クローズアップ現代「“新たな隣人たち”(1)どう接しますか?地域の外国人」 2016.01.05


爆買いブームに沸いた2015年。
史上最高の1900万人以上の外国人旅行者が日本を訪れました。

そして、少子高齢化が進む日本では今、外国人の力に注目が集まっています。
政府は、労働者や生活者としても外国人を受け入れ日本人と共生していくための議論を始めています。

(銃声)しかし、パリで起きた同時テロを受け、改めて外国人を受け入れることへの懸念も広がっています。
私たちはこれから身近に接する外国人とどう向き合っていくのか。

シリーズ・新たな隣人たち。
増え続ける外国人との関係を2夜連続で考えます。

こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
国際化やグローバル化こうしたことばを聞くと世界中のマーケットに進出する日本企業や海外の会社で働く日本人あるいは外国との相互依存というイメージが強いかもしれません。
人、物、金が地球規模で動き回る時代ですが自分の身近な所に外国人が隣人として当たり前のように暮らす日本社会が次第に近づきつつあることを感じている方はどれだけいらっしゃるでしょうか。
日本で生活する外国人の数は1980年ごろには78万人でした。
去年・2015年には217万人以上、人口の1.7%。
ちなみに、フランスではこの割合が6%を超えドイツでも10%近くに上っていまして日本はまだこの数字に比べますとはるかに少ないのですが近い将来、日本に定住する外国人が急増しても不思議ではない状況となっています。
少子高齢化が進むことで深刻な人手不足が予想される日本。
特にサービス業や介護の現場では人手不足を補うために積極的に外国人を雇う動きが活発になっています。
ことば、宗教、習慣の異なる人々は、どんな思いで日本で働き暮らしているのか。
好むと好まざるとにかかわらず定住する外国人が増え異文化と接する可能性が高まる中で、摩擦を防ぎ互いを受け入れていくための理解や寛容性をどのように構築していくのか。
きょう、あす、2夜にわたって考えてまいります。
今夜は、地域の中で外国人と共存していく模索です。
住民の4分の1が海外から来た人々という団地の取り組みからご覧ください。

頭では分かっているつもりでもいざ身近に暮らすとなると戸惑いが多い日本人と外国人。
そんなお互いの溝を埋めようと長年、模索を続けている団地があります。
神奈川県営いちょう団地です。
3300世帯のうち4分の1がアジアや南米などおよそ10か国から来た人たちです。

この団地に外国人が住むようになったのはおよそ30年前。
近くにベトナムやカンボジアなどからの難民を支援する施設があったからです。
家賃が安いなどの理由から中国や南米からの出稼ぎ労働者たちも暮らすようになりました。
しかし、外国人が増えるとともにごみ捨てや騒音などのトラブルが続出。
耐えかねた自治会ではなぜルールを守らないのか問いただすようになりました。
しかし…。

注文するたびに外国人からも反論。
さらに…。

すると外国人は「日本人だって豆をまくじゃないか」。
文化の違いはなかなか埋められずにいました。
こうした中外国人の住民の意識を変える大きな役割を果たしたのが子どもたちでした。

ベトナム人のタイさんは娘のウェンさんを通して住民とのトラブルを解決した一人です。
タイさんがこの団地にやって来たのは6年前。
特に困ったのがごみの出し方でした。

分別をせずにごみを出し近所の人たちからたびたび注意されていましたがなぜ分別しなければならないのかふに落ちず分けずに出し続けていました。
ある日、娘のウェンさんに「お父さん、違うんだよ」と注意を受けます。

授業で、団地特有のごみ問題を学んでいたときのこと。
ウェンさんは、ごみを埋めてしまうベトナムと違って日本では、ごみを資源としてリサイクルしていることを知りました。
すぐさま、学んできたことを父親に伝えたといいます。

子どもたちが学んだことが親に伝わる好循環は、いつしか団地全体に広がっていきました。
今では、団地のイベントなど外国人の親子がそろっているときに地域の課題を話し合うようになっています。

