なるほど。
(二宮)確実ね決勝からの。
(櫻井)今回のBABA嵐最弱王長瀬智也さんでした!
(坊っちゃん)
親譲りの無鉄砲で子供のときから損ばかりしている
小学校にいる時分学校の2階から飛び降りて1週間ほど腰を抜かしたことがある
なぜそんなむやみをしたと聞く人があるかもしれぬ
別段深い理由もない
新築の2階から首を出していたら同級生の一人が冗談に「いくら威張ってもそこから飛び降りることはできまい」
「弱虫やい」とはやしたからである
小使いにおぶさって帰ってきたとき親父が大きな目をして「2階くらいから飛び降りて腰を抜かすやつがあるか」と言ったから「この次は抜かさずに飛んでみせます」と答えた
(校長)銀行が君の入行を断ってきたよ。
(坊っちゃん)えっ?
(校長)いくら理不尽とはいえもう少しうまく立ち回ることはできなかったのかい?
(坊っちゃん)嘘はつけません。
(校長)君が正直なのはよく分かってるよ。
だからこそ私は君を推薦したんだからね。
しかしそれが裏目に出るとはな。
よりによって頭取を殴るとはね。
子供のころ俺を見るたびに「こいつはどうせろくな者にはならない」と今は亡き親父が言った
「乱暴で乱暴で行く先が案じられる」と今は亡き母が言った
ところがどういうわけか家の手伝いの清というばあさんだけは俺を非常にかわいがってくれた
(坊っちゃん)清。
俺…。
(清)おかえりなさい。
おう。
はい。
ただいま。
うん。
うまい。
やっぱり坊っちゃんは真っすぐでよいご気性です。
いちいち褒めるなよ。
俺もう子供じゃないんだから。
そういうところがよいご気性なんですよ。
んっ。
お代わり。
はい。
物理学校を卒業して8日目に校長から呼ばれて出掛けていった
(校長)教師の口があるんだ。
教師になる気はなかった
(校長)中学のね。
四国なんだが。
田舎に行く考えもなかった
(校長)今の若い者は田舎に行きたがらない。
でもね月給が30円出る。
あまり金に興味がなかった
(校長)他にも行きたい者はいるんだが私はぜひ君にとね。
そんなはずはなかった
(校長)実は少々困っててね。
もっとも何をしようという当てもなかったので即席で返事をした
はい。
行きましょう。
(校長)ホント?ハァー。
清。
俺…。
おかえりなさい。
はい。
おう。
ただいま。
清。
こんなものいらないから。
坊っちゃんはよいご気性ですが一つだけ心配です。
これもいらないよ。
坊っちゃん。
坊っちゃんはかんしゃくを起こすと言葉が出なくなってしまいます。
だからといって人を殴ってはいけません。
乱暴だけはいけません。
分かったよ。
でもやっぱり坊っちゃんは真っすぐでよいご気性です。
これでお別れになるかもしれません。
清は長生きするに決まってる。
坊っちゃん。
お気を付けて。
おう。
いってくる。
お手紙待ってます。
遠過ぎる
(赤シャツ)わが中学校にふさわしい舶来のとても素晴らしい絵画が到着しました。
ご覧ください。
(山嵐)何だありゃ?
(狸)なるほど。
(野だいこ)さすが教頭。
ごもっともです。
芸術性が高く気品にあふれわが校にふさわしい絵画でげす。
実にお目が高い。
(赤シャツ)ハハッ。
ハハハ。
どうです?
(生徒)はい。
素晴らしいです。
(一同)素晴らしいと思います。
(赤シャツ)うん。
(せきばらい)
(記者)おい。
(男性)あっ。
ああ。
はいはい。
あっ。
すいません。
はい。
はい。
じゃあ撮ります。
はい。
ほがらかさん。
赤ふんどしとは野蛮なところだ
小さな町だ
・
(一同)わあー!おい。
中学校はどこだ?
(一同)知らん。
気の利かない子供だ
・
(汽笛)
マッチ箱みたいな汽車のくせによく走れるもんだ
こんな田舎に我慢ができるものかと思ったがしかたがない
こんにちは。
(男性)あっ。
ああ。
こっちへ。
(狸)遠路はるばるわが校へようこそ。
遠いどころの騒ぎじゃない
(狸)精を出して励んでください。
はい。
励みます。
(狸)教師1年目は何事も勉強かと思いますがぜひ生徒の模範になっていただきたい。
模範?
模範とはどういうことですか?
(狸)なるほど。
模範とは…。
模範とはつまり教師たるものその道にたける学問の知識が豊富にあるだけではなりません。
なぜ教頭が答える?
(赤シャツ)教師の優れた品性が生徒の考え方や行動に影響を与えるのです。
なぜ赤いシャツを着ている?
(赤シャツ)つまり教師とは社会性や道徳性を備え人徳を併せ持つ人格者でなければならないのです。
こいつは赤シャツだ
(赤シャツ)よろしいですね?できません。
「できない」というのは?とうてい教頭のおっしゃるとおりにゃ私にはできません。
校長。
(狸)はい?辞令返します。
(狸)なるほど。
教頭。
(赤シャツ)あっ。
今のはただの希望です。
心配しなくても大丈夫ですよ。
だったら初めから驚かさないでください。
(狸)ではあしたからの授業に備え数学の主任の堀田先生と打ち合わせをしておいてください。
堀田先生。
(山嵐)はい。
(狸)机はそちらです。
皆さん。
今日も1日ご苦労さまでした。
(野だいこ)お国は東京ですよね?はい。
東京です。
あっしもこれで江戸っ子でげす。
よろしく。
よろしくお願いします。
こりゃまた変なのが来ましたね。
(赤シャツ)面白そうじゃないか。
よろしくお願いします。
(山嵐)広い部屋と奇麗な部屋どっちがいい?えっ?
(山嵐)下宿を紹介してやる。
飯がうまいところがいいです。
任せておけ。
(生徒)前へ!
(生徒)師範学校だからって威張りやがって。
なあ?
(生徒)地方税で養ってもらってるくせに。
(生徒)こっちには帝大出てる学士の先生がいるんだからな。
(生徒)あいつら絶対ケンカ弱いぞ。
(生徒)勝手に威張らせておけばいい。
(山嵐)氷水でも食うか。
(マドンナ)お待ち遠さまでした。
(山嵐)こんにちは。
(マドンナ)いらっしゃいませ。
新しい先生ですか?東京からいらした。
田舎者のくせにべっぴんだ
あっ。
はい。
新しい先生です。
(山嵐)氷水を2つ下さい。
(マドンナ)はい。
(山嵐)彼女はこの町一番のべっぴんでマドンナと呼ばれている。
へえー。
(マドンナ)氷水2つ。
(山嵐)ほれても無駄だぞ。
マドンナには相手がいる。
そりゃああれだけべっぴんなら相当な色男なんでしょう。
英語の古賀先生?ああ。
へえー。
(マドンナ)お待ち遠さまです。
(マドンナ)お先に失礼します。
2人は結婚するんですか?さあな。
マドンナを狙ってる男は他にもいるからな。
(男性)今日マドンナは?
