、なぜか歌に磨きをかける隼司君。
初めてお邪魔したころは、まだ1歳。
おねしょもしょっちゅうでした。
初めは人一倍の恥ずかしがり。
でも、人間は環境によって作られる。
末っ子はお兄ちゃんたちのおもちゃでした。
こら!
いつまでもやられっぱなしではいられません。
あっという間に、口の悪さも身につけちゃいました。
お母ちゃんに怒られない?
ちんこ。
ちんこ。
膨大な取材映像の中から、埋もれていたお宝も発見。
富江だー!富江がこんな所に遊んでた、富江。
このころ、ホラー漫画、富江が映画化されて、話題になってたんですね。
うわー、富江。
どこ行くの?隼司、どこ行くの?隼司、どこ行くの?これ、一緒に持っていって。
やだ!
おっと。
あー、危なかった。
どこ行くの?隼司。
隼司、どこ行くの?
そして小学校の入学式。
石田家にとって隼司君は、すべてにおけるラストバッターでした。
ラストといえば。
もう本当、もう少し真剣にやってくんない?集中だ。
どうして真面目にやろうとしないんだろうね。
学校の成績も、ラストに近かったかな?
もう少しね。
ばーか、ばーか。
みんなね、真面目にやってたよ。
ばー、ばー。
お前だけだよ、そんなばかみたいなことやってるの。
こんなん。
夏休みの宿題を見る芽衣子さんは、そりゃぁ、もう厳しかったもんです。
何これ、ちゃんとこっちからこっちだよ。
はい、書いて!まじくそ書いて、隼司。
隼司、早く書いて!はい、隼司、隼司、かわいいね、まじくそかわいいね、隼司。
ああああ!
はい、隼司、書こうね。
痛い!
長男、孝之君の結婚式では、孝之君たっての望みで、リングボーイを務めました。
誓いの指輪を交換していただきます。
本日、リングボーイを務めてくれた隼司君、ご協力をお願いいたします。
頑張って。
隼司君は大任を果たしましたが、結婚指輪は左手ですよ、左手。
母ちゃんは?
中学に進むと、あのかわいらしさはどこへやら。
黒いピン、2つ。
あっ、1つでいい。
付いてっぺよ、下に!
付いてないよ、かばんに。
あー、あった!お前、教科書も何にも入ってないの?お前、学校へ何しに行ってんの?
遊び。
やめてよね。
なんでそんなに取るんだよ、1個で十分だよ。
いいよ、もう渡せよ、きんたま野郎。
だーかーらー!
だから早く行ってこいよ!
うるっさいなーもう。
ピーつけといて。
成績は下降の一途をたどり、数学のテストは16点。
名前ぐらいちゃんと書けって。
おはようございます。
おはようございます。
反抗期に突入した高校時代。
夜遊びが目立つようになりました。
この前日、取材班が引き揚げたのは、深夜12時過ぎ。
隼司、きのう、何時に帰ってきたの?
9時。
隼司、実はきのう、12時までここにいました。
隼司、まじで何時に帰ってきたの?きのう。
1時?2時?3時?
うん。
3時か…。
友達んち?
かあ、もう、しゃべりかけてくんなよ、おやじ!
おやじ呼ばわりされた今井ディレクター。
このとき、26歳。
母ちゃん、心配してたよ。
うるせぇ、てめぇ本当に。
次、俺に話しかけたら、カメラの画面割っから。
はい、すみません。
とても太刀打ちできませんでした。
もうほら、8時だよ。
私ほら、行くから。
ほら、今井君、お願いね、大丈夫?
あっ、隼司ですか?
うん。
送ってけって?
指名してたから。
はい、分かりました。
で、えっとね、終業時間が8時45分だから、8時40分までに連れてかないと、遅刻になるから。
あっ、はい、分かりました。
はい、よろしくお願いします。
隼司君の指名といわれれば、距離を詰める絶好のチャンス。
今井ディレクター、少なからず興奮していました。
でも。
学校どうなの?続けられそうなの?
分かんない。
進級はできるの?
きつい。
まじ?えっ、進級できなかったら、どうするの?
辞める。
辞めるの?
うん。
辞めてなんか決めてるの?
仕事する。
ああ…。
美容師がどうのこうのっていうのは、ないの?
ない。
あ、ないんだ。
なんだか投げやり。
隼司、隼司、起きて。
ほら。
もう、また遅くなっちゃうから、起きて。
反抗期は、子どもたちの中で、隼司君が一番ヘビーだったかもしれません。
なんであんなに時間にルーズなの?母ちゃん、間に合わないじゃないのよ。
おはよう。
ちょっとやめろよ、まじで…。
時には取材のカメラにも攻撃的なそぶり。
ごはん冷たくなるよ、隼司。
ほら!隼司!うんじゃなくて、早く動け。
隼司、動けよ、ほら。
うるせぇ、死ね、てめぇ、くず。
触ってんじゃねぇ、ぼけ。
早くして。
うるせぇ、黙れ、はげ。
隼司よ、動けって、早く。
話しかけんな、話しかけんな。
しかたないじゃない、だったら動けよ。
話しかけんな。
隼司、ぐずぐずしたって、やることはさっさとやっちゃおうよ、ほら。
だから、撮ってんじゃねぇ!おい!撮ってんじゃねぇつってんの、わかんねーのかって言ったんだよ、ばか、わかんねぇのかっつんでだよ!
分かったから、もう撮らないで!あっ、壁が一つ、だめになった。
はっきりいって、手のつけられない時期があったんです。
さすがのお母ちゃんも、さじを投げるんじゃないかと思いました。
ところが、夜遊びにうつつを抜かす隼司君の帰りを、いつものように待ち続けたんです。
それを優しさと言っていいのかどうか。
この石田家のことを知らない人から見たら、お母さんが隼司のことを甘やかしてるって?
それはね、本当にね、その立場にならないと分かんないと思う。
私も今は、自分がこういう立場になって、上の子たちを育ててるときに、やっぱり、こういう本当に苦しい立場になっているお母さんたちから、ちらっと聞かれても、もう親なんだから、いいんだよ、突っぱねちゃってっていうふうに言ってたわけ。
でも、今、自分が、その突っぱねては、どうしようもないっていう子どもを抱えてるから、分かりますよ。
今、ここを手抜きするわけいかない。
ここで、どこまでふんばれるかで、その子の未来が決まってくるところがあるでしょ。
4年前のお母ちゃん。
じっと耐えていたんです。
息子を信じていたんです。
いらっしゃい。
事情を察して、石田家にやって来たのは、長男、孝之君。
一人娘のほのかちゃんと、妻、洋子さんも一緒です。
きょう、何しに来たの?って。
うん?
何しに来たの?って。
変な言い方だね。
なんかご予定でもあって、いらしたんですか?
きょうは、おかんが育児疲れしてるみたいだから。
育児、育児。
育児っていうのは、どっちかっていうと、このぐらいのこと言うの。
隼司君はね、まあ、親とすればね、何がなんでも、高卒でと思うんだけど。
そんなの、私が頑張ってもどうしようもないしね、本人だもんね。
まあちょっと、話を聞くかな。
って言っても話を聞いてもね、分かんないんだよねぇ。
分かんないよ。
だから、何が原因だか言ってごらん、聞くからって。
どうせ母ちゃんなんか分かんないんだって、言われなきゃわかんねぇだって。
忙しいお父ちゃんに代わって、隼司君の本音を聞いてやろう。
兄貴の面倒見のよさは健在でした。
痩せて、ほっせぇ。
ほっせぇ!お前、体重いくつだよ?
40キロ。
40?
48、7…。
47?えー!張りが違う。
母ちゃん、飲み物!
あんじゃん。
俺も一口だけ食わしてもらっていい?学校どうなの?でもさ、学校は卒業したくない?
ぶっちゃけ、どうでもいい。
どっちかわかんねぇじゃん。
どっちがいいんだろうね。
学生で一応、高卒っていう肩書きをもらったほうがいいのか。
結構、学歴ってね、同じふうに入ったけど、学歴が違うだけでね、給料変わってくるんだよ。
それがね、むかついてくるんだよねぇ。
あれっつって、俺と一緒に入ったのに、あいつのほうが給料いいんじゃねぇの?みたいな。
何?向こうのほうが先に役職上がっちゃうの。
そういうのおれは関係ねぇと。
安月給でも構わないよ…。
おかん、いつも電話かけてくるわけでしょう。
心労がたまるよ。
いつ、過労で倒れて病院送りになるのか分かんないよねって言ってんの。
面倒臭い、本当にそこが、俺はもう。
関わってほしくない。
電話かけてほしくない?
うん。
朝、ネクタイどこ?何どこ?とか、俺の着替えどこだって言ってても、関わってほしくない?
うん。
あっちに友達いるのよ。
あっちに友達いるのよ。
まじで?あいさつしてこないと。
なんで?いいからまじで。
まじで、あいさつ。
いいから。
なんで。
寝てるよ、寝てるからまじで。
お兄さんとして。
この人、止めて。
お兄さんとして、知ってる?俺、うざいって言われんの。
分かった、うざいから、はい。
あいさつ…。
だからいいって。
女じゃねぇだろうな?
女じゃねぇよ。
男だよな。
逆に女だったら、俺、気利かせて、入んないようにしないといけないし。
じゃあ、女。
じゃあ、隼司、俺ら行っていい?
ばかじゃねぇの?
パンツだけ見ていい?
男だから。
色だけ。
母ちゃん!男だよな?
関わってほしくないって言ってたのに、母ちゃんって。
違う、違う。
関わってほしくないって言ってたじゃん。
いやいや、これ最後、これ最後。
関わってほしくないって。
ねぇ、男だよな?
そう。
ほら。
そう。
ばかじゃねーの。
だから、おめぇ…。
もう二度とかかわんねぇって言っといて。
それにしても、孝之君、突っ込み方がお父ちゃんそっくり。
鍵閉めてやがる。
あの、トイレ貸してほしかったんだけど。
ねぇから。
ハンサムだって聞いたから、どんだけハンサムなのか。
ハンサム…。
あ、どうも。
分かったよ!お前は。
いつもお兄ちゃんって、抱きついてたじゃん。
お兄ちゃんじゃないから、早く。
お兄ちゃんでしょう?
