日曜美術館 特別編「巡る、触れる、感じる 井浦新“にっぽん”美の旅2」 2016.01.03


よし!出発進行!井浦新さんは忙しい仕事の合間を縫って旅に出ます。
北へ南へそこにしかないにっぽんの「美」と出会うため。
もっと自由で豊かで…人間の内側に訴えてくるものを感じるんですね。
それが「自由さ」「遊び」ですよね。
そこはもしかして僕の中で一つの大きな答えになるんじゃないのかなって思うんですね。
にっぽんの美に隠された自由なエネルギー。
来た来た来た!上上上!一体それはどこから湧いてくるのか…。
あっ…何だこれは…。
出会ったのは奔放な文様が刻まれた太古の形。
かなり薄いんですよね。
すごいぞ今。
何ですかこれは…。
気ままに旅した絵師の謎の屏風。
自然と対話しながら生まれる手仕事。
どこかに遊びを持ってるというかね心にゆとりというかそれをいろいろ表現しています。
お〜!そうですか。
は〜!心沸き立つ美があれば駆けつける。
さあ旅が始まります!うん本当に海が穏やか。
自然も豊かでこんな穏やかな海で…。
国東半島やって来ました。
まず訪れたのは…
(太鼓)聞こえてきた…。
太鼓の音が…。
(太鼓)
(スタッフ)何年ぐらい前から来たかったんですか?国東。
国東は鬼の住む場所と知って…あっ!うわ〜来た〜。
(太鼓と笛)国東で毎年10月に行われるケベス祭。
その始まりを告げる行列です。
(太鼓と笛)井浦さんは謎めいた文化が生まれた国東に長年心惹かれご縁ができる日を待っていました。
国東半島は神の信仰と仏の信仰が融合した神仏習合の文化が花開いた地。
更に独特の鬼の伝承も綿々と受け継がれてきました。
古代から渡来の人々も多くやって来たといわれます。
いくつもの文化が折り重なる中国東の美がおおらかに育まれてきました。
(太鼓)国東きっての不思議「ケベス祭」もその一つ。
「ケベス」という言葉の意味祭りの起源一切が謎です。
にもかかわらず地元の人々によって大切に守り伝えられてきました。
はい!
(拍手)
(声援)う〜!
(歓声)
(悲鳴)あっ危ないよ。
焼けてる焼けてる。
焼けてるよ。
(歓声)来た来た来た!上上上!危ね。
危ない危ない…。
燃えてますね。
これ助け合いだ。
ケベスどんはやっぱり勇ましいですね。
来た来た来た…。
そりゃ〜!「そりゃ〜!」って。
(悲鳴)悲鳴が…悲鳴が…。
おはようございます。
おはようございます。
あっ立派な石段。
おっ蛇。
ああこれは縁起がいい。
神様が挨拶しに来てくれましたね。
(鐘)磨崖仏かぁ…。
すごいな。
よく彫り出しましたねほんとに。
不動明王も日本ではいろんなお顔ありますけどそれにしても結構鼻が横に広がって下の方がどんと大きくてもしかしたらこの国東に住んでいた先住民なのか海を渡って来た人たちの顔をもしかしたら表してたりするかもしれないですよねどこか。
そう考えるとすごいなんか夢が広がるんですけど。
もしかしたらいろんな地域から集まってそれがそういう歴史がどんどん重なってって今の僕らが目に見える例えば祭りや生活の風習だったりというものになっていっているのかもしれないですしね。
他にも鬼の伝承というものがこの国東っていろんな地域にありますよね。
ちょっと独特なんでどういう鬼なのかなっていうのはすごい興味ありますね。
磨崖仏もすてきなんですけど。
これすごいなと思います。
気持ちが鬼に行ってしまってるというのが正直なところで。
鬼に会えますねようやく。
国東市歴史体験学習館。
こんにちは〜。
これだ。
「仏と神と鬼が集う前夜祭」。
あっ。
いた。
いたぞ。
これですよ。
会いたかったんですよ。
