(刑事)ホシ通ります。
(警部)どうして二度殴った?
(警部)行くぞ。
止まるなよ。
・
(記者)来たぞ!
(ざわめき)
(警察官)下がってください。
(記者)大庭さん一言お願いします。
(記者)ご主人を憎んでいたんですか?
(女)
私は夫を憎んでいたんだろうか
(ざわめき)
(シャッター音)
(鑑識)19番顔を上げろ。
(鑑識)真っすぐ立て。
(シャッター音)
(鑑識)はい次右向いて。
(シャッター音)
(鑑識)あそこの赤い点見て。
斜めに。
(刑事)もう一度最初から。
これで殴ったと言ったね?
(刑事)どこにあったのか覚えてるでしょう?どうやって殴ったの?
(刑事)棚に飾ったのはあんただね?夫を殴るために置いておいたんだろ?これをいつ棚の上に置いたの?
(女)い…いつ?
(刑事)「緑と花のまちづくり運動」主婦や子供を集めて町に花を植えて回るそうですね。
政治家の妻ってのも大変だ。
(刑事)あんたは外でいい顔しておいてホントはずっと夫を殺す機会を狙ってたんじゃないのか?神様がお休みをくれたのね。
今までが忙し過ぎたもの。
(女)沼田さんもおっしゃってた。
県議へのくら替えは早過ぎたって。
党の人たちはうまいことばっかり言うんだから。
でも次の市議選では再選は間違いないって沼田さんもおっしゃるし。
今度の連休は親子3人で旅行にでも行きましょう。
あの子も喜ぶし私もゆっくりしたい。
やっぱり温泉なんかがいいかしら。
そうだ…。
(康晴)俺をバカにしてんのか。
(康晴)神様がくれた休み?ふざけんじゃねえ。
温泉?お前ふざけんなよ。
(女)あっ…。
(康晴)お前何だ今の顔。
あん?ムカつくんだよ!
(女)ああっ…やめて…。
(母の泣き声)
(女)ごめんなさい。
お母さん。
(伯父)何をしたのか分かってんのか?お前が殺したのはな大庭家の跡取りなんだぞ!
(女)すみません。
(伯父)すみませんで済むか!お前のせいでな一家離散だ!
(母)兄さん…。
申し訳ありません。
お前が謝ったって始まらん!
(母)兄さん!兄さん!
(母の泣き声)ごめんなさい。
ごめんなさい。
(男性)万歳!
(一同)万歳!万歳!
(一同)万歳!
(男性)大庭君おめでとう。
ホントに頑張った。
おめでとう。
(拍手)
(男性)みんなも頑張った。
・
(雷鳴)
空が怒ってる
19番歩け。
(久実)「たっている」「いっとうにとうこうまをまじえた…」
(教師)もういいぞ。
堀端。
(教師)じゃあ次は気を取り直して…。
(生徒たちの笑い声)
(教師)高坂続き読め。
(教師)何だ?どうかしたか?
(小百合)先生が堀端さんに謝罪するまで私は教科書を読みません。
(教師)はっ?
(小百合)先生は今気を取り直してとおっしゃいました。
堀端さんはふざけて読んだわけではありません。
堀端さんに失礼です。
謝ってください。
それに先生は堀端さんをからかう男子を注意しようとしませんでした。
聞こえてないはずがなかったはずですよね?先生も一緒に笑ってましたから。
もしもああいうことを先生が生徒のウケ狙いでやってるのなら先生は国語を教える前に人としての勉強をやり直した方がいいと思います。
自習。
(戸の開閉音)
私はいつからこんなふうになったのだろう
(教師)堀端大丈夫?
(教師)すごい!高坂小百合の50mのタイム。
35秒56。
(生徒たち)お〜!すごい!・起床!
(留置係)5番起きなさい。
7番起きなさい。
8番起きなさい。
(留置係)13番起きなさい。
(刑事)「1月20日夜間救急外来」「診断は鼓膜の破裂」「5月3日歯医者で差し歯を2本入れている」「7月25日には頭を4針」
(刑事)ずいぶんとケガが多いですね。
(刑事)旦那さんにやられてたんでしょ?
(刑事)あんたは夫の暴力に耐えられなかった。
(刑事)ただあんたは二度殴ってる。
一度目で意識が混濁した夫をもう一度。
きっと正当防衛は認められない。
(刑事)あんたには殺意があったってことだからな。
(刑事)暴力をふるう夫をずっと殺そうと思ってたんじゃないのか?
(警部)あなたはどうして別れなかったんだろう?本当はあの人…。
(警部)本当は優しい人なんです。
(万桜)取れない。
(康晴)万桜これさ何て花?ハハハ。
パパも知らない。
(万桜)フフフ。
(康晴)ハハハ。
・
(カメラマン)大庭さん一枚いいですか?
(康晴)はーい。
写真写真。
(カメラマン)はい万桜ちゃんも撮るよ。
(シャッター音)
(カメラマン)笑って。
(警部)多いんですよこういうケース。
・
(足音)
(小百合)一緒に食べてもいい?
(小百合)今度の読書感想文コンクールあなたが出場してよ。
(久実)えっ?
(小百合)大丈夫?
(久実)何で私がそんなこと…。
(小百合)そりゃあなたが選ばれたからよ。
実は昨日たまたま職員室で聞いちゃったの。
読書感想文うちの組ではあなたが断トツに素晴らしかったって。
『走れメロス』を書いたのよね?でも先生ったら堀端はきっと代表を断るだろうっていうの。
そしたらしょうがない高坂にでもやらせるかって。
そんなひどい話ってある?だからあなたが出るべきなの。
待ちなさい逃げないで。
(小百合)悔しくないの?みんなに笑われて見返してやろうと思わない?
