風を切り雪面を勢いよく滑るスノーボーダー
左足はかつての交通事故で切断。
義足で滑っている
スノーボード上達のためにどんな努力も怠らない
一秒でも速く滑りたい
しかし前向きに生きられるようになるまでには多くの葛藤があった
学生時代バイクが大好きだった渡辺さん
事故でバイクに乗る事はおろか歩く事も走る事もできなくなった。
義足になった自分が受け入れられない
渡辺さんをどん底から救ってくれたスノーボード。
今ではパラリンピックを目指すまでになった。
日本からはまだ誰も出た事がない。
飽くなき戦いが始まった
義足のスノーボーダー渡辺聡太郎さんの挑戦だ
1月下旬渡辺さんは三重県の自宅から長野県までやって来ました。
(取材者)おはようございます。
すごい雪ですね!大丈夫ですか?大丈夫でした。
(取材者)一人で運転でしょ?あっ一人で。
こちらに倒れて…。
ここである講習会が開かれていました。
集まったのは10代から50代の義足のスノーボーダーたち。
おはようございます。
(一同)おはようございます。
義足で滑るスノーボードは競技としては始まったばかり。
滑り方などの基本を学びます。
ボードやブーツは健常者と同じものです。
足元気になるけれども目線は上。
そう。
難しいのがターン。
通常板に力を加える事で曲がりますが義足だと足の感覚がないためそのさじ加減が大変です。
渡辺さんは義足でスノーボードを始めて10年。
膝を巧みに操る事で板のかかと側とつま先側に力を伝えています。
独学で技を磨いてきました。
義足とは思えないほどの優れたバランス感覚。
パラリンピック出場への期待が高まっています。
渡辺さんは車などのベアリングを製造する会社で働いています。
仕事は部品の検査。
僅かな誤差も許されません。
のめり込んで仕事をする渡辺さんの姿勢は同僚の間でも有名です。
学生時代はバイクに熱中していた渡辺さん。
二十歳の時悲劇が起きました。
運転中ガードレールに激突。
一命は取り留めましたが左足の膝の下を失いました。
走ったり跳んだりこれまで当たり前にできていた事ができなくなりました。
それでも渡辺さんは障害を隠しあえて宅配会社に就職します。
しかし重い荷物が運べず結局1年で退職しました。
「自分はやっぱり何もできない」。
落ち込み家に引きこもりました。
事故から5年ほどたったある日転機が訪れました。
友人からスノーボードの誘いを受けます。
でもスノーボードだと義足はばれない。
悩んだ末行ってみた渡辺さん。
予期せぬ感覚に包まれます。
足を失った自分でもやれる事がある。
どんな事でも諦めず…考え方が変わります。
障害のある自分も受け入れられるようになりました。
飲み物持ってケンケンすると水がポンポンポンってこう出てったりするんでそういう時はこんな感じでスリスリスリ〜ってこうスッスッて動いて。
・「雪だるま作ろう」お父さんめっちゃでかくなってきたよ。
ほのも。
そんな渡辺さんを後押ししてくれているのは妻と4歳になる娘。
(取材者)よろしくお願いします。
(ほの)赤ちゃん生まれるんだって。
6月には新しい家族が誕生する予定です。
しかし週末はほぼゲレンデに通い詰め。
フフフ…。
6年前に結婚した妻の美季さん。
生活を共にする中で考えも変わってきました。
この日渡辺さんは3月に開かれる国内初の義足のスノーボード大会に向けて調整をしていました。
障害物のあるコースを滑るスノーボードクロス。
前回のパラリンピックから新たに種目に加わりました。
渡辺さんは日本代表の第1号になる事を目指しています。
日本代表という夢をかなえるため特別な練習も始めました。
義足で凸凹の山道を走る事で究極のバランス感覚を手に入れようとしています。
本日はスタジオに渡辺聡太郎さんにお越し頂きました。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
今のVTRの中の「爆発」っていう言葉に本当にスノーボードが好きなんだなと感じたんですけれども。
そうですね。
本当大好きですね。
やっぱりスノーボードの魅力って改めて何ですか?やっぱりスピードに乗って風を切って滑るっていう爽快感ですね。