(女性)もうみんなマドンナ。
さっきまでいたんですよ。
教頭がマドンナを?
(山嵐)マドンナの親は大喜びだ。
教頭は帝大卒の学士で家も裕福だからな。
帝大は教頭をいつでも教授として迎え入れる準備があるそうだ。
へえー。
(マドンナ)今日は教頭さんと美術展に行くように母から言われてまして。
(うらなり)えっ?じゃあ仕方ないですね。
(マドンナ)でもあしたはお昼からお休みを頂きました。
(うらなり)あっ。
はい。
あした。
(マドンナ)あした。
(山嵐)話は変わるが教頭にはさっきみたいに逆らわない方がいい。
「さっきみたいに」とは?「とうてい教頭がおっしゃるとおりにはできません」「この辞令はお返しします」別に逆らってません。
できないものはできないと正直に言っただけです。
(山嵐)逆らってるのと同じだ。
いや。
嘘はつけません。
まあとにかく気を付けろ。
さっきから誰かに似ていると思っていたが比叡山延暦寺の僧兵だ
こいつは山嵐だ
何だ?いや。
ああ。
うまかった。
(一同)ごちそうさま。
(女性)あっ。
はーい。
(山嵐)俺のおごりだ。
ごちそうさまです。
(山嵐)下宿はすぐそこだ。
(山嵐)おーい。
連れてきたぞ。
(女性)あら。
先生。
光の表現が実に素晴らしい。
崇高な精神がにじみ出ているとは思いませんか?
(赤シャツ)さあこちらへ。
これはまた素晴らしい。
今僕の心はこの風景を旅しています。
あなたもぜひご一緒に。
おっ。
(赤シャツ)本日はお父さまとお母さまにお願いがあって参りました。
(赤シャツ)お父さま。
お母さま。
お嬢さんを僕に下さい。
(父)これは身に余る光栄に存じます。
謹んでお受けいたします。
(母)ふつつかな娘ではございますがどうぞよろしくお願い申し上げます。
(赤シャツ)ありがとうございます。
お嬢さんを大切にいたします。
(赤シャツ)それでは。
(父)めでたいことだ。
教頭先生との結婚が決まった。
(母)夢みたい。
教頭さんみたいな立派な方にもらっていただけて。
帝大出の学士さんよ?噂によると校長さんよりお給料もらってるっていうじゃない。
将来は一教育者にとどまらず町をしょって立つ人になるに違いない。
当家にとってもこれほど名誉なことはない。
(母)孫が男の子なら帝大ね。
(父)さあさあお祝いだ。
(母)はい。
(父)酒はあるか?
(母)ええ。
どこを見ても東京の足元にも及ばないが温泉だけは立派なものだ
誰もいない
愉快だ
(女性)どうぞ。
お上がりください。
とても愉快だ
「清へ」
(女性)ご飯です。
はい。
芋だ
うまい。
《やっぱり坊っちゃんは真っすぐでよいご気性です》いちいち褒めんじゃないよ。
俺は…。
いってきます。
(女性)いってらっしゃい。
(マドンナ)おはようございます。
おはようございます。
(マドンナ)早速お手紙ですか?ああ。
着いたら手紙書けと言われてるんで。
(マドンナ)大切な人にですか?いやぁ。
まさか。
そんなんじゃありませんよ。
(マドンナ)いってらっしゃい。
いってきます。
・
(ラッパの音)・
(ドアの開く音)
(野だいこ)ハハハ!いや。
これは恐縮ですな。
(教師)それではそういう話もお伝えして。
(野だいこ)そうですな。
こちらの方のお話もありますから。
ハハハ。
(生徒)起立。
(生徒)礼。
(生徒)着席。
教科書開け。
いいか?これが球の表面積を求める公式だ。
まあこれくらいは中学生なら知っていて当然である。
・今日はこの公式を用いて応用した問題を解いてもらう。
(生徒)先生!どうして半径の2乗と円周率に4を掛けたら表面積が出るのですか?
(ざわめき)分からない。
(一同)えっ?
(生徒)ふざけるのはそのくらいにして教えてください。
ふざけてなんかいない。
今日は分からないからあらためて教えてやる。
いかがなものでしょう?生徒の質問に対して「分からない」と答えるのは。
分からないものを分からないと答えて何か問題がありますか?
(野だいこ)教師の威厳が保たれないからに決まってるじゃありませんか。
そんな当たり前のこといちいち教頭に答えていただくなんて失敬です。
いや。
でも嘘はつきたくない。
(野だいこ)はあ?
(赤シャツ)だとしても他に対処のしかたがあったのではないですか?生徒たちによからぬ影響を与えかねません。
もう一度生徒の模範になるという意味をよく考えてください。
教えてください。
(山嵐)ホントに分からんのか?こんな問題が簡単に解けるんだったら月給30円でこんな田舎には来ませんよ!
(山嵐)シーッ!そういうことは聞こえるように言うもんじゃない。
俺だけに言え。
(野だいこ)あれじゃ教師だか生徒だか分かりませんな。
(赤シャツ)なに。
単純な人間ほど扱いやすいものだよ。
(野だいこ)ごもっともです。
それに比べて堀田先生は扱いづらくて厄介ってわけですな。
それはそうとマドンナの君とのご婚約おめでとうございます。
(赤シャツ)君。
教育の場でそのような話をするなんて品性に欠けるよ。
(野だいこ)ごもっともです。
失礼いたしました。
(男性)ああ。
すいません。
(赤シャツ)いや。
これはどうも。
(女性)彼女なら昼からお休みですよ。
(女性)寄席に行くとかで。
(赤シャツ)寄席?