(久実)本当に無理だもん…。
(小百合)やってみないと分からないでしょ?分かる。
絶対に無理。
堀端さん。
あなたはクラスで一番素晴らしい読書感想文を書いたの。
どうして自分を否定するの?
(小百合)あなたの朗読を聞いてみんなが笑うのもよくないけど堀端さんも努力をしなよ。
同じ。
何をしたって絶対にみんな笑うもん。
小学校からずっとそうだった。
分かった。
(小百合)練習にはできる限り私も付き合う。
それであなたの朗読を聞いて笑う人がいたら私が責任を持って謝らせる。
無理やりコンクールに出させた私も謝る。
あなたは全力で私が守る。
だから一緒に闘おう。
(教師)今度の読書感想文コンクールだけど学年の先生と協議をしました。
その結果を発表します。
読書感想文コンクールは堀端久実に代表を務めてもらいます。
(生徒たち)え〜!?
今の私はあのころのあの子
先生万桜は…万桜はどうしてます?
(弁護士)本日お伺いしたのはそのお嬢さんのことです。
(弁護士)この書類にサインをお願いします。
(弁護士)お嬢さんは大庭の本家でおばあさまの養子に入ります。
(弁護士)書類と印鑑を差し入れておきます。
姻族関係終了届。
復氏届も預けておきますのでそれにも同様に書き込んでおいてください。
復氏届?
(弁護士)大庭家からあなたの籍を抜くのに必要な書類です。
3日後に受け取りに来ますのでそれまでに書き込んでおいてください。
国語のノート。
(弁護士)うん?確かもうすぐなくなりそうなんです。
学年ごとにマスの数が決まっていて近所のスーパーには取り扱いがないものですから学校近くの文具店でないと…。
(弁護士)お嬢さんが学校に行ってるとお思いですか?
(弁護士)父親は殺されその犯人が母親ですよ。
自分がしたことを自覚しなさい。
(弁護士)あなたは母親である資格はない。
(弁護士)必ず記入漏れがないようにお願いします。
(弁護士)もうあなたに会うこともないでしょう。
(ドアの開閉音)
(久実)「だから王はメロスの約束を聞いてあざ…あざわ…あざわ…」
(小百合)急がなくていいよ。
ゆっくりでいいから今は間違えないことだけを目標にしよう。
(久実)「物語の冒頭はこのよう…」
(小百合)背筋伸ばして。
「このようになっている」「しかしそんな話が…」
(小百合)声大きく。
(久実)「私は余計な言葉など何一つ必要とせず心から互いを信頼し合っている2人をとてもうらやましく思った」「私には心から信頼できる友人はいない」「もしいたらどんなによいだろう」「自分のことを少しも疑いもせず待っていてくれる友がいたら私はきっとその人のために何十倍も強くなれる」
(久実)誰かが自分を信じてくれているという事実はどんな障害もはね返す盾となりそして様々な困難を切り開く剣になるのだから。
(チハル)何か鳥肌立った。
(アコ)文章に強弱つけたらもっと感動的になるんじゃない?
(ナナ)何か普通に読むだけじゃなくて私たちで何か盛り上げらんないかな?
(チハル)あっそれ私さっき思った!
(警部)実際に倒れてみてください。
(警部)乗ってみて。
(刑事)はい。
(警部)首に手を当てて軽く。
(刑事)はい。
(警部)写真を。
(鑑識)はい。
(シャッター音)
(シャッター音)
(警部)その後は?万桜が…。
(警部)長女ですね。
どこから来ましたか?・
(戸の開く音)・
(足音)
(女)あ…あの…。
おかえりなさい。
今日は早かったんですね。
(康晴)早く帰ってきちゃ悪いのか?
(女)いえ…そういう意味じゃ…。
(康晴)夕飯は?
(女)すき焼き…。
いいお肉があったから。
(康晴)お前いつまで議員の嫁でいるつもりだ?それとも給料が減った俺への当て付けか?ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
(警部)はいそこで止まって。
お願いします。
(鑑識)はい。
(シャッター音)
(警部)被害者はどうなりましたか?その場に崩れ落ちました。
それでその後の2回目はどんなふうに?
(警部)少し休みましょう。
《父親は殺されその犯人が母親ですよ》《あなたは母親である資格はない》《どうして二度殴ったんだ?》《あんたには殺意があったってことだからな》
(女のうめき声)・
(万桜)パパ?
(万桜)パパやめて!
(女のせき)
(万桜)パパやめて!キャンキャンうるせえ!お前も俺をバカにすんのか?あん?
(万桜の叫び声)
(康晴)逃げんじゃねえ!
(万桜)やめてパパやめて!
(康晴)殺すぞ。
(万桜の叫び声)
(康晴のうめき声)
(女の泣き声)
(留置係)19番どうした!?19番!
(留置係)落ち着きなさい!
(留置係)どうしました?
(留置係)非常ベル!
(留置係)はい!
(非常ベルの音)
(留置係)19番落ち着きなさい!19番静かにしなさい!
(留置係)落ち着きなさい!
(女の叫び声)
(留置係)どうしました!?
(留置係)落ち着いて!
(留置係)おとなしくしなさい!
(留置係)はい静かに。
(女の叫び声)
(留置係)落ち着け!
(留置係)静かにして!
(ナナ)みんなにお土産買ってきたよ。
(一同)えっ?マジで?すごーい。
(小百合)奇麗な石。
(ナナ)ムーンストーンっていうの。
願いがかなう石なんだって。
(ナナ)私は指輪にしたんだ。
(一同)お〜!カワイイ!
(ナナ)みんなで一つずつ持ってようよ。
(一同)えっ?いいの?やったー!
(久実)《123…》《1つ足りない》ちょっとトイレ…。
(ナナ)ねえ小百合はどれにすんの?私はこれにしようかな。
いい?
