豪華寝台列車特急東洋
その車内で1人の男が殺された
(藤堂)うっ…。
(莫)乗客が1人ベッドの上で死んでるんです。
そこに居合わせた1人の探偵
(勝呂)勝呂武尊と申します。
(莫)助けてください。
容疑者は12人の乗客
(馬場)お話しできるようなことは何もございません。
(幕内)僕は殺してない…。
(安藤伯爵)妻はこの殺人事件に一切関わっていない。
なるほど。
全てがつながりました。
この男の正体も彼が殺されなければならなかった理由も。
そして明かされる容疑者たちの過去
(勝呂)この事件の動機は5年前の悲劇にあるのです。
(須田)剛力大佐のことですか?大佐のお嬢さんが誘拐され身代金を支払ったにもかかわらず遺体で発見された。
首謀者は笠原健三。
(須田)そいつが藤堂だとおっしゃるんですか?犯人は剛力家とつながりのある人物だ。
事件を解明するときが来たようです。
それは誰もが想像しなかった驚くべき復讐劇
ここにいる全員が共謀して藤堂修を殺害したのです。
(八千代)全ては5年前のあの日から始まりました。
(呉田)あっ危ないから走らない!
(益田)おかえりなさいませお嬢さま。
(聖子)ただいま。
(昼出川)皆さんお庭でお待ちですよ。
(聖子)はい。
(小百合)お嬢さまあっちですよ。
(浪子)聖ちゃんのお帰りよ。
(聖子)お父さまお母さまただ今帰りました!
(剛力大佐)こっちに来なさい。
(八千代・曽根子)おかえりなさい。
(聖子)お母さまお誕生日おめでとうございます。
(曽根子)ありがとう。
(聖子)あ〜おなかすいた。
(一同)乾杯。
(浪子)はい。
聖ちゃんどうぞ。
(聖子)ありがとう。
(浪子)エビ好きだもんね。
(八千代)この時間が永遠に続けばいいと思いました。
(八千代)それがあの日を境に一変したのです。
(呉田)お嬢さま起きてください。
お嬢さま学校に遅れますよ。
失礼いたします。
(保土田)どこにもおられんごたあ。
(呉田)警察に連絡した方が。
(馬場)電話いたしましょうか?
(ドアの開く音)
(益田)失礼いたします。
奥さま郵便受けにこれが。
(馬場)あっ…。
(益田)奥さま奥さま。
(馬場)奥さま。
(呉田)大丈夫ですか?
(益田)奥さま!
(保土田)奥さま。
・
(ノック)
(八千代)曽根子!
(曽根子)お母さま。
(保土田)はがいか〜!もうこげなことがあってよかつか!大丈夫。
お嬢さまはきっと戻ってくる。
(昼出川)やっぱり警察に言った方がいいんじゃない?しかし脅迫状には「警察に知らせるな」と。
(昼出川)あんた見られてないでしょうね?
(小百合)大丈夫です。
裏口から入ったから。
あんたはどう思うの?
(羽佐間)僕は手遅れになる前にやはり警察に知らせるべきだと。
私もそう思う。
(安藤伯爵)その後進展は?
(益田)何も。
(浪子)お姉さま。
(剛力大佐)警察に電話だ。
(曽根子)でも…。
(剛力大佐)向こうの言いなりになってどうする。
電話を。
(馬場)かしこまりました。
(剛力大佐)心配するな。
聖子は必ず助けだしてみせる。
・私だ。
無論だ。
私は警察関係にも親しい人間が何人もいる。
身代金は一切払うつもりはない。
帝国軍人を侮ってもらっては困る!悪いことは言わん。
今すぐ娘を返しなさい。
何を笑ってる。
私は本気だ!いいか?もし仮に娘に危害を加えるようなことがあれば私は生涯お前を許さん!残りの人生全てを懸けてお前を捜し出しそして息の根を止める…。
声に聞き覚えは?ない。
ひきつったような不愉快な笑い方をする男だった。
お姉さまかわいそう。
(記者)聖子ちゃんはどうなったのか教えてください!剛力大佐!みんないい気なものね。
旦那さまもおつらいでしょうね。
(能登)気持ちは分かるが何よりも優先すべきはお嬢さんの命じゃないのか?
(能登)払う金がないならともかく。
しかし。
(能登)意地を張ってる場合じゃないだろう。
お前にだけは分かってほしい。
俺だって本当は金を払って娘を助けたい。
だったら…。
軍人として前言を撤回することはできん。
剛力…。
お前は軍人である前に人であるべきじゃないのか。
(能登)父親であるべきじゃないのか。
勇気ある撤退は恥ではない。
・間違いないのか?あなた?
(呉田)あっ…。
(八千代)曽根子!奥さま。
奥さま…。
すまん。
私がお前たちを殺したのだ。
(銃声)署までご同行願います。
(刑事)来い。
(刑事)じゃ何であんな早朝に表にいたんだ!
(刑事)貴様犯人を屋敷に引き入れたな!
(羽佐間)小百合さんは僕と会っていたんです。
嘘じゃないんです!それからしばらくして笠健が容疑者として逮捕されました。
(幕内)彼はもともと大戦景気でのし上がった成金の1人でしたが戦後恐慌でつまずき資金繰りが立ち行かなくなり今回の誘拐事件をたくらんだようです。
(轟侯爵夫人)あのお屋敷はもう人手に渡ってしまったのですね。
はい。
悲しいことです。
いまだに信じられないんです。
曽根子も剛力大佐も孫の聖子ももうこの世にいないなんて。
悲劇としか言いようがありません。
で犯人はどうなったのですか?今裁判の途中ですがどうも雲行きが怪しくて。
どういうことですか?検事さんの話ですと状況証拠は限りなくあるのですが決め手に欠けるものばかりで今のままでは無罪になる可能性が高いと。
あれだけのことをやっておいて罰せられないというのですか。
今の法律では。
でも私は許さない。
たとえ法が許しても。
(記者)笠原さん一言。
(記者)お願いします!
(記者)笠原さん率直な気持ちをお願いします。
(笠健)俺が無罪になったことをとやかく言うやつがいるが裁判長閣下もおっしゃってたじゃねえか。
疑わしきは罰せず。
それが法の精神だ。
いいか?どんなに怪しくてもな証拠がなければ裁くことはできねえんだよ。
忘れんな!ホントにやってないんですか?