(音二郎)・「オッペケペッポッポー」・「権利幸福嫌いな人に自由湯をば飲ませたい」・「オッペケペオッペケペオッペケペッポペッポッポー」・「オッペケペオッペケペオッペケペッポペッポッポー」
(音二郎)・「かたいかみしも角取れてマンテルズボンに人力車」・「粋な束髪ボンネット」・「貴女に紳士のいでたちでうわべの飾りはよけれども」・「政治の思想が欠乏だ」・「天地の真理が分からない」
(音二郎)・「心に自由の種をまけそれ」・「オッペケペオッペケペオッペケペッポペッポッポー」・「オッペケペオッペケペオッペケペッポペッポッポー」
(笑い声)
(音二郎)・「芸者太鼓に金をまき」
(マドンナ)・「オッペケペオッペケペオッペケペッポペッポッポー」って。
(マドンナ)あのう。
私…。
(うらなり)教頭と婚約したそうですね。
(うらなり)2人で出掛けるのは今日で最後にしましょう。
婚約したあなたを連れ回しちゃ迷惑が掛かるでしょうし。
(マドンナ)迷惑だなんて。
(うらなり)ご婚約おめでとうございます。
ただいま。
いい湯…。
・
(障子の開く音)今のは?
(女性)ああ。
帰ってきた?もう一人の下宿人だよ。
物書きだか何だか知らないけど変わり者だよ。
物書き?
(女性)猫がどうたらって変なもの書いてる。
猫…。
へえー。
(女性)ご飯置いといたからね。
あっ。
(女性)まったく。
うちは変なのばっかり集まってくるよ。
また芋だ
(配達員)郵便です!坊っちゃん。
はい!「清へ」「松山に着いた」「先生2人に赤シャツと山嵐というあだ名を付けた」「温泉が素晴らしい」「坊っちゃんへ。
ご無事で何よりです」「ただ着いて早々あだ名はいかがなものでしょう?」「むやみに付けちゃ恨まれるかもしれません」「もし付けたら清だけに手紙でお知らせください」
(配達員)まだですか?あっ。
あのう。
もう少し。
すみません。
「手紙ですが次はできたらもう少し長い手紙を清は読みたいです」「それからお守りを入れておきます」「中に1円入れておきます」「坊っちゃんのお好きなお菓子でも買ってください」「坊っちゃんは真っすぐでよいご気性ですがただかんしゃくが強過ぎることだけが心配です」「くれぐれも乱暴はいけませんよ」「お体大切に」「まずい文章と文字でごめんなさい。
清」
(女性)ご飯です。
また芋か
東京
東京というからには期待が持てる
(従業員)いらっしゃい。
東京を知らないのか金が無いのかめっぽう汚い
天ぷらそばを持ってきてくれ。
(従業員)へい。
《うまい》天ぷらもう1杯。
(従業員)へい。
《うまい》天ぷら。
(従業員)へい。
《うまい》もう1杯。
マドンナと教頭は結婚するらしいな。
君はそれでいいのか?
(山嵐)仲むつまじくやっていたじゃないか。
(うらなり)彼女の両親は教頭のところに嫁に出せるなんてこれ以上の幸せはないと思ってるに決まってます。
(山嵐)そうか。
(生徒)起立。
(生徒)礼。
(生徒)着席。
誰が書いた?誰かそば屋にいたのか?うまいよな。
あそこのそばは。
教科書開け。
・
(生徒)天ぷら4杯は食い過ぎ。
4杯食っても5杯食っても自分の銭で食ってんだ。
文句はねえだろ!?チッ。
ったく。
(狸)どうしました?ああ…。
文句なら面と向かって言ってもらいたいもんです。
(狸)なるほど。
確か寄宿舎の宿直今夜は先生でしたね?はい。
(狸)なるほど。
(羽音)《何だ?》
(羽音)《何だ?何だ!?》何だ!バッタのくせに驚かせやがって。
なぜバッタを俺の床の中に入れたんだ?
(生徒)バッタって何ですか?バッタとはこのことだ。
そんな大きなずうたいをしてバッタを知らないとはどういうことだ?
(生徒)そりゃイナゴです。
(生徒)イナゴはぬくいところが好きだから一人でお入りになったんでしょう。
バカを言え。
バッタが一人でお入りになるなんてそんなことあるわけないだろ。
(生徒)イナゴです。
なぜこんないたずらをしたんだ?言え!
(生徒)入れんものを説明しようがないです。
お前ら人に金借りといて返さないのか?
(一同)えっ?
(生徒)何の話ですか?
(生徒)借金ですか?バッタのことに決まってんだろ!
(生徒)イナゴです。
(生徒)意味分かりません。
(生徒)眠いです。
おい。
ちょっ…。
おい!おい!うわ。
なっ…。
この。
うっ。
何で蚊帳が落ちたんだ?
(生徒)知りません。
(生徒)勝手に落ちたんじゃないですか?勝手に落ちるわけないだろう。
(生徒)力を入れ過ぎたんじゃないですか?そんなことで落ちるわけあるか!?
(一同)あります。
何だと?
(生徒)乱暴はいけません。
(生徒)眠いです。
まだ話は終わっちゃいない!
(一同)えーっ。
寝るな!
(男性)こちらです。
(赤シャツ)どうしたというんです?こいつらが俺の寝床にバッタを入れたんです。
(赤シャツ)たかがいたずらじゃありませんか。
君だって学生のときいたずらくらいしたんじゃないですか?はい。
しました。
(赤シャツ)だったらそんなにむきにならないでください。
いたずら結構。
(赤シャツ)そうです。
そのような広い心で受け止めれば怒りも収まるでしょう。
うん。
収まるもんですか。
(赤シャツ)えっ?俺はいたずらをされて怒ってるんじゃありません。
(赤シャツ)じゃあ何に怒ってるんですか?嘘をついているからです。
(赤シャツ)嘘?いたずらをやっても誰も名乗り出ようとはしない。
誰も罰を受けようとはしない。
いたずらには罰は付き物だ。
罰があるから気持ちよくいたずらができる。
いたずらだけで罰を受けないのはひきょう者だ。
人から平気で金を借りて返すのはごめんだと言ってる連中と同じだ。
(赤シャツ)君にはいつも驚かされます。
俺は真面目に話をしてるんです。
本当に君は面白い人ですね。
この件に関しては後日会議で話し合うということでどうでしょう?寄宿生たちは皆追って処分が決まるまでは今までどおり授業を受けるように。
(一同)はい。
(赤シャツ)それでよろしいですね?先生。
いいでしょう。
(生徒)何だ?あいつ。
公式も分からない数学教師の言うことは全然分からない。
・
(ドアの開く音)
(狸)眠れていないようですしお疲れでしょう。
今日は休講にしますか?一晩寝れなくて授業ができないんだったら頂戴した月給は学校へ割り戻します。
(狸)なるほど。
・
(ラッパの音)
(野だいこ)まったく朝から教頭の手を煩わせるなんて迷惑な話です。
(赤シャツ)フフフ。
彼は本当に面白い男だね。
寝るな!・
(ドアの開く音)
(狸)どうしました?