これは初めて出会ったなあ。
鬼の姿をしているのは平安時代の天台宗の僧侶・良源。
飢きんや疫病から人々を救うため祈とうしていたところ鬼の姿に。
その魔力で災いを追い払ったという伝説がもととなっています。
ふだんは寺に祭ってあり人々はこのお姿に手を合わせています。
小さいけどすごいよく出来てますね。
ほんとこの筋肉の筋とかもちゃんと表現されてるしちょっとうつむき加減で反省してますみたいなポーズにも見えてきますね。
なんか下向いて。
一人のお坊さんが魔をはらうために自ら鬼の姿に…ですからね。
やっぱり忌み嫌われる姿ですよね。
なんか決して立派な姿で表してないですもんね。
こんな情けなく醜く描いて表現してそういうふうに伝えなければいけなかった何かがあったんですかね鬼と呼ばれる人たちに。
人を寄せつけない姿ではなく人間味さえ感じる像。
国東のおおらかさでしょうか。
ああいいお顔。
わあいいですねぇ。
うわ〜…。
角の生え方がまた特徴的なんだよなあ。
1本だけど途中からニョキッと鹿の角のようにこう1本だけど2本なんだよなちゃんと。
1,000年以上前から伝わる伝統行事「修正鬼会」で使われる鬼の面。
国東の鬼はいわゆる鬼のイメージとは違います。
荒鬼は神や仏の化身。
角のない鈴鬼は死者の魂とされともに福をもたらす存在として伝えられてきました。
このひょっとこも…ひょっとこじゃないんだけど鈴鬼なんだけどいいお顔してる。
作りもとても面白い。
鼻まで曲がってますもんね。
いい顔してるな〜。
なんかこの鬼の面なんてちょっとアフリカっぽいですもんね。
アフリカっていうか何ですか…東南アジア。
バリとかインドネシアとか。
なんかすごいな。
混ざってるっていう感じがするな。
時代時代時間をかけて熟成されていって少しずつ変化しながらもずっと継承され続けて。
なんかなあ…ちょっと顎グッてしゃくれたりとかしててなんか愛きょうあるんだよなあ。
姿形は違えども…悪いやつじゃないっていうなんか…。
うちらの村の守り神というようにも感じるしなあ。
温かみというか異形だけど強い山の向こうに住んでる頼りになる異邦人みたいなそんな存在なのかな。
何かありますねここに。
「鬼の背割」。
すごい場所があるんだ。
よし。
すごいなぁいきなり。
え〜っうわ〜。
「針の耳」。
よいしょ。
おお〜。
よいしょ…。
よしっ。
針の…。
通った!おお〜!そうですか。
はぁ〜こんな状態で。
一体どれぐらいの時間ここにいるんですか?これ。
すごい。
鬼の背割。
うわ〜見事だな〜。
すごいなぁ。
これは見事だ。
何かどこか人知を超えたものとかそれを行った人とかってやっぱり鬼っていうものに例えられてそうですよね。
これは絶景だ。
ふ〜ん…。
やっぱり目に見えない存在も鬼っていうふうに言い伝えられてきたんだなっていうのもこの国東を旅しながら感じましたね。
鬼一つとっても多様性があるっていうのはやっぱりこの国東の一つの気質にも通じてるんじゃないのかなって思うんですね。
いろんな民族や文化が出会って混ざり合ってこの国東の何かを受け入れていく受け皿の大きさというか混ざり合っていいものをどんどん吸収しながら新しい文化を作っていって…。
そういったものへの柔軟性みたいなものをやっぱりこの国東では感じますよね。
いい鬼との出会いができました。
うん。
空もすごいなぁ。
赤鬼のような空になってますね。
標高2,000mを超える峰々に抱かれた信州小布施。
ここは江戸時代の天才絵師が思う存分絵を描きたいと訪ねた地。
江戸からおよそ1,000キロ。
絵師がこの地で抱いた思いに触れたいと井浦さんは訪ねました。