だから待って、早くあっち行け。
じゃあね。
弟思いの孝之君さえ、いまひとつ、つかみきれない隼司君の胸の内。
最後の子育てに、これほど手を焼くなんてねぇ。
あのね、隼司と話したけど、もう俺にはよう分からん。
どうしたほうがベストなのか分からない。
分かりました。
環境変えちゃったほうがいいのかもしれないな。
環境変えるって、変えようがないじゃん。
え?
根なし草みたいな生活してる。
ありえないでしょう。
前は帰ってきたのに、今はもう帰ってこないからね。
平気で。
もう帰りなさい、帰りなさいって、何回も何回もメール送って、すごいぞ。
したら、きのうなんか切っちゃったもんね、うざいからって。
黙ってればいいかって、そうはいかないでしょ。
だってやってることがやってることだもん。
てめぇは親じゃないんだから、関係ない。
そうはいかないし。
あのとき、みんながどれだけ心配してたか。
どれだけ周りをひやひやさせたか。
隼司君、分かってんのかな?
母ちゃん、母ちゃん、金!
斎藤さん、反抗期あったんですか?
反抗期ありましたね。
あったんだ?
やっぱり中学のときに、父とつかみ合いまして、そのときにやっぱり、父の体と僕は同じぐらいだったんですけど、ちょっとつかみ合ったときに、これ、もしかしたら、僕のほうが強いかもしれないって、感じちゃったんですね。
なるほど。
それがすっごいショックで。
そうか。
父親をいつか抜く日がね?
はい。
それで反抗期が収まったと思いますね。
なえてしまったというか。
そうか。
すごいショックでしたね。
進路の話も出てきましたけども、それこそ斎藤さん、役者になるっていうふうに、親には相談されたんですか?
いや、全く。
ただ父が、映像を作るほうの、裏方の仕事をしていた、その背中を見ていたので、こういう世界に憧れを持ったっていうのは、なんていうんだろう、否めないんですけど、隼司君も、その美容の道を行くっていうのはやっぱり、ご両親の背中を見てきているんだなって、知らず知らずと、やっぱ影響を受けているんだなっていうのは。
役者さんになることに、反対されなかったんですか?
全くしません。
ただなんか、僕がこう、キザな役とか、なんかこう、もてる役とかやると、すごく冷めた目で見ていて。
見てしまうという。
僕が変わった、野菜かぶったコマーシャルに出たり、パンツ一丁の役とかやると、褒めてくれる。
なるほど、おもしろいお父さんだね?
まあ、そうですね。
勘違いするなっていう、なんかメッセージをどこか感じるんですけど。
なるほど、なるほど。
そんな人間、かっこいいもんじゃないっていうことは、うちの家訓でもあるんですけど。
そうなると、今回のドラマの役柄というのは、ちょっと親御さん、心配ですよね?
すごい自然に番宣に導きますね。
そうですね、あまりにもこの番組のアットホームな雰囲気と、ちょっとテイストが違うドラマの番宣を、ここでするのもどうかと思うんですけど、ありがたい振りをしていただきましたので、臨床犯罪学者、僕は犯罪学者で窪田まさたかさん演じる、推理小説家と2人でタッグを組んで、警察と難事件を解決していくという推理物を今、やっております。
真麻ちゃんって、反抗期なんかあったの?
多少はありました。
あった?
はい、でも小さいときから、父親に食べさせてもらってるっていう感覚が強かったので、ここで見放されたら、私、生きていけないって思っていたので。
お父さんなくして、食事はないと?
そんなに。
控えめな反抗?
控えめな反抗。
さあ、そんな真麻さんの家族写真、こちらです。
英樹さん、豪快な笑い。
これはたぶん、遠山の金さんを京都で撮影しているところを見に行ったときに。
たいていのことは、時が解決すると申します。
嵐のような隼司君の反抗期は過ぎました。
弟の変貌ぶりに、孝之君もびっくり。
兄貴としては一安心です。
でも、美容師になるにはまだまだ試練が控えていました。
専門学校って、一番最後の年は暇になったりするの?
なるわけないじゃん、就職だよ。
大学は大体、一番最後の年は暇なんだよ。
2年の。
だめだよ、お前、金出してもらって学校行ってるんだから。
2年の夏休みまでには就職決まってないと、結構まずい。
隼司、きょうこそは友達のうちで夜更かしして帰ってくんなよ。
あした学校なのに、夜遅くに帰ってこれねぇよ。
起きらんねぇよ。
お前、たまにいいこと言うな。
だって俺、学校の早い日、9時に寝てるから。
学校何時までに行くの?
9時20分。
ちゃんとそれまでに行ってるの?
行ってるよ。
珍しい。
朝、いっつも駅のホームでダッシュしてる。
ちょっと前まで遅刻の常習犯だったのが、今や別人。
人間の内面を見つめようとする今井ディレクターとしては、隼司君の心の中をのぞかずにはいられません。
なんか心境の変化はあったの?隼司的には。
答えづらいっていうかさ、その道っつうか、なんか恥ずかしいな。
いや、いいよ。
テレビがあるから。
ちゃんと言って。
でも、まぁ普通にさ、そういう、そういう道でやるって決めたから、成功したくね?
なるほど。
なるほどじゃねぇよ、お前。
心が込もってねぇなるほど言ってんなよ。
成功、成功したいってこと?
金持ちになりたいでしょう?なりたいでしょ?
うん、そうだね。
なりたいでしょ?なりたいでしょ?
あっ、お金持ちになりたい?
もてたいでしょ?
もてたい。
もてたいでしょ?もてたいでしょ?もてたい。
だから…。
女の子の髪の毛、触りたいでしょ?
それは…。
微妙かな?そうでもないかな。
まあ、で?だから頑張ってるんだ?
自分なりにね。
頑張ってたらテストとか受かるんだけどな。
愛犬のアリーも、お母ちゃんの心労が消えたことを喜んでます。
月曜日までに着かなきゃいけないんじゃなくて、月曜日に出すの?
月曜日に出す。
まででしょ?だから、月曜日までに書かなくちゃいけないじゃない。
平成も書かなきゃいけないの?西暦って。
西暦っていうのは違うでしょうよ。
平成も書かなきゃいけないの?
しらねぇよ。
1996年だ。
国家試験の前に、美容室への就職活動。
履歴書、ちゃんと書けるのか?
うん、まあ、かっこいい。
でしょ?漢字、なんて読むの?これ。
弊社。
だから本社ってことでしょ。
弊社、違う、弊社主催の、まあ、その会社のっていう意味だよね。
お店の規模が大きくて、じんみゃくって、どう書くの?あ、人に脈?が広がるから。
うん。
あれ、でも隼司、意外と漢字書けるんだね。
書けるよ。
でも、
もはや、石田家の家族同然となった今井ディレクター。
お母ちゃんのお使いで、四男の智広君のもとへ。
あっ、お邪魔します。
何それ?
お母さんからいっぱい預かってきた。
コロコロとか。
掃除しろって。
製鉄所に就職して、1人暮らしも9年目です。
いつもと変わってない?
でも去年よりかはきれいかな?
去年よりはな。
掃除機買ったんで。
あっ、掃除機かっ…。
あれ、使ってる形跡がないんだけど。
違う、自立してる。
じゃあ、掃除するようになったの?
いや、しなくなったら、とことんしないよ。
ごみ袋がストック2までたまったあたりから、やり始めるかな。
ごみはね、やっぱり、なかなか捨てられないんですよね。
もうストック2までいっぱいじゃないか。
失礼します。
冷蔵庫の中に、不思議なキャラがうかがえます。
ビニール袋、これ、なんなの?これ。
それね、ビニール袋ごと食材を入れてるんだけどね、出すときは食材だけだから、残るんだよ。
今までの抜け殻。
このへんは大体あれだからね、冬場の鍋通路だから、どうしてもね、汁気がついちゃうんだよ。
鍋を運ぶ導線ってことね、ここね。
そうそうそうそう、この辺ね。
鍋の足跡があるよね。
この辺はしぶといかもしれない。
皆様、お正月早々、こんなお見苦しい場面をお許しください。
これも人間を見つめようとする今井ディレクターのねらいなんです。
うへぇー。
これ、モザイクかけたほうがいいかな。
智広君は石田家の中でも、とびきりユニークでした。
22年前の集合写真。
なぜか1人だけあらぬ方向を向いています。
石田さんチの映像遺産を見てみると。
ジュースを飲んだそのあとで。
腹の中の水を混ぜてるの。
ジャミラ、ジャミラ、ジャミラ!あー!あー!あー!
石田さんチのファンにとっては定番中の定番、お習字のお稽古です。
課題のことばは思いやり。
ねぇ、お布団の上でやめてー。
布団を片づけてからしなさいよ。
普通さ、布団を片づけて…。
なんか変でしょう。
あのね、これはね、こう書くんじゃないの。
思いやり。
信じられない、お前の頭は。
お手本を書いてくれるお母ちゃん。
その脇で。
よい子のみんなは、まねしないでね。
見てろ!
本当に笑わせてくれました。
勤め先の製鉄所までは、車で10分。
早番もあれば、夜勤もありますが、職場ではそろそろベテランの域。
日本の製造業を下支えする頼もしい人材がほこりだらけの部屋で暮らしてるなんて、ちょっと悲しいかも。
彼女とかは?
ない!そもそも家に引きこもってる男が、どうやって出会いを見つけるのだよ。
そうだよね。
ちなみに悩みとかはあるの?
悩み?悩みね。
間が長いね。
なんかもうちょっと、ここら辺発展しないかなって思ってるけどね。
町が?
そうそうそう。
行く目的っつうか、できるような所がありゃいいんだけどね。
あれ?なんか新しい建物出来てんじゃね?って見てみると、老人ホームだったりするし。
やっぱり彼女は無理か。
去年7月、末っ子、隼司君は美容室への就職に向けて、準備中でした。
そこで、面接試験の特訓を。
うちの美容室を志望した理由を教えてください。
私はなぜ、この御社を志望した…。
なんて言えばいいんだろうね?かむんだよ、絶対に。
はい、私はなぜ、あっ、はい、私は御社を志望した理由は、店全体が大きく、いろいろな美容室…、美容師さん…、いろんな美容師さんとも関わりを持てるので、このサロンにしました。
どうだ!