(笠健)俺?俺はもちろんやっちゃいねえよ。
ヒ〜ヒッヒッヒッ…。
(記者)あれだけの状況証拠があって無罪の方がおかしくないですか?
(記者)裁判官に付け届けをしたと聞きましたが…。
・
(浪子)お母さま。
お母さままで犯罪者になることないわ。
お願い。
駄目。
私はどうなっても…。
私だって殺してやりたいわ。
お姉さまたちをあんな目に遭わせた男絶対に許さない。
だから私が。
(浪子)だからお母さま!やるならもっとうまくやらないと。
私は曽根子の名付け親です。
あの男が憎い。
でもこの子が言うんです。
「そんな男を殺して人生棒に振るのはもったいない」って。
当たり前よ。
「殺すんだったら絶対に捕まらない方法でやらないと駄目だ」って。
やるなら…えっ…なっ何でしたっけ?完全犯罪。
(轟侯爵夫人)そう。
「完全犯罪でなければ駄目だ」って。
だけどそんなことが私たちにできるとは。
もちろん私たちだけでは無理よ。
世間知らずということでは似たようなものなんだから。
それでね考えたの。
味方を増やすの。
お姉さま一家にゆかりがあって犯人を憎んでいてそれでいて私たちより行動力があって頭が良くて世間のことをよく知っていてつまり犯罪に向いている人。
そして私は先生を呼び出したんです。
ねっ?馬場先生。
本気でおっしゃってるんですか?もちろんよ。
お気持ちはよく分かりますが…。
殺人というのは…。
これは敵討ちよ。
声が大きいです。
大丈夫。
パインさんは母が女優だったころからの大ファンで私たちの味方。
でも今の時代に敵討ちって…。
じゃあ他にどんな方法があるっていうの?このままじゃお母さまは死んだも同然なの。
あまりにもかわいそうだわ。
どうして私に話を振ってこられたかがもうひとつよく分からないんです。
私は別に犯罪の専門家でもないですし。
先生ならきっとできるって。
いつだってホームパーティーを仕切っていたのは先生よ。
それとこれとはまったく話が違うと思うんです。
そうかなあ。
私にあの男を殺せとおっしゃってるんですか?そうは言ってないわよ。
みんなでやるのよ。
みんな?
(浪子)取りあえず母に会って。
無茶なお願いだということは分かっています。
でも先生あなたしか頼れる人がいないのです。
これは正義の殺人なんですよ。
それは分かるのですが…。
つべこべ言わずにやりなさい!事が事だけに無理強いはよしましょう。
最後は先生がご自分でお決めになることです。
断るなら断りなさい。
ただしいいですか?私たちの計画を知ってしまった以上生きて帰すわけにはいかない。
(浪子)おばさま少しうるさい。
剛力家の皆さまにはひとかたならぬお世話になりました。
聖子さまの家庭教師に加え秘書の仕事がしたいという私のわがままも聞いてくださって剛力大佐のお仕事のお手伝いもさせていただいておりました。
どれだけお力になれるか分かりませんが私にできることなら何でもやらせていただきます。
そうこなくっちゃ。
先生感謝します。
ただ皆さまは私を過大評価されています。
私は犯罪計画を立てることなどとうてい無理です。
今やるって言ったじゃないですか。
おばさま。
お手伝いはもちろんします。
でも私一人では無理です。
経験豊富で統率力があって腹の据わった人物がそばにいてくれるととても助かるのですが。
(馬場)能登陸軍大佐を覚えてらっしゃいますか?剛力大佐の大の親友でよくお屋敷にも遊びに来られていました。
あの人ならきっと成し遂げてくれるはずですわ。
どうぞ。
(能登の妻)お電話よ。
馬場舞子さんってご存じ?
(馬場)ご自宅にお電話してしまってすみませんでした。
(能登)驚かなかったと言えば嘘になる。
(馬場)急な話だったものですから。
(能登)それで君は何と答えたんだ?
(馬場)「力になる」と約束を。
(能登)あなたらしくもない。
(馬場)そうですね。
剛力大佐は優秀な軍人だったよ。
この先もし大きな戦争が始まることがあったら必ず役に立つ男だった。
戦友だったんですものね。
私は戦場で二度あの男に命を救われてる。
だからこそ私は犯人を許すことはできん。
しかし敵討ちとなると話は別だ。
明るかった大奥さまが事件の後はすっかり憔悴されてまるで別人のようでした。
それが敵を討つと決まってからは再び表情に生気が戻られたんです。
そういうものかね。
大奥さまはようやく生きる目的を見つけられたんです。
私はそのお手伝いがしたい。
それが引き受けた理由です。
理由はどうであれ引き受けたからには後には引けないよ。
腹はくくりました。
くくってしまったかね。
私たちが手を貸す貸さないにかかわらず大奥さまは必ず犯人の命を奪う。
ならば残された道は完璧なまでにやってのけるしかないのです。
大奥さまを罪人にしないためにも。
剛力家の悲劇はこれで終わりにしたいのです。
一緒に腹くくっていただけませんか?
