10月のよく晴れた寒い日
毎年山口県の八代盆地へやって来ます
夏の間はシベリアで過ごして子供を産み冬になると日本へ飛来します
そして春またシベリアへ帰って行く渡り鳥
黒いツル…
(ナベヅルの鳴き声)
(鳴き声)
かつては数百羽が八代へ飛来しましたが年々減り続け今では10羽程度にまで落ち込んでいます
(児童)あの横におるんよちょっと待ってこれ合わせて。
おった何か黒〜いものがおるよ。
何か黒〜いものがおる。
(児童)うんそれツル。
ちょっと待ってね。
あっいた!いたいた!
(児童)サクラちゃんこれで見てみて。
小学校ではふるさとをツルから学びます
大好きなツルのことを劇にしたり学校新聞を作ったり
八代の子は今年もツルを待ち続けます
(田中くん)ツルよ来〜い!ツルよ来〜い!
(田中くん)早く来〜い!
(児童達)早く来〜い!
(田中くん)たくさん来〜い!
(児童達)たくさん来〜い!
ツルを迎える準備は始まっています
山口県周南市の八代盆地
10年前から地域を挙げて極力農薬を減らして米作りをしています
そうすることでツルの餌となるさまざまな生き物を増やそうというのです
…もその1人です
ツルの好物ドジョウもこの取り組みでずいぶん増えました
八代に小学校は1つだけ
17人が学んでいます
上級生になるほどツルに詳しくなり下級生のリーダー役を任されます
6年生は…
…の2人です
(児童)こんにちは〜。
(児童)こんにちは。
田島さんが学校に
(児童)はい。
(児童)ありがとうございます。
(児童達)ありがとうございま〜す。
(児童)うわぁ〜!かわいい!
ナベヅルの餌にもなる…
絶滅の恐れがあり学校で増やして田んぼに戻すことにしました
(児童)わ〜あんまり見えないけど…あっおった。
(田中くん)食べ物を?タガメは。
全くですか?
(田島さん)ああ。
(スタッフ)あなたの中でタガメってどういう存在だったの?えっと大切な中でえっと…。
(スタッフ)1番目は?2番目は?そうだよね3番目は?4番目は?
この日の授業は学校を飛び出しました
その名も「水辺の教室」
ツルが過ごす田んぼの周りにどんな生き物がいるのかを調べます
減農薬の米作りを始めた10年前から農家の人達の協力で続いています
キャ〜。
(福原くん)出た〜。
(福原くん)毎回捕れる。
(スタッフ)そうかタイコウチ珍しくないんだ。
(福原くん)はい。
もう1人の6年生田中くんがもっと珍しい生き物を見つけました
どれも今では準絶滅危惧種です
(児童)キャ〜!キャ〜!・うるさいうるさいうるさい…・・いい体験したんだやってみた?・
(児童)誰かやる?やる?今度ヒ〜ヒ〜ヒ〜ヒ〜言わんこと。
・大丈夫大丈夫ほら何もしないでしょう・・手こうやってやったら歩かない?・
1955年
八代の人々のナベヅルを守る活動が評価され八代はツルの飛来地として国の特別天然記念物に指定されました
350羽が飛来した年もありました
しかし高度経済成長期に入るとその数は減って行きます
八代の風景が変わって行ったからです
アスファルトの太い道が盆地の真ん中を通りツルにしてみれば自分達のすみかが分断されてしまったのです
ツルの数が減って来ると想像もつかないことが起こりました
数が減ったのになわばり争いをするようになったのです
強いツルが餌場を独占しようとするからです
そうなるとますます飛来数が減ってしまう悪循環に陥り今では10羽程度しか来なくなりました
秋
農薬を極力使わずに育てた米が八代に実りました
稲刈りが終わればそろそろシベリアからツルが渡って来ます
初飛来は2学期が始まって55日目よく晴れた日の朝でした
その知らせを聞いて学校は授業を中断
福原くんが下級生を連れてやって来ました
みんなひそひそ声です
(福原くん)よし行こう。
例年よりも1週間早くたった1羽で飛んで来ました
予想が大外れ。
(福原くん)しかもさこんなに早く来て1羽やけぇね。
まぁ1羽でもいいね。
(田中くん)うん。
しかも号外頑張れ。
子供達にとっては半年ぶりに見るナベヅル
ツルの監視所も喜びに沸いていました
さらに別のツルの目撃情報が次々と寄せられます
隣町の光市で3羽のツルが鳴きながら飛んでいるというもの
その隣の下松市でも目撃されました
(男性)久米?久米のさざん亭のとこから。
(男性)あぁさざん亭ね。
(男性)3羽?