何て言うんですかねスピードに乗って滑って曲がって止まるという動作を全部自分の体一つでする事ができるのでそこもすごい大きな魅力だなと感じてます。
そして「落ち込んだ」とおっしゃってたんですけれどもその時周囲に助けてもらおうっていうのは思わなかったですか?何て言うんですかね心配してもらうとか同情してもらうとかそういった事だけは絶対してほしくないっていう気持ちの方が強かったのでそれを隠したいっていう気持ちが自分の中でもあったのかなという気がしてますね。
もちろん大変な事だと思うんですよ。
足を失うっていうのは大きな事だと思うんですけど今渡辺さんの中で足がないっていうのはどういうものですか?そこまで大きなものではもうなくなってきてますね。
もう本当一つの自分の個性としてすごい前向きに受け止められてると思います。
それもやっぱりスノーボードに出会って?そうですねはい。
本当足を失ってからは何て言うんですかね何をやってもできないだろうという気持ちの方が強くてやってもないのに諦めちゃってる自分がいたんですけど実際ちょっとしたきっかけでスノーボード始めて「あっ何だ滑れるじゃん」という気持ちになったところから自分の気持ちもすごい前向きに変わってったところがあって今までは…そういうような考え方に変わってって…。
やっぱり「できるじゃん滑れるじゃん」っていう経験が大事…。
そうですね。
やっぱりそういったスポーツって自分の努力次第でどんどんできなかった事ができるようになってくと思うんですけどそういった簡単な成功体験というのがやっぱり自分の中ではすごい大きなものになったのかなと感じます。
競技としてスノーボードに打ち込む渡辺さん。
今ある課題と向き合っています。
1個目のタイミングちょっと少しあれかな早すぎたかな?あっ早いですか…。
うん。
取り組んでいるのはウェーブ。
頂点から下る時にしっかりとしゃがみ込み板に力を加えます。
スピードがつき安定して滑る事ができます。
しかし渡辺さんは上半身が前かがみになっているだけ。
十分にしゃがみ込んでいません。
ここが曲がれば…う〜ん。
実は義足は足首が固定されているためどうしてもしゃがみにくいのです。
なんとか克服したい。
試行錯誤を続けますがうまく板がコントロールできません。
(渡辺)こうかがんでた時に…。
あ〜なるほどな〜。
渡辺さんの課題を一緒に考えている人たちがいます。
整形外科の主治医理学療法士など義足の生活を支えているメンバーです。
がっしりつかんでグ〜っとしゃがめるところまで…。
足首が曲がらない分股関節を動かす事で体を深く沈みこませる事を提案しました。
(堀田)下腹部に力入れて…。
めっちゃ来ますよね。
(渡辺)来る。
すごいなこれ。
是非鍛えて…。
メンバーは高い目標に向かって挑戦をする渡辺さんに引き込まれ今ではゲレンデにも同行します。
いよいよ日本で初めての障がい者スノーボード選手権大会が行われました。
大会の前日渡辺さんの滑りをメンバーが見つめます。
練習の成果は上がっていました。
しかし不安な事も。
大会の4日前ランニング中に肉離れを起こしていました。
滑りに影響が出ないようテーピングをします。
大会当日。
全国から強力なライバルたちが集まりました。
ほとんどの人が初顔合わせ。
互いの実力は分かりません。
う〜ん。
どう攻めようかな?悔いのない滑りをして優勝を狙いたい。
0!レースが始まりました。
スピードが出やすい難しいコースです。
0!一人3本滑ります。
いよいよ渡辺さんの1本目。
0!ゴーゴー!ゴーゴー!
(会場アナウンス)「ビブナンバー6番渡辺聡太郎選手オンコース」。
ウェーブを次々とクリアしていきます。
38秒63です。
ライバルを抑えトップに立ちました。
・
(会場アナウンス)「38秒63」。
おっきてる…お〜!210!2本目。
更に攻める事にしました。
しかしその時突然のコースアウト。
スピードが出過ぎて体が追いつかずバランスを崩してしまったのです。
大会では3本のうち速いタイム2本の合計で順位が決まります。
そのため渡辺さんは絶対に3本目を滑りきらなければなりません。
しかも優勝するためには1本目のタイムより速く滑る事が必要です。
大きなプレッシャーがかかりました。
3210!