(能登)もう一度戦地で暴れてみたいというのは私のかなわぬ夢だった。
たとえまた戦争が起きたとしてもこの足では内地勤務で一生を終えるのが関の山だ。
知謀の限りを尽くして敵と戦うなど夢のまた夢。
大佐の力が必要なんです。
どうか作戦の指揮を執ってください。
条件がある。
(能登)笠健にも家族がいるはずです。
一家の大黒柱を失えば彼らは路頭に迷うことになる。
その人たちに罪はない。
それをどうお考えになりますか?娘の家族には何一つ罪はありませんでした。
笠健に家族がいるのなら生活の面倒は見させてもらいます。
お金はありますから。
やりますよ。
言ったでしょ?「この方々を説得するのは時間の無駄だ」って。
馬場先生はあなたの力が必要だとおっしゃってます。
その男が本当に真犯人かどうかまずそれを確かめたい。
無実の可能性のある人間を殺すことはできません。
真犯人に決まってます。
彼が犯人であると私自身が納得してからでないとお力にはなれません。
そのお時間を頂けますでしょうか?そして私は裁判記録を当たった。
いかがでしたか?笠健は限りなく黒に近かったがやはり決め手には欠けていた。
むろん社会のくずであることに変わりはなかったがそれだけでは私は死刑執行人にはなれない。
直接笠健に会ってみる必要があると思ったんです。
実際に会って話してみれば何かが分かると思って。
(パインさん)お待たせしました。
どうぞ。
いらっしゃいませ。
先生。
(馬場)羽佐間さん。
ご無沙汰しております。
(羽佐間)そのころ僕は警官を辞めて探偵事務所で働いていました。
小百合さんを失った悲しみはとても消えるものではなかった。
馬場さんから今回の計画を聞いて僕はすぐに参加することを決めました。
笠健の居所を突き止めてほしいの。
噂では名前を変えて会社を起こしたって話だわ。
じゃあきっと身代金を元手にしたんだ。
(ため息)許せません。
探偵さんならできるでしょ。
必ず見つけだしてみせます。
小百合さんのためにも。
(男の子)待て待て!
(男の子)待て!・
(子供たち)・「恐れはあらじ」・「わが主イエス」
(子供たち)先生どうしたの?
(呉田)みんなちょっと外で遊んでらっしゃい。
(子供たち)は〜い。
(呉田)2カ月前からこちらの教会でお世話になってるんです。
事務のお仕事をしながらたまに子供たちに歌を教えてます。
(八千代)うちに来てくれたのは何年前だった?
(呉田)25年前になりますわ。
(八千代)あなたには本当に感謝しています。
娘も孫もみんなあなたが育ててくれたようなものだから。
(呉田)お手紙拝見いたしました。
驚いた?驚きましたわ。
あなたにも仲間に加わってほしいの。
そばにいてくれるだけでいいの。
私にあなたは必要な人。
人をあやめてはいけません。
いかなるときも。
もしあの男が本当に罪を犯したのならいずれは天罰が下るはずです。
神のひき臼は回るのが遅くても決して逃れることはできないのです。
ではなぜ神は幼い命をお奪いになったの?私はもう神に頼ることはしない。
これは正義の殺人です。
帰ります。
どうか私の話は忘れて。
(呉田)大奥さまこの世に正しい殺人なんてないんですよ。
もう会うこともないでしょう。
待ってください。
お手紙を読んだときから決めていました。
私も仲間に入れてください。
もちろん殺人は悪いことです。
私は悪いと分かって悪いことをする。
正義のためではなく旦那さまと曽根子さまと聖子お嬢さまとそして大奥さまのために。
(馬場)半年ほどしてようやく羽佐間君が笠健の居所を突き止めてくれました。
笠健は「藤堂」と名を変え横浜に事務所を構え貿易の仕事をやっていました。
(馬場)私たちは地元の新聞記者を装い藤堂に会いに行きました。
大佐は変装のためにひげまでそってくれました。
まるでロシア軍のトーチカだな。
(能登)え〜それでは最後に社長の経営理念というものを教えていただけますか?
(藤堂)そうですねえ。
理念といえるほどしっかりしたものではないんですが地域のことは常に考えてますね。
うちだけが繁盛しても意味がないんですよ。
この横浜を日本一の商業都市にすることが私の夢ですから。
こう見えても浜っ子なもんでね。
ヒ〜ヒッヒッ。
ちょっと失礼。
あの笑い声。
間違いありません。
(能登)社長本日は貴重なお話ありがとうございました。
(藤堂)しかし珍しいですな。
私のような者の取材とは。
地元新聞としましては横浜の発展を願ってこの街で最近特に活躍の目立つ方々を取り上げているわけでして。
(藤堂)まあせいぜい良く書いてくださいよ。
お近づきの印です。
(能登)頂けません。
足りないとおっしゃる?最後に写真1枚よろしいですか?
(藤堂)あ〜ちょっと写真は勘弁してもらえませんか。
1枚だけ。
(藤堂)困るんだよ。
お願いします。
(藤堂)こちらの方日本語がお分かりにならないようだな。
失礼しました。
最後にもう1つ。
3年前剛力大佐のお嬢さんが誘拐された事件がありましたね。
あれについてどう思われますか?何だそりゃ。
(能登)被害者の一家は非常に裕福な家庭環境であり一方犯人として逮捕された男は確か貧困から成り上がった人物のはずです。
市民の生活が二分化された現在の横浜を象徴する事件だったと思うんですが。
あの事件の容疑者確か裁判で無罪になったはずだ。
社長のご意見を伺いたい。
いまだに彼が真犯人だという声も聞かれますが。
(藤堂)おい。
横濱新報に電話してなこの記者がホントにいるかどうか確認しろ。
(秘書)かしこまりました。
(能登)まずいな。
誰に吹き込まれたか知らねえが裁判所がやつを無実と認めた以上実際にやってようがやってまいがそんなのは関係ねえんだ。
まあ亡くなったお嬢さまは気の毒だがな。
亡くなったのはお嬢さんだけではありません。
母親が流産の揚げ句に死んじまおうが父親が自分の頭拳銃でぶち抜こうがそんなもん知ったこっちゃねえんだよ。
俺に言わせりゃ自業自得だ。
散々いい暮らししてきやがって。
いいか?世の中にはな死に物狂いではい上がってきた人間だっていんだ。
大した苦労もしねえでぜいたくばっかしやがって。
とんがった屋根の西洋かぶれの屋敷さ犬っころ駆けずり回ってるでっけえ庭だ。
何がガーデンパーティーだ。
ハッむしず走る。
罰が当たったんだよ!・
(秘書)社長。
(藤堂)おう。