(ナナ)うんいいよ。
(小百合)久実。
(小百合)名札貸して。
うんいいね。
(小百合)これ見た瞬間からこうしたいって思ってたの。
(チハル)ヤバくない?
(ナナ)嘘?
(チハル)ヤバくない?
(アコ)全然違うよ。
(ナナ)え〜やだ!
(チハル)あっ。
カワイイ!えっちょっと待って待って…。
え〜いいなカワイイめっちゃかわいくない?
(ナナ)ねえねえ私もこれ欲しい。
(アコ)持ってるでしょ指輪。
小百合ちゃん。
私と久実は親友だもんね。
ムーンストーンのお願い久実は何にする?まだ。
今は言わない。
もったいぶらないで教えなさいよ。
あのころ私は確かに輝いていた
いつから私は…
(リポーター)現在現場となりました大庭家前では事件前と同じ静かな住宅地のたたずまいを取り戻しつつある状況です。
(リポーター)大庭容疑者は現在殺人未遂罪から殺人罪に切り替えられて警察の取り調べが続けられています。
周りの住民の方に話を伺うととても明るいご家族で一人娘のお子さんも元気で礼儀正しく理想的な家庭だった。
(リポーター)あの奥さまが…信じられないと皆さんが口を揃えて仲が良かった…。
(女)私…。
あの人を…。
確かに殺そうとしたんだと思います。
(女)私…。
(女)あの人にきっと…。
(拍手)
(小百合)失敗してもいいよ。
えっ?
(小百合)私はあなたを信じた。
あなたも私を信じてここまで来てくれた。
それで十分。
小百合ちゃん…。
・
(雷鳴)雷だね。
光ったら何秒か数えようか。
・
(雷鳴)空が怒ってる。
ギリシャ神話によると雷が鳴るのは神様が怒ってるときなんだって。
神様が怒るの?人間はとても弱くて傷つきやすい。
だからすぐに嘘をついたり誰かを傷つけてしまう。
人を殺せば罪になるのにね。
あなたをいじめて傷つけても誰も罪には問われない。
そんなのはおかしい。
だからかな空が怒ってる。
・
(雷鳴)弱い立場の人にこそ救いがあるべき。
あなたは救われるべき人間なの。
だから闘いなさい。
私はみんなと一緒にあなたを見守ってるから。
(拍手)
(生徒会長)森川君ありがとうございました。
19番面会だ。
(警部)新しい弁護人だ。
・
(雨音)
(警部)ああ…降ってきたな。
(拍手)
(生徒会長)続いて2年B組の堀端久実さんの発表です。
作品は『走れメロス』です。
それでは堀端さんお願いします。
・
(ドアの開く音)
(久実)小百合。
会いたかった。
(小百合)久実?それまだしてるの?私の宝物だもの。
(小百合)ムーンストーンのお願い久実は何にする?まだ。
今は言わない。
立派ね久実。
人生を変えてくれたのはあなたよ小百合。
あなたにふさわしい人になりたかった。
(久実)いつかあなたとホントの親友になれたらって。
それが私のムーンストーンの願いだった。
(雷鳴)小百合あなたの国選弁護人に会ってきた。
とても困ってたわよ。
あなたが協力してくれないって。
(久実)真実を明らかにすることは大切なことだよ。
私は夫を殺した。
それだけじゃない。
私は娘から父親を奪った。
私は罰せられるべき人間だから。
(久実)分かるわ小百合。
嘘よ。
(久実)私には分かる。
(久実)人の犯す最大の罪は人の尊厳を奪うこと。
(久実)あの日あなたにそう教わった。
それは今も変わらない私の信念。
・
(雷鳴)ねえ次を数える?私には聞こえる。
あなたの心に落ちた雷が。
(久実)小百合闘いなさい。
(久実)あなたは闘うことを忘れていたの。
今まで自分を捨てて。
(久実)でもあの日あなたはまた闘い始めた。
子供を守るために。
(久実)二度殴ったのはその証しよ。
(久実)たとえ法律があなたを守れなくても私はあなたの正義を信じる。
(久実)小百合諦めないで。
それとも娘さんに二度と会えなくなってもいいの?
(久実)あなたには酌量すべき事情がある。
私がそれを証明してみせる。
必ず。
私があなたを守る。
だから一緒に闘いましょう。
(久実)親友とは命を懸けて自分を守ってくれる人のことであり…。
いやそうではない。
自分が命懸けで守りたいと思う人のことだと思う。
友よ君のためならこの命を懸けて闘おう。
(拍手)
(雷鳴)
(生徒たち)おはようございます。
(立木)大会もうすぐだぞ。
集中して。
(生徒たち)はい!
(初音)おはよう。
(立木)おはよう。
(真希)相変わらず仲いいですなぁ。
(チコ)やっぱ初音は学祭連れてかない。
(初音)どうして?
(舞子)立木先輩いるでしょ?私ら彼氏いないしさ。
おはよう。
香川さんいつも早いね。
(亜利沙)うん。
おはよう。
(雷鳴)
(亜利沙)
かすかにけれど確かに雷鳴は響いた
立木先輩は薄紫に染まる空を静かに見詰めていた
・亜利沙?どうしたの?
(亜利沙)何でもない。
(今日子)行こう。
(木下)兵部省と。
(チャイム)
(木下)それじゃあ今日はここまでだな。
疑問点あったら聞きに来るように。
(生徒)はーい。
(生徒)帰ろう。
(生徒)帰ろう。
(生徒)帰ろう。
(陽菜)どっか寄る?
(今日子)うん!
(陽菜)亜利沙も行く?
(亜利沙)私図書委員の仕事あるから。
(陽菜)そっか。
(今日子)亜利沙当番多くない?
(今日子)他の人に代わってもらえないの?