日本人の意識も変わり始めています。
外国人も地域を支える大事な担い手として考えるようになったのです。
防犯活動や掃除などに参加してもらおうと自治会の活動を6つの言語に翻訳。

今では自治会の役員としてリーダー役も務めてもらっています。

外国人の入居が始まって30年。

互いに歩み寄り共生を目指す取り組みが続いています。

今夜は2人のゲストをお迎えしております。
東京大学名誉教授で、文化人類学がご専門でいらっしゃいます、船曳建夫さん。
そして、スリランカのご出身で、羽衣国際大学教授、そしてタレントでもいらっしゃいます、にしゃんたさんです。
日本人どうし、同じ空間に暮らしていると、摩擦が起きてもおかしくない中で、4分の1の住民が外国国籍だということで、このいちょう団地の取り組み、見てきましたけど、にしゃんたさん、どうご覧になられました?
そうですね、30年間住んでましてですよ、そこで起きてるこの問題っていうのは、ごみの出し方であったりとか、騒音の問題であったり、豆をまいてるからとかっていうようなことを考えますと、世界でいわれている移民問題とかと比べても、すごくほのぼのしてるっていうんですかね、こんなもの、問題のうちに入らないような気がしてならないんですよね。
非常にその点が、違う方を受け入れて日本の社会でやっていける可能性っていうようなものを、すごく証明してるようなふうにも思いますね。
なるほど。
にしゃんたさんご自身は、日本に暮らして30年、日本の国籍も取られていましたけれども、最初の頃、日本に来たとき感じた嫌な思い、差別、あるいは偏見っていうものに直面されたことはあるんですか?
恐らくひととおりのものを経験してきたかと思うんですね。
それこそ、就職差別であったりあるいは入居差別であったりとかですよ、それこそ、一つ思い出にありますのは、試食食べる所あるじゃないですか。
あそこで試食、つまんで、取ろうと思ったら、そこのお母さんが手をたたいてきたんですね。
そういったいろいろありましたけれども、でも今のね、自分を考えますと、すごくこう、育ててもらったっていうんですかね、私なんか日本に来た時分っていうのは、非常にバブルのころっていうのもあって、日本人の相手の大らかさっていうんですかね、ゆとりのようなものがあったんですね。
その中でいろいろ摩擦とかそういう偏見にあったっていうのもありましたけど、でもすごく育てられる、われわれを迎え入れるだけのゆとりが、あったような気がするんですね。
その点、今とはちょっと時代が違うような気がしてならないんですね。
そのとき、ゆとりがあって、外国人を受け入れようとしたのと今、ゆとりがない。
日本人で回らないから、社会の尻拭いとでもいいましょうか、そういったところでの役目を、外国人に担わせるために迎え入れるとなると、またわけが違うのかなと。
本当に人間として迎え入れるだけのゆとりが、日本人にあるのかなっていうところをちょっと心配をしております。
なるほど。
船曳さん、今、本当に政府も企業も外国人の受け入れを積極的に考える時代になってまいりました。
今、おっしゃっているような懸念というのを、どうお聞きになられましたか?
そうですね、どこの国でも今、新しい事態が発生というのが第2次大戦後に人が動いていって労働力になったときとはちょっと違う。
いろいろなその後、問題が起きて、それに対しての反省みたいなのがあって、みんなどこでも戸惑っている。
そこに日本も、やや外国人の受け入れって話が来ているので、だからどこでも起きていることが、これから日本でも起きるということですね。
今の団地でも、なぜ、ごみの分別をしなければいけないのか、その説明が少しあれば、もっともっとトラブルなどは、避けられたのではないかというふうに思われたんですけれども。
そうなんですよね。
でもにしゃんたさんがおっしゃったように、確かにあまり大きな問題ではなくて、ちっちゃなことで。
ただ、小さな芽のうちに、摘んでいるというあたりが、まあ言ってみれば日本的な細かな成功例ですよね。
大きな問題になる前に。