どうします?分からん。
これだけは言っておく。
俺は誘拐事件とは何の関係もねえんだ。
俺の記事を書くならそのことには絶対に触れるな。
おい。
お客さまのお帰りだ。
(清水)かしこまりました。
(藤堂)俺を敵に回さねえ方がいいぞ。
(馬場)失礼します。
まあ待てよ。
ほら。
持ってきな。
(馬場)困ります。
いいから。
(馬場)困ります。
(藤堂)金は腐るほどあんだよ!ちなみに社長にはご家族はいらっしゃいますか?家族?そんな煩わしいもん俺にはいらないよ。
(能登)裁判記録ではやつは一度も剛力家には行っていないと主張していた。
無罪になって気が緩んだんだな。
どういうこと?一度も行ったことがないのにどうして屋敷の様子を知ってる。
これでようやく私も腹をくくったよ。
でも分からないわ。
どうして私たち帰してもらえたのかしら?・
(秘書)すいません!幕内さん。
(幕内)ご無沙汰しています。
(能登)前に一度剛力家のパーティーで。
はい。
以前慈善団体の事務局で働いていたんですがそのときの理事長が剛力大佐の奥さまだったんです。
すごくよくしていただいてそれがご縁でホームパーティーにも呼んでいただくことになりました。
それがどうして藤堂の秘書に?決まってるじゃないですか。
復讐のためですよ。
僕は自らやつに近づいて機会をうかがっていたんです。
だって剛力大佐の奥さまをあんな目に遭わせた男なんですから。
なるほど。
お見せしたいものが。
(幕内)奥さまと並んで一緒に記念撮影を。
僕の一生の宝物なんです。
どうですか?よく撮れてるでしょ。
あっええそうですね。
奥さまは本当に立派なお方でした。
だから僕は自分の手でやつを裁こうと心に決めたんです。
でのうのうと暮らしてるあいつを捜し出して秘書として雇われたんです。
あっそんなことよりあなた方はどうしてあそこに?だって記者というのは嘘でしょ。
復讐を考えているのはあなただけではないんですよ。
(馬場)今後笠健こと藤堂修の情報はこの幕内君が伝えてくれます。
よろしくお願いします。
剛力さんの奥さまには公私ともども大変お世話になったので少しでも役に立てればこんなにうれしいことはないんです。
だって今もこうして肌身離さず奥さまとの写真を持ってますから。
お屋敷の庭で撮った写真です。
(羽佐間)あっ…えっあのいい写真だ。
でいつ実行に移すのです?今はまだ計画を練っている段階です。
ぱっと片付けちゃうわけにはいかないんですか?
(浪子)おばさま完全犯罪じゃないと駄目なんですから色々大変なんですよ。
浪子さんのおっしゃるとおりです。
われわれの中から1人の逮捕者も出してはなりません。
そのためには完璧な策を立てる必要があります。
大奥さまはやはり全員参加にこだわられますか?どういう意味ですか?もし単独ならば方法はいくらでもあります。
例えば?藤堂の車のブレーキに細工をするとか。
あっ事故死に見せ掛けんのね。
いいじゃないですか。
他の人に迷惑は掛からないのですか?絶対にないとは言い切れません。
困ります。
幕内君に毒を盛ってもらうという手もありますが。
それでは万一のときに彼が罪をかぶることになります。
ここにいる全員でやることに意味があるのです。
ということであれば。
(八千代)いつごろになりそうですか?まだ何とも言えません。
失敗は許されない状況です。
一度しくじれば敵は防御を固める。
次の攻撃がますます困難になります。
藤堂はどこへ移動するにも用心棒を連れていきます。
あっ清水って男ですね。
かなり荒っぽいやつで要注意かと。
一度のチャンスに懸けるんです。
焦りは禁物です。
あ〜私せっかちだから事が進まないといらいらしちゃうのよ。
なるべく早くやっちゃいましょう。
(清水)うわ。
(ホイッスル)
(清水)何だお前!
(男性)誰だてめえ。
退却!
(馬場)間違いないんですか?剛力家のパーティーで何度か見た顔でした。
え〜誰だろう?
(パインさん)これ剛力家のパーティーの写真なんですけどね。
うちから料理を運んだんで記念に1枚撮らせてもらったんですよ。
覚えてます。
ほら奥さまだ。
僕もここにいる。
すてきな方だよな。
今でもこの方の匂い忘れません。
使用人は全員写ってます。
この中にいますか?あっ…。
あっこの人。
この後ろでお盆持ってる人。
料理人の昼出川さんだわ。
あとこの人もいました。
(馬場)運転手の保土田。
あの人たちならやりかねないわ。
まったく余計なことを。
これでますます警戒が厳しくなった。
ハァ〜どうすればいいんだろ…。
仲間に引き入れるしかないな。
えっでも…。
おそらく彼らの目的はわれわれと同じだ。
共同戦線を提案すれば必ず乗ってくる。
そんなことして大丈夫ですか?つまりわれらの目の届く所に置いておいた方が安全だということだ。
素晴らしいご家族でした。
私たちは受けたご恩を一日も忘れたことはございません。
旦那さまは使用人思いの実に優しいお方でした。
私たちを家族同然に扱ってくださいました。
これまで執事として多くの方に仕えてきましたが剛力さまご一家ほど温かい方々はいらっしゃいません。
それは間違いないです。
娘たちも喜んでることでしょう。
特にこの保土田は…。
自分の口で言いなさいよ。
わしは博多から出てきて浜の街でやくざまがいのことばしよるうちに旦那さまに拾われたとです。
旦那さまに会っとらんかったらわしは今頃ムショ暮らしばい。
馬場先生から聞きました。
皆さんも敵討ちの機会を狙ってらっしゃるとか。
ぜひ私たちも加えてください。
ありがとう。
大奥さま。
お姉さまたちって本当にみんなに愛されていたのね。
曽根子さんは最高の女性ですからね。
(浪子)これだけ揃えば鬼に金棒だわ。
ただ1つよろしいですか?先生。
はい大奥さま。
いくら何でも仲間が増え過ぎじゃないでしょうか?
(浪子)私も思った。
全部で何人?11人です。
どうですか?人数が少ないに越したことはないがこうなったらもう1人増やしたい。
どういうことですか?
(能登)どうせなら12人で。
何か意味があるのですか?われらは法に代わって藤堂に鉄ついを下すんです。
12は陪審員の数。
われらは神に選ばれた12人なのです。
そう思いたいのです。
それにはまだ1人足りない。
私の夫に声掛けてみる?それはいけません。
話してないのですか?