いや、あんまりね、ことば選ばなくていいけどさ。
御社とか、そんなの使わなくたっていいんだよ。
でもなんか、でかい企業系だから、ちゃんとしたことば使えとか言ってんだけど。
石田君。
はい。
あなたの短所を聞かせてください。
私の短所は飽きっぽいところです。
なぜ飽きっぽいかというと、一つの物事に対して長時間続けられる、続けると、すぐ、ちょっと飽きてしまうところがあるので、そういうところを直していきたいです。
じゃあ、もう一つ。
少しずつ直していきたいっていう、その少しずつっていうのは、なんか、1年とか2年とかっていう、そういう時間的目標とか、そういうものは持ってますか?
自分のペースでゆっくりと。
そんな急には直せないと思うので、短所となっているのですから!
そうですね。
はい、分かりました。
もう結構でございます。
ありがとうございます。
そんな感じだ。
試験に向かう朝。
おはよう。
おはよう。
なんだかぐっと引き締まった顔。
すでに髪形もばっちり整ってました。
面接に備えて、新しいジャケットまで用意していたんです。
なんか、かっこいいじゃん。
買ったの?
買った。
これを長時間はちょっときつくない?
重っ!何入ってるの?ちょっと見して、見して。
おお、富江。
この日は実技試験も予定されています。
じゃあ、いってまいる。
はい、いってらっしゃい。
ハンカチは?
ない。
常総市がすさまじい豪雨に襲われるまで、あとひとつき半。
家族が家を追われることになるなんて。
向かったのは、佐々木上原、じゃありませんよ。
筆記用具って書いてあったから、やっぱ、メモ帳必要だよね?
必要だよ、持ってきてないの?
忘れた。
うわっ、ちょっと緊張してきた。
じゃあ、隼司、頑張れよ。
うん。
家から2時間半かけてたどりついたのは、都内にある大手美容室チェーン。
試験は5時間に及びました。
お疲れ!
お疲れ。
どうだった?
いやもう、めっちゃ緊張した。
実技なんてもう、ぷるぷる。
きょうの出来を、百点満点でいうと、何点?
60点。
自信はあるの?
え?自信は、ちょっと…。
ちょっとね。
子育てもそろそろ終わろうかというお母ちゃんには、新たな苦労があったんです。
千惠子!
82歳になる、みさ子おばあちゃんの介護。
何?
起き上がりたくても、起き上がれないんだよ。
だって、あっちではさんざん、うろちょろしてたらしいよ。
5年前、アルツハイマー型認知症と診断され、症状が進んでいました。
はい、おやすみなさい。
介護は泊まり込み。
みさ子さん、電気つけないでください、消してください。
寝かしつけてもすぐ起き上がり、家中をはいかい。
何やってるの?
内職やってるの。
内職なんかしなくていいから、1時に、夜中の。
夜中の1時に何やってるの?そんなもん着てどうするの?これ着れないよ。
これ、足あっためるやつ。
夜中に鬼怒川べりにでも迷い込んだらと、気が気ではなかったんです。
全く全部、こっちで今、寝泊まりしてるじゃないですか。
それのなんか、そうしないといけない理由みたいなのは?
だから、夜中はいかいされちゃったらね、それこそ鬼怒川よ、隣。
川ざらいになっちゃうでしょ。
そしたら本当に皆さんに迷惑かけちゃうし、それを思ったら、私がいるくらいはね。
家族というのは、本当にいろんなことが起きていくものですね。
ねぇ。
やっとでも、子育てがさ、一段落したかなっていうときに、今度、おばあちゃんの介護でしょ。
次から次だねぇ。
お母さん、ちょっと休む暇が全くないね。
草野さん、やっぱ介護っていうのは、家族にとってこれ、大変な問題ですよね。
大変ですね。
本当にそのそのエネルギーの必要性を考えると、本来、自分がやるべきことに加えて、それを受け持たなきゃいけないわけですから、肉体的にも精神的にも、その負担っていうのは本当に大きなものになりますよね。
ご自分が参っちゃったらどうするんだろう。
本当。
すごく責任感の強いお母様だから、よりね、またケアもちゃんとしなきゃっていうのが、ストレスになっちゃったら、なんか体心配ですけれどね。
さあでは、VTRの続きにまいりましょう。
末っ子、隼司君の就職活動。
父、晃さんは退職まであと僅か。
そんな中、石田さんチをあの悲劇が襲います。
大好きな町、常総!
去年8月の終わり。
常総市の鬼怒川河川敷は、夏祭りでにぎわっていました。
一家は恒例の花火見物。
智広、自分んちじゃねぇだからな、ほこりまみれの。
はぁ?
掃除機買ったんだけど、使ってないんだって。
鬼怒川のすぐ近くに暮らすみさ子おばあちゃんの家に集まるのが、夏の楽しみだったんです。
空高くはじける大輪の花に見とれた夜から、僅か2週間足らずのことでした。
こちら、茨城県常総市の上空です。
辺り一帯は、大雨によって冠水している様子が分かります。
川も濁流が勢い速く流れている様子が分かります。
あちらには、崩れ落ちてしまった…。
決壊地点から12キロほど下流にある石田家。
この日、偶然にも別の取材で近くにいた今井ディレクターは、カメラマンと共に、慌てて駆けつけました。
おばあちゃん、大丈夫ですか?
ん?
なんか雨、すごいっすね。
雨があったって、行くとこないから、ここへ来た。
はい、はい。
お母さん、すみません、避難はされないんですか?
しません。
もう、ばあちゃん連れて行ったら大変だ。
なんか、すごい。
あれでしょ、情報が入ったのよ。
総合福祉会館、つくば未来総合運動公園、入れるって。
ただね、そこまで行くのが怖い。
水がどこ出てるか分かんないし。
誰か来た?あれ!誰?みさ子さん!やめて、やめて!お願いだから、行かないで。
行かないで、どこにも。
お願いだから行かないで。
はい、はい。
認知症のおばあちゃんは、目を話しているとどこに行くか分かりません。
見てきたいんだ。
見てこないで!それでみんな行方不明になっちゃって大変な思いしてんでしょう。
なんで言うこと…。
お願いだからさぁ、みさ子さん。
行方不明になんのけ?
だめなんだってば、今ね、水が出る、水が出るっていって、避難してくださいって言われてるの。
そうけ。
だけど、みさ子さん、こういう状態だから行けないから、パニックになっちゃうから、ここで待ってるの!
だって、ここからそこぐれぇ歩くのはさ。
ここからそこまでが命取り!
そうですか!
はい!
おばあちゃんを連れて移動するのは、かえって危険。
お母ちゃんは、避難をためらっていました。
お母さん、まじで大丈夫ですか?ここにいて。
うーん、もうしょうがない。
芽衣子帰ってくるし。
それから。
でも動かない。
暗くなってから動くと、余計なことになる。
雨は次第に激しさを増していきます。
何?どうしたの?みさ子さん。
いや、なんでもね。
大丈夫?あっ、お風呂、洗ってないんだけど、お湯しっかり入ってるから、流すようにして上がって。
びちょびちょだ。
市役所から帰った次女の芽衣子さん。
ずぶぬれだ。
なんだい。
いい、いい、お前だけ避難して。
隼司君は友人の家でした。
うん、だから、お水とか、お風呂はもう入れてあるし、芽衣子なんか、びしゃびしゃで帰ってきたから。
まさに同じころ、ニュースに驚いて、石田家に急いでいたのは、石田さんチを取材して19年のベテラン、澤本ディレクター。
ところが。
石田家まであと500メートルという所で、濁流に阻まれ、これ以上は近づけません。
石田さんチに向かったんですけど、ご覧のとおり、周りがもうすでに水が来てしまいまして、どこも身動きが取れない状態になってしまいました。
水の量も増えて、流れも速くなってきていますんで、ちょっとこのまま僕は、このまま様子を見て、あとは、ちょっと連絡を待ちたいと思います。
やばい、やばい、これはやばい。
これやばい。
勢いすごいからな。
あっ、やばい。
周囲の状況を見届けた今井ディレクター。
お母ちゃんたちと避難しなければ。
お母さん、お母さん、やばいです!
なんで?
水、水来てる。
決壊してる?
田んぼのほうまで来てますから。
田んぼ?
はい。
出ましょう。
芽衣子!避難。
避難しまーす。
どこさ、避難すんの?
猫たちはしょうがないな。
どっか行くの?
ちょっと今、水がもうそこまで。
え?みずがもうっちゃ、どこだ?
水がその田んぼまで、おばあちゃん、来てるから。
そこさ、何?
よいしょ。
どうしようかな。
ごはん、切っといたほうがいいかな。
えっと、全部…。
でも、これ、切っていっちゃったら、だめだよね。
よし。
どこさ行くの?
いいから早く出てください。
はい。
靴、履いてください。
靴履く?
靴履いてくださいねー。
どこ行くの?
じゃあ、ブレーカー落とすよ。
猫たち…。
アリー、どうしよ?アリーだけ連れてく?
お母ちゃん、急いで。
アリー、どうしよ?
どこの犬連れてきたの?
トイレ行かなくちゃいけない。
2階連れてく?
お母さん、アリー乗せますよ、この車。
はい。
時刻は午後6時半過ぎでした。
どこ?
とりあえず集落センターまで行ってもらって。
はい。
もうここまで水来てるんだよ。
うわー。
さっき駆け戻った道には、5分足らずで、もう水が押し寄せています。
やばい、急ぎますか。
急ごう。
ちょっと待ってね。
今井ディレクターもアリーを抱えて、あとに続きます。
まずい!
うわぁ、これはどっち?これ、よく歩いていったね。
うん。
これ、出れないかな、もう。
挟まれちゃったんじゃない?これ。
すみません!すみません、あっちって通れました?あっち、通れました?
いやもう、寸断されました、だめです。
だめ?
だめ。
どこ向かいます?これから。
いや、もう家ここなんで。
あー、そういうことか。
うん。
どうする?
ここで、諦めるしかないですね、だったら。
一家が逃れたのは、地区内で一番高い場所にある公民館。
ここ、集落センター、前、何回も来たでしょ。
あれ?わんこ?
わんちゃんはここから上がっちゃだめなんだよ。
あれ、どこのワンコ連れてきたの?うちの?ここの?