しかし説明不足になりがちなんでしょうか。
ことばの問題が本当に大きいですね。
最初の問題だし、最後の問題でもあると思いますね。
単に日本語は道具ってことじゃなくて、日本語を学ぶ中で、日本の中のやり取りみたいなものを教わっていくという、それが日本語を道具として考えて入ってきた外国人にとっては、使わなければそんなにいらないなと思ってたと思うんですね。
でもお子さんたちは、そこで育っているわけなので、いわば日本語だけじゃなくて、日本的なやり方っていうのを身につけていて、お父さんに言ったのは、そのやり方が違うよということを言ったんですね。

何かこう、1言えば10分かってもらえるよねみたいな空気っていうのはありますかね。
私も日本人の妻と結婚したときに、周りの方が言ってくれたんですよ、夫婦の関係っていいもんだと。
だいご味は、1言うと10分かるというところがいいって、教えてもらったんですけど、いざ夫婦をやってみたら、1言って10分かるはずがないですよ。
むしろ1言って10返ってくる。
だからやっぱり違うんだっていう前提に立って、あうんの呼吸とか、察する文化って、本当にみんな顔ごとに違うんだっていう、みんな前提に立って、素直に相手を知る努力するってことが、大変、こういう国際時代だからこそ、非常になおさら、大事になってくるのかというふうに思いますね。
異文化とどう接するかということですよね。
やっぱり1言って10知るときもあるんですね。
それは単にことばだけじゃなくて、ことばの裏を相手が読んでくれて、お互いに話していても、にしゃんたさん、何考えてるかなと僕がこう、読もうとしている。
これが日本の中では発達してますから、確かに1言って10知ってくれる場合もある。
でも、にしゃんたさんの奥さんってすばらしく、10返ってくるっていう、そういうやり取りもまた新しく日本でも始まってる生き方ですから。

ことばのやり取りをこれからどう豊かにしていくかということも問われるんではないかと思えるんですけども、冒頭でご説明しましたように、先進国の各国では日本よりも多くの外国人がすでに暮らしています。
多くの外国人を受け入れている国々では、差別や偏見、あるいはテロの脅威など、さまざまな課題にも直面しています。
こうした状況の中で、注目を集めている、スペイン・バルセロナの取り組みをご覧下さい。

スペイン・バルセロナです。
パリのテロが起きたあとも外国人とのよりよい関係を構築する試みを続けています。
バルセロナでも、2000年に人口の3.5%だった外国人が労働力不足を背景に16%にまで増加しました。
目指してきたのはほかの国々とは違う共生の形です。
例えばフランスは移民であっても、フランスの価値観を受け入れさえすれば平等な権利を認める同化主義的な政策です。
しかし、実際には就職などでの差別も存在し経済格差が広がっています。
また、イギリスでは長年元の文化や価値観のままであることを認める多文化主義的な政策を取ってきました。
しかし、文化ごとにコミュニティーが分断してしまう傾向がありました。
これに対しバルセロナが目指すのはもともとの文化を維持することを認めながらもそれぞれが一緒に暮らす共生です。
お互いが刺激し合うことで社会がよりよくなるという考え方です。

しかし、実現のためには大きな課題がありました。
外国人に対する市民の偏見を取り除く必要性があったのです。

市では、2010年から反うわさ戦略と名付けたキャンペーンを展開しています。
そのために養成したのが1200人を超える反うわさエージェント。
悪いうわさを聞きつけるとそれに根拠がないことを証明し市民に事実を伝える任務を負います。
ユニークなのは、そのやり方です。
例えば、社会保障費の多くを移民が使っているという偏見に対しては…。

バルセロナに長く住む女性にふんしコントでおもしろく伝えます。
大切なのは、思い込みではなく事実だということをエージェントたちが大道芸や漫画などさまざまな手法で伝えています。
さらに、まだ偏見が根づいていない子どもたちへの働きかけも始まっています。

この学校を訪ねたのはヒップホップが得意なエージェント。
うわさ話がいかに根拠がないものなのか子どもたち自身に考えさせそれを歌にして発表するという特別授業を行いました。
♪〜♪〜
外国人に対する自分たちの意識から変えていこうというバルセロナの取り組み。
その新たな挑戦に世界中が注目しています。