(会場アナウンス)「ビブナンバー6番オンコース」。
39秒44。
滑りきる事を意識し過ぎ1本目のタイムを上回る事ができませんでした。
ありがとうございます。
(拍手)本当楽しかったです。
いろいろありましたけど…。
試合ってこういう事なんだなって本当に。
魔物がいた。
今のVTR見てて渡辺さん体動いてましたねこうやってシミュレーションで。
もう早く滑りに行きたいです。
スタジオには渡辺さんをサポートしている整形外科の医師加藤弘明さんにもお越し頂きました。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
加藤先生やっぱり面白いですか?面白いですよね〜。
渡辺さんも頑張るし義足の調整もいろいろ工夫がいるし全然教科書のないところでどうしようって考えるのが面白みだと思います。
そしてあの大会は日本では第1回目?はい。
今まではなかった?なかったですね。
今までは自分との闘いだったけど周りとの戦いに初めてなった訳なんですけどいかがでした?そうですね。
やっぱり結果はね本当出るからには優勝を狙っていったんで優勝できなかったのは本当正直悔しかったんですけどやっぱりああいう緊張感の中でみんなで競い合って滑るというのは本当終わってからすごい充実感もあったので本当メチャクチャ楽しかったです。
加藤先生の目から見て大会いかがでした?やっぱり2本目にうまく滑れないとか動きの面での課題はあったなとは思うんですけれどもそれでもやっぱり痛めたとこも悪くならずに滑れたしあとは仲間がライバルとかそういうつながりが出来たのがすごく渡辺さんにとってよかったなって思ってます。
加藤さんから見て渡辺さんの魅力ってどんなものだと思いますか?やっぱり渡辺さんの一番の魅力は実直さというか突き詰めるこう決めたところに一点集中でやってくっていうところがなかなかまねできないなっていうかそういうところに憧れがあるしそういう姿を見て義足をはいてる人が同じように走りたいとかスノボーしたいっていうチャレンジが始まっていったりとかそうやって一生懸命やってる姿を見るとあ〜僕らも何か一緒にやりたいなっていう気になるので。
そういうところが魅力だと思います。
そしてサポートといえば家族。
本当申し訳ない気持ちでいっぱいになるんですけどやっぱり何て言うんですかね自分の目標に向かって努力して頑張る姿またいやいややるんじゃなくて本当努力するっていうのは楽しい事なんだよっていうのを子どもになんとか伝えていけたらいいなと思って。
そしてあれですよねやっぱパラリンピックに出たら変わるでしょうね!家族もきっと。
そうですね。
パラリンピック…本当にね自分の人生の中でももう最強クラスの難易度の目標になってくると思うんですけどでもねやっぱりゼロではないと思うのでまあ少しでもその目標に近づけるように今までと同じようにコツコツ努力積み重ねて自分のところにチャンスが舞い込んでくるように頑張っていきたいなとは思います。
できないって決めつけるんじゃなくてやれるように頑張るんだって事ですよね。
そうですね。
やっぱ気持ちの強さ絶対に自分が1番になる…誰にも負けないぞっていう気持ちの内から湧き出る強さというのは絶対に必要だなとは思ってます。
スタート!2016/01/04(月) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV ブレイクスルー27「義足のスノーボーダー・渡辺聡太郎」[字][再]
渡辺聡太郎さんは義足のスノーボーダー。かつて事故で左足の膝下を失った。再び自分を取り戻せたきっかけはスノーボード。パラリンピック出場を目指し挑戦する日々を追う。
詳細情報
番組内容
困難に直面しながらも、その壁を破り前に進もうとする人たちを見つめる“ブレイクスルー”。今回の主人公は義足のスノーボーダー渡辺聡太郎さん35歳。去年のソチパラリンピックから正式種目に採用されたスノーボード競技の日本人第1号を目指している選手だ。渡辺さんは20歳の時に事故で左足の膝下を失った。一時は自分に自信が持てず引きこもりになったがスノーボードと出会い人生が激変。夢に向かい挑戦する日々を追う。
出演者
【出演】渡辺聡太郎,【出演】整形外科医…加藤弘明,【司会】風間俊介
ジャンル :
福祉 – 障害者
ドキュメンタリー/教養 – スポーツ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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