はいよ。
ごめんね、これしかないんだ。
今、ごはん作ってたのにね、ごめんね。
これね、あと薬ね。
あとお水がないんだよね。
これ、ごはん持ってきたの?
パン、パン。
これしかないけど、ごめんね。
これだけ食べて。
はい。
食料は、なぜかかじりかけのパン1つ。
周囲の水かさは、ぐんぐん上がってきます。
なんで出てくんのよ!お願いだから入っててよ。
川のように流れてんだから、危ないから!お願い!
うちらが入るまでベンチに座ってたほうがいいんじゃない?
危ない、もう。
水は瞬く間にお母ちゃんたちと取材班が孤立する公民館に達しました。
何が来たの?ありゃりゃりゃりゃ。
こりゃ、しょうがないねぇ。
もしもし、あっ、すみません…。
お母ちゃんは救助を要請しました。
今、だいぶ水が上がってきているんですけど、あとどのくらい上がります?あっ、もうね、車で移動は一切できません。
アルツハイマーの82歳の母親を持ってるので、途中でエンコしちゃったら、もうどうしようもないから、自宅にいたんですけど。
はい、そうです。
あっ、そこ、出てないですか、電話番号。
お知らせします。
お知らせしますって。
ついに床上にまで水が迫った。
そのとき!
あっ、切れた。
午後8時半、停電。
じゃなくって、全部停電だって。
ご利用ください。
おばあちゃん、おばあちゃん、奥…。
向こう、向こう行ったほうがいい。
10分後には、水が床を飲み込み始めます。
水道がだめになっちゃてるのかな?
少しでも高い所へと、公民館の舞台の上へ。
ここから出るの?
アリー、ちょっと移動だ。
水道が出てんのかな?流れてるよ。
もっと上に上がって。
そっちに上がっちゃって。
上がっちゃって。
上がっちゃわないと、足がびしょびしょになるから。
上がって、上がって。
あれ、あっちからも!ここの会社の人いないの?
いない!
水道が出っ放しになってるんだね。
鬼怒川のね。
鬼怒川。
鬼怒川の?
猫が。
猫が…。
午後9時半、舞台の水没は時間の問題でした。
救助隊が到着する気配もありません。
しかたなく、今度は全員でちゅう房へ。
ちゅう房のたぶん、台の上に乗っちゃったほうがいいと思う。
大丈夫だ、大丈夫。
いいから、いいから。
ここに手をやってて。
ここに、危ないから。
そうそうそう、そうしないと、危ない、危ない。
ここさ、腰掛けな?ここ。
いいから、いいから。
おばあちゃん、ここに手やっててよ。
手、やってて、危ないから。
ここに。
危ないからね。
そう。
ここ、危なくないですか?ちょっと。
ここまで来ない、来るかな。
あそこの家までのルートが、もうしんどくない?
そう、無理だ。
下りらんないよ。
道が分からないからさぁ、たぶん俺らは行けても。
水没した車から鳴りだすクラクションは、断末魔の悲鳴でした。
洪水が迫る家から脱出した石田さんチのお母ちゃんたち。
避難した公民館にも水があふれ、万事休す。
と、そのときです。
こっちです!
午後10時40分。
ボートの音、しません?
そうかも。
こっち!こっちです、助けて!
今井ディレクターが、人生で助けて!と真剣に叫んだのは、後にも先にも、これが初めてです。
そこ、あれかな?集落センター?
ここ、集落センターです。
はい、OK、OK。
そこには何人います?
僕たち含めて5人です、5人!
5人ね。
停電の闇の中、救助に来てくれたのは、消防隊員の方々でした。
ここは深い?
ここ、来れます、大丈夫です。
じゃあ、そこ行くべ。
あれ、さっき電話聞いたら、なんだ、だいぶ上がってきたなんて聞いたんだけども、ここだった?
ここです、ここです。
今、もっと増えてるんだ?これ。
そうですね。
じゃあ、ちょっと誰だっけ?おばあさん、いんだっけ?
おばあちゃんいます。
おばあちゃんに、ちょっとライフジャケットを、これから。
これ着ろって?
おばあちゃんに、あとお母さん。
せーの、よっ。
ちょっと起きてちょうだいよ。
せーの、よいしょ。
大丈夫ですか?
はい、すみません。
私が後ろに入ります。
どこさ行くの?
安全な場所に行きましょう。
はい。
じゃあ、1回いいですか。
私、後ろに入りますよ。
大丈夫だからね。
はい、大丈夫、降りるよ。
だめ、降りたら。
降りたら危ないから。
大丈夫、歩ける。
だめ!歩けない、みさ子さん!
おばあちゃん、こうやって肩に乗せて。
肩に乗せて、そうそうそうそう。
腰持つぞ、腰持つぞ。
いくぞ。
1、2、3。
お願いしまーす。
先行って。
足元照らしたほうがいい。
危ない。
頑張ってね。
危ない。
よいしょ!
そのままおばあちゃん、座るよ、ここに。
おばあちゃん、大丈夫?
いたたたた。
おばあちゃん、頑張って。
背中痛い。
我慢してな、我慢して。
どこいてえの?
足、足つける?足いてぇの?
中に座って。
すみませんね、アルツハイマーなもんですから、わがままが…。
だから結局、行きたくなかったんですけど、こういうことになってすみません。
大丈夫じゃない、誰か引っ張って、すみません。
よいしょ。
すみません。
カメラ撮るのもあるけど、前照らしてね。
前ね?
前を左とか右とか、障害物を照らして。
分かりました。
OKか?はい、OK。
OKです、このまままっすぐOKです。
カメラマンのライトが照らし出したのは、変わり果てた町の姿。
ボートに乗船。
これからそちらに向かいます。
このまま帰ります、どうぞ。
電柱の左通ってください。
上空にはヘリ。
ほっとしていた気持ちを、爆音が蹴散らします。
ビニールハウスある?
いえいえ。
わかんね?
ビニールハウスはあったの、昔。
でも、もう左。
こっち、左側ないですか?
ない、あっ、左ある!
障害物を避けないと、ボートが座礁してしまうおそれがありました。
左行って。
ちょっとさっきの話、お母さん、なんか見たことあるんだけど。
だから石田家だってば。
あっ、だからか。
なーんだ、ごめんなさい。
なーんか見たことあんな、そうかそうか。
なんだ?見たことあるなと思ったのよ、俺。
お母さん見たとき、あれなんだ、どっかで顔、見たことあんなぁと思って、娘さん見ても、なんだ、見たことあんなと思ったのよ。
信号がすごい低い。
そうですね。
なんだか標識あり。
やがて、見えてきた救助本部。
自衛隊の姿もあります。
自衛隊だって、息子が自衛隊にいるからね。
あー、そうなんだ。
9人子どもいるから。
あー、そうか。
これ、大家族の石田家さん。
あー!
石田さん。
見たことあるなと思ったら。
見たことある。
お母さん、見たことあっぺ。
見たことあります。
ともあれ、無事助かった。
どうもありがとうございます。
石田さんだ!足元気をつけて。
そのまま脇に。
すみません。
またおばあちゃん、おばあちゃん、頑張って。
足元気をつけてください。
ここはいいんだ。
さっきまですごかったから。
すみません、ありがとうございます。
そのまままっすぐ進んでくださいね。
おばあちゃん、まっすぐ歩けます?歩けない?歩けます?おばあちゃん。
むちゃくちゃ。
ありがとうございました。
すみません、ありがとうございました!
お父ちゃんは、智広君のうちにいることも分かりました。
ここから避難所へは、女性と子ども、老人が優先。
けれど、
上流からあの堤防、決壊しまして、そのまま画面右奥、方角で言いますと南のほうにずーっと水が流れていきました。
そして堤防が今、このように、上空から見てみますと、かなりの勢いでえぐられているのが分かります。
前夜、洪水の中から救出されたお母ちゃんたち。
スタッフは、別の避難所で一夜を過ごしました。
お父ちゃんは四男、智広君の所です。
被害が及んでいないその家に駆けつけてみると。
ちょうどお父ちゃんが、芽衣子さんと連絡を取り合っていました。
だから避難所がいいか、ちんげのもりがいいか、どっちがいいか。
掃除しても手遅れな状態。
今、状況的には迎えに行くのはちょっと難しそうな感じなんですか?
いや、迎えに行くんだったら、今しかねぇだろうな。
だから、3人いるだろ。
軽だと運転手1人で、3人乗っけて、だから孝之やって。
孝之君一家も到着。
まずはお母ちゃんたちをここに連れてこようと決まりました。
洋子さん。
もう、人工の毛クズだったらいいんだけども。
生の毛クズがごろごろしてるんだよ。
俺、トイレも拭いたけども。
ぜんっぜんとれねえんだよ。
取れないですね。
だめだよ、そんな汚い所にいちゃ。
これはまずいんじゃない?ころころやらないと。
てかさ、ケーブルとかもぐちゃぐちゃでさ。
むかつくわ、本当に。
突然の事態に、智広君も困惑気味。
受け入れのために、大掃除が始まります。
まあ、こんなことでもないと、きれいにならないか。
掃除のメドが立ったところで、お父ちゃんと孝之君が避難所へ。
乗りきれないので、二手に分かれて向かいました。
孝之。
家族で暮らしていたあの家には、とても近づけない状況でした。
一夜が明けた町は、まだ騒然としています。
行けそうですね、お父さん。
これ、下降りちゃだめだよ、まっすぐね。
分かった。
鬼怒川の土手だけは、通行可能なものの、住宅地の道は、あちこちで通行止め。
どこを走ったら避難所にたどりつけるか、定かではありませんでした。
下降りちゃだめね。
それでも。
あれが小学校だよ。
お母ちゃんたちの避難先は、この小学校。
だけど、一体どこにいるんだろう。
すみません、避難している人って、リストかなんか?
もしかして石田さん?
はい。
3階にいます。
はい。
よかった、顔が割れてて。
ここでも、石田家はこの辺りでは有名です。
いました。
お母ちゃん。
なんだ、大丈夫じゃん、なじんでる。
いいじゃん。
さすがに疲労困ぱい。
今、ばあちゃんのトイレに付き添ってる。
深夜、避難所に逃れてからも、おばあちゃん、なかなか眠ってくれなかったようです。
過酷な一夜を過ごしたのは、この教室でした。
改めて知る、水害の恐ろしさ。
お母さんたちのスペース、どこだったんですか?