(男性)校長。
何をしても起きんのです。
(狸)なるほど。
(赤シャツ)実にいい景色だ。
(野だいこ)絶景でげす。
(赤シャツ)あの松を見たまえ。
幹が真っすぐで上が傘のように広がって。
うん。
ターナーの絵にありそうだね。
ターナー?
(野だいこ)ごもっともです。
いや。
まったくターナーですな。
どうもあの曲がり具合ったらありやせんね。
ターナーとは何だ?
ターナーそっくりでげす。
聞かなくても困らないから黙っといてやる
(野だいこ)どうです?教頭。
これからあの島をターナー島と名付けようじゃありませんか。
(赤シャツ)それは面白い。
(野だいこ)ありがとうございます。
何が楽しいのか知らないが赤シャツの太鼓持ちか
野だいこだな
(赤シャツ)ところで君。
学校は慣れましたか?さあどうでしょう?君が来て生徒も大いに喜んでいるから張り切ってやってください。
喜んでるとは思えません。
いえいえ。
とても喜んでいるんですよ。
それはそれは大喜びでげす。
そうとはまったく思いません。
(赤シャツ)生徒は君を大変歓迎しているのだがそこには色々な事情があってね。
どんな事情です?
(赤シャツ)まあ自然と分かってくるとは思いますが。
相手の表面的な人のよさに警戒を解くと思わぬところからつけ込まれますよ。
さっぱり意味が分かりません。
(赤シャツ)ある人物が生徒に人望があるのをいいことに生徒たちを唆してあのような行動を取らせているのです。
えっ?君の前任者も同じ目に遭ってる。
ある人物ってそれは誰なんです?表面的には新米教師に親切に下宿なんぞ世話したりしてやすけどね。
ハハハ。
山嵐が?
(野だいこ)あっ?えっ。
あっ…。
堀田先生が?
(赤シャツ)それは証拠のないことだから僕の口から言うわけにはいかないのですが。
《山嵐の野郎》取っておいてください。
なぜだ?せんだっての氷水代です。
(山嵐)何を言ってるんだ?つまらん冗談はするな。
冗談じゃない。
私はあなたに氷水をおごってもらう理由がありません。
(山嵐)なぜ思い出したように今時分返すんだ?今時分でもいつ時分でも私はあなたにおごってもらうのが嫌なんです。
(野だいこ)やはり単純な男でしたね。
バカとはさみは使いようでげす。
(赤シャツ)君君。
それは言い過ぎなんじゃないかな?品性がない。
ごもっともです。
失礼いたしました。
・
(山嵐)おい。
何ですか?
(山嵐)氷水代。
1銭5厘だ。
またですか?
(山嵐)やっぱり納得できない。
なぜ返す?ですから俺はおごられるのが嫌なんですよ。
(山嵐)だったらおごられる前に拒否すればいい。
あのときはよかったんですよ。
(山嵐)だったらそれでいいじゃないか。
それじゃ俺の顔がつぶれちまう。
何でつぶれるんだ?嘘つきにおごってもらいたくありません。
嘘つき?誰が嘘つきだ!自分の胸に聞いてみたらいいじゃないですか。
(山嵐)上司に向かって嘘つきとは何だ!?上司だろうと何だろうと言いたいことは言わせてもらう。
嘘つきは大嫌いだ!嘘つき呼ばわりされては俺の顔がつぶれる。
俺は嘘なぞついていない。
嘘をついていない俺に嘘つきと言うとは君の方こそ嘘つきだ!
(女性)ちょっとおやめよ。
ねえ。
嘘つきは君だ!俺は嘘つきじゃない!
(マドンナ)やめてください。
嘘つきは大嫌いだ。
(山嵐)俺のどこが嘘つきだ?嘘つきは嘘つきだ!
(山嵐)だから何の話だ!?バッタのことに決まってんじゃないか!
(山嵐)やるか?
(鈴の音)《坊っちゃん》《乱暴だけはいけません》
(山嵐)いいか?1銭5厘は絶対に受け取れん。
(記者)ケンカになったら記事にできたのになぁ。
(男性)ホント。
(女性)あら。
今日は早いのね。
ご飯は?大丈夫です。
どうせ芋だ
(野だいこ)そうでげした。
失礼いたしやした。
ああ。
おはようございます。
(山嵐)おい。
(狸)皆さん。
本日放課後イナゴ事件の生徒の処分に関する会議を開きます。
それでは今日も一日よろしくお願いします。
(一同)よろしくお願いします。
・
(ラッパの音)
(赤シャツ)生徒の問題というのは教師の指導力に関わります。
つまり生徒を責める前にわれわれが反省しなければなりません。
ですからいたずらという表面的な部分だけに目を向けて厳重な制裁を加えるのはかえってわが校のためによくないかと思われます。
(狸)なるほど。
何かご意見がなければ…。
(赤シャツ)何でしょう?《しまった》《坊っちゃんはかんしゃくを起こすと言葉が出なくなってしまいます》ですからあのう…。
悪いのは生徒たちに決まってます。
(赤シャツ)それはただの教師の責任逃れじゃありませんか?いや…。
悪いものは悪いんです。
(赤シャツ)悪いものは悪い?生徒はまだ嘘をついたままです。
(赤シャツ)それは生徒だけが悪いという主張の理由になっていません。
論理立てて話していただかないと議論になりません。
違いますか?
(野だいこ)ごもっともです。
教頭のおっしゃるとおりでございます。
生徒に謝らせるしかありません。
(赤シャツ)論理的な説明もなく力ずくで謝罪させたら余計反発を招くことになりかねません。
だったら…。
だったらもう退学させるべきだ!
(赤シャツ)フフフ。
さらに力ずくで事を進めてどうするんですか?わが校の不名誉を世間にさらすことになります。
(野だいこ)ごもっともです。
(赤シャツ)そもそも退学とは教育者としての責任を放棄し生徒を放り出すという安易な選択です。
教育者として許されることではありません。
(野だいこ)ごもっともです。
厳重な罰はかえって反動を起こしかねません。
私は教頭のご意見に徹頭徹尾賛成いたします。
徹頭徹尾反対です!