(亜利沙)大丈夫。
うちにいてもすることないし。
(生徒たち)何で?先生!
(木下)おい君ら下がってろ…下がってろ。
(真希)立木先輩…?
(舞子)何あれ…。
それは一瞬の出来事だった
でもとても長くも思えた
立木先輩を包み込む赤い炎は私たちを照らした
(警部)目撃した人全員の話を聞かなきゃならない決まりでね。
つらいときに申し訳ないんだけど。
(刑事)立木尚吾君と話したことは?
(刑事)人気のある先輩だったみたいね。
(亜利沙)はい。
(亜利沙)何で…自殺なんか…。
(亜利沙)どうして?
(警部)そうだね。
しかもああいう方法で。
(警部)理由なんて本人にも分からないものかもしれないね。
人の心は。
(刑事)何か気付いたことがあったら連絡してくれる?
(亜利沙)はい。
(警部)ああそうだ。
彼は付き合っていた子とかいたのかな?
(亜利沙)分かりません。
失礼します。
(戸の開閉音)
(警部)肝心なことは聞きましょう。
(刑事)すいません。
はい次を呼んでください。
(刑事)はい。
で?話って?
(舞子)聞くよ。
立木先輩と初音別れてたんだって。
嘘…何で?
(チコ)知らない。
けど初音が振ったらしいよ。
じゃあ…初音のせいで自殺?ひどくない?
(今日子)亜利沙何聞かれたの?
(亜利沙)何かよく分かんない。
(チャイム)
(チコ)最低。
いつもこのバスに乗ってるの?
(亜利沙)うん。
立木先輩。
いつもあそこで本読んでたよ。
そう。
私…。
立木先輩のこと好きだった。
(初音)うん。
そうじゃないかと思ってた。
振られたのは私の方なんだよ。
(亜利沙)えっ?
(初音)噂なんて嘘ばっかり。
(初音)私…分かんなくて。
どうして尚吾があんなことしたのか…。
全然分かんなくて。
毎日毎日苦しくて。
(初音)ありがとう。
楢崎さん。
私も知りたい。
えっ?先輩がどうして死を選んだのか。
一緒に調べてくれる?最近立木先輩何か変わったことなかったかな?
(生徒)いや…。
特にないです。
(亜利沙)すいません。
(生徒)何?
(亜利沙)立木先輩ってどんな方でしたか?例えば先輩…例えば性格とか。
(生徒)いつも一緒に昼飯食べてたんだけどあいつめっちゃ食べるんだよね。
しかもすげえうまそうに。
ああごめん。
あんま関係ないか。
(立木の母)じゃあお願いします。
(木下)おはよう。
(亜利沙)おはようございます。
(木下)これ亡くなった立木君の蔵書だ。
お母さまがみえてこちらを寄贈されたんだ。
(木下)これ図書室に運んでおいてもらえるか?
(亜利沙)はい。
(木下)頼んだ。
(戸の開閉音)
(すすり泣く声)
(すすり泣く声)
(チャイム)
(戸の開く音)
(亜利沙)お待たせ。
(亜利沙)この本ね…。
(初音)尚吾のでしょ?
(亜利沙)調べてみようと思って。
(初音)聞き込みも行き詰まってきたしね。
(亜利沙)ねえ他に誰か話聞けそうな友達っていない?
(初音)もともと尚吾に友達なんていないよ。
(亜利沙)そんなわけないでしょ。
(初音)ううん。
私には分かる。
尚吾と私は同類だから。
(初音)香川さんなら分かるでしょ?
(初音)私友達なんていなかった。
今までは。
(初音)亜利沙と出会えてよかった。
(初音)フフッ。
(亜利沙)私も。
(初音)あっ。
(初音)これが挟まってた。
「僕は死ぬことにしました」
(亜利沙)遺書?尚吾の筆跡だ。
間違いないと思う。
(初音)「これは抗議の死です」「木下先生と僕の母が交際していることは知っていました」「母が幸せそうだったから僕は黙っていました」
(立木)「しかし最近母の様子がおかしくなった」「聞けば木下先生が別の女性と結婚するという」
(立木)「『しかたがない』と母は言うけれど僕は納得できない」「『しかたがない』と言いながら体調を崩し僕に当たる母をなだめるのにも疲れました」「何だか全てがどうでもよくなった」「いい年をして男に夢中になり息子に当たり散らす母にも嫌気が差しました」「生まれたときからずっと嫌気が差していた」「この暮らしの全てにです」「どんな未来が待ち受けていたとしても僕の脳は忘れることを許さない」「屈辱も怒りも永遠に過去にはならない」「だったら脳ごと消し炭にするしかないでしょう」
(初音のすすり泣く声)「木下先生がどんな顔をするのか」「見られないことだけが残念です」「案外平然としているかもしれない」「そんなものだ」「愛も恋も言葉も罪もすぐに忘れて平然と生きる」「僕にはとうていまねできません」これって…。
本当なの?
(亜利沙)失礼します。
(木下)廃藩置県を断行したときに封建的規制の廃止っていうものが行われてるんだけどそのときに四民平等の理念っていう概念が生まれてるわけだ。
分かった?
(亜利沙)分かりました。
ありがとうございます。
(木下)はい。
じゃあ期末頑張ってな。
(亜利沙)はい。
(木下)はい。
(亜利沙)そういえば…。
(木下)うん?
(亜利沙)先生結婚するんですか?
(木下)えっ…。
この間先生方がそんな話してるの聞いて。
ああ…。
実は来週籍入れるんだ。
あっ他の生徒にはまだ内緒だぞ?おめでとうございます。
(木下)うん。
年下ですか?年上?
(木下)年下だよ。
なぁもういいだろ。
(亜利沙)失礼します。
(木下)はい。
頑張って。
(亜利沙)許せない。
(初音)私…。
(初音)死んでもいい。
(初音)木下が自分のしたことを思い知るなら…。
(初音)死んでもいい。
(初音)亜利沙は?