ここの所。
ここで3人で寝てたんですか?
そう。
お世話さまでした。
お世話さまです。
すぐに移動できる場所がある。
それだけでも石田さんチは恵まれていました。
よかった、アリーも元気そうだ。
ともあれ、ゆっくり休まないとね。
大丈夫だった?
お世話になります。
近くに頼れる家族がいるのは、ありがたいこと。
智広君のおかげで、落ち着いて眠ることができそうです。
お前、もう横になれ。
寝たらもう、起きれない。
じゃあ、起きるな。
お風呂入りたい。
お風呂、入れば。
うーん。
すっげぇ、風呂ぴかぴかになってるよ。
すっげぇきれいになってるよ。
これ、洋子さんがやったんだ、きっと。
ぎょっ!すっげぇ、この浴槽もカビだらけだったんだよね。
すっげぇ、きれいになってる。
孝之君の妻、洋子さんも大活躍でした。
疲れますよね。
きのうの今ごろは、迫り来る水の中を、って、何?孝之君、何がそんなにおかしいの?そういえば、ベテラン、澤本ディレクター。
救助のために駆けつけたものの、結局、石田家にはたどりつけませんでした。
一生懸命助けに行くっていう気持ちはあって来たんだけど、結果、何もできず、車おじゃんにした。
洋子さん、お掃除の次はお弁当の買い出しまで。
あと、ましまし弁当ばっかり。
気が利きますね。
俺、会社行くよ。
こんな所で寝てられるかよ。
俺、会社で仕事するよ、俺。
夜?何時から?
10時から入って、朝の7時ごろに帰ってくるよ。
みんな食えよ、もう。
なんだか、ちょっとだけ、大家族、石田家の雰囲気が戻りました。
一体、家はどうなっているのか。
翌日、わが家を目指したお父ちゃんは、憂うつでした。
あー、家に行きたくない。
うんざりするで。
あら、ここの床屋さんもつかっちゃったよ。
家まであと1.5キロという所で、通行止め。
水は当分、引きそうにありません。
ここまでですね。
せめて遠くからでも見えないか。
大丈夫?うち。
だめ。
だめ?
うん、もうたっぷりつかっちゃって。
使いものにならないよ、きっと。
ありゃ、2階までつかってるかもしれないな。
水没した町には、まだ取り残されている人もいました。
いやー、しかしこれは、本当にこのすごい瞬間に遭遇しましたね。
そうですね。
ニュースで見ていた映像とは、全く別の角度からの状況ですね。
実際にあの現場に今井ディレクターがいたということなんですけども。
あ、今井ディレクター、きょうもスタジオにいらっしゃいます。
ご苦労さまでした。
実際どうだったんですか?
音もなく、じわじわとこう、水が上がってくる感じだったんですね。
で、約4時間かけて、あの高さまで、結局水が上がってきまして。
一番怖かったのは、停電していたんですけど、たまたま私たちがロケ用の照明を持っていたので、もしあれがなければ、停電で真っ暗闇の中だったので、それはもう、とても恐怖だった。
そうだね。
本当に九死に一生と言っていい、そういった瞬間だったと思うんですけど。
もう、ライトも消えてしまう、明かりも消えてしまう、何もかも、もう伝達の手段がどんどんなくなっていくというか。
1時間置きに水かさがもう、すごかったですね。
その状況でも、ちゃんとお母さんの食料と薬を持っていったお母さんって、すごいなと思いました。
お母さんがすごく冷静で、電気は切ったほうがいいかなとか、おばあちゃんのを。
ごはんのスイッチね、炊いたばっかりだけどとか。
あんな…。
荷物もちゃんと持って、毛布とかも持って、全部準備してから出ていってる。
あのお母さん、落ち着いてるね。
そうですね。
逃げるときってやっぱりもう、命の危機もあるかもしれない。
でも、ずっと長年、住んでたうちを手放していく。
その寂しさのほうが結構強かったと思うんですよね。
それを放していかなければいけないっていうね。
本当にみんな無事でよかったけども。
ただ、これで終わりっていうわけではありませんからね。
そうなんだよね。
実際、家族がみんな一つになれるのか。
集まれるのかっていうことですよね。
残してきた家は、一体どうなってしまっているのかも、まだ分からない状況ですから。
そうですよ、…。
では、VTRの続きをご覧いただきます。
まだとてもわが家にはたどりつけず、お父ちゃんが向かったのは、みさ子おばあちゃんの家でした。
大丈夫ですよ、これ。
あれ、入ってないかな。
鬼怒川の間近なのに、意外にも被害が少なそう。
この庭、きったねぇな、これ。
どっこもかしこも。
ここまでだな、床下っていうか。
床下ぎりぎりまで浸水被害を免れていました。
一つでもいい報告があるのは救いです。
はー、ただいま。
ばあさんの家はね、大丈夫だった。
え?大丈夫って意味が分からない。
1階もつかってなかった?
なんにもつかってない。
ばあちゃんの所?
床下もない。
うちには行けなかった?
えっ?
うちには行けなかった?
行けない。
うちはだめだ。
とにかくね、水はもう出ないから。
電気も何も止まって、見ても、メーターも見ても、もう止まってるから。
だから住めはしないんだよね。
電気、ガス、水道何もないから。
ばあちゃんの所はね。
全部きれい。
庭は超汚い。
庭はしょうがないよね。
この混乱の中、夜もはいかいが収まらないおばあちゃん。
ひとまず、隣町の特別養護老人ホームで預かってもらうことが決まりました。
ここは初めて来たよ。
うん、私も初めて。
石田です。
さとうみさ子なんですけど。
先ほどはどうも。
ふだんなら入居待ちが当たり前ですが、災害時の緊急措置。
同じような立場の方も、少なくなかったんです。
そしてお父ちゃんは、ついにわが家へ。
けれどそこには、
堤防の決壊から4日。
ようやく水が引き始めました。
家の周囲には洪水の痕跡が。
ここまで上がってきたの。
なんらかしらの油がすごい。
芽衣子さんが心配していたのは、残してきた3匹の猫。
やめよう、こっちじゃない、向こうから入らないと。
正面からはまだ近寄れないため、お隣に断って、庭のほうから入ります。
あー。
被っちまったか。
そこはお父ちゃんの書斎兼隠れがのすぐ裏手。
ばか、こんなもの置いて。
濁流をかぶって、庭は白く汚れていました。
いてえ!
ちくちく刺さるのは、ばらのとげです。
だからあの、ばばぁ、こうなったときに大変だろつって、だから絶対にもうこんなの置かせねぇ。
くっせぇ。
これ、臭いがすごいな。
汚水混じりの水が残していった、すさまじい悪臭。
遠い田んぼのわらが、玄関先まで押し寄せていました。
うわっ。
まだ、これだ。
中をのぞくのが恐ろしい。
うわっ、やだ、くせぇ。
生きてるわ。
呼んでみて。
あー、俺の靴…。
やべぇ。
いた?
猫の鳴き声が聞こえました。
床上70センチを超えた水。
きっと2階に逃げていたんでしょう。
リビングも目を覆いたくなるような惨状だ。
子猫のニーナちゃん。
ニーナ、はい。
ほら、ニーナ。
さぞかし、心細かったんじゃなかろうか。
あー、よかった。
ほかの2匹も無事でした。
それにしてもと、思わずにはいられません。
お父ちゃんは、3週間後に勤めてきた会社を退職する予定。
現実はあまりにも残酷でした。
きょう、お父さん、正直言うと、もう61。
どうですか?しんどい?大変?
61で、よし、これからあっち方向からっつって考えてたのに、はぁー、さいころでもう、人生ゲームでさいころこうやって、えっ?振り出しに戻る?ここまで来てるのに?みたいな感じだよ。
もう…。
嫌になっちゃったよ。
なんでさいころの目がここに出なきゃいけない。
お前、テーブル揺すったろ?みたいな感じ。
本当に嫌になっちゃうよ。
もうせっかく切り替えようとしてんのにね、そこに行かすなよ。
お父さんのことばの中に、振り出しに戻るっていうことばがあったけども、これ、重いね。
そうですね。
ここまで試練を与え続けるのかって。
誰もいなくならなかったんだもの。
猫もね。
猫も、アリーも。
だから、一個一個片づけて、人生、生きてるといろいろあるかもしれませんけど、みんなの力があるんだから、ものは考えようで、振り出しに戻ったっていうのは、ねっ、おうちきれいにするってことにもなるかもしれないし。
思い出は思い出で、ならないと。
だって、もう戻らないんですもんね。
そうなんですよ。
ここからもう一度、結束を高めてほしい、そのきっかけになったらいいなぁって願います。
そうだね。
あのとき、ああいうことになったけれども、あのことがかえって、そのあとよくなったんだっていうことにつながっていくといいですね。
自分のためじゃなくて、みんなのためにって、家族が一つになる瞬間でもあるよね。
そうですね。
でも、ちょっとつらかったと思うんですけど、おばあさんを施設に預けなくちゃいけないっていうとき。
やっぱり、離したくなかったと思うんですよ。
でも、たぶんあれ、ずっといたら、お母さんの心がたぶん、パンクしちゃったかもしれない。
でも、自分の家族から1人放すっていうのは、すごくつらかったんじゃないかな。
そうだねぇ。
血のつながった家族だけじゃなくって、長男の奥さんがまた、お風呂をぴかぴかにするとか、やっぱすごく家族って、結婚して家族になるって、すごいやっぱ、重みがあるというか、なんかすごい深いものを感じます。
実家のピンチに、子どもたちも帰ってきました。
家族の力と、お父ちゃんの決断。
退職まで3週間を切ったというのに、お父ちゃん、会社どころではありません。
はぁ、もう、もう3日で、もう飽きちゃって、普通の生活に戻りたい。
今週いっぱいはだめなんだろうけどな。
本当、普通の生活戻りたいよ…。
応援に来てくれたのは、去年、就職した元基君。
お前、まだ続いてるんだ。
まだ続いてるよ。
頑張ってんな。
智広君の部屋にも援軍がいます。
ノックすれば開けてもいいっていう許可にはならないんだぞ。
智広君、少々いらだち気味。
六男の有志君も、実家のピンチに仕事を休んでくれました。
取材班も加わって、一家総出の後片づけ。
リビングの家具は、すべてもう使い物になりません。
コンセント刺さってるとこ見つけたら…。
あーあ、あれも全部だめだ。
うわ、くっせ、なんだこれ、なんのやつ?これ、あれじゃん、温泉玉子的な匂いがするじゃん、人間って現金だよね。
こういうのはさ、温泉街でこういうにおいだと、ああ、硫黄のにおいなんだって。
じゃあ、温泉街だと思えばいいじゃん。
こういうのをさ、なんとか棒っつうのは、庭に何本もあるんだよな、くそ、ばばぁ、くっそ!
