(ペン先の音)
(テーマ音楽)数多くのヒット作を生み出す漫画家…その新たなプロジェクトがこの「漫勉」です。
漫画家は小さなペン先から壮大なドラマを生み出します。
ふだんは立ち入る事ができないその仕事場を密着撮影させてもらおうというのです。
取り出したのは名作「ゴルゴ13」。
そう今回はその作者さいとう・たかをさんに密着したんです。
32年前の「ゴルゴ13」をめくると浦沢さんの作品がありました。
デビュー作「BETA!!」。
この本は初めて浦沢さんの漫画が世に出た記念すべき一冊なんです。
当時「ゴルゴ13」を特集したこの雑誌には新人の短編を載せるコーナーがありました。
浦沢さんはデビュー直後そのコーナーで実験的な漫画を次々と描いたのです。
そしてデビュー作から2年後初めての連載のチャンスを手にします。
78歳の今も執筆を続ける漫画界のレジェンドです。
1955年漫画のれい明期にデビュー。
描き続ける事60年目。
数々の作品を世に送り漫画文化の基礎を築いてきました。
代表作が「ゴルゴ13」です。
国籍年齢全てが謎に包まれた殺し屋。
コードネームは「ゴルゴ13」。
どんな難しい依頼も神業のような狙撃で冷徹にこなします。
47年間一度も休まず連載。
累計売り上げは2億冊を超えます。
今回はその執筆現場に4日間密着する事ができました。
そこで発見したのはあの「ゴルゴ13」が生まれる瞬間。
そして全く燃え尽きる事のない情熱でした。
1か月後撮影された映像を見ながら2人が対談します。
このマークだね。
対談場所はさいとうさんが設立した漫画の制作会社です。
お邪魔します!
(さいとう)おっいらっしゃい。
すみませんなんか…。
ご苦労さま遠路。
面倒くさいお話を…ありがとうございます。
早速執筆部屋を見せてもらいます。
すごい。
あぁ…。
フハハハ!浦沢さん少年の目になってますよ。
そうなんですよ。
だからもう自分の…そういう事ですね。
アハハハハ!いやいやいや。
そんな伝説があるんですね!真実はどうなんでしょうか。
さあ漫画界のレジェンドさいとう・たかをさんの創作の秘密がいよいよ明らかになります。
ボロっちくなった。
おはようございます。
ご苦労さま。
あっあっ…。
すごいですね。
(笑い声)へえ〜!あっほんとだ。
あぁそうですか。
(笑い声)いよいよさいとうさんが描き始めますよ。
扉絵にゴルゴ13を描きます。
人物のおおまかな輪郭アタリを描きました。
そしてすぐにペンを持ちます。
はいはいはいはい。
下描きなしだからこそ微妙な表情を描き分けられるんですね。
フフフフフフ!見ているだけでヒヤヒヤしますね!最初の頃は?ハハハハ。
よく焦がした?日本中の人が知るあの「ゴルゴ13」がペン先から生み出された瞬間。
衝撃です。
続いてカラーページ用に色を塗る作業です。
手に持ったのは日本画の筆。
水彩絵の具を使います。
やっぱりね…いやでもね…そうそうそう。
(笑い声)
(笑い声)いやいやいや…さいとうさんが生んだ不朽の名作「ゴルゴ13」。
時代と共にさまざまな事件や社会情勢が作品に反映されてきました。
しかしドラマを動かすのはいつの時代も変わらない人間の欲望や憎しみそして愛です。
その中でぶれる事なく自分のルールに従って仕事をするゴルゴ13が描かれます。
半世紀近く描いてきた人間の根源に迫るドラマ。
時代に流されない「ゴルゴ13」の在り方はそのままさいとうさんの創作の姿勢に通じています。
78歳を迎えたさいとうさんはもう一つ作品を連載しています。
連載22年目を迎えた人気作品です。
その主人公鬼平こと長谷川平蔵の執筆も撮影する事ができました。
まずはアタリを描きます。
早くもペン入れに入ります。
ほらもうマジック手に持っちゃいましたよ。
ハハハハハ。
ハハハ「また始まる」…。
漫画のれい明期に出発したさいとう・たかをさん。
その歩みは「劇画」という新しい漫画の在り方を確立しようとする格闘の日々でした。
小さな頃から絵と映画が大好きだったというさいとうさん。
小説に入れる挿絵の画家を夢みて絵の勉強をしていました。
そして手マンガとの出会いが運命を変えます。
漫画なら絵を描く事で多くの人を感動させるドラマを生み出せる。
その夢を抱き19歳で漫画家としてデビューしました。
当時主流だったのは風刺や笑いを描く漫画。
しかしさいとうさんはストーリーが主体の映画のような漫画を目指します。
同じ志を持つ仲間と共に「劇画」と名付けその確立に奮闘します。
しかし大きな壁にぶつかりました。
どんな絵であれば読者をドラマに引き込む事ができるか。
試行錯誤しさまざまな絵柄に挑戦しました。
そして活路は若い頃に学んだ挿絵の手法から切り開かれました。
