激動の朝鮮半島。「北の脅威」のおかげで日本は対韓国外交に勝利した

2016年01月08日(金) 長谷川 幸洋
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〔PHOTO〕gettyimages

朴槿恵の焦燥

私は11月6日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/46233)で「慰安婦像の撤去、少なくとも撤去の努力を約束するかどうかが、韓国政府の本気度を測るリトマス試験紙になる」と書いた。今回の合意はまさにそこを突いた形だ。

なぜ韓国は今回、合意に動いたのか。韓国は日本との関係を改善しないわけにはいかなかったのだ。理由は3つ。まず北朝鮮の脅威、次に米国の圧力、それから経済の立て直しである。

北朝鮮の脅威は今回の核実験でますます明白になった。核兵器を使うかどうかはさておき、いざとなれば北朝鮮が実力を行使するのは2010年11月の延坪島砲撃事件で実証済みである。

米国は北朝鮮の脅威に対抗するために、中国に接近した韓国を日米側に呼び戻したかった。それには「喉に刺さった骨」状態の慰安婦問題を解決しなければならない。だから米国はこれまで何度も日本と韓国に問題解決を働きかけてきた。

韓国経済はガタガタだ。韓国は中国向け輸出で息をつないできたが、相手がバブル崩壊で失速してしまったので、経済面でも日米に顔を向けざるを得ない。

一言で言えば、いまや韓国は安全保障と経済で深刻なガタがきていて、対中路線一辺倒では国を立て直せなくなってしまった。そこで日本との関係を改善して息をつく出口を見出そうとしているのだ。

慰安婦問題とは最初から、その程度の問題である。国の平和と繁栄をどう実現するかという観点で見れば、過去の話をほじくり返すより、出口がない現状をどう打開するかのほうがはるかに重要である。今回の核実験で韓国はあらためて、そう実感しているに違いない。

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