高枝切りばさみ。
これ、また出てきた、これ。
本当にばばぁのけつに刺してやる。
掃除もしないのに、こんなの買ってくるんで。
気持ちだけなんだよ、こうやって。
洗面台とかをね、きれいにする。
1回も使ったことないって言うと、1回はあるわよって言うんだよ。
信じられない人でしょ。
誰?これ。
お母さんがほれ込んだ男。
そう、このときだけね。
お母さん、なんですか?それ。
へその緒?
あら、隼司君のへその尾。
隼司。
部屋には、家族の記憶が眠っていました。
隼司の通知票。
とことん3。
2が入ってるせいでもう、中の下って言ってるようなもんだよね、これ。
これ、元基君だってよ、1年1組とか、これ。
通い続けて19年。
スタッフも初めて聴くピアノの音。
音、出るんだ。
よみがえるのは、さまざまな場面です。
母から娘へ、石田家の味は、キッチンで受け継がれました。
リビングは、石田さんチで起きたさまざまなドラマの舞台。
そこには、何度も何度も、誕生日のさざめきがあふれたものです。
ハッピーバースデー・ディア・智広。
泥にまみれてしまったお風呂場に、子どもたちがひしめき合っていた時代がありました。
はい、出ます。
兄弟の絆は、こんなところで深まったのかもしれません。
お母さん!
そして玄関。
いつもドアを開ければ、おうちの匂いに、ほっとしてきた場所です。
中古の建て売り住宅を買って、27年。
いろんなものが洪水に奪われちゃった。
懐かしい匂いは、もう戻りません。
と、そこに、金髪をなびかせて、末っ子、隼司君が現れた。
引き連れていたのは、あのカラオケ仲間です。
ガテン系の友人たちは、目覚ましい働きを見せてくれました。
隼司君、頼もしいじゃないの。
すげぇ、速いんだよ。
速いわ。
あれ、入る隙がないの。
いくつ?
はい?
年いくつ?
20歳です。
だめだ、力が抜けてしまった。
そっか、隼司、20歳か?
まだ19でしょ。
よし、冷蔵庫持ってこい!
お前が行けよ。
1回、持ち上げて、そっち。
それ、さわんなよ。
3、2、1。
みんな力仕事はお手のもの。
これ、カーブ決められっか?
カーブ決められない。
そこで1回立てたほうがいいよ。
カーブ決められなきゃ、蹴り出すっきゃねぇべ。
いいよ、いいよ。
いいところ。
くっせぇ。
せーの!
おりゃぁ!
おっもい!
演奏を聴くことすらなかったピアノよ、さようなら。
お父ちゃんのマッサージチェアよ、さようなら。
お前ら、勢いがすげぇんだよな。
おっと、迷彩柄の君、それはごみじゃないからね。
そっとしといてね。
これ、分かる?
隼司の?これじゃないの?隼司。
俺、それいないよ。
うそ。
それは俺いない。
隼司、これでしょ。
ちげぇよ、後ろで立ってる。
ちっちぇー。
ちっちぇー。
相当でこぼこになってるからな。
本当に当分、ここ住めなくね?
住めないよ。
2階もだめかな?
2階はいられるけど、下の臭いが上がってくるんじゃない?
上がってくるよね。
みんな、土足上等みたいな感じで。
隼司はね、くそがきなんだけどね、頑張ってるね。
いい方向に考えないといけないんじゃない。
やっと、部屋がきれいになるって、でも、どうするんだろうね?潰すのかね。
一時は手がつけられないほどすさんでいた隼司君。
ひょっとして、誰よりもおうちが好きだったのかな。
ご覧いただいたように、今回の水害で、冷蔵庫やピアノ、そしてお父さんがいつも座ってらっしゃったマッサージチェアも、1階に置かれていたものは、ほぼすべて水没してしまって、使い物にならない状態になってしまいました。
そんな中でも、しっかりと残っている思い出の品もあるということで、今回、特別にお借りしてまいりました。
石田さんチの思い出の品々です。
うわー、貴重なものですね、これはね。
そうですねー。
でも本当に、ああ、その日のこう、水害の、なんて言うんですか。
泥がね。
泥ですかね?
泥がかぶってしまってるんですね。
このように、表彰状も、こんなふうにぼろぼろにはなってしまったんですけど、確かに、隼司君のお名前が書かれています。
隼司君、大活躍してたね。
はい、頼もしかったですね。
仲間を連れてきて。
仲間を連れてきてね、みんなここ一番はやってくれるっていうね。
本当、家に帰ってこなかった隼司君が、率先してお片づけをすると。
そうだよ。
外の掃除だって、一番帰ってくるのが遅かった彼が、最初に帰ってきて掃除してるんだからね。
今後の展望が立たぬまま、智広君の家は、一家の宿泊施設となっていました。
プライベートなんてあったもんじゃない。
お前のすね毛、うちの後輩にそっくりだぞ、この、お前のすね毛の、飼ってる猫に毛繕いされてる。
光熱費は5倍。
智広君の不満も、無理はありません。
何、この人口密度。
俺の1人暮らしの部屋中が、すごいことになってるよ。
助けて。
すげぇことになってる、息苦しいだろ。
来月あたり、俺、別のアパート借りてるかもしれないぞ。
だから親父、さっさとあそこの温泉付きシニアマンション買えよ。
全然自分が居候っていうところをね、全くもって気にしてないよ。
知りませんっつうの。
だって、全然普通の生活してる。
智広としては、一刻も早く出ていってほしい?
二次被害だよ。
立って寝ることになるよ、そのうち。
集まり過ぎだって。
お父ちゃんはお父ちゃんで、やりきれない思いを募らせていました。
もうありゃ、終わりだよ、ありゃ、あの家。
これ、どう始末つけるのかなっていって。
どうするんだろな。
俺、もうわかんねぇんだよ。
だから、まあ、すげぇ悔しいんだよ、俺。
だから飲ませろよ。
隼司はね、ふだんはなんにも役に立たないけども、こういうときに、ほんと役に立つ。
すばらしい!
だけど今まで迷惑かけた分、役にたたねぇと、ここで役に立たないと、本当にごくつぶしだよね。
でも智広、ありがとな。
お前のおかげでね、あっはははは、お前のおかげでね、最高だよ。
智広、どうしようかね?あの家。
ぶよぶよだよ。
まあ、今すぐ住めってわけじゃないから、もうちょっと待ってれば?なんか進展あるかもよ。
そう、隼司、間違ってる?俺。
隼司じゃねぇよ。
隼司じゃねぇ、有志、ああ、智広!智広、あっ、俺も、もう脳みそ、脳みそごっちゃ混ぜになってきた。
智広!俺もうだめ!みんな心配してくれてんだ。
もう、智広、俺は諦めた…。
ねぇ、智広。
でも、ちょっと飲み過ぎじゃありません?19年前、取材を始めて間もないころのお父ちゃん。
家を買って8年目でした。
住宅ローンに教育費、そりゃもう、懸命に働いてましたね。
コンピューターに背を向けて、定規とボールペンの日々がありました。
でも、世のすう勢には逆らえず、ついにキーボードと格闘。
外資系化粧品会社の営業マンとして、日本中を飛び回り、何日も家に帰れないことがざらでした。
そんな出張先で、あの名言が生まれたんです。
パンツは表と裏、2日間はいて、頑張るんですよ!臭いときはコロン振って、頑張るんですよ!
給料日には現金を手渡し。
やりくり上手のお母ちゃんが、支払い先を振り分けると、手元に残るのは、いつもぎりぎりでした。
だけど、夫婦はいつも笑顔。
苦労した分、未来はきっと明るいと信じてた。
内助の功も手伝って、モーレツ社員は、営業本部長へ、異例の出世を果たしたのです。
なぜ、ここに来て、家が片づくにつれ、悔しさが増してきます。
おや?表札も流されてたんだ。
表札、そこにぶら下げてて、そこに流れるっていうことは、神様は、もう流れなさいって。
タイヤもあるぜ。
どうなることやらだけど、まずは一つずつ、一つずつ片づけて。
お母ちゃんだって、悔しさは同じ。
なのに、愚痴はこぼしませんでした。
自分が一緒になって運命を嘆き悲しんでも始まらない。
あっ。
書斎の小屋で無傷だったことを喜んだのは、定年の日に会社から贈られた感謝状でした。
そう、お父ちゃんはこう見えて、ロマンチストなんだから。
あなたはめげることなく、定年まで無事に勤め上げ、すばらしい功績をちょびっとだけ上げました。
これもらいたくて、頑張ってた。
もうねぇ、58になったら、もう最後までって、これが流されたんじゃ、まずいなと思ったら、流されてなかったで。
契約満了で退職するまで、あと2週間足らず。
38年間勤め上げた会社を離れ、人生の第2章に踏み出そうとする間際です。
寂しさもあるのかなぁ。
と、思ったら。
寂しいじゃないよ。
悔しいだよ。
ことばが違う。
ほとんど水に浸ったのは、半分以上、ごみだけど、でも本当、悔しいよな。
それ以外、あとなんにも考えられない。
ご苦労さん。
これをばねにしてって、ばねにできない。
ああ、よし、やるぞ!ってならない、そんな気持ち。
やっぱり、当事者にならないと分かんないよな。
やっぱりな。
お父ちゃんのいらだちは、もう限界を超えています。
やり場のない怒りをぶつける先は、お母ちゃんしかありませんでした。
なんでそういう言い訳すんだよ、ばかやろう。
再就職の準備もできず、秋からの収入はゼロ。
深酒のお父ちゃんは、いらだちをお母ちゃんにぶつけるしかありませんでした。
隼司も後半、もうない。
どうする?ましてやこんな状況だ、どうする?どうしたらいい?どうしたらいい?アイデアを教えてくれ。
どうしたらいい?俺ももう、まさかこんな水没して、どうのこうのっていうのは、何も考えてない。
世の中ってね、変わってんの!