(浪子)お母さまに止められてるの。
でも話せばきっと仲間になってくれるわ。
安藤伯爵を巻き込むわけにはいきません。
あの人には外交官としての立場があり将来もあります。
あなたたちに将来がないっていうわけじゃないんですよ。
あっごめんなさい。
とんでもない。
12人は難しいかも。
いや私としては12という数字にこだわりたい。
意外と頑固?大丈夫ですよ。
神のおぼしめしがあるのならいずれそのもう1人は現れるはずです。
(浪子)現れなかったら?神のご意思は別の所にあるということですわ。
(小間使い)旦那さま奥さまがお戻りです。
(安藤伯爵)うん。
今日はお早かったんですね。
ハンガリー大使との会合がキャンセルになったんだ。
奥さまの体調が良くないらしい。
あっそれは心配ですね。
お見舞いのお花でもお送りしておきましょうか?そうだなそうしてくれるかな。
あした一番で手配します。
どうだった?何がですか?同窓会だったんだろ?あっ…大して盛り上がらなかったわ。
最近多いな。
(浪子)そうなのよ。
同窓会ってたまに顔合わせるのが楽しいのに毎月でしょ。
盛り上がるわけないわよねえ。
着替えてきます。
あっ今日はもう閉店なんです。
(男性)こんな時間から?
(パインさん)申し訳ない。
お待たせしました。
ニンジンは抜いておきましたよ。
(能登)ありがとう。
好き嫌いが多いと大きくなれませんよ。
(能登)フフフ。
ニンジンお嫌いなんですか?戦時中は馬に乗っていたものでね。
私にとってニンジンは馬の餌なんだよ。
あっ…。
パインさんどう?
(能登)んっ?12人目。
あの人を巻き込むのはどうなんだろう。
もうほとんど巻き込まれているようなもんだけどねえ。
聞こえてました?あんたらどうかしてるよ。
今のご時世に敵討ちなんて。
よかったら参加しませんか?俺だって剛力家の皆さんは大好きだった。
でもさすがにあんたらの仲間には入れねえ。
俺にはその度胸はねえよ。
それが普通の感覚ですよ。
捕まったときは毎日差し入れに行ってやるよ。
そのときはお願いします。
ニンジン抜きで。
(能登・パインさんの笑い声)
(藤堂)ワインは好きか?ええまあ。
なら飲んでくれ。
フランスから直輸入の高級品だ。
名前は…知らん。
ヒ〜!ヒッ…。
あっいただきます。
お前を呼んだのはな事務所じゃ何かと話しづらいこともあってな。
(幕内)ご自宅にお招きいただいて大変光栄です。
俺はなあ幕内身内を大事にする人間だ。
それは分かってるよな。
(幕内)もちろんです。
頼ってくる者にはこれを全力で守る。
面倒だとは思わねえ。
好きなんだな人に尽くすのが。
素晴らしいことだと思います。
だからな幕内身近な者に裏切られると非常に悲しい。
(藤堂)妙な噂を耳にしてな。
俺の周りで不審な動きをしてるやつがいるというんだな。
俺の情報が逐一外部に漏れてるらしいんだ。
まあ俺は敵が多い人間だからよ。
スパイが紛れ込んでたとしても驚きはしない。
驚きはしないが悲しみは大きい。
なあ幕内。
自分を欺いた人間を俺は絶対に許さねえ。
絶対にだ。
(藤堂)漆原聞いてんのか!
(漆原)うわ!あっ…。
顔も見たくねえ連れていけ。
(清水)どうしますか?
(藤堂)あっ?横浜港に決まってんだろうが。
(清水)かしこまりました。
(漆原)あっ助けてください。
お願いします。
助けて…。
(ドアの閉まる音)というわけでな幕内お前呼んだのはほかでもねえんだ。
新しい執事見つけてくれ。
かしこまりました。
(男性たち)おはようございます。
いってらっしゃいませ。
(八千代)そうしてあっという間に1年がたちました。
慎重な馬場先生はなかなか行動に移そうとはされませんでした。
私もつらかったのですがそれしか道はなかったんです。
(昼出川)いったいいつになったら実行するのよ!声が大きい。
まさかおじけづいたとじゃなかろうね?
(馬場)私だって早くけりをつけたい。
1時間でいいんです。
藤堂が家の外で1人っきりになる瞬間を待ってるんです。
何かないの?
(保土田)んっ。
用心深い男だから生活のペースを変えようとしないのよ。
しかしいずれは動く。
時が過ぎれば油断も生まれる。
言うとくけどねわしはいつムショに入ったってよかと。
そんくらいの覚悟で…。
(馬場)お願いだから下手に動かないで。
全てが台無しになってしまうから。
(保土田)歯がゆか!
(パインさん)ありがとうございました。
(昼出川)事件があってすぐのころはみんな怒りに震えてた。
でも時は残酷よね。
いいわホントのこと言うわ。
今はあのときほど燃え上がるものがないの。
考えたくないけど日に日に怒りが薄らいでく自分がいるの。
気持ちは分かる。
だからこそ急いでほしいの。
お願い!