絵師の名は飾北斎。
うわ〜。
いや〜すごいです。
う〜ん…すごいですね。
目が合うなやっぱり。
どこの場所からも鳳凰と目が合う八方睨み。
目つきも鋭いですししっかりと人の心の奥を見つめるようにまっすぐこっちを見てますもんね。
何かもう何ですかこうただただ…もう…圧倒されていたいっていう感じですここに来て。
これは北斎のこの絵に全身…ほんとこれこそ体感じゃないですか?ほんとに全身で北斎の思いを感じれる。
そんな幸せな事ないですよね。
好きな者にとっては。
今や世界にその名をとどろかせる…北斎といえばご存じ「富士」。
奇抜で斬新な作品はゴッホなど海外の芸術家にも多大な影響を与えました。
滝を描けば…。
下からは見えないはずの川の上流の水面も表す。
自由自在にイマジネーションを羽ばたかせました。
北斎が絵に没頭する姿。
部屋はごみだらけだったといいます。
絵に全てをささげた絵師に暗雲が立ちこめたのは70代後半。
幕府は天保の改革で芝居や華やかな浮世絵などのぜいたくを禁じました。
なんか北斎の…感じませんか?この筆の跡から。
鳳凰の喉元の朱の毛がありますよね。
あそこが一本一本細い筆の跡が見えますよね。
かなり筆入れてるように見えるんですけど。
また粋な事をするなぁ…。
逆さ富士あるなぁあそこに。
うわ〜北斎。
いいですね仕掛け好きですねほんとに。
でもなんかこう…ただ仕掛けをちりばめてるのではなくてやっぱりすり込ますものが富士っていうものちゃんと自分の代名詞でもあるし思いや信仰というところもきっとあるでしょうし。
ちゃんとのせるんですね。
北斎は小布施で延べ2年以上を過ごしました。
ここでの伸び伸びとした心境をうかがい知る場所があります。
失礼します。
ああなんか…う〜ん…。
北斎ここにいたんだ。
日課の獅子。
日課の獅子。
(金田)これが…。
ああ…。
「八月二日」と書いてありますか?
(金田)はい「八月二日」ですね。
「八月二日」って書いている事は「日課の獅子」って言うほどですからもう毎日北斎はこちらに滞在してる時はこの獅子を描いていたのでしょうか?毎日描いていたと言われてます。
この獅子描き終わるまではお客様訪ねてきても会わなかったっていう話が伝わってます。
北斎らしいエピソードですね。
ほんとに楽しそうに気持ちよく描いている北斎のそういう気持ちが感じますね。
もちろん表情は目赤く血走ってますし前足で水をかいて水がザバッとなって勢いとか力強さとか感じますけどでも筆の流れ見てるとすがすがしい気持ちになっていく気持ちいい気分になるのはいい状態で描いている絵なのではないのかなとも勝手に思うんですけど。
(金田)北斎さんってすごく…何て言ったらいいんかな反骨っていうか天才肌の人だからみんなとはうまくいかないというようなのがあったっていう事がよく書いてあるんだけど小布施ではそんな話は聞いてないですね。
聞いてないんですか。
子供たちが遊びに来れば気軽にたこの絵とかいろんな絵を描いてあげたとかそういう逸話はたくさん残ってます。
だから偏屈老人じゃなくってとってもよかったんじゃないですか?優しいおじいさんっていう感じですよね。
そんなあれがあったみたいですよ。
ああもうほんとお話聞いてると北斎の精神状態っていうか状態がかなりこの小布施にいる時はいいというかもしかしたらそれがほんとの素なのかもしれないですよね。
素の状態になれる場所だったのかもしれないですね。
うん…。
小布施が生んだ北斎の傑作があります。
北斎館。
ああ…。
地元に伝わる祭り屋台。
その天井に北斎が描いたのは…。
これか。
うわぁこれはほんとにもういつ見ても…。