(初音)木下のこと私たち2人だけの秘密だよ。
(真希)おなかすいたな〜。
(舞子)チコどうしたの?
(莉央)あっ…。
(今日子)楢崎さん?いい景色。
私たち2人ならできる。
(ざわめき)
(生徒)先生!この中にひきょうな行いをした者がいる。
(ざわめき)
(初音)裏切りの罪を犯した者がいる。
名乗らないのなら私たちは飛び降りる!君たち落ち着いて!話をしよう。
黙れ!忘れたとは言わせない。
(チコ)木下見てない?
(ざわめき)
(一同)ねえヤバいヤバい…。
ヤベえよ!止めにいけよ!キャー!うわぁ!10数えるうちに名乗り出るか知らん顔して私たち2人の命が消えるのを見届けるか。
どちらかだ!
(一同)先生どうするんですか!早く!先生!先生!早く止めて!1。
(一同)先生!早く!2。
(一同)先生!何やってんの?3。
(一同)早く!何やってんだよ!4。
(一同)先生!早く!5。
(一同のざわめき)6。
(一同)早く!早く!7。
(一同)何考えてんだよ早くして!
(一同)止めろって!8!
(一同)やめて!先生!9!
(一同のざわめき)やめろ!やめてくれ…。
(ブザー)
(クラクション)
(生徒)おはよう。
(生徒)おはよう。
(チコ)終わったっコリー!終わったとブロッコリー合わせた…。
(真希)分かった分かった。
初音。
あの…。
・初音。
・行こう。
ごめん。
またね。
(舞子)ねえお汁粉かコンポタどっちがいいかな〜?
(陽菜たち)おはよう。
(生徒たち)おはよう。
(莉央)ねえ。
何で屋上に行ったの?楢崎さんと仲良かったっけ?
(亜利沙)うんまぁ…。
(陽菜)立木先輩が自殺したのって木下のせいだったんだね。
(亜利沙)えっ?
(莉央)立木先輩のお母さんと木下は付き合ってたらしいよ。
なのに木下に捨てられておかしくなっちゃったんだって。
それ知って先輩…うーん人生に疲れちゃったみたい。
(陽菜)まぁお母さんと担任の不倫だなんてショックだよね。
(亜利沙)ねえ…。
その話何で知ってるの?
(莉央)えっ?何でって…。
みんな言ってるよ?
(今日子)正直私楢崎さんのこと見直した。
彼氏の敵討ちのために命張るなんてすごいよね。
(莉央)すごい。
(陽菜)うん。
・
(落下音)初音は木下と…。
(初音)《これが挟まってた》《「僕は死ぬことにしました」》《木下が自分のしたことを思い知るなら…。
死んでもいい》《私たち2人ならできる》
(初音)《この中にひきょうな行いをした者がいる》《8!》《9!》《やめろ!》
(生徒たち)5678。
(生徒)ファイトー!
(生徒たち)ファイトー!ファイト!
(生徒たち)5678。
(生徒たち)ファイトー!
(生徒たち)5678。
伸ばして!2234。
5678。
(生徒たち)そーれ!
(生徒たち)1234。
5678。
2234。
5678。
(生徒たち)1234。
5678。
1234。
5678。
もっと伸ばす!はい!
真実はどこにあったのだろう
炎は私たちの心を照らす
たぶん何十年たとうとも
忘れることを許さずに
(春花)結婚もしてないのにやんなっちゃう。
「仕事が恋人」なんてこの年で言ってると何かいっちゃった人みたいでしょ?
(春花)あっキミちゃんってこの町いつから住んでんだっけ?
(紀美子)えっ?そうね…。
(春花)子供は?子供いるの?ううん。
(春花)そっか。
でもいいよ。
子供は大変だもん。
私は猫飼いたいんだけどね。
でも猫飼うと「一生独り」とか「孤独死」とかみんなに脅されて飼えないの。
キミちゃん何か飼ってる?いや猫は…。
(春花)へ〜。
でも生き物ってどうせすぐ死んじゃうからね。
暑いここ…。
クーラー効いてないのかな?
(紀美子)
春花は突然やって来た
あの…ハルちゃん。
これからなんだけど。
・
(店員)すいません…。
もしかして榎本春花さんですか?ああ…はい。
(店員)うわぁ!やった〜!わーこんな所で会えるなんて思ってなかった!あのサインもらっていいですか?
(春花)あっはい。
(店員)ペンペンペンペン…。
(春花)あっペンありますよ。
(店員)ホントですか?すいませんちょっとこれに…お願いします。
(春花)分かりました。
(店員)うわぁ…すごい。
奇麗。
マネジャーさんですか?今日お仕事ですか?いつもテレビ見てます。
(春花)あっありがとうございます。
(春花)やっぱり料理って自然の恵みを受けて初めてできるものじゃないですか。
榎本春花は一日テレビをつけていれば必ずどこかに出てくる
超の付く人気料理研究家になっていた
(春花)私はこれを使います。
ネイチャーフレンド。
でも今の春花が私の知ってる中学高校時代の春花に重なるかといえば…
有名なのも大変ね。
分からなくなる
すごく退屈な町だけどのんびりするにはいいかも。
天井に描かれた絵が有名なお寺があるの。
(春花)そうなんだ。
(紀美子)まずはそこに。
(解錠音)キミちゃん。
(紀美子)うん?人殺した気分って分かる?
(紀美子)えっ?あのね…。
私人殺したかも。
(紀美子)ねえご飯食べちゃって。
(夫)うん?うん。
味噌汁は決して煮立たせない
注意していたのも結婚3年目まで
結婚生活もとうに20年が過ぎていた
(夫)ねえ犬どうする?