(藤堂)確かに。
(男性)それじゃよろしくお願いしますよ。
(藤堂)おいお見送りを。
(清水)かしこまりました。
(藤堂)幕内。
(幕内)はい。
(藤堂)俺にはな好きな匂いが2つある。
飯が炊けたときともう1つは…。
ハァ〜…。
こいつだ。
できることなら死ぬときはこの匂いに包まれて逝きたいもんだな。
金庫にしまっとけ。
かしこまりました。
あっおい。
(幕内)社長。
うまいもんでも食え。
(幕内)いや困ります。
(藤堂)どうせ表には出せない金だ。
教えてくださいよ。
僕はいつまであいつと一緒にいなくちゃいけないんですか。
もう我慢できない。
時機が来れば大佐から連絡が入ることになってる。
僕はもう降りる。
(益田)あなたに抜けられては困る。
今すぐやらないんだったら僕一人でやる!用心棒の清水はどうする。
あんたが太刀打ちできる相手ではない。
もし失敗すれば今後ますますやりにくくなる。
その道理が分からないあんたじゃないだろ。
大奥さまの願いは誰一人逮捕者を出さずに藤堂を葬り去ること。
そのための策を今馬場先生が練ってるんだ。
私たちは待つしかないんだ。
大奥さま。
(八千代)よく来てくれました。
昔の面影はどこにもないわ。
思い出しますね。
よくここでパーティーを。
(八千代)あなたもよくおみえになってたわよね。
はい。
益田から話は聞きました。
来週田舎に帰ります。
そうですか。
(幕内)役に立てずすいませんでした。
(八千代)とんでもないです。
あなたには一番大変な役目をお願いしてしまいました。
幕内君はねもともと娘の知り合いなの。
(呉田)慈善団体で知り合ったんでしたっけ?ええ。
あの方は戦争で父親を亡くした子供たちのために奉仕活動をなさっておいででした。
僕はそのお手伝いを。
彼にとってはね娘は母であり姉でありそして恋人だった。
そうよね?僕はあの方のお力に少しでもなればと手伝ってはいたんですけど全然何にも役に立たなくて。
だから…。
娘が枕元に置いていたものです。
あなたに差し上げます。
(幕内)そんな。
どうかもらってくださいな。
大奥さま。
あなたなしではこの計画は先に進めません。
つらいのは分かります。
でもどうかもう少し辛抱してもらえませんか?どうか娘のためにも。
純情な青年だわ。
そうね。
田舎に帰した方がよかったんじゃないですか?彼にとってはそうでしょうね。
ひどい話よね。
私はあの青年に殺人の共犯者になれと言ってるんですからね。
(八千代)それでも今は彼が必要なの。
(呉田)彼が人生を棒に振っても?
(八千代)もちろん。
(轟侯爵夫人)いつもあなた方の口から出てくるのは同じことばっかり。
まったくやる気はあるんですか?よしましょう。
(轟侯爵夫人)だってそうでしょう。
これじゃいつになってもあなた敵討ちなんてやれるわけないじゃありませんか。
私もそう思う。
ではこういうのはどうでしょう。
はっ!
(馬場)大佐…。
射撃に関してはいささか心得があります。
まず失敗はない。
怖い…。
(轟侯爵夫人)おやめなさい。
そんな物騒なものはっ早くしまって。
大佐お気持ちはありがたいんですが。
(馬場のため息)
(能登)昭和の大石内蔵助はお疲れのようだ。
最近眠れなくて。
戦場で最も無能な指揮官はどんな人間だと思う?戦場に行ったことないから。
フッ。
せっかちなやつだ。
優秀な軍人の条件は待つことができるか否か。
時機を待てない指揮官は兵を全滅させる。
それから閣下1つよろしいでしょうか。
やめてください。
(能登)全てが終わってから言おうと思っていたんだが…。
(馬場)えっ?来月私は家を出ようと思っています。
(馬場)こんな時期にそんな話を?じゃあどの時期にすればよかったかな。
一緒に暮らせるの?いずれは。
頑張らないとね。
(能登)2人揃って刑務所というのは避けたいところだな。
(子供たち)・「諸人こぞりて」・「迎えまつれ」
(呉田)大奥さまは苦しんでらっしゃいます。
(馬場)ええ。
ご本人は自分は変わったとおっしゃっていますが人間はそう変われるものではありません。
本来は優しいお心を持ったお方です。
はい。
あの方は今のご自分と本当のご自分の間で苦しんでらっしゃるんです。
計画は中止にはできません。
今歌ってる子供たちの中であの白いセーターの子いますね。
(馬場)ええ。
あの子の父親は土木会社の社長さんで以前から家族ぐるみのお付き合いがあるんです。
トンネル工事を主に請け負ってる方でその人に頼めばダイナマイトをね購入することもできるんです。
ダイナマイト?藤堂を屋敷ごと爆破してしまうというのは?本気でおっしゃってます?駄目?ちょっと荒っぽいかも。
忘れてください。
忘れました。
(子供たち)・「いつき迎え」くっそ〜。
(昼出川)駄目だ。
行くよ。
(男性)どうしました?
(清水)ちょっと持ってろ。
ねえずっと言おうと思ってたんだけどあんたの作るオムレツは全然駄目ね。
えっ?
(保土田)この人は料理の名人たい。
味にはやかましかと。
そんなにまずいですか?まずいっていうか素人くさいのよね。
オムレツはね卵に牛乳を入れるとまろやかにできるからやってごらんなさい。
(パインさん)はい。
やってみます。
(昼出川)うん。
牛乳入れてたんだけどなあ。
少ないのかなあ。
も〜早う食わせてくれんね。
(パインさん)あ〜はいはい。
・
(ドアベルの音)あっすいません。
もう閉店なんですよ。
(保土田)あっ!パインさん逃げろ!何だあんた。
(清水)お前らいったい何者だ?言え!
(パインさん)うっ…。
(パインさん)うわ!うっ…。
(パインさん)ぐっ…。
(パインさん)あっ…。
うっ…。
(刑事)派手にやったなあ。
名前は?
(刑事)パイン?
(刑事)変わった名前だな。
もうこれ以上待てない…。
(馬場)ところがその直後ついに笠健が動きだしたんです。
下関へ行くぞ。
下関ですか?
(藤堂)工場の様子を見てくる。
最近注文が増えてるのに生産が追い付かない。
向こうに行ってハッパを掛けてくる。
汽車の手配を。
分かりました。
(幕内)藤堂は身代金を元手に下関に工場を造ったんです。
表向きはキャラメルを造ってることになってるんですけど実際はケシを栽培してそこからアヘンを精製してるんです。
そうなの?
(幕内)それを裏社会に売りさばいて大もうけを。
人間のくずだな。
(昼出川)どうぞ。
引き継いだのよ。
続けて。
(幕内)あっ。
2月1日に東京を出て戻ってくるのが6日。
行きも帰りも特別急行東洋を利用する予定でいます。
絶好の機会だな。
僕もそう思います。
(馬場)特別急行東洋は東京と下関を結ぶ日本初の寝台付き特別急行列車です。
一等には展望車も付いている豪華列車です。
特別急行東洋…。
列車のコンパートメントなら間違いなく笠健は1人になります。
まさに千載一遇のチャンスです。
私たちもそれに乗り込むの?われわれは下関から列車に乗り込み東京に着くまでに車内で片を付けます。
いよいよですね。
何だかわくわくする。
他の乗客に迷惑は掛からないのですか?寝台車の個室は全てこちらで押さえますので問題はないかと。
車掌さんは?
(馬場)そこなんです。
この計画にはどうしても鉄道関係者の協力が必要となってきます。
買収するんですね?何?亡くなった小間使いの小百合ちゃん覚えてらっしゃいますか?
(八千代)もちろんです。
彼女のお父さんは国鉄に勤務し3年前から特別急行東洋の車掌を。
まさか…。
神のお導きだわ。
ようやく12人目が現れました。
あした私と能登大佐で下関へ行ってきます。
(アナウンス)下関〜。
下関〜。
(三木)お待ち申し上げておりました。
私はね子供のころから蒸気機関車の走る姿を見るのが大好きでね。
線路脇の土手に座って一日中手を振ってました。
まあ結局生涯を鉄道に捧げることになりました。
3年前から特急東洋に乗ってます。
いわばあの列車は私の家のようなもんでございまして。
それを血で汚すようなことは…。
どんな理由があろうともできません。
お断りします。
三木さん。
(三木)あなた方が悪い人間でないことはもうよ〜く分かります。
ですから今伺ったことは聞かなかったことにいたします。
われわれも悩み抜いた末の結論なんです。
正気の沙汰じゃありませんよ。
特急東洋の列車の中で敵討ち?バカを言いなさんな。
お嬢さんをあんな目に遭わせた笠健が憎くはないのですか?愚問です。
(三木)娘の小百合は生前「お父さんに紹介したい恋人がいるの」って言ってました。
警察官だとも言ってました。
あんなことがなかったら今頃孫の顔を拝めていたかもしれません。
(馬場)羽佐間さん。
(馬場)小百合さんとお付き合いしていた方です。
(三木)あなたでしたか。
羽佐間と申します。
彼もあれ以来復讐の機会をうかがっていたんです。
小百合さんは素晴らしい方でした。
あっ…。
(三木)仲良さそうに…。
小百合はホント親思いの娘でした。
早くに母親を亡くしたもんですから私が母親代わりもしました。
ハハ。
でも大人になってからはもう私の面倒を一生懸命見てくれて…。
ヘヘ。
もうどっちが親だか分からなかった。
ハハ…。
どんな手を?音がしないようにナイフで。
1人ずつ順番に。
どうか他の乗客の皆さんには決して迷惑の掛からないようにお願いいたします。
もちろんです。
(三木)それからもう1つ。
伺いましょう。
最後の一刺しを…。
私にやらせてください。
まずは藤堂に匿名で脅迫状を送りつけます。
自分がなぜ殺されなければならないのかを彼自身に伝えるのが目的です。
われわれは下関から列車に乗り込みます。
車内での夕食後益田さんが藤堂に睡眠薬を飲ませます。
そして深夜車掌の三木さんの案内でわれわれは順番に藤堂の部屋に入りナイフで一度ずつベッドの上の彼を刺す。
(昼出川)警察には誰が殺したことにするのですか?
(馬場)架空の人物をでっち上げます。
藤堂に恨みを抱く人間はたくさんいました。
その中の1人が深夜に米原から列車に乗り込み藤堂を殺害。
そして列車が名古屋駅に着いたときに表に逃走したことにします。
(浪子)すてき。
車内では皆さんはあくまでも他人を装ってもらいます。
剛力家との関係は伏せて誰もが初めてこの列車の中で会ったということに。
(呉田)ちょっと待ってください。
お芝居するんですか?そうですよ。
私お芝居なんてできません。
普段の自分でいいのです。
ただし剛力家との関係だけは言わないように。
もし不測の事態が起きた場合警察や鉄道関係者から何を聞かれても剛力家とのつながりは伏せてもらいたい。
私無理です。
(轟侯爵夫人)やるのよ!うっ…。
ちなみに剛力家と最も近い存在の大奥さまだけはまったく別の人物になってもらうことになっています。
久しぶりに芝居ができるので実はうずうずしてるんです。
お母さま何だかうれしそう。
それから昼出川さん。
(昼出川)はい。
(馬場)あなたは轟侯爵夫人の召し使いとして乗り込んでください。
(昼出川)私が?侯爵夫人は足がお悪いので介添えが必要なんです。
了解しました。
昼出川さんはすぐに暴走するのでお目付け役お願いしますね。
もちろんです。
(昼出川)そういうこと?ねえ私も何か変装したいんだけど。
お嬢さまこれは遊びではないんです。
だってお母さまばっかりずるくないですか?大奥さまは女優さんです。
私は女優の娘です。
あっそうね留学中の中国人なんてどうかしら?わ〜。
だったら私は男装の麗人がいいわ。
いいかげんにしてください。
(羽佐間)ちょっとすいません。
(昼出川)捕まえろ!ちょっ…止めろ!止めろ!
(保土田)こら。
(羽佐間)話を聞かれました!えっ?
(八千代)放しなさい!うちの婿殿です。
(浪子)どうしてここが分かったの?君の後をつけた。
(浪子)でも…。
(安藤伯爵)情けない話だよ。
最近の君の行動を見て外に男がいると思い込んでしまった。
あなたを巻き込みたくなかったんです。
剛力大佐は私にとって義理の兄。
曽根子さんは義理の姉。
聖子ちゃんはカワイイめいっ子ですよ。
彼らを殺した犯人に私は妻と同じぐらい激しい怒りを感じています。
なぜ声を掛けてくれなかったんです?伯爵は外交官として高い地位におられます。
巻き込むなというのが大奥さまの意向でした。
水くさいじゃないですかお母さん。
私も参加させてください。
婿殿の言葉ありがたく頂戴いたします。
黙っていてごめんなさい。
いや僕こそ疑って悪かった。
(能登)水を差すようで申し訳ないが私は賛成しかねます。
よいではないですか。
仲間に入るって言ってくれたんだから。
(能登)しかしそれでは13人になってしまう。
仲間は多い方が。
12という数字に意味があったんです。
ではこういうのはどうです?私が参加する代わりに妻が外れるというのは。
ちょっと待って。
最初から考えていたんだ。
大事な君に犯罪者の汚名を着せるわけにはいかないからね。
私はまったく平気よ。
東京に残りなさい。
そんなの嫌よ。
ねっお母さま何か言ってやって。
それがいいかもしれないわね。
えっ?