ああ、そう。
そう。
じゃあ、その気持ちって分かる?
分かるわよ、だって。
わからねぇだろうな!
なんで!
だから、俺はもうすべて終わりなんだよ。
あなたのミッションっていって、目標は新規を作ることですっていって、1件しかできなかった。
1件しか…。
聞いてんの?
うん。
1件しかできないって言ったときに、会社なんて言ったと思う?延長?とっても難しいですって言ったから。
あぁそう、じゃあ、俺辞めますって。
どうか一つっていうのは、俺はもう嫌なんだ。
頭下げるの。
これ以上下げられるかって。
下げらんなかったんだよ、俺は。
だからもう終わりなんだよ。
で、終わったこのときに、なんで洪水が起きるんだかね。
これって、お前と別れろって、あの値札、なんだ、あの、荷札じゃねぇや、札が、俺の車のところに転がってたの。
あ、これ別れろってことかなって、別れようか?ねぇ、別れようか?もう俺はどうでもいいんだよ、だめだわ、こんなのもう。
お母ちゃん、じっと黙って聞いていた。
反論すれば、逆効果だと知ってます。
意味が分かんない。
終わりだよ、もう今月で。
9月で終わりなのに、これ、やったら、俺がせめてやれるのは、特休っていって、特別休暇もらって、有休を少しでも買い上げてもらってっていうだけだよ。
お前、サラリーマンの苦しさっていうのをしらねぇだろう。
のほほんとやってるかもしれないけど。
はいはい、あなたはご立派です。
ああ、もちろんだよ!おめえは。
飛び出したのは、今井ディレクター。
うるせぇよ。
智広、俺、間違ってる?
ああ、間違ってる、間違ってる。
だよな、こいつ。
俺は、ねえ、間違ってるんだよな。
うん。
じゃあ、どうしたらいい?
寝とけって。
智広君の言うとおり、とっとと眠って、酔いを覚まさなきゃ。
解決策。
お前だったら…。
ちょっと、何見てるんだよ。
ちょっと。
ねぇ。
どうしたらいい?もうねぇ、このねぇ、非常時でね、会話してもね、絶対に交わってねぇんだよ。
家はぐちゃぐちゃ。
しいては別れようなんてことばまで出てきてしまってますけど、でも、なんでしょう、そんなつもりもないのに、酒の勢いを借りてあんなことを言っちゃってるのかな?っていうのを、草野さん。
本当に、やるせなさを、せっかく再出発をしようと思っていたところで、こんな、超非常時に追い込まれてしまった。
そのやるせなさを、自分のことばでぼやくだけぼやいて、ぶつけて出すと。
それをまあ、奥さんは分かってるから、全部そのまま受けてね。
奥さんだからこそ、見せられる、唯一の姿というか。
あんなに弱みを言えるお父さんって、俺、いないと思うんだよね。
やっぱり、うそをついて父親を演じてるところっていうのは、僕らもあるんですよ。
本来なら、もううわぁってなっちゃう、崩れ落ちそうなところもいっぱいあるんだけど、大丈夫、大丈夫って、実はそれは、うそをついてる。
でも、もしかしたらうそをついてることは、家族は分かってるのかもしれない。
でも、こうやって正直に、俺はだめだ!じゃあ、なんか方法あんのかよ。
だから本当に、言ってることと真反対の気持ちなんですよね。
大きな意味では、やっぱり、奥様に対する甘えですね。
聞いてほしいっていう自分の思いをっていう、それだと思います。
ですね。
ただ、奥さんだって疲れてるんだから、それはお互いさま、結婚って、やっぱりお互いさまじゃないですか。
だからちょっと、お酒の量を減らして、やっぱ寝てろっていう…。
智広君がまた、冷静だったね。
智広君も、自分の部屋があるのに、あそこの場所にいて、2人を見守ってるっていうのも、やっぱり家族愛だなって思いました。
だから、家族いるからいいんだよね。
売りことばに買いことば。
夫婦の思いはすれ違います。
今や器だけになってしまった石田さんチ。
アリーの姿もありません。
お母ちゃんは、無事だった荷物を運び出し、みさ子おばあちゃんの家にお引っ越しです。
もんくたらたらだったお父ちゃんも、立ち直りつつある様子。
市役所行ったら、水もらえるんじゃない?
石灰はもらいました?
もらった。
どうぞ2つって、いや、1つでいいっつって。
2つもいらないよ。
夫婦げんかなんて、一晩眠れば、こんなもんだ。
みさ子さんの家に住むのは、お母ちゃんと芽衣子さん、それに隼司君。
お父ちゃんは、引き続き智広君のもとに居候です。
でも、ダメージを受けたわが家を、どうするんでしょう。
残されたのが、だから、あそこを建て替えて住むのか、壊すわけ、全部壊すわけじゃない、それで住むのか、それとも、全部引き払うのか。
最終的にはそこの2つ、どっちか。
だからそのために、こっち住んで、あっち住んでっていう。
俺ももう会社辞めるから、
物置にしていた2階を掃除しないと。
掃除機の裏表にこだわらないのは、石田さんチの伝統か?
おい!
はーい!あら、私を呼んだの?ああ、立ち上がるの嫌。
ついでだから、これ、洗いに持っていこう。
声の主は、きのう、1階に泊まった隼司君です。
ごはん?痛い痛い。
よっこいしょ。
ばあちゃんち、こえーんだけど。
なんで?
頭の上に人形いるしさ、俺寝たの、3時過ぎたよ、怖くて。
何それ?いい年した人が。
頭の上に人形?
隼司、どうだった?きのう。
怖かった。
お人形こっち持ってきちゃっとけばよかったでしょ?
これか。
大事なお人形さんなの。
どんだけこえーんだよ。
どこが怖いのよ。
雨降ったらもっとすごいよ、ここ。
ばたばたばたばた。
ふじさんの葬儀とかいって、あんなの見せられたら寝れねえよ。
親戚だよ、隼司。
まじで。
こっちに背を向けたらもうあれがあって、怖いじゃん。
こっち向いたら、あのばあさんも死んでるんだもん、こえーじゃん。
3時くらいまで寝れなかったから、本当に。
しまいには電気つけて寝てやったよ。
見た目のわりには弱いな、隼司。
お前さ、お化けには、何やってもかてねぇからな、本当に。
こいつがまじこえーよ、本当に。
あぶねぇよ、そいつ。
でさあ、こっち向かないようにあっち向くじゃん。
あっちにも人形あるの知ってる?白い人形。
あれがこえーんだよ、本当に。
あれ怖くね?まじで。
特にあれがこえーな、あれ。
あれ怖くね?
どれ?
あの変な、おだ…、変なやつ、線香あげるやつ。
あっ、仏壇?仏壇はどこの家にもあるよ。
あんなのと一緒に寝れねぇよ。
意外に怖がりの隼司君。
わが家を恋しがっていました。
今、実家がああいう感じになっちゃったわけじゃない。
うん。
どう感じるの?
え?最初壊すって言ってたじゃん。
壊すって言ってたよね。
言ってた。
だから、はー?って思った。
やっぱ家なくなるのはちょっと寂しい?
ばあちゃんちに住むんだったら、嫌だな。
あっちのほうがよくね?俺はね、あっちのほうがいい。
実家のよさっていうか、なんかあるの?
よさ、だからそういうのはよく分かんないけど、あそこがいい。
遊び終わったあとも、あそこの道を通って、あそこの家に帰りたい。
そこら辺の道を通ってここに帰りたくはない。
詩人だ。
庭と1階が全滅した石田さんチ。
お父ちゃんの切なさが、どれほどのものか。
とても想像はできませんでした。
洪水から3週間。
お父ちゃんが迎えた退職の日。
おはようございます。
おはようございます。
いよいよ最後。
最後って言うなよ。
死ぬみたいじゃん。
会社が最後。
しかし、その不精ひげは?
なんかね、水害あったからね、なんか気分が乗らない。
天気はすっきりしてるけども、気分が乗らない。
人生の半分以上をささげた会社とも、きょうでお別れ。
デスク周りには、もう何もありません。
誰かが出ていけば、誰かが入ってくる。
それが組織です。
全部、ねっ?ね?入ってたりして。
あれ?入ってんじゃん。
四十数年前か、四十数年前、山形の田舎の偏差値の一番低い学校を出て、英語もなんにもしゃべれないのが、ここまで、38年でここまで来た。
もう十分でしょ。
みんな大卒だよ、ここ。
英語ぺらぺら。
未練はないんだよ、意外と。
すっきりしてるの。
肩の荷が降りたっていうかね。
うん。
こっちか?
夜、社内で開かれたささやかな送別会。
どこへ行きゃいいの?
本日、石田さんの最終日ということになってしまいましたので…。
まずは副社長のあいさつです。
乾杯!
ありがとう!
家とは別人のお父ちゃん。
19年、ずっと取材してきた私たちも、ちょっぴり胸が熱くなりました。
直面している家の問題なんか、おくびにも出さず、堂々としてるんだもの。
私がここ入った当時、6人目で、家買わなきゃって言ってた、住むとこねえって言って。
すごい。
あのころは。
広島から帰ってきたばっかりで。
東京はないんだよ。
子どもがいっぱいい過ぎて、住まわせてもらえないって言ってたんだもんね。
お疲れさまです。
寂しい。
またゴルフ行こう。
そうだね。
寂しいね。
寂しい。
寂しいよ、山形県人、いなくなっちゃうから。
写真撮る?
写真、ちょっと。
大丈夫じゃん。
大丈夫じゃん?
大丈夫、大丈夫。
はい、チーズ。
あと何年だっけ?
足早に過ぎていく秋のさなか、石田家にいいことがありました。
孝之君夫婦の一人娘、ほのかちゃんの七五三。
孫の晴れ姿に、お母ちゃんも思わずほおが緩みます。
実は、ほのかちゃんが着ている晴れ着、27年前の七五三で、次女の芽衣子さんが袖を通したものでした。
みさ婆が、それね、買ってくれたやつなんだよ。
そうだって。
よかったね。
そうなんですか?