(紀美子)えっ?何だ聞いてないのか?犬だよ。
ああ…私は…。
どっちでもいいよ。
子づくりの話題が出なくなってから久しい
このまま2人で生きていく
だけどその覚悟もまだできていない
(・『POPCORNNANCY』)
パート先で二十歳のアルバイト女子がくれたCDはよく分からなかったけど聴いていれば自分の一部がまだ20代のままでいられるような気になった
いらっしゃいませ。
春花の活躍を見れば見るほど自分がその分地味で不幸であるように思えもう一度春花に出会えれば退屈な私の暮らしが開かれるんじゃないか
そう思って彼女のTwitterにリプライを入れた
でもずっと返信はなかった
ありがとうございます。
(通知音)
(・『POPCORNNANCY』)ハルちゃん冗談よね?さっきの「人殺した」って。
キミちゃんってこんな曲聴くんだ?若い。
もしかして若い男の人と付き合ったりしてんの?あのねキミちゃん。
(紀美子)うん?緑町3丁目って知ってる?
(紀美子)えっ?行きたいの。
(紀美子)緑町に何があるの?ねえハルちゃん。
今日泊まるんでしょ?ホントはうちに泊まってもらいたいんだけどうち狭いし。
もう少し行くと2年前にオープンしたばかりのホテルがあるの。
私もたまには泊まろうかなって。
泊まるかどうかは分かんないのよねえ。
ハルちゃん。
何?もしかしてまだあのこと気にしてる?あのことって?あっ…いい。
ううん。
緑町で火事があったの。
えっ?
(春花)キミちゃん知ってる?
(紀美子)火事…。
えっ火事?火事で人が死んだの。
(春花)「木造2階建て全焼」「焼け跡から会社員松山大介さん56歳と見られる遺体が見つかった」「松山さんは妻27歳長女3歳と次女1歳との4人暮らし」「松山さん以外の3人は重傷で入院中」「妻の回復を待って事情を聞く方針」
(紀美子)殺したって…。
まさかハルちゃんが火事を起こしたんじゃないわよね?この辺初めてだって言ったでしょ。
それに自分で火付けたんだったらその場所分からないわけないじゃない。
はぁ…そうよね。
もういい。
自分で探すから。
(紀美子)ハルちゃん…ちょっと!ハルちゃん!
(春花)タクシー拾う。
ハルちゃん。
ハルちゃんあの…。
テレビでやったお料理ってどうするの?よく試食してみんな「おいしかった」って言うけど失敗することなんてないの?お砂糖と塩間違えるとか。
(紀美子)ごめん。
あるわけないか。
あるわよ。
そういうときも時々。
火事で亡くなった人ね…。
恋愛してた相手と同姓同名なの。
えっ!?
(紀美子)ねえここじゃない?やっぱりここよ。
(春花)うん。
降りないの?だって…降りたら目立つじゃない。
(春花)もういい。
車出してくれる?
(紀美子)えっ?もういいの?
(春花)うん。
お花買ってこようか?
(春花)いいから出して。
(紀美子)ああ…ごめん。
やっぱりこの辺りみんなお盆休みみたい。
(春花)誰も歩いてないし…。
地方ってどこ行っても駄目よね。
でも…奥さんの入院先聞いてどうするの?お見舞いに行くの?元カレの現妻なのよね…。
(春花)プッ!キミちゃんやっぱ若い!「元カレ」に「現妻」?確かめたいの。
松山大介があの松山大介か。
そうじゃないの?昔恋愛した人と同姓同名なだけでその人って保証はないから知りたいの。
それに奥さんだって重傷って言ってももう2カ月もたってるから退院してる可能性もあるよね。
そういうことも病院で分かるんじゃないかな。
(紀美子)でも名前が同じだけだったら…。
(春花)年齢も一緒。
それに彼が勤めてた会社の支社がこっちにもある。
それにしてもつまらない町よね。
私たちが育った町も退屈だった
(担任)今日から教育実習で来られた宮本先生です。
そんなつまらない毎日を壊してくれたのが彼
(宮本)宮本です。
教育実習の間の短い時間ですがよろしくお願いします。
僕もこの学校出身で皆さんの4つ上の先輩になります。
ろ…廊下で擦れ違って無視とかしないでくれよ?
(生徒たち)フフフ…。
受験のこととか友達のこととか色々アドバイスできることもあると思うので気軽に話し掛けてください。
とにかくみんなのことが早く知りたいです。
(春花)ねえねえ。
今度の教生の先生ちょっといいよね?
(紀美子)そっかなぁ?
(春花)え〜?いいじゃん。
(紀美子)ああっ!
(宮本)どうした?
(春花)何でもないです!ねっキミちゃん。
(紀美子)はい…何でも…。
あっ。
今度先生の家遊びに行ってもいいですか?えっ…。
(宮本)あ…うん…。
まぁいいけど。
勉強見てください。
お願いします!
(紀美子)ハルちゃん待って!
(春花)遅い!早く!あ〜!あ〜!
(宮本)公式使えばいい。
おなか〜すいた。
ハハッ!あ〜!あ〜!
(宮本の母)はいスイカよ。
(春花)あっ!スイカ!やった!
積極的な春花のおかげで私たちは一気に親しくなった
夏休みの帰省には勉強を教えてもらったり遊んだり
(宮本)コラッ!ちょっともう…どこまでやったの?
(種を飛ばす音)そんなことしていいんですか?種ってのはな飛ばすもんなんだよ。
ハハッ!私もやろう!んっ…んっ…。
(種を飛ばす音)全然飛んでないじゃねえかよ。
(春花)ええ…。
(種を飛ばす音)
(宮本・春花)ハハハ!
(宮本)冷たっ!
(2人)くらえ!キャー!ちょっと待って!
