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印南敦史印南敦史  - ,,,  06:30 AM

「だし」をとりはじめてから、生活が変わりました

「だし」をとりはじめてから、生活が変わりました

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わたしの中では、「だしをとっている=ちゃんと暮らしている人」というイメージがあり、「わたしもだしをとって真人間になりたい」という思いも少なからずあった。(中略)なんというか、だしに強い憧れがあったのだ。とにかく、「ちゃんとだしをとれる人」になりたいのだ。ところが、実際にだし生活を始めてみたら、びっくりするくらい簡単だった。面倒でもなんでもなかった。そのうえ、いいことがたくさんあった。なんでもっと早く始めなかったのだろう。何を難しく考えていたのだろう。(「まえがき」より)

こんな魅力的な文章からはじまるのは、『だし生活、はじめました。』(梅津有希子著、祥伝社)。「だしのど素人」が、日常的にだしをとることが当たり前になっていくまでのプロセス、さらには、だしにまつわるさまざまな思いがつづられた書籍です。

著者は、「食にまったく興味のない人とは、仲良くなれる気がしない」というほど食べることが大好きだという人物。ところが、だしをとるのは大晦日の年越しそばと、お正月のお雑煮をつくるときの年2回だけだったのだといいます。

しかしある年末、母親がだしをとってつくった手料理に衝撃を受けたことがきっかけで、だしへの興味を募らせ、やがて「自分でだしをとる」生活にシフトしていったのだそうです。その結果、上記の引用にもあるとおり、生活が大きく変わることに。

たしかに「だしをとる」という言葉自体が、当たり前のことをきちんとする心地よさをイメージさせてくれもします。でも具体的に、「だしをとる生活」をすることによってなにが変化したのでしょうか。「二、だし生活で暮らし、変わりました」から答えを探してみたいと思います。


料理がシンプルになり、時短に


「だしがあれば、料理はシンプルになる」「時短になる」というようなフレーズは、料理の本や雑誌でもしばしば目にすることができます。しかし著者は、実際にだしをとる生活をはじめてみて、ようやくそれを自分の頭と舌で理解することができるようになったのだそうです。

もともと難しい料理や手間のかかる料理とは無縁だったといいますが、いまは、うま味のでる食材を組み合わせた料理をつくることが増えたのだといいます。100円の鶏ガラを買って自分で鶏ガラスープをとったり、昆布だし+干し椎茸だしや、濃いめにとったかつおだしを使ったり、バリエーションはいろいろ。

しっかりとしただしがあると、味つけは少しの醤油と塩だけで十分だと感じるそう。うま味がきいていれば、「シンプルな調味料だけでも、料理はこんなにおいしくなるのか」と自分でも驚いているといいます。ソースやケチャップをほとんど使わなくなったということにも、不思議な説得力があります。

そしていまは、うま味の出る食材を組み合わせた料理をつくることが増えたのだとか。狙いは、うま味とうま味をかけ合せることで、うま味が7、8倍くらいに増える「うま味の相乗効果」。きのこと白菜、あさりと豚肉、トマトとチーズなど、「うま味しばり」で食材の組み合わせを考えるのも楽しいといいます。(40ページより)

シンプルになった分、日々のごはん作りにかかる時間が確実に短くなったのがうれしい。面倒なことをしなくても、手間をかけなくても、本物のだしさえあれば、十分においしいごはんが作れるのだから。(42ページより)


塩分摂取量が減った


著者はだし生活をはじめてから、外食時の塩分が気になるようになったそうです。なにを食べても「しょっぱい」「味が濃い」と感じることが格段に増えたということ。

夫も同じことを言うので、わが家のごはんが薄味になっているのだろうか。薄味というよりは、だしのうま味で自然と少ない塩分で満足できるようになってきたのかもしれない。(43ページより)

そこで厚生労働省が推奨している1日分7グラムの塩だけで1日の料理をつくってみたところ、昼夜合わせて使った塩は4グラム。それでも「味が薄い」といった物足りなさはまったくなく、だしには減塩効果があるといわれることの意味がはっきりわかったのだそうです。(42ページより)