そうなの。
みさ婆がね。
おかん、求められてる答え、あれだよ。
なんだよ。
芽衣子が着たときのほうがかわいかったって。
覚えてねぇや。
芽衣子と一緒って言われない
七五三の夜、孝之君の家をお父ちゃんが訪ねました。
退職後のあいさつ回りで七五三に立ち会えず、わざわざ、おめでとうを言いに来たんです。
そしたら。
待っててくれた?
はい。
うそ、朝からずっとじゃん。
途中で脱ごうとしたんですけど。
いいや、やっぱりって。
脱いでてもいいのに。
もうなんでそういう…。
はい、じいじと。
ずっと晴れ着で待ってたなんて、うれしいじゃありませんか。
腹、痩せたんだよ。
これ何?借りてるの?買ったの?
あっ、違います。
買ったん?
違います。
芽衣ちゃんか、奈緒ちゃんが着たやつ。
うそだー。
この間、行ったときに、お母さんが出してくれたんです。
芽衣子着てた?
こういうことに疎いのは、男親の常。
1989年の七五三で、ビデオカメラを回したのは、他ならぬお父ちゃんだったのに。
芽衣子だ、芽衣子。
芽衣子だ。
芽衣子さんと次男、和寛さんの七五三でした。
くしくも、この年は、水害に遭ったマイホームを、1980万円で購入した年でもあったんです。
ほら、みさ子、若いね。
念願のマイホームで、庭に芝生を植えたのはお父ちゃん。
そこでバーベキューをしたのも、やっぱり同じ年のことでした。
邪魔だな、こいつ。
ばかだね。
自分だよ、自分だからね。
そうなの?
そして、この晩、お父ちゃんは、胸に期する所があったんです。
家族の成長を記録するビデオや写真は、そのときのやり取りさえ、思い出させることもあります。
もちろん、スタジオの皆さんも。
では高畑さんの家族写真、こちらです。
これは、この右端が父なんですけど、父が亡くなる直前に、ふぐとかにが食べたいって言うので、好物2つを用意して、これが最後の料理になったんですね。
父と母がいなかったら、子育てもできなかったし、仕事も続けられなかったと思う。
本当に大事なじゃあ、一枚ですね。
そうです!宝です。
いろいろ思い出しちゃいますね、写真を見ると。
ええ。
でもこうやってね、お子さんたちもすくすくと育っていって。
そうですね、嫌だ、なんでこんな泣いてんだろ?
でも本当に、改めてそういうふうに考えられることもね、この一枚から、いろんな想像ができるわけですけれども。
草野さんの家族写真もございます。
こちらです。
これはもう。
時代背景が…。
古い、古い時代なんです。
今からたぶん、60年ちょっと前になります。
戦後、父親、母親が中国から引き揚げてきてたんで、もう全く無一文、貧しくて貧しくて、本当に、最低の生活をしていた、そういう時代でした。
ただなんか、正月に一度は家族そろって写真館に行って、写真を撮ろうという。
草野さんがどれか分かんない。
私、一番前列の左なんです。
小学校…。
丸坊主なのが?
そうそう、マルコメ君ですね。
でもこの写真一枚から、こんなにエピソードがあるのは、やっぱり紙焼き時代の方ですね。
本当そうですね。
なるほど。
現像行って、帰ってくるまで、撮れてるのか分かんない。
だから一枚に対して、高畑さんも草野さんも、一枚に対しての重みが違う。
さて、実はもう一枚、こんな写真もあるんです、こちらです。
そうです、ヒデさんご自身が大家族ですよね。
男の子4人いらっしゃいますか。
そうなんですよ。
今、高2、その横というか、上にいるのが、6年生、その隣が4年生、3年生、一番右が48歳。
また兄の影響もあるから、全員野球やってるんですよ。
本当に石田さんチじゃないですけども、洗濯1日3回、4回。
どろっどろなんです。
ずーっと家内は洗濯と掃除と、ごはんを炊き続けてるんですよ。
お母さんは偉大ですね。
1か月、米60キロですよ!
1階が壊滅状態のわが家で、お父ちゃんが何やら準備開始!
来られる者は全員、実家に集合しろ。
お父ちゃんの呼びかけに応えて、前夜からやって来たのは、自衛隊で働く次男、和寛君。
智広君のうちが、こよいの宿です。
お父ちゃんと智広君の2人暮らしも、すでにふたつきになろうとしていました。
有志はこねぇかもしれねぇ。
このくらいでよかったら、3人で寝れるよ。
3人。
あっ!落ちてる!
お前のせいでね、指先がさがさだよ。
俺、主婦みてぇだよ、主婦。
俺、もう洗濯はせんといかんわ、もう。
だから、もう。
中林さん、ここちゃんと映して。
母ちゃんのあそこと全然もう違うじゃん。
もうきれい!ほら。
居候だ。
俺ね、おやじなのにね、じじいなのにね、居候ってね、この期に及んで居候って、すっげぇ寂しいものなんだよ。
こう、なんか楽しそうにやるんだけども。
ちゃんとやろうぜっていって、きちっとやるんだけどさ、そしたら、ありがとうもなんにもいわねぇんだよ。
あっ、どうもね。
どうもねもいわねぇんだよ。
言ってほしいの?
言ってほしいよ、当たり前だよ。
それ、おかんも思ってると思うよ。
あはは。
なんだよ?おやじ、だって、お母さんそっくりだから、俺、おやじとそっくりの行動、取ってあげただけだよ。
うそつけ、この野郎。
世の中何があるか分からない。
でもみんなもありがとう。
俺はなんにもできないよ、この先は。
でも、全部そろってのバーベキューなんだよな。
でも、やりたいね。
で、やって、それで、ここから再出発かねー、みたいな感じだね。
家族を実家に集めたのは、27年ぶりに庭でバーベキューをするためでした。
IT企業で働く五男の元基君や、美容師デビューが近い、六男、有志君もやって来た。
まつもとさんちは建て替えたって。
まつもとさんちも、あっちの家も手伝ったかんね、俺、あのあと。
うっせぇだろうよ。
じゃあ、家もさっぱりしたことだし、とりあえず、一段落でみんなで乾杯しましょう、乾杯!
しまんねぇな。
災い転じて福となす。
いや、福にしてみせる!
久しぶりの。
やべぇ、目、しょぼしょぼする。
バーベキュー奉行だから。
家族そろってのバーベキューには、お父ちゃんのそんな決意が秘められていたんです。
満身創痍のマイホームだって、きっとみんなの笑顔に力づけられているはずだ。
洪水から3か月近く。
がらんとした庭に、さざめきが戻りました。
なんだか複雑な気持ちだけど。
別にバーベキューは、もう、今さらしたいとはおもわねぇんだけど、できるのは水害のおかげ。
かぼちゃ?かぼちゃ、うまいわ。
第2弾。
これが浮気だよ。
あ、これが浮気?
友達と同じ小学校?みんな。
違うの?
うん。
運動会は一緒に走ろうね。
やだ。
ほのかちゃんは、パパとママに似て、しっかり者だなぁ。
ゆるゆると、いとおしい家族の情景です。
日陰に生きてるから、日ざしが強くなると眠くなっちゃう。
そして、お父ちゃんの重大発表に、今、
もう家はぼろぼろになるわ、歯はがたがたになるわ、和寛。
高血圧はどうなの?
全然下がらない。
ひとしきり、バーベキューを楽しんだところで、お父ちゃんから、重大発表がありました。
はい、みんなありがとね。
みんなありがとうって言っても、俺の気持ちは分からない。
みんな、ありがとうね。
集まってくれてありがとう。
ここも水かぶったときにいろいろと、孝之から和寛からみんなね、手伝ってくれてね。
で、4月から住めるような計画ではいるんだけども。
これ1つのリビングにするの?
ワンフロアだよ。
本当に?
柱は残るけどね。
修繕費用はざっと見積もっただけでも600万円以上。
お父ちゃん、なんとかしてこの家を守り抜く覚悟です。
写真屋さんも駆けつけて、恒例の記念写真。
リビングを飾ってきた石田さんチの歴史に、また新たな一枚が加わります。
もちろん、修繕を終えた部屋には、この日のワンカットが並ぶはず。
孝之。
本当に久しぶりに、お父ちゃんが子どもたちを仕切っていました。
芽衣子。
ちげーよ、これ。
これ、有志だよ。
お前、いない。
お前は、ほら、学校のほら、欠席の、横にぽんと。
芽衣子、芽衣子。
6年前の石田さんチスペシャルでも言いましたけど、もう一度。
そうだ、禍福は糾える縄の如し。
おっと、忘れるところでしたが、末っ子、隼司君は、美容師の就職試験に見事合格。
残るは国家試験です。
隼司君に肩入れする編集の宮島さん、顔のアップが長めじゃない?みさ子おばあちゃんを早く呼び戻せるように、お母ちゃんは一生懸命。
撮影のベテラン、中林カメラマンも、すてきなカットを撮り逃しません。
そして、今井ディレクターが自分のカメラで追いかけるのは、再就職に奔走するお父ちゃんの姿です。
大家族石田さんチの再出発。
取材班も気持ちを引き締めて、まだまだ密着だ。
2016/01/03(日) 18:30〜21:54
読売テレビ1
大家族石田さんチ新春SP…緊急事態!アノ洪水が石田家をのみ込んだ[字]
密着19年目の悲劇▽鬼怒川決壊で押し寄せる濁流…九死に一生の救出劇▽泥だらけの我が家を前に…壮絶夫婦喧嘩…家族の絆とは?▽最後のバーベキューに桝アナ&斎藤工感動
詳細情報
番組内容
緊急事態!常総襲った洪水が石田家をのみ込んだ▽取材班は決壊堤防から12キロの石田家にいた!押し寄せる水…気づくと逃げ道はない…認知症の祖母連れて九死に一生の避難劇…衝撃映像の全記録▽変わり果てた我が家に絶句…飛び出した“もう別れよう”発言…家族の絆が試される時▽「全て振り出し」「当事者にならないと分からない」お父ちゃんの言葉が胸に刺さる▽イケメン末っ子隼司くんが就職活動…反抗期を超え成長の全記録も
出演者
【司会】
中山秀征
桝太一(日本テレビアナウンサー)
徳島えりか(日本テレビアナウンサー)
【ゲスト】
斎藤工
高畑淳子
草野仁
平愛梨
高橋真麻
佐々木健介
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