(男性)3羽やっぱり3羽。
あ〜…。
続いて情報が入ります
その3羽がついに八代のほうへ向かっているというのです
30分後
・あれあれあれ…・・おぉ・
(カメラのシャッター音)
来ました
(カメラのシャッター音)
(鳴き声)
2000km離れたシベリアを飛び立ったナベヅルは朝鮮半島を通って50日がかりで八代へたどり着くといいます
複数の目撃情報をつなぎ合わせてツルを待ち受けるのはこれが初めてです
(河村さん)こんなのは珍しいです。
まぁ…。
毎年来ている親鳥がシベリアで生まれた子ヅルを連れて帰って来たようです
(児童)失礼しま〜す。
(児童)こんにちは。
6年生の田中くんと福原くんを先頭に早速学校新聞「つる日記」の取材です
お願いしま〜す。
(河村さん)こんにちはご苦労ですさぁ始めましょう。
え〜っと…。
(河村さん)最近のツルの様子…。
60年ツルを観察して来た…
(河村さん)それから…。
はい!
(河村さん)はい。
え〜とAとBのどちらかは去年来たツルかどうかは分かりますか?
(酒見先生)あっ寒いな。
あ〜そろそろかなって思ったって…。
河村さんに聞いたことを先生と一緒におさらいします
(酒見先生)八代の南に末武がある。
(酒見先生)南にね島がある。
でこっちに光市がある。
目撃情報電話があったそうです。
河村さんはず〜っとやって来てこんなことは初めてだって。
今回は福原くんを中心に「つる日記」をまとめます
子供達の取材であることが分かりました
「最初に来た1羽も去年来たツルだと思います」
「なぜならねぐらの場所をよく知っているからです」
またツルがどのように八代へ飛んで来るのかを子供達なりに考えてルートを示しました
(児童達)サイン右よ〜し左よ〜し。
右よ〜し渡ります。
「つる日記」は地域の人も楽しみにしています
ちゃんと。
(児童)はい読んでください。
はいありがとね。
風邪をひかないように頑張ってね。
(児童)はい。
ありがとう。
どうもありがとう。
読んでください。
はい。
すごい字が上手じゃね。
もっとたくさんどんどん来るといいね。
ちゃんと読もうねありがとう。
(児童)はい。
(田島さん)あ〜こっち来ちゃったいよいよここまで来た。
タガメを持って来てくれた田島さん
毎日の楽しみは自宅でそっと眺めること
(田島さん)あれは池へ入って行く。
(児童)ツルは何か…。
この10年の取り組みで八代の自然は昔の姿に戻りつつあります
しかしなぜかツルの飛来数は一向に増えません
原因の1つに国内最大のナベヅルの越冬地鹿児島県出水平野の存在があります
出水では長年餌をふんだんにまき続けツルを1か所に集めました
ツルによる農作物への被害を食い止めるためだったのですがシベリアから出水へ向かう流れが定着してしまったのです
これにより今では地球上のナベヅル生息数の9割1万羽以上が出水に集中
もし伝染病がまん延すれば一気に絶滅へつながる恐れもあるのです
10年前から地元自治体の主導で出水に来たツルを八代へ連れて来て放す…という取り組みを続けています
こうすれば次の年には直接八代に飛んで来てくれるのではと考えたのです
しかし今のところ1羽も八代には帰って来ていません
子ヅルは親をマネることでいろいろなことを覚えて行きます
でも雪の斜面は…
まだうまく下りることができません
八代の子供達はこの家族を…
…と名付けました
来年も海を越えて八代へやって来てほしい…という願いを込めたのです
(ナベヅルの鳴き声)
3月
また別のツルが3羽八代にやって来ました
季節外れの飛来です
3羽が舞い降りたのは海渡ファミリーがいる所のすぐそば
ビッグニュース!ツル3羽昨日来ました!
早速みんなで名前を考えます
力です。
(酒見先生)えっ?力です。
力を使ってまたシベリアからまた戻って来てほしいというのを。
来吉がいいと思います。
また来てくれるようにっていう意味で来吉がいいと思います。
福原くんは「力」田中くんは「来吉」を提案
多数決の結果…
来吉ファミリーに決まりました
しかし来吉ファミリーが舞い降りた場所は…
海渡ファミリーがなわばりとしている所なのです
餌場を独占したい海渡ファミリーは…
来吉ファミリーを追い立てます
2家族6羽が入り乱れての空中戦
朝から続いたなわばり争いは8時間にも及びました
争いが収まった数日後
60年間ツルを見詰め続けた河村さんの目の前で初めてのことが起こりました
(鳴き声)
なんと海渡ファミリーの親鳥が子ヅルまで追い立て始めたのです
実はこれ…
次の繁殖に備え親が子をなわばりの外へ追い出すのです
本来はシベリアへ帰る途中朝鮮半島で起こるはずの子離れが八代で初めて確認されました
その後子ヅルは二度と親には近づきませんでした
(鳴き声)あっいたよ!
3月のよく晴れた日
ナベヅルは次々とシベリアへ旅立って行きます
わぁ〜!先生!もういませんよ。
今3羽2羽5羽の…。
(酒見先生)うん。
飛んだんですよ…。
うん。
帰り…何か…。
ホントに〜!
お別れを言うようにぐるぐると上空を旋回します
八代で過ごしたツルは11羽
そのうち10羽がシベリアへ帰って行きました
あの子ヅルだけ残して…
ビックリ!うわぁ〜!こんな恐ろしいものが。
(田中くん)怖い。
今日は卒業式です
これさ…。
うわぁ!
ツルに乗った福原くんと田中くん
下級生達の手作りです
春からは隣町の中学校へ通います
地域の人達に見送られ2人とも八代を巣立って行きました
海渡ファミリーのあの子ヅルはシベリアへの帰り方を親から教わることができませんでした
しかし親から遅れること2日
独りぼっちで飛び立ちました
空は分厚い雲に覆われています
こんな日に普通は旅立とうとはしないのです
けれど子ヅルは力の限り羽ばたかせ雲の中を旋回します
子供達は子ヅルのことを劇にしました
(児童)田んぼで1羽でいるんだ。
(児童)何だって!大丈夫かな?八代で子離れした幼鳥は1羽取り残されていました。
(児童)幼鳥頑張れ〜!
(児童)幼鳥負けるな。
(児童)頑張れ〜。
(児童)行け〜!
(児童)飛べ!
(児童達)頑張れ〜!
(児童)次の瞬間…。
子供達は物語のさらに続きを作りました
やがてあの子ヅルが親になり子を連れて八代へ帰って来るのです
緑がキレイだなぁ。
そうでしょ〜う。
空気がおいしいねぇ。
そうでしょう。
(児童)1羽で帰った幼鳥が母親になってまた八代に来てくれたのです。
やっぱり八代はいいなぁ〜。
そして去年の10月
海渡ファミリーは新しく生まれた子供を連れてまた八代へ渡って来ました
・あそこあそこ…・
でもあの子の姿はありません
いずれ劇の通り八代に帰って来てくれることを子供達は願っています
(田中くん)ツルよ来〜い!
(児童達)ツルよ来〜い!
(田中くん)早く来〜い!
(児童達)早く来〜い!
(非常ベル)
3か月前広島で6人が死傷したメイドカフェ火災
見過ごされた違法ビル
歓楽街に潜む死角とは?
2016/01/04(月) 01:00〜01:30
読売テレビ1
NNNドキュメント「ツルの子 八代の子」[字]
本州唯一のナベヅルの越冬地、山口県の八代盆地。飛来数の減少に悩み続ける。一方で子どもたちはツルから多くを学んでいる。八代のツルと子どもの四季をカメラは見つめた。
詳細情報
番組内容
子ども達はシベリアから飛来し越冬する「ナベヅル」から多くのことを学ぶ。山口県八代盆地。国内の越冬地は八代と鹿児島県出水の2か所のみ。八代の飛来数は年々減り今年は4羽と危機的状況だ。原因は環境破壊。ツルのために地域をあげて「無農薬の米づくり」を始めた。するとツルのエサとなる絶滅危惧種のタガメやドジョウが増えてきた。そんなツルと地域の日々を子ども達は「ツル日記」に綴り、ふるさとを見つめながら成長する。
制作
山口放送
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
ステレオ
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