もうほんとにほとばしっちゃってるもんな。
あふれ出してるっていうか。
「女浪」。
すごい。
「男浪」。
「神奈川沖浪裏」の波や水の表現ですよね北斎の。
これがある意味最終形態っていうかね。
北斎がもう自由に今描きたいものを描いたっていうような印象がありますよね。
だってもう描き方も自由じゃないですか。
しぶきが飛び散って。
不思議じゃないですか?山に囲まれたこの小布施というこの地になぜ波なのかっていうのもありますもんね。
天才絵師を解き放った山あいの町。
江戸から遠く離れてたどりついた究極の境地。
こうずっと見てると宇宙っぽく見えませんか?小布施の夜今でも夜になるときっと星がたくさん見れると思うんですよ。
でも当時なんてもっと星くずまさにだと思うんですよね。
ここの小布施で見える夜空の星をこの波のしぶきに変えて写したのかもしれないですね。
なんか北斎ならやりかねないっていうか。
だから天井にこれがこうあるわけですもんね。
ほんとに星かもしれないですね。
北斎の宇宙を表してるんじゃないですか。
続いて向かったのは北の大地。
北海道南部の日高地方です。
豊かな自然がどのように自由な美を生み出す力になっているのか。
ありがとうございました。
はいどうも。
ああ…。
ああ…。
うわぁすごい。
みずみずしい香りがするな。
おっ川が…。
「熊に注意」。
さすが。
水もきれいっすね…。
ふ〜ん…。
雄大に流れる沙流川。
その流域に広がる集落平取町二風谷。
アイヌ文化の伝統が色濃く残る地域です。
ほんとにここの場所には思いをはせていた場所の一つですねここは。
うん…。
実際この地に来てアイヌの人たちはどんな景色を見ていたのか。
アイヌの人たちの手仕事というのはすごい興味ありますから今どのような手仕事が残ってどんな思いで今生きてらっしゃるのかもちょっとお話を伺ってもみたいですね。
なんかやられてる。
こんにちは。
こんにちは。
あれ?それは今何をやられてるんでしょうか?これはねアイヌの民族衣装の機織りをする木の皮なんですけど今煮てたところなんです。
見して頂いてもよろしいですか?どうぞどうぞ。
香りがすごいいい香りがする。
これをこのぬめりを取るのに河原へ行ってちょっとこの所のぬめりを取って取らなきゃいけないんですよね。
これからまた洗う作業も…。
ええ。
ぬめりがあるんです。
これを洗うんだ。
釜で煮ていたのは木です。
ニレ科のオヒョウという木。
皮をはいで内側の白い部分を使います。
木の皮から糸を作り織り上げるアイヌの伝統的な衣服アットゥ。
主に日常着として作られてきました。
どこに置きましょうか?ここら辺でもいいんだけど…。
一回置きましょうか。
ちょっと待って下さいね。
色がどんどん出てきてる。
こういう石の上でやるとすごくきれいに取れるんですよ。
ほんとだ。
こういうふうに…。
はい。
はいそうですそうです。
でそれ端から端まで…。
これ一枚一枚大変な作業ですね。
よろしいですか?どうぞ。
すみません。
じゃあ失礼します。
おじゃまします。
そちらが先ほど洗って…。
何枚もの層になっててすごいんですよ粘りが。
だから粘りがあってちょっと機織りはしづらいんですけど丈夫さはありますね。
これを糸にしていくんですけど。
昔はですねこの糸を手でよりをかけてたんですよ。
暇があったらいつも手元から糸を離さないって感じでやらなかったら進まないですね。
僕なんか破壊していってるような気がする。
いやいや大丈夫です。
雪子さんに任せた方が…。
いいかもしれないですね。
(雪子)やっぱり慣れですね。
う〜ん…。