(宮本)あー!
(春花)アハハ!バンッ!
(宮本)えっ?駄目だよ先生。
撃ってみて?
(宮本)えっ?バンッ。
(春花)うっ!うう…。
(宮本)ハハハ…何…何がしたいの?先生助けて!
(宮本)ほら。
よいしょ。
(春花)ありがと。
おい!ちょっとおい!やめろ!おい!やったなお前!キャー!ウフフ…。
疲れてんじゃん!
(宮本)やめてくれ!
(春花)先生!
(宮本)おい!
(春花)先生ありがとう。
(紀美子)ありがとうございました。
(宮本)おう。
(春花)バンッ!
(宮本)うっ…。
(春花)アハハ…バイバイ!
(宮本)気を付けろよ。
(春花)キミちゃん。
私宮本先生のこと好きになっちゃった。
キミちゃんもでしょ?もしもどっちが選ばれても文句の言いっこはなし。
祝福しよう。
約束。
分かった。
約束。
(春花)約束ね。
たぶんこの辺りならみんなこの大学病院よ。
街には人いなかったけど病院はいっぱいね。
ねえハルちゃん。
私に会いたかったわけじゃないのよね?
(バイブレーターの音)
(紀美子)あっごめん…。
(バイブレーターの音)もしもし。
うん。
泊まらない。
だから予定が変わったんだって。
えっ?見てみるけど…ちょっと待ってて。
あるけど。
うん。
今駄目。
無理。
だから私にも色々あるんだって!キミちゃん?大丈夫?
(紀美子)ああ…。
あのねハルちゃん。
あのね…。
ここで待ってて。
ハルちゃん有名人じゃない?病院にいたらまた誰かに見つかってサイン求められちゃうかもしれないじゃない。
どうしてこんな地方にいるんだって思われちゃう。
私聞いてくるから。
(春花)ありがとう。
いいの。
(チャイム)
(女性)お呼び出しいたします。
内科のホリ先生…。
(チャイム)・
(足音)奥さんも子供も回復してとうに退院したって。
ホントに?実家が青森にあるんだけどそこに帰ったんじゃないかって。
住所までは教えてもらえなかったけど。
あとね亡くなった方ハルちゃんの知り合いじゃないよ。
この辺りの出身の人って職員が口滑らせたから。
ありがとう。
どうしよう?もう用事終わったんだよね?だとしたら帰る?駅まで送っていくから。
(紀美子)ちょっと待ってて。
すぐ済ませるから。
40になる前に別れたの。
結婚してて子供もいて。
「別れる別れる」って言ってちっとも別れないから。
でも結婚するにしてももう年齢もギリギリだったし。
もう無理だって思って別れたの。
でも結構つらくてね。
(春花)そんな思いしたのにすぐずーっと若い恋人つくって。
(春花)私のときは離婚しなかったのにさっさと離婚してその若い女と結婚して。
それでねキミちゃん。
私そいつのこと呪った。
呪ったの。
不幸になれ不幸になれ。
不幸になれ不幸になれって。
毎日。
怖いでしょ?それじゃああの…。
でも新聞で彼と同じ名前見つけたとき私そこまでじゃないって思って。
そこまでじゃない。
そこまで望んでない。
どうしようって。
自分で火付けて殺したみたいな気分になって。
怖かった。
昔私は春花にひどい仕打ちをした
(紀美子)大丈夫?
(春花)うう〜やっぱ熱っぽい。
ああ…無理だ。
早退するからさ…。
これ。
また冬休みに帰省してきたときに遊んでくださいって伝えて。
分かった。
伝えとく。
(春花)じゃあ。
(宮本)小野田さんって何でも「ハルちゃんハルちゃん」だよね。
だってハルちゃんはすごいんだから。
他の子とは全然違う。
(宮本)いや…。
小野田さんだってじゅうぶん魅力的だよ。
そんなことないです。
いやいいんです。
お邪魔しました。
(宮本)おい!傘持ってないんだろ?
(宮本)ほら。
先生のこと…。
好きです。
(宮本)はっ!?ごめんなさい!忘れてください。
(雷鳴)
(紀美子)キャッ!
(紀美子)ハルちゃん!言ってくれればよかったのに。
(紀美子)ハルちゃんごめん。
内緒にしとくつもりじゃなかったの…。
おめでとう。
約束!どっちが選ばれても祝福しようって。
やったじゃん。
バイバイ。
あのときから春花と私の暮らしは分かれていった
春花は卒業すると東京に行きあんなに親しかったのに連絡は途絶えた
(紀美子)ちょっと待ってて。
(夫)ああ。
(紀美子)もう!
(夫)ああごめんごめん。
あれ?髪形何か…。
(紀美子)いいの。
はい。
(夫)どうやってやんの?
(紀美子)これがね再生ボタンでしょ。
それでこの赤いのが録画。
(夫)うん?これ?違うか?
(紀美子)忘れたの?だって仕方ないだろ。
顧問が休みでさ急に記録しといてくれって…。
素人なのに副顧問なんか任されてるこっちの身にもなってくれっていうの。
(生徒)宮本先生早く!
(宮本)ああすぐ行く。
(宮本)うん。
(宮本)うっ!
(生徒)先生早く!