そうそうそう。
30歳の時には時代劇マンガ「無用ノ介」を連載開始。
さまざまな映画的表現にも挑みました。
えぇ〜。
そうそう。
でもこれ相当…リアルな絵柄で紡がれる骨太なストーリー。
それまでの漫画とは一線を画した「劇画」はブームとなりました。
ハハハ「かっこいい」…。
中学生くらいの時に日本画を?ああ日本画でですか。
はぁ〜。
いい先生ですねその先生。
こことここだけ見ちゃう。
そうですよねうん。
鬼平の顔が完成です。
描く事と向き合い続け作り上げてきたリアルなドラマを伝える絵柄。
その手法が詰まっています。
「ゴルゴ13」は今も休まず連載が続いています。
その本編の執筆作業に入ります。
さいとうさんは47年間常に締め切りと闘いながら作業を続けています。
まずはネーム作り。
脚本家が書いた台本を読み込み構成と構図を考えます。
この作業は全てさいとうさんが何日もかけて行います。
主人公を描く以外ほとんどの時間はネーム作りに費やしています。
本番で使う原稿用紙に直接スタッフへの指示を書き込みます。
あれ?さいとうさん何やら口を動かしていますね。
「手前」って書いてある。
あぁ〜アングル上。
紙の上で映画を作る事を志してきたさいとうさん。
ドラマをどのようなコマ割りと構図で見せるべきか心血を注ぎます。
(ノック)はい。
失礼します。
こちらお預かりします。
ネームが出来上がりました。
ネームの指示を受け8名のスタッフが作画を進めます。
さいとうさんはゴルゴ13を描きます。
どの作品でも主人公は全て自身が担当します。
共同で漫画を作るという考え方がほとんどない時代にさいとうさんはプロダクションを設立しました。
人の力を結集すれば漫画を映画や小説にも負けない文化に広げていける。
その夢を持ったのです。
3時間ほとんど休みなしに作業を続けたさいとうさん。
僅か10分の後再びペンをとりました。
60年。
漫画の力を信じ新しい道を切り開いてきました。
志した「ストーリーを主体とする漫画」は今や当たり前のものになりました。
呼び名は違えどさいとうさんが培った「劇画」の遺伝子は今の漫画文化に息づいています。
そして若くして抱いた漫画への夢は今も広がり続けています。
そうですよね。
スタッフが作業を加えた原稿が戻ってきました。
細部のチェックをしながら仕上げ作業を行います。
全36ページ。
一コマ一コマを細かく確認。
作品を良くしようと修正を重ねます。
何十年もたゆまず繰り返してきた作業です。
吹き出しの口は全て自分で入れます。
漫画の読みやすさを大切にするさいとうさんのこだわりです。
もう一つさいとうさんがこだわるのが音です。
これまでも独特な音の表現を数多く生み出してきました。
そうだね。
2時間かけて仕上げ作業が終わりました。
さいとうさんが執筆部屋を出ました。
作品完成目前。
出来上がった原稿をまとめてスタッフ全員で最終チェックを行います。
最後の瞬間まで妥協はしません。
緊迫感のあるゴルゴ13の表情。
車が描かれる事でこのシーンにドラマが生まれました。
ようやく作業終了です。
ついに「ゴルゴ13」36ページの原稿が完成です。
60年間追求し続けてきたドラマを伝える絵柄。
人の力を結集する事で生まれる質の高い表現。
こだわり続けてきたコマ割りや音の工夫。
普遍的なドラマを生み出してきた主人公。
そして漫画への燃え尽きる事のない情熱。
さいとう・たかをの全てが込められた作品がまた今日も生まれました。
そういう事ですよ。
そういう事ですよ。
ハハハハ。
2016/01/04(月) 00:30〜01:15
NHKEテレ1大阪
浦沢直樹の漫勉・選「さいとう・たかを」[字]
白い紙に小さなペン先で壮大なドラマを生む漫画家たち。その創作の秘密に「浦沢直樹」が迫る。4回目は「ゴルゴ13」の生みの親「さいとう・たかを」を特集する。
詳細情報
番組内容
白い紙に小さなペン先で壮大なドラマを生む漫画家たち。その創作の秘密に「浦沢直樹」」が迫る。4回目は、今年79歳を迎える「さいとう・たかを」を特集する。言わずと知れた「ゴルゴ13」の生みの親であり、劇画という分野を確立した日本を代表する漫画家。今回、47年間連載が続く「ゴルゴ13」の制作現場に密着。ストーリー作りとゴルゴ13の顔は、さいとうの仕事だと言う。そのレジェンドの現場から何を感じるのか?
出演者
【出演】漫画家…浦沢直樹,漫画家…さいとう・たかを
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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