(教師)私も教頭のご意見に賛成します。
(教師)私も穏便説に賛成です。
(教師)教頭と同じ考えです。
(教師)教頭に賛成します。
(教師)僕もです。
(教師)僕もです。
私もです。
(狸)なるほど。
皆さん。
意見は出揃いましたかな?そのようですね。
いや。
でも…。
(山嵐)私は…。
教頭およびその他先生方の意見に不同意です。
この事件はどの点から見ても50名の寄宿生が新米教師をバカにし愚弄しようとしていたとしか思えません。
教頭はその責任を教師にお求めになってるようだが今回のような新米教師を愚弄する生徒を寛大に扱っては生徒にとってよくありません。
教育の精神は単に学問を教えるということではありません。
自分勝手な行いを正し正直な精神を育てることだと思います。
もし反動が恐ろしいなどと言った日には生徒の行いをいつ正せるか分かりません。
これを見逃すくらいなら教師など必要ないと思います。
《そのとおり》
(山嵐)以上の理由で寄宿生一同を厳罰に処し謝罪させることが最も適切な処置だと思います。
(狸)なるほど。
(教師)会議で意見が分かれたのは初めてです。
(教師)校長はどうするつもりなんでしょう?
(教師)そりゃあ教頭の意見を尊重するんじゃないのか?
(教師)そうだろうな。
(教師)校長は自分では何も決めませんから。
(教師)教頭の意見で決まりだな。
(狸)えー。
処分が決まりましたのでお伝えします。
(狸)教頭のおっしゃるとおりわれわれ教師にも責任はあります。
よって今回は処分なしとします。
(狸)ただし…。
(狸)堀田先生がおっしゃるとおり生徒のためを思えば謝罪はさせるべきです。
生徒たちに謝罪をさせましょう。
(赤シャツ)それでは生徒を代表して。
(生徒)はい。
(生徒)「3日前の夜宿直室にイナゴが入りこみました」「その件におきまして宿直の先生が大変不愉快な思いをされたとのことでした」「われわれ生徒一同といたしましても大いに反省する必要があると感じております」「よってこれからはこのようなことが二度とないようわれわれ生徒一同心して学生生活を送っていきたいと存じます」
(生徒)寄宿生一同起立。
(一同)このたびは本当に…。
もういい。
謝ってもらう必要はない。
(赤シャツ)ど…どういうことですか?生徒たちはこうして素直に謝罪に応じてるじゃないですか。
いたずらを認めていないなら謝罪も何もない。
お前ら本当に心底悪いって思ってんのか?言ってることと心の中とが違ってる。
悪いと思っていないなら謝ってもらわなくて結構だ。
嘘はもうこりごりだ。
(生徒)謝らなくていいなら最初から謝らせるなよ。
なあ?
(生徒)ホントだよ。
(生徒)教頭がいいって言うんだからいいんだよな?
(生徒)まあそうだな。
・
(赤シャツ)校長。
(赤シャツ)生徒たちですがしっかり反省してるようでした。
(狸)ああ。
なるほど。
お疲れさまでした。
(赤シャツ)どうかされましたか?
(狸)いやいや。
実は古賀先生のお母さまに頼まれていたことがあるんです。
(赤シャツ)何でしょう?
(狸)去年古賀先生のお父さまが亡くなられたではないですか。
借金がいくらかあって暮らし向きが苦しくなったと相談を受けました。
(赤シャツ)それは古賀先生も大変ですね。
(狸)何とか古賀先生の給料を上げてあげたいと考えたのですが今の状況では昇給は難しいんです。
何とかしてあげたいんですがね。
校長。
その件は僕に任せていただけませんか?
(狸)なるほど。
お願いします。
(赤シャツ)はい。
(生徒)前へ!
(生徒)おい。
(生徒)謝れよ。
(生徒)すみません。
(野だいこ)悪いと思ってないなら謝ってもらわなくて結構だ。
・
(戸の開く音)
(野だいこ)あっ。
うまい。
団子。
もう一皿。
(従業員)はい。
(生徒)起立。
(生徒)礼。
(生徒)着席。
誰だ?やっぱりだんまりか。
お前ら相変わらずだな。
でも残念だったな。
これは間違ってる。
(一同)えっ?おまけしてもらったから2皿で6銭5厘だ。
(一同)えーっ?残念だったな。
(生徒)おまけは数学の公式で求められますか?おまけはしてもらった者勝ちだ。
数学なんぞ役に立たん。
(生徒)そんなのずるいや!なあ?向こうが勝手にしてくれたんだ。
ずるいことあるか。
(うらなり)あっ。
(赤シャツ)ああ。
そのまま。
(赤シャツ)かねてから君のお母さまの希望であった昇給の件ですが。
尽力させてもらいました。
わが校でこれだけ頑張っていただいている古賀先生のためですから。
(赤シャツのせきばらい)君の昇給かないましたよ。
おめでとう。
・
(ドアの開く音)どうした?
(赤シャツ)さあさあ。
召し上がってください。
いただきます。
うん。
うまい。
実は君が来てくれてから前任者より生徒の成績が上がっているんです。
へえー。
そうですか。
これからも期待してるからそのつもりで勉強していただきたい。
勉強なんて。
今よりはできません。
今くらいで十分です。
それならできます。
頼もしい。
フフフ。
君の待遇のことを校長に掛け合ってみます。
えっ?月給が上がるってことですか?はい。
今度転任者が出るのでそこから融通できそうですしこの先君にはもっと重大な責任を持ってもらうことになるかもしれませんから。
そうですか…。
何か不都合でも?月給は上がれば上がる方がいいです。
あっ。
ハハハ。
清も喜ぶに違いない
うまい。
(マドンナ)おはようございます。
おはようございます。
(マドンナ)ホントは大切な人じゃないんですか?まあそうです。
教頭と結婚するそうですね。
おめでとうございます。
(マドンナ)あっ。
じゃあいってきます。
(マドンナ)いってらっしゃい。
郵便屋さん。
・
(配達員)はい。
すみません。
(配達員)はい。
ゆう…。
(配達員)「ゆ」?ちっちゃい「ゅ」ですね。
「ゅ」「ゅ」小さい。
(配達員)ちっちゃい「ゅ」はい。
はい。
すいません。
「坊っちゃん。
昇給おめでとうございます」「清はうれしいです」郵便屋さん。
(配達員)はい。
すいません。
「昇給もご立派ですが坊っちゃんがご立派なのはその真っすぐなご気性です」
(赤シャツ)さあさあ。
さあ。
コスズ。
もう1軒と参りましょう。
(女性)えっ?先生。
まだ飲まれるんですか?
(赤シャツ)何だい?コスズ。
帰るのかい?
(女性)いや。
(赤シャツ)ハハハ。
教頭。
(せきばらい)
(赤シャツ)このたびは古賀先生が栄転されることになりました。
赴任先は九州の延岡です。
(一同)九州?延岡ですか。
遠いな。
延岡とは?どこでしたっけ?かなり田舎だ。
(赤シャツ)延岡の中学にとてもいい待遇で古賀先生を迎えていただけることになりました。
(山嵐)だまし討ちにして無理に延岡に転任させる行いは生徒の模範になるのですか?だまし討ち?
(赤シャツのせきばらい)
(赤シャツ)あくまで僕は古賀先生のご家族のご希望に沿うよう尽力したつもりです。
そうですよね?古賀先生。
(うらなり)はい。
(山嵐)とうていそうは思えません。
(赤シャツ)次に…。
(山嵐)話はまだ終わっちゃいません。
(赤シャツ)最近生徒の風紀が乱れていますが何よりも教師が模範にならなければなりません。
先生方には温泉街をふらつかないなど行動を慎んでいただきたいと思います。
でも教頭は温泉街にいらっしゃったじゃないですか。
(赤シャツ)僕が?ゆうべ見ました。
(赤シャツ)夜はどこにも出掛けていません。
暗かったけどちゃんと見ました。
(赤シャツ)暗かったんですね?われわれ教師は物質的な快楽を求めることではなく高尚な精神的娯楽を求めてまいりましょう。
ごもっともです。
例えば釣りに行くとか文学書を読むとかまた俳句を作るとかですね。
(赤シャツ)はい。
芸者に会うことが精神的娯楽なんでしょうか?どうなんですか?
(赤シャツ)言うまでもなく控えるべきことです。
でも教頭はゆうべ温泉街で芸者と会ってましたよね?
(赤シャツ)ですからゆうべはどこにも出掛けていません。
人違いです。
嘘をつかないでください。
(赤シャツ)この際飲食店には全面的に立ち入らないようにしましょう。
ごもっともです。
例えばそば屋だのだんご屋だのですね?そんなバカな。
(赤シャツ)もっとも送別会などのときは特別です。
古賀先生の送別会は盛大にやらせていただきます。
アハハ。
(野だいこ)アハハ。
次に生徒の進路指導の件ですが…。
(坊っちゃん・山嵐)話はまだ終わっちゃいない。
古賀先生のお母さんが校長に昇給を頼んでるということを聞いた教頭はそれを利用して古賀先生を延岡に飛ばした。
古賀先生は月給が上がらなくてもいいからここにいたいって言ったんだがもう後任の先生が決まってるから無理だと言われたそうだ。
そりゃだまし討ちじゃないか。
(山嵐)どこをどう取ってもだまし討ちだ。
何てひきょうな。
(山嵐)今でもマドンナと古賀先生が思い合ってることを嫉妬してるんだ。
自分は芸者と通じてるくせにそば屋もだんご屋も駄目なんて。
自分は芸者ですよ。
(山嵐)いいわけないだろ。
ひきょうな手を使って俺の月給を上げようだなんてもっての外だ。
月給を上げてやると言われたのか?転任者が出るから融通ができるって。
あっ。
そういえばもっと重大な責任を持ってもらうとも言われました。
さては教頭。
数学主任の俺を免職させるつもりだな。
どこまでひきょうなやつなんだ。
許せん!
(山嵐)ああ。
免職なんかされてたまるか!俺だって月給なんて上がってたまるか!断ってくる。
(山嵐)おう。
やっぱりおごってもらいます。
(赤シャツ)悪いのですがただ今来客中なんです。
またにしていただけますか?ここでいいです。
すぐ済みます。
何だっていうんです?月給を上げてもらう件ですが取り消します。
(赤シャツ)えっ?上げてもらわなくて結構です。
上がったら上がっただけいいっておっしゃったじゃありませんか。
あのときと今では話が違う。
(赤シャツ)どう違うんです?古賀先生を九州に転任させてその月給の上前をはねるなんてそんな不人情なことできません。
(赤シャツ)何度も言いますが転任は古賀先生にとってとてもいい話です。
君が昇給を遠慮することはありません。
むしろ正当な理由もないのに考えをあっちこっちに変えては君の信用に関わりますよ。
金や権力で俺の心は変わりません。
人は好き嫌いで動くもんです。
いくら月給上げていい暮らしをしたってその裏でつらい思いをしてる人がいるんだったらそんなものうれしくも楽しくも何ともありません。
月給を上げてもらう話は断ります。
さようなら。
(赤シャツ)すみません。
お騒がせして。
(マドンナ)あっ。
いえ。
(赤シャツ)さあどうぞ。
いやぁ。
うちの新米教師で悪い男ではないのですが思い込みが激しくって。
あっ。
そうそう。
これ読んでみてくださいね。
あの二葉亭四迷が翻訳したロシア文学を代表する文豪ツルゲーネフの作品です。
(マドンナ)はい。
やっぱり愉快だ
(生徒)起立。
(生徒)礼。
(生徒)着席。
誰もいないのに泳いで何が悪い?
(生徒)「泳ぐべからず」ってちゃんと書いてあります。
そうか。
そう言われてみるとこれは俺が悪い。
(一同)えっ!?謝ります。
(ざわめき)教科書開け。
どうした?
(ざわめき)
(生徒)教師は生徒に謝らんもんです。
(一同)そうだ。
そうだ。
教師が生徒に謝って何の文句があるんだ?教師だろうと何だろうと悪いもんは悪い。
教科書を開け。
(一同)はい。
復習問題だ。
直角三角形の…。
(赤シャツ)古賀先生。
このたびはご栄転おめでとうございます。
(赤シャツ)古賀先生は温厚で優しく責任感の強い人柄で懇切丁寧な授業も定評がありわが校になくてはならない教師でいらっしゃいました。
(赤シャツ)そんな古賀先生がわが校を去られるのは誠に残念です。
個人としてもこのよき友を失うのは僕にとって大きな不幸でございます。
(赤シャツ)しかしながらご本人の希望であれば無理にお引き留めするわけにはいきません。
古賀先生。
新天地でのさらなるご活躍お祈り申し上げます。
(山嵐)私は古賀先生に「転任おめでとう」と声を掛ける気にはなれません。
(山嵐)そんな中唯一の救いは延岡に行けば心にもないお世辞を振りまいたり良識のある人間を装いながら人を欺いたりする西洋かぶれのハイカラ野郎のペテン師などがいないであろうことです。
(山嵐)古賀先生の人柄は延岡でも歓迎されることでしょう。
輝かしい明るい未来が待っていることでしょう。
いってらっしゃい。
古賀先生。
(拍手)
(狸)では古賀先生。
お願いします。
(うらなり)はい。
(うらなり)このたびは一身上の都合で九州に参ることになりました。
私のためにこのような送別会を開いていただき誠に感銘の至りに堪えぬしだいです。
(うらなり)その上温かい送別のお言葉を頂戴し心より感謝申し上げます。
これから遠方へ参りますがこれまでと変わらずご愛顧のほどを願います。
いらっしゃいませ。
(男性)いよいよマドンナも結婚か。
(従業員)そうですよ。
(女性)先生。
お一つどうぞ。
(赤シャツ)2つでも3つでも。
実に顔色が悪い
昔うちの近所に同じような色艶のおじさんがいた
清に「なぜあんな顔なのか?」と聞いたらうらなりのトウナスばかり食べているからだと教えてくれた
こいつはうらなりだ
もっともうらなりとは何のことか今もって知らない
(うらなり)一つ頂戴いたしましょう。
これは古賀先生のための送別会じゃありませんよ。
みんなが酒を飲んで遊ぶためです。
(うらなり)言われなくても分かっています。
じゃあ何でそんなふうにしてるんですか?
(うらなり)こうすれば事が丸く収まるからです。
楽しいですか?誰もがあなたみたいに思ったとおりに行動できるわけじゃありません。
月給が上がる理由に腹が立ってももらっておくものです。
そんなバカみたいなことができるか!できませんよ。
きっと後悔する。
するもんか。
(うらなり)するよ絶対。
絶対するもんか!後悔する。
正直者はバカを見るに決まってる。
正直者がバカを見るんだったら嘘つきは大バカを見るに決まってるじゃないですか。
あなたは何も分かっていません。
胸くそが悪いです。
こんな茶番もうやめて一緒に帰りましょうよ。
(うらなり)私のための送別会です。
校長だっていつの間にかいませんよ。
楽しくないなら帰りましょう。
(うらなり)帰るわけにはいきません。
じゃあ俺は帰ります。
さようなら。
(山嵐)悪いが俺も帰る。
延岡。
気を付けて。
(うらなり)お世話になりました。
(騒ぎ声)
(笑い声)
(女性)もう1軒行きましょうか?行きましょう。
(教師)吐かないでくださいよ。
(野だいこ)ごもっともです。
(うらなり)こんばんは。
(マドンナ)こんばんは。
(マドンナ)どうぞ。
(うらなり)送別会の帰りなんです。
僕九州に転任することになって。
(マドンナ)教頭さんが決めたっていうのは本当なんですか?
(うらなり)はい。
昇給もするし栄転です。
(マドンナ)おめでとうございます。
(うらなり)ありがとうございます。
(うらなり)嫁入りの準備は進んでますか?
(マドンナ)はい。
(うらなり)教頭との結婚ならご両親も安心だし喜んでいらっしゃるでしょうね。
(うらなり)僕もすごくよかったと思います。
あなたの結婚相手が教頭で。
(うらなり)教頭は優秀だし面倒見もいいし。
それから教養もあるし人望もあるし。
それから何といっても生徒たちの最高の模範だし。
それから…。
それから…。
(うらなり)それから…。
(マドンナ)古賀さん…。
(うらなり)好きです。
僕はあなたのことが好きです。
ずっと好きでした。
毎日毎日あなたのことを考えると胸が苦しくなる。
僕はあなたのことが大好きです。
(うらなり)さよなら。
明日九州にたつことになりました。
(狸)なるほど。
お気を付けて。
(うらなり)はい。
(うらなり)皆さん。
ありがとうございました。
(一同)いってらっしゃい。
(赤シャツ)それでは皆さん。
授業ですよ。
(うらなり)あっ。
あのう。
お世話になりました。
いや。
俺は何も…。
(うらなり)告白しました。
(うらなり)やっと本当の気持ちを話せました。
正直になるのはなかなか気持ちのいいものですね。
(うらなり)これで後悔することなく九州に行けます。
そうですか。
(うらなり)ありがとうございました。
・
(野だいこ)ごもっともです。
・
(赤シャツ)ではそういうことで。
(赤シャツ)晴れ晴れとした空ですね。
(野だいこ)ごもっともです。
すがすがしい。
(生徒)起立。
(生徒)礼。
(生徒)着席。
教科書を閉じろ。
数学の教科書なんて必要ない。
この町で生きていくには数学なんかよりこっちの方を学んだ方が何倍も役立つ。
でも俺にはこんなもんさっぱり分からん。
俺は嘘をつくことが大嫌いだ。
(生徒)先生。
試験も近いし授業…。
勉強をして卒業すれば立派な教育を受けたことになるのか?教育もない身分もない清の方がよっぽど上等だ。
(生徒)清って誰だよ?意味が分からない。
なあ?
(生徒)前へ!
(生徒)おい!
(生徒)謝れ。
謝らない。
(生徒)はっ?
(生徒)「このはしわたるべからず」
(生徒)何?一休さんだよ!
(生徒)師範生が何だ!
(山嵐)何てこった。
おい。
やめろ!乱暴はよせ!
(野だいこ)うちの生徒です。
どうしましょう?
(赤シャツ)様子を見ましょう。
(野だいこ)えっ?
(赤シャツ)これはこれは。
(記者)教頭。
何ですか?この騒ぎは。
(赤シャツ)どうやらわが校の教師2名と生徒たちが。
(記者)教師2名!?写真だよ写真。
やめろ!離れろ!
(巡査)どうしました?
(赤シャツ)うちの教師と生徒が。
申し訳ありません。
(巡査)やめんか!
(シャッター音)
(女性)おはよう。
うっ!?痛え。
(女性)ご飯です。
やっぱり芋か
(女性)出てるよ。
「教師2名がケンカを指揮」!?「中学の教師堀田某と近ごろ東京から赴任してきた生意気なる某2名の教師により歴史ある中学の善良従順な気風が損なわれる事態となった」くそでも食らえ!
(狸)なるほど。
(女性)大丈夫かい?大丈夫です。
いってきます。
(マドンナ)おはようございます。
おはようございます。
清っていいます。
(マドンナ)えっ?手紙の相手。
顔はしわくちゃだらけのばあさんだけどどこに連れて出しても恥ずかしくない。
気立てのいいあんな立派な女はどこにもいません。
俺のこといつも褒めてくれるんです。
がきのころから学校でも家でも駄目だ駄目だって言われてきたのに。
手伝いの清だけは欲がないとか真っすぐな気性だとか。
正直者だってそう褒めてくれるんです。
だから俺は損をしてもバカを見たって正直でいられるんです。
人にも自分にも嘘をつくのだけはまっぴらごめんです。
いってきます。
(マドンナ)いってらっしゃい。
・
(汽笛)おはようございます。
(山嵐)おはよう。
辞職願書いてきました。
(山嵐)俺もだ。
(生徒)起立。
(生徒)礼。
(生徒)着席。
(生徒)先生。
それ…。
球の表面積の公式の導き方だ。
あらためて教えるって言っただろ?半径がxの球面の表面積をsxとする。
そこに微小な厚みdxを掛けてゼロからrまで積分すれば半径rの球の体積が求められる。
(赤シャツ)このたびは大変な事件に巻き込まれてしまいました。
本来ならば厳しい処分。
場合によっては退学もいとわないところです。
しかし2人の教師の扇動によって巻き込まれた君たちは被害者に他なりません。
よって今回の件は処分なしとします。
(赤シャツ)今後も君たちの経歴に傷が付かぬよう心して日々過ごしていただきたい。
(赤シャツ)以上。
(赤シャツ)先生?