船曳さん、今のVTRでは、思い込みではなく、事実を伝えること、そして、子どもたちへの教育ということが重要視されていたんですけれども、これから日本に、好むと好まざるとにかかわらず、外国人も増えてくるとなると、どういった取り組みが必要になってくると思いますか?
1つは問題をことばにしていかないといけない。
そうでないと、どうして分別しなきゃいけないのかと、説明されないままいつも非難されているとわかんなくなると。
ことばにするのは、ちょっと苦手ですよね。
もう一つは、今見ていて、ある意味で、日本はこの分野において後進国ですから、先進している国の、いろんなことを学ぶことができるわけで、こうやってこの番組、例えばバルセロナの取り組みであるとか、ドイツでどうかということを学べますよね。
ですから、ある意味で、ちょっといい立場に立っていて、追いつくのはなかなか上手なので、いろんなところでやってることを学ぶっていうのは。
にしゃんたさん、人口の1.7%が今、日本では外国人、その大多数が日本人であるという中で、どういうこれから受け入れていく中で、何が大事だと、どういう意識が大事だというふうに思われますか?
今、日本社会にですね、多数派ボケというものがありますね。
多数派であるがために、努力せずですね、成長をとどめているような気がするんですね。
その点、日本に来てる外国人はですよ、毎日1個ずつ、周りの日本人に教えてもらって成長してるんです。
日本人にはぜひ、成長を止めないで、多数派であることに関して、コンプレックス、自分は日本のことしか知らないっていうことに対してコンプレックスを抱き、先ほどの子どもたちじゃないですけども、いろんな文化を吸収していく、自分の力に変えていくという姿勢がまず一つ、大事ですね。
もう一つ大事なことで言いますと、共生というのは、ややもすると同化であったり、住み分けであったり、下手すると排斥、排除、無視ということも、われわれが共生っていうふうに捉えがちなんですね。
共生っていうことばは、私なんか、ちょっと疑ってまして、必要なのはですね、違うどうしが共に楽しむ必要があるんです。
共に学ぶ必要があります。
共に育つ必要があります。
共に生き、生かされる必要があります。
共に笑う必要があるんですね。
ただの共生ならぬ、共楽、共育、共学、共活、そして共笑というものを大事にする、そこにこそ持続可能で平和で発展的な日本っていうのは、見込めると、こう思いますね。
そのためには、日本に魅力がないといけない。
もともと、魅力はあると思いますね。
ですからむしろ日本の人がその魅力に気が付く。
そうすると、今の日本の若い人たちが、将来に対してある希望を持つっていうことと。
この国に対してですね。
そうです。
日本の外の人たちが、日本である魅力を感じるっていうこと、それは重なる問題だと思うんですね。
ただ、日本の労働力、不足している分を、外国から何かを持ってきて埋めるというのではなくて、むしろ外国の人たちが日本を労働市場として、もしくは生活する場として魅力的と感じるような、そういう国でなきゃいけなくて、それは日本人がすでにやっていることをもう一度取り返して、考え直して、ことばにして、確認してみるということだと。
たぶん、にしゃんたさんは、日本を魅力的な国だと思ってらっしゃると。
そうなんです。
30年間、住んでますけど、1日も飽きたことないんですよね。
こんな楽しい国はないんです。
ぜひね、その魅力を世界に発信したいですよね。
きょう、お二方、どうもありがとうございました。
2016/01/05(火) 01:00〜01:26
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「“新たな隣人たち”(1)どう接しますか?地域の外国人」[字][再]

フランスのテロ以降、異なる文化に寛容な“共生社会”が試練をむかえる中、新たな道を探るシリーズ。一日目は、20か国の人が住み、外国人との接点が増えた団地などの模索

詳細情報
番組内容
【ゲスト】東京大学名誉教授…船曳建夫,羽衣国際大学教授…にしゃんた,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】東京大学名誉教授…船曳建夫,羽衣国際大学教授…にしゃんた,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:7089(0x1BB1)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: