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UI考 – ざっと見る、じっと見る

英文速読術には、スキニングやスキャニングと呼ばれる技法がある。

スキニングとは「ざっと一覧して、全体を把握する」こと。各章のタイトルや、パラグラフの一文目、最終のまとめなど、要所要所だけをかいつまんでいく読み方だ。

一方のスキャニングは「特定の部分を熟読する」ことだ。こちらは一転して、一単語ずつ精査しながら細かく読み進んでいく読み方である。

まず最初に全体をざっと見て(スキニング)、自分に必要な内容かどうかをチェックする。その後に、必要な部分だけを選別してじっと見て(スキャニング)いく。英文速読ではこの2つの読み方をペアにして扱う。速読術とは全文を素早く読むことではない。細部をすっ飛ばし、要点だけをチェックしていくことなのである。



この英文速読術の技法、スキニングとスキャニングは、画面の情報設計の大きなヒントとなる。情報を効率良く読むテクニックが確立されているのなら、それをロジック化すればよい。ロジックを画面デザインとして落とし込むことで、すべてのユーザーに擬似的に速読術を提供することができる。

アプリやサイトの画面設計をするとき、まず情報をすべて洗い出す。
そして情報を、「ざっと見る情報」と「じっと見る情報」の2つに分類する。

「ざっとみる情報」とは、スキミングのための俯瞰する情報。要素としてはタイトル見出しや、アイキャッチとなる画像・アイコンなどが該当する。この「ざっと見る情報」をチェックするだけで、「これは何か?」と「自分にとって必要なものか?」の判断を下せるようにする。「ざっと見る情報」は、一目瞭然性が重要なので、大きく高コントラストにし、余白を広めに取っていく。

一方で「じっと見る情報」というのは、スキャニングのための詳細情報である。こちらは、ユーザーが意識をして読む情報のことだ。カテゴリ名や日付、作者、注意書きなどが該当する。「じっと見る情報」は、普段は目に留まらなず、空気のように透明であることが重要となる。ユーザーが意図的に読もうとしたときにはじめて、目に入ってくるのが望ましい。このため「じっとみる情報」では、相対的に小さい文字や、薄い色などを用いる。


下図はApple Newsの画面である。色分けで赤くしたところが「ざっと見る情報」。黄色くしたところが「じっと見る情報」だ。まずユーザーは「ざっと見る情報」で、コンテンツが自分にとって必要かどうかを判断する。その次に、「じっと見る情報」で、内容を評価したり、付随情報を確認していく。



このように情報のプライオリティを設計することで、全てのユーザーに擬似的な速読術を提供することができる。逆にゴチャゴチャしたリストやタイムラインなどは、この情報の分類ができていないものが多い。

銀行のATMなどは、この「ざっと見る」と「じっと見る」を分類できてない典型例である。


http://blogs.yahoo.co.jp/pxgkh605/2712243.htmlより引用

すべての文字を大きくしたり、赤くすることは無意味である。なぜならば、画面内のすべての文字を大きくすると、「ざっとみる情報」と「じっと見る情報」が区別がなくなってしまう。結果、ユーザーは画面全体を見渡し、すべての文字に目を通さなければならなくなる。

可読性において重要なのは、単純な文字の大きさではない。「ざっとみる情報」と「じっとみる情報」を正しく分類し、「ざっとみる情報」を正しく強調し、可読性を上げることである。