(野だいこ)あっ。
では解散。
(山嵐)一身上の都合で辞めさせていただきます。
同じく一身上の都合で辞めさせていただきます。
(狸)なるほど。
最後まで何を考えているか分からない校長だ
あだ名は狸だ
(山嵐)お世話になりました。
お世話になりました。
・
(ドアの開閉音)
(男性)旦那。
いかがですか?
(うらなり)結構です。
(男性)またお願いします。
(生徒)先生。
(赤シャツ)お見送りをさせていただきます。
お世話になりました。
(生徒)先生。
あれは俺たちが…。
バッタ。
ああ…。
あのバッタは何ていうんだよ?
(生徒)イナゴです。
そうか。
イナゴか。
お前らイナゴ入れたよな?
(一同)はい。
そうか。
忘れずに覚えておこう。
(生徒)先生…。
蚊帳は?蚊帳は落としたのか?
(一同)落としました。
そうか。
うまいことやるもんだな。
(せきばらい)
(赤シャツ)さあ皆さん。
(一同)よいしょ。
せーの。
よいしょ。
(鈴の音)《坊っちゃん》《でもやっぱり坊っちゃんは真っすぐでよいご気性です》
(うらなり)いいんですか?
(マドンナ)明治の女は自分に正直じゃないと。
なるほど。
お世話になりました!何?
(男性)あなた教師に向いてます。
きっといい教師になると思います。
教師。
辞めました。
(男性)そうですよね。
お世話になりました。
(男性)あのう。
(男性)あなたのおかげで面白い小説が書けそうです。
そうですか。
・
(女性)あっ。
ちょっちょっ…。
ちょっと待って。
ちょっと待って。
(女性)お弁当。
芋じゃない。
えっ?えっ。
あっ。
(女性)気を付けてね。
はい。
ありがとうございました。
(女性)あんた。
いいご気性だね。
わが校の気風を乱す教師2名の辞職によりわが校は再出発をすることになります。
君たちには多大な迷惑を掛けることになり教頭として責任を感じています。
これからはわが中学の名に恥じぬよう君たちと共にやっていきたいと思っています。
なお新しい数学教師が決まるまでは僕が代理で授業を行います。
以上。
(赤シャツ)では解散。
・
(汽笛)
(生徒)起立。
(生徒)礼。
(生徒)着席。
誰が書いたんですか?
(赤シャツ)誰がやった?名乗り出ろ。
(赤シャツ)お前か?
(赤シャツ)どういうことだ?
(赤シャツ)お前ら。
こんなことをして許されると思ってるのか?
(赤シャツ)僕を誰だと思っている?教師を愚弄するとは何事か!お前ら。
全員退学処分だ!
(赤シャツ)こいつら全員退学にする。
どうした?それではわが校の不名誉をさらすことに。
(赤シャツ)お前も退学だ。
(狸)なるほど。
なるほど。
(狸)彼はいい模範になってくれましたね。
彼?ごもっともです。
またやっちまった。
坊っちゃん。
清。
俺…。
おかえりなさい。
おう。
ただいま。
人を殴るのはよくありません。
分かってるよ。
でもやっぱり坊っちゃんは真っすぐでよいご気性です。
清。
俺もうがきじゃないんだからさ。
お世辞はやめろって言っただろ。
そういうところがよいご気性なんですよ。
んっ。
お代わり。
はい。
その後ある人の周旋で鉄道の技術者になった
月給は25円で家賃は6円だ
清も満足の様子であったがそれから間もなく肺炎にかかって死んでしまった
死ぬ前日。
俺を呼んで「坊っちゃん。
後生だから清が死んだら坊っちゃんのお寺へ埋めてください」
「お墓の中で坊っちゃんの来るのを楽しみに待っております」と言った
だから清の墓は小日向の養源寺にある
(光一)『堂本兄弟2016』
(一同)あけましておめでとうございます。
2016/01/03(日) 21:00〜23:30
関西テレビ1
二宮和也主演!新春ドラマスペシャル 「坊っちゃん」[字][デ]
「人にも自分にも嘘をつくのだけは、まっぴらごめんです!」正直者だが破天荒な教師が繰り広げる、夏目漱石原作の痛快学園ドラマを、豪華キャスト陣で映像化!
詳細情報
番組内容
親譲りの無鉄砲と真っ直ぐ過ぎる性格で子供の時から問題ばかり起こし、周囲からいつも問題児として扱われてきた坊っちゃん(二宮和也)。唯一、住み込みの女中・清(宮本信子)だけは立派な気性だと褒めてくれ、坊っちゃんのことを何かとかばってくれていた。
物理学校を卒業した坊っちゃんは、校長(佐藤浩市)から松山の中学に教師の口があるが行かないかと勧められる。鎌倉より遠くに行ったことがない江戸っ子の坊っちゃん
番組内容2
だが、特に就職のあても無かったので松山に赴任することを決める。
着任早々、校長(岸部一徳)から生徒の模範になるようにと言われ、模範とはどういうことか聞く。校長の代わりに教頭(及川光博)が教えると「できません」と答えて、教師たちをあぜんとさせる。
下宿先に向かう途中、坊っちゃんは同僚の英語教師(山本耕史)が町一番の美人・マドンナ(松下奈緒)と密かに思い合っていて、しかもその女性を教頭が狙っている
番組内容3
という話を聞く。田舎にもいろいろとあるものだと思いつつ下宿先へ着くと、なんだか隣の男(又吉直樹)が気に掛かる。
そして、いよいよ教べんを執ることになる坊っちゃん。しかし生徒たちとは、とんとうまくいかない。
やがて、マドンナの両親(小林薫・浅野ゆう子)を巻き込んだ赤シャツの卑劣なはかりごとを知り、ずるいことが許せない坊っちゃんの快刀乱麻な大暴れが学校を、街を、人々を変えていく—。
出演者
二宮和也
松下奈緒
古田新太
八嶋智人
山本耕史
及川光博
岸部一徳
宮本信子
他
スタッフ
【原作】
夏目漱石『坊っちゃん』
【脚本】
橋部敦子
【プロデュース】
長部聡介
小原一隆
【演出】
鈴木雅之
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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