(宮本)おう。
(生徒)早く早く!宮本先生眼鏡は?ああ…。
あれからコンタクトにしたの。
そっか。
ごめん。
結婚したこと話してなかった。
知ってたよ。
だって宮本紀美子じゃん。
キミちゃんがいなかったら怖くて確かめられなかった。
ここに来ても誰にも何も聞けなくてあの大介かどうかも分からなくてもんもんとしてたと思う。
今度はうちに遊びに来てね。
(紀美子)うん。
(男)雷が鳴ったんです。
(男)雷の音が怖くて怖くて。
泣きながら母親を待ってました。
この駅前で。
私は7歳でした。
(雷鳴)
(警察官)《どうした坊主》
(雷鳴)
(割れる音)
(母)《おさむちゃん》
(男の子)《お母さん!》
(男)死んだ父親の遺骨が入っていたんです。
父を亡くし生活にも行き詰まって…。
どこかで心中しようと思い駅まで行ったと。
後から母から聞かされました。
(警察官)《うん?それでどうしましたか?》《ああ…》《ちょっとどこか行ける所はないかと考えておりまして》
(男)あのお巡りさんのおかげで私も母も生き延びることができた。
そして私も警察官に。
雷ひとつで人生なんて変わるんですね。
両親の墓参りに来たんですが感傷的になってしまいました。
あっ…私も…。
雷でした。
ありがとうございました。
ハルちゃん!
(紀美子)私…誰にも聞いてない。
その人の奥さんまだあそこにいるかもしれないの。
もういいの。
(紀美子)どうして?いいの。
だったらハルちゃんどこまで望んでたの?松山大介さんのことそこまで望んでないって。
そしたらハルちゃん。
どこまで不幸だったらよかったの?平凡。
えっ?ど平凡。
ど平凡になれって。
ハルちゃん…。
私にも同じこと…。
呪ったことある?
(春花)うん。
腐るくらいのど平凡が不幸だって思ってたから。
でも違った。
キミちゃんと会って。
死んでなんかなくて…。
波瀾万丈でもなくて!平凡に生きていてほしいってそう思った!だってキミちゃんがそうだから。
キミちゃんにもう一度会えてよかった。
(・『夏祭り』)ねえねえキミちゃん。
私高校出たらいち早くまっとうな結婚して子供産んで大家族つくるよ。
ええっ!?そんなのもったいないよ。
ハルちゃんだったら東京行ってバリバリ仕事してバリバリ恋愛して道端で叫んじゃうような人になれるのに。
何で道端で叫んじゃうわけ?
(紀美子)えっ?だってテレビドラマに出てくるドラマチックな若い女の人ってだいたいみんな叫んでるじゃん?
(春花)ウフフ…。
それっておかしい人みたい。
(紀美子)嘘!?
(春花)アハハハ!
(2人の笑い声)
(発車ベルの音)
(警笛)
(警笛)
(宮本)帰った?
(紀美子)うん。
たった今。
(宮本)そうか間に合わなかったか。
(紀美子)あのときも会えなかったねえ。
会えたら人生変わってたかな?
(宮本)えっ?何て?
(紀美子)ううん。
あれ?部活は?戻らなくていいの?ああ。
適当に終わらせた。
(紀美子)何それ。
生徒がかわいそうじゃない。
(宮本)いいのいいの。
これでも一生懸命やったんだから。
(紀美子)適当。
(紀美子)ねえ。
犬飼おっか。
2016/01/04(月) 21:00〜23:24
関西テレビ1
女性作家ミステリーズ 美しき三つの嘘[字]
湊かなえ・三浦しをん・角田光代、3人のベストセラー作家×6人の豪華女優陣!秘密と嘘で日常から落ちていく女の傑作サスペンス一挙映像化!貴方は必ず騙される
詳細情報
番組内容
【ムーンストーン】
主人公の私(永作博美)は、市議会議員の妻。高級住宅街に暮らし、何不自由なく暮らしているかのように見えたが、夫(滝藤賢一)から日常的なDV被害を受けていた。ある日、夫の暴力から娘を守ろうと抵抗したはずみで、夫を殺してしまう。逮捕され警察から取り調べを受ける私のもとに、ある女性(檀れい)が現れる。物語は私の中学時代の回想とシンクロしながら進行し、最後には驚がくの展開が待ち受ける。
番組内容2
【炎】
毎朝、通学バスで登校する高校生の香川亜利沙(土屋太鳳)の日課は、憧れの先輩・立木尚吾(村上虹郎)の横顔を眺めること。そんな憧れの立木がある日突然、学校のテニスコートで焼身自殺をする。一瞬の出来事に衝撃を受けた亜利沙だったが、その後、立木と親しかった楢崎初音(門脇麦)とともに自殺の原因を探っていく。果たして、立木に死を選ばせたものとは?
【平凡】
宮本紀美子(鈴木京香)は、結婚生活も
番組内容3
20年を越え、近所のスーパーでパートをしている主婦。紀美子がテレビをつけると、紀美子の同級生・榎本春花(寺島しのぶ)が出ていた。春花は人気料理研究家で、彼女の活躍を見るにつけ、自分が地味で不幸に思えてしまう紀美子は、春花に会えば、退屈な毎日から脱却できるのではと考え連絡を取る。喫茶店で20年以上ぶりに再会を果たす2人。思い出話に花を咲かせる中、突然、春花が「わたし、人を殺したかも」とつぶやく。
出演者
【第一話「ムーンストーン」】
永作博美
檀れい
村上淳
滝藤賢一
柄本明
【第二話「炎」】
土屋太鳳
門脇麦
村上虹郎
柄本佑
【第三話「平凡」】
鈴木京香
寺島しのぶ
染谷将太
寺脇康文
〈第一話〜第三話〉
三浦友和(特別出演)
他
スタッフ
【第一話「ムーンストーン」】
〈原作〉
湊かなえ
〈脚本〉
山室有紀子
深川栄洋
〈監督〉
深川栄洋
【第二話「炎」】
〈原作〉
三浦しをん
〈脚本〉
加藤綾子
〈監督〉
廣木隆一
【第三話「平凡」】
〈原作〉
角田光代
〈脚本〉
瀬々敬久
〈監督〉
瀬々敬久
【制作】
フジテレビ
【制作・著作】
ドリマックス・テレビジョン
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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