これはでもちょっと驚きですね木が糸になっていくというのは。
あ…もうああ…。
体で…。
体で加減をしながら織らなきゃいけなくて…。
腰も脚も痛くなるんですよ。
ほんとですよね。
どれぐらいの時間集中できる作業なんですか?もう…10時間ぐらい。
10時間。
10時間ですか。
やる時はそれぐらい。
へぇ〜…。
雪子さんにとって自然というものはどういった存在ですか?私は自然の中でいつもいつも暮らしてるって感じだからほんとにねありがたいです。
感謝感謝。
ほんとに。
すごいな〜。
ここはアイヌの神様の伝承が残る場所。
神の名は…人々に生活の知恵を教えたといいます。
オキクミが1本の矢を放ち穴を開けて神の力を示したという山。
夏至の頃驚きの光景が現れます。
うん?おお!これは…。
行っていいかな。
ええ?ああすごい事になってるな…。
あそこすごいですね。
あそこですねなんか。
岩場が…何かの形に見える。
アイヌには何でも神さんですよ。
木も神さん水も神さんもちろん山も神さん。
何でも神さんです。
ものを植える時ねよくとれるようにってカムイノミってのするお祈りに行く私はね。
春も秋も行く。
それでいっぱいとれたらたくさん食べれるようにとかねそれで秋になったら「ありがとうございました」。
ねっ。
なかなか大変ですよ何でも神さんですからアイヌは。
神様と共に生きているという事なんですね。
そうですよね。
(シャッターを切る音)
(鳴き声)初めて聞くぞこの鳴き声。
(鳴き声)フクロウの友達か何かですか?これ本州ではなかなか聞かない声ですね。
オキクミ?
(鳴き声)いいですね。
アイヌの人々が長い時間をかけて育んできた独特の美。
その結晶があります。
おはようございます。
おはようございます。
あ〜…。
イタ。
生活の道具が全部ある。
まな板!すごい何これ。
いやぁこんな装飾されたまな板見た事ないですよね。
料理をするってなったら平らな真っ平らなものだったりするけど。
なんか使い勝手というよりも自然から頂く恵みに対しての命を頂くという感謝や敬意を表すためにきっとこうやって装飾しているのかもしれないですよね。
すごい装飾。
植物をあしらったものもあるけど面白いのがこの辺とか波の模様ですよね。
ものによってはちょっと突起させたり何かまた違う素材を重ねたりとかこれだけ手を入れて装飾するって事はほんとに意味のある大事な道具だったんですね。
パスィ。
材料…。
ああやってらっしゃる。
こんにちは。
失礼します。
はじめましてよろしくお願いします。
おじゃまします。
ようこそ。
ああありがとうございます。
見して頂く事はできますか?ああいいですよ。
どうぞ。
どうぞ持って大丈夫ですよ。
途中でやめてますけどね。
よく見ると丸くなってるでしょうマスの中が。
それが大事なんですよね。
ふ〜ん…。
結局自然の中から模様というのが生まれてきてると思うんですよ。
基本的には渦のモレウとか。
でアイウシってのはこういうとげの部分とか。
シクっていうのは目ですね。
シクっていうんですか。
この中に基本的な模様があってそれをうま〜く組み合わせてく。
ですからバリエーションがもう無限大というか作り手によっていろんな表現をするっていう。
この面の中にいろんなものが出てるんですよね。
同じその…決まりのある文様でも作り手によって捉え方によってまたその動きが変わってくるという事なんですね。
そこにあるイタがひいおじいさんが作ったイタ。
明治20年前後の…。
ああそうなんですか。
明治。
削ってみると分かるんですけど昔の人の方が自由奔放に表現してたんだろうなというのを感じる時ありますね。
結局同じパターンばっかり作ってるとそれが全部一つ一つのアイヌ文様に…何気ない曲がって…左右対称といってもどこか違う。
変わっててもいいんじゃないかという。
実際はどこかにこう遊びを持ってるというかね心にゆとりというか。
それを表現してるんじゃないかという…感じる時もあります実際に。
形式というものもしっかりある上で自由さや遊びをちゃんと取り入れてる。
そこに自分の自己表現というか。
結局文字持たない。
自分の主張するといったら自分の作った模様の中に「これは自分のものだ」という。
自分を自覚させるための遊びというかね。
それが一つのこの面の中に表現されてる。
やっていくにつれて分かるというかね。
「あっ面白い事やってるな」と感じる時あります。
今を生きるアイヌの文化を守りつなげていっている人たちから感じたのが自由さ遊びですよね。
そこはもしかして僕の中で一つの大きな答えになるんじゃないのかなって思うんですね。
この自然の中でやる遊びというのは体を動かして遊ぶとかそういう事じゃなくてきっと生活自体の中にある遊びなんですよね。
それがああいった板やアイヌのさまざまな工芸に表れてるんだなというふうに思いました。
明らかにちょっと質が違うなという。
もっと自由で豊かで人間のほんと内側に訴えてくるものを感じるんですね。
それが情熱とかそういったものなんですよね。
いやあったかいですね。
すごい。
やって来たのは青森県西部の津軽地方。
冬の風物詩ストーブ列車です。
すいませんお願いします。
はいどうでしょうか。
このスルメってどうすればいいですか?ここで焼けるんですか?これで焼きます。
じゃあスルメを1つお願いします。
はいありがとうございます。
ストーブ酒。
ちょっと見せてもらっていいですか?どうぞ。
オリジナルでございます。
あ〜。
「のみすぎちゅうい」って書いてる…。
お茶もいいですか?ありがとうございます。
850円でございます。
はい。
はいすいません。
あっ煙が煙が。
危ない危ない。
すいません。
旅が…。
ストーブ酒。
あ〜幸せだなぁ。
美を探して旅する井浦さん。
ライフワークのように追いかけているのが縄文文化です。
今回の旅でも縄文との出会いを求め向かいました。
はいありがとうございます。
ありがとうございました。
(チャイム)こちらか…。
失礼します。
今からおよそ3,000年前。
津軽では高度な技術で独特の模様を施した縄文土器が多く生み出されました。
こんなにたくさん。
模様が太いんですよね。
これがすごい亀ヶ岡の様式。
すごいそのまま…イメージどおりという感じですね。
よく作ったなこれ。
うわ〜。
こっち…。
ここにいたのか。
えっ?これレプリカじゃなくて本物なんですか?ああほんとですか。
すごい。
ここにいたんだ君は。
へえ〜…。
ちゃんと施されて何かさっと作ったように見えるけれど実は細かい仕事がされてるというのが。
あっ…うわ〜後ろもすごいですね。
あ〜すごいちゃんと服を着てるようなデザインが入ってる。
何だろう腰の辺りとか。
亀ヶ岡。
あっこんな形をしていたんだ。
ちょっと三角形のような。
そうですね三角形で。
昔の皮で作った皮袋を模倣したんじゃないかという形できれいに漆が塗られて赤く漆塗りで。
持ってみます?両手で。
よろしいですか?すいませんありがとうございます。
両手で。
おお〜…。
何だこれは。
想像していたのの重さよりかもちょっと軽い。
こういうのもみんな軽いんですすごく。
かなり薄いんですよね。
すごいぞ今。
う〜ん…。
へ〜すごい。
軽いしほんとにつやつやしてるし模様の感じを手の感覚でちゃんと感じ取れるとちょっと違いますねやっぱ。
感動。
感動を飛び越えてちょっと具合が悪くなってきてる感じになってます今。
いつもガラスケース越しに見てるものが実際手で持ってみるとまた違う。
いや〜もう全然違います。
ありがとうございます。
ああちょっとすごい。
当分手洗わないようにしよう。
かなり発してますよ。
ほんとにスターに憧れの人に会って手を洗わないという感覚よく分かるな今。
ほんとに。
すごい。
屏風ですか。
こちらがあの屏風になります。
あれ?描いてるものが何ですかこれは。
縄文土器や…あっまさに。
縄文土器やこの地から出土した古代のさまざまなものを描いているんですか?そうなんですね。
え〜。
確かに写実ではないけどほんと特徴をしっかり捉えてますね。
縄文土器をちゃんと生け花の器にしてたりとか実際あれなんかもあれ間違いなく土器をお茶の道具の。
隣は水差しに見立ててるんです。
あの急須赤い…。
さっき見てきたばっかりみたいな。
急須のような水差しみたいな。
あれなんか漆しっかり塗られた赤い色で想像であそこまで朱にしたのかな。
これもさっき見たような気がするな。
まさに亀ヶ岡様式。
写実的ではない。
かなりラフですよ。
もう線とかも正直うねうねしちゃってすごいうまいというそういう事ではないですもんね。
ただそのかわり想像力だったり自由さだったりほんとに好きなものをコラージュしてって何か描いてる本人が楽しく描いてるというのが伝わってくる。
いいなぁ。
こんな空間の中で過ごしたいですもんほんとに。
ほんと理想の世界をこうやって描いてくれてつくってくれてるという。
生活したいなこんな中で。
屏風を描いたのは蓑虫山人。
美濃国現在の岐阜県に生まれ幕末から明治にかけ全国を旅した漂泊の絵師です。
折り畳み自在の寝床で寝泊まりしながら旅をしました。
自らの姿を蓑虫に重ね合わせた事から名付けられました。
近畿九州を旅したあとやがて東北宮城を訪れます。
そこで出会ったのが一体の土偶でした。
その不思議な形に魅了された蓑虫はもっと縄文に出会いたいと津軽に向かいます。
そして心惹かれるものを発見するたびに描き留め屏風の中に並べたのです。
こういう縄文土器や石器を描いた人は蓑虫の他にもたくさんいるんですけどももっと上手でもっと写実的な人はいっぱいいますよね。
ただ面白いのは蓑虫はこういった土器や石器を考古資料というふうに見てるわけではなくてすごく美術的な目で見てる感じがしますね。
お茶をやったり花を生けてみたりというこういった事で絵を描いた人というのは多分蓑虫以外にはいないんじゃないかと思うんです。
そうでしょうね。
ちょっと自由すぎますよね。
自由すぎますね。
でも実際本当はあるべき姿のような気もするんですけどそれができないからこそこうやって想像で頭の中で想像してこうやって絵にして表していくという事も。
いい事をやってるな〜。
ちょっと興味湧いてきたな蓑虫山人。
蓑虫は旅のさきざきでお世話になった人たちへのお礼として自分の絵を贈りました。
あっどうもこんばんは。
よろしくお願いします。
ではすいません失礼します。
おじゃまします。
どうぞよろしくお願いします。
こちらこそよろしくお願いします。
青森の各地には今も蓑虫の絵が大切に残されています。
「蓑虫山人絵図北津軽郡」と書かれてますね。
これは北津軽郡五所川原…。
うわっうわ〜。
発掘ですか?これは。
(太田原)そうですね。
これもまあよく出されるんですけども亀ヶ岡遺跡の話がここで出てくる。
満足げな顔をしてるこの一番右の方はもしかしたら…。
(太田原)そうですね。
蓑虫自身ですか?
(太田原)本人ですね。
これは満足してますね表情が。
旅の途中に出くわした祭りの行列。
皆うれしそう。
初めて目にした驚きの絶景。
そして世紀の天体ショー。
宇宙の神秘。
旅先での感動や驚きをおおらかに絵にした蓑虫。
更に不思議な一枚が。
これは…そうですね。
笛ですね。
あっすごい。
こんな絵が…。
(太田原)昔から伝わってきている音音を表現してると思うんですけどその音を聞いたんだっていう。
彼にとって何か衝撃的というかやっぱり何かあったんでしょうね。
記録はしてますけれど本人楽しそうに描いてるなってそういうのも伝わってきますよね。
好きな事楽しかった事残したい事を本当に自由に楽しそうに描いてるな〜って。
興味の対象が本当に一緒なんだよね〜。
蓑虫山人が旅先で感じた驚きに触れるためやって来たのは日本海に面した深浦町。
うわ〜。
はいどうぞ〜。
はい。
天の岩笛…。
岩笛です。
あ〜こちらですか。
ほら貝であったりトランペットであったりの要領でここから息を吹くと下から音が。
ああなるほど。
どうですか?はいやらせて頂きます。
見本を…。
はい。
(岩笛)ほら貝の感じになりますね。
…ですね。
まあ自然にね穴があいて…。
自然に穴あいてるんですか。
上から下まであいてるのが天然のものですからね。
あっずっしり重い。
(かすかに鳴る岩笛)ふ〜っよし。
(岩笛)
(岩笛)僕にはちょっと雑念だらけでどうもいい音が出ません。
いいほら吹きでしたよ。
ありがとうございます。
最後のひと吹きを蓑虫山人のあの絵のように驚くような音をちょっと出したいな。
(岩笛)ありがとうございました。
おお〜いますね。
千畳敷海岸奇岩たちカブト岩発見!ああいい形してるな〜。
(シャッター音)暗いな…。
蓑虫山人の絵を見ても旅をしながら新しい出会いがあったりあと発見があって!みたいな。
その発見に対して驚いて喜んで全身でその喜びを表現している蓑虫山人の絵から見る姿を見ると本当に自由ってこういう事だろうなって思ったりしますよね。
ほんと個の解放というか自分自身の内面を解放していく。
だから端から見てれば好きな事やっててうらやましいなとかいいなとか思われるかもしれないけどでも彼の中ではきっといろんな葛藤ももちろんあると思いますし旅を続けるなんて大変な事ですからでも旅を選んで旅を続けてそこで得るものを自分の表現のエネルギーみたいなものにしていってああやって絵を描いて収集見聞を続けていって得たもの感じた事をちゃんと表していく。
自分でさえも想像してなかった自分の感覚だったり思いだったり意識だったりっていうものは旅でのいろんな出会いで感動やそういったものでどんどん大きくなっていってるんですね。
だからきっと旅に出てまた自分の住んでる場所へ戻ってまた仕事をして表現をして使い切るみたいな…何かもう生かす!そしたらまた旅に出てまた感動してほんとに常に自分の心がみずみずしい状態でいれる。
そういうものを求めて得るためにも旅ってあるんだなと思いましたね。
新しい自分の知識や経験という事プラスもっと内側の心や意識を豊かに潤す。
そういう意味でも旅って僕にとっては大事だなって思います。
「ねほりんはほりん」がなんと2回目を迎えました。
2016/01/03(日) 21:00〜22:30
NHKEテレ1大阪
日曜美術館 特別編「巡る、触れる、感じる 井浦新“にっぽん”美の旅2」[字]

南へ北へ。日曜美術館・司会の井浦新さんが、にっぽんの美に隠された自由なエネルギーの源を各地で探る。謎に満ちた仮面の祭。北斎のダイナミック天井画…。発見続々の旅!

詳細情報
番組内容
井浦新さんが、日本の美に隠された自由なエネルギーを各地で体感。大分・国東半島へ。不思議な仮面の祭でいきなり圧倒される。鬼とも遭遇? 長野・小布施では、北斎の大作と対面。どうしてここまでダイナミックに自在に描けるのか? 北海道・二風谷では、自然に包まれる暮らしから生まれたアイヌの手仕事に魂ふるえる。青森で、漂泊の絵師・蓑虫山人の常識にとらわれない作品に感動。自由な発想を育む“土地の力”が見えてきた!
出演者
【出演】井浦新,【語り】伊東敏恵

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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