舌が敏感になった


外食時、塩分が気になるようになったのと同時に、うま味調味料を使っているかどうかもわかるようになったと著者。調味料や加工食品に特別神経質なわけではないものの、毎日だしをとるようになって、昆布やかつお節の本物のうま味に舌が慣れると、人工的なうま味が添加されたものを食べたときに、舌が「あれ?」と違和感を覚えるようになったというのです。

ちなみに外食するときには、なるべく個人経営のお店を選ぶようにしているといいますが、そういうお店では、舌が「あれ?」と感じることも少ないように思うそうです。個人店ではそれだけ、ていねいにだしをとり、仕込みに手間暇をかけ、食材や調味料にもこだわりを持っているということかもしれません。(47ページより)

空腹を満たすだけの安くて早い料理もあれば、高くても、ゆっくりと時間をかけて、雰囲気も含めて楽しみたい料理もある。だし生活を初めてからは、いろいろなことを考えながら、料理人たちがていねいに作ってくれる料理を、ありがたみを感じながら味わうようになった。(48ページより)


太りにくくなった


だしをとることには、意外なメリットもあるようです。だしをとったあとの昆布を毎日食べるようになり、咀嚼回数が明らかに増えたというのです。昆布は噛みごたえがあるため、必然的に噛む回数が増えることに。さらに水溶性食物繊維も豊富に含まれているので、胃のなかで膨張して満腹感も得られるのだそうです。

無茶なダイエットはリバウンドを招いてしまうものですが、昆布なら毎日の食事に取り入れることで健康的にスリムを目指せる。さまざまなダイエットに挑戦し、失敗を繰り返してきたという著者はそう結論づけています。

実感としては、噛む回数が増える→満腹中枢が刺激される→昆布が胃のなかで膨張→食べる量が自然と減る→食物繊維でお腹もスッキリ→太りにくくなった、という印象があるのだといいます。そればかりか、塩分摂取量が減ったことも健康面では確実にプラス。日々の食事に昆布をプラスするだけで、毎日の栄養バランスの改善に大いに役立つと実感しているようです。

だし生活が無理なく続いているのは、簡単なだしとり方法が身についたことと、単純に「おいしいから」。しかし昆布などの栄養を調べていくうちに、健康に関する意識も高くなったそうです。また、だしを日常生活に取り入れることで、これからの健康維持にも期待感を寄せているとも記しています。(49ページより)


精神的にとてもいい


だしのある生活が定着したことのメリットのひとつとして、「ちゃんとしたものを食べている」という実感が持てることもあると著者はいいます。手の込んだものをつくっているわけではないけれど、だしとうま味に頼る料理が増えたぶん、「余計なものを入れていない」という安心感は確実に得られているというのです。

だからこそ著者が感じるのは、「『仕事が忙しい→外食やコンビニめしが増える→体にいいものが食べたい』と感じている人こそ、だし生活が身についていると、心にもいい効能があるのではないか」ということ。

たとえば冷蔵庫に昆布だしを常備しておけば、あたためて溶き卵を流し入れ、塩少々を加えるだけで、おいしいかき玉スープがすぐに完成。そこまでする気力がなくとも、昆布だしを温めて飲むだけでも心が落ち着くといいます。

多忙すぎて生活が乱れがちな人ほど、だしをとってひと息入れることで「体にいいことをしている」という実感が得られるはずだとも著者は断言しています。そればかりか、「だしをとっている自分」を意識することが「やればできる」という思いにつながり、心に余裕が生まれてくるとも。

つまり、だしをとるという行為は、「人として当たり前のことをする」ことの大切さをも教えてくれるのかもしれません。(51ページより)




だしを学ぶプロセスから、簡単なだしのとり方、さまざまな「だしの謎」を解き明かした調査結果など豊富な内容。軽妙な文体にも、きちんととっただしのような心地よさがあり、読後にも心地よい後味が残ります。ぜひ一度、手にとってみてください。きっと、だしをとってみたくなります。


(印南敦史)

 

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