(八千代)あなたは残りなさい。
先生!皆さんあなたのことを案じてらっしゃるんです。
ここはご家族の愛を受け止めてあげてください。
(安藤伯爵)あっ浪子。
娘のことは忘れてください。
では幕内さん例の物を。
(幕内)はい。
藤堂に渡す脅迫状です。
能登大佐のアイデアで1人1文字ずつ書いてもらいます。
筆跡をごまかす意味もあります。
討ち入りの前の血判状だと思ってください。
文字数も12でまとめてみました。
見本がここにありますので大奥さまから順番によろしくお願いします。
1枚目は「汝剛力聖子を忘るるなかれ」この「汝」の1文字目は三木小百合さんのお父さまにもうすでに書いていただいております。
はい。
(幕内)では。
(幕内)お願いします。
(幕内)コンパートメントは全部で12。
藤堂が予約した一等の7号室以外全てこちらで押さえるつもりだったんですが実は幾つか問題が。
問題?
(幕内)はい。
まず僕の入る2号室なんですけど二等なのでベッドがもう1つあるんです。
違う人間に入られたら事なのでここは架空の人物宮本という名前でベッドを押さえました。
そして昼出川さんが入る3号室もベッドが空いていたのでここも架空人物で押さえました。
そしてここからが最も厄介なのですが6号室はもうすでに予約が入っていて押さえることができませんでした。
ちょっと待って。
6号室っていったら藤堂の隣じゃない。
そうなんですよ。
(馬場)それはちょっとまずいわね。
三木さんに頼んで手を回して調べてもらったんですが予約を入れたのは鉄道省の重役だそうです。
ではその重役さんには当日は睡眠薬入りのウイスキーでも飲んでもらおう。
ねえやっぱり私も行っちゃ駄目?その話は決着がついたはずだ。
(浪子)でもね…。
何も君の手まで汚すことはない。
おなかの中の子のためだ。
ではいってくる。
(浪子)あなた私の分もよろしくお願いします。
(馬場)ようやくここまで来た。
そんな感じね。
君はよく頑張った。
あなたがそばにいてくれたから。
感謝している。
えっ?生きる目的を失っていたのは大奥さまだけじゃなかったってことだ。
うれしいわ。
今は駄目。
今は駄目よ。
全て終わってから。
ちゃんと片付いたら。
そしたら。
行きましょう。
時間よ。
どうだ?
(羽佐間)大丈夫です。
(馬場)それでは皆さんよろしくお願いします。
(八千代)頑張って。
(保土田)大奥さまそれじゃまた。
(羽佐間)いってまいります。
(馬場)昼出川さん。
よろしく。
(昼出川)皆さんお先に。
参りましょう侯爵夫人。
(轟侯爵夫人)はい。
いらっしゃいませ。
(昼出川)こちら轟侯爵夫人です。
はい。
(昼出川)私はメードの昼出川。
ようこそ侯爵夫人。
え〜侯爵夫人は一等の11号室をご用意してございます。
昼出川さまは二等の3号室をご用意してございます。
あなたが…。
(三木)車掌の三木でございます。
頼りになりそうね。
さぞお嬢さまもすてきな方でしょう。
自慢の娘でございます。
よろしくお願いします。
(三木)こちらからご乗車くださいますように。
待て。
(幕内)はい?あいつを見掛けた。
社長を襲った男だ。
まさか。
あっちょっ…。
先行ってますよ!
(舌打ち)
(清水)くそ。
どうぞ。
(羽佐間)失礼します。
農林省からトコジラミの駆除に参りました。
(駅員)どういうことですか?すぐに消毒いたしますので表に出ていてください。
(駅員)聞いてないですけど。
5分ほどで終わりますので。
強力な殺虫剤ですので吸い込まないように気を付けて。
(駅員)えっ?先輩先輩!
(羽佐間)気を付けて!
(駅員)大丈夫ですか?こちらへ。
さあ。
最低10分は中に入らないように!
(駅員)10分。
特別急行東洋は何番線だ?
(羽佐間)んっ?
(清水)特別急行東洋!
(羽佐間)ああはいはい。
ご案内しましょう。
口で言えば分かる!
(羽佐間)あっえっと…え〜そこ右に曲がってもらって突き当たりを左あっ左じゃない…。
(清水)急いでんだよ!あ〜めんどくさい。
ご案内しましょう。
(清水)ああ。
大奥さまそろそろよろしくお願いします。
まるで舞台の初日の気分です。
いい芝居期待していますよ。
参りましょう。
私やっぱり無理です。
呉田さんいまさら何ですか。
(馬場)いまさら人殺しは嫌だなんて言わないでくださいね。
(呉田)いや殺しはいいの。
芝居が嫌なの。
普段どおりでいいのですよ。
(馬場)みんなが付いてますから。
ホント自信ないんです。
(馬場)急がないと。
(八千代)つべこべ言わないでやるんです!保土田だ。
保土田さま。
ようこそいらっしゃいました。
関門海峡ば越えるとやっぱ天候が違うね寒かもん。
ハッ。
九州からおみえですか?博多生まれの博多育ちたい。
え〜保土田さま。
二等の1号室にお入りください。
あちらの扉からご乗車くださいませ。
良か旅になりそうやね。
われわれ12人はまるで何かに突き動かされるようにここまでやってきた。
そこには自分の意志ではない何か大きな力が働いているような気がしてならないんだ。
私もそれは感じます。
あとは流れに身を任すまで。
泣いても笑っても今夜でけりがつく。
(安藤伯爵)あの君らは付き合っているの?
(馬場)はい?恋人同士?伯爵そろそろ出番です。
(安藤伯爵)では後ほど。
・
(物音)お前何やってるんだ。
来ちゃった。
(呉田)すいません。
すいません。
すいません。
すみません。
(三木)はい。
いらっしゃいませ。
(呉田)呉田と申します。
(三木)呉田さまでいらっしゃいますね。
え〜呉田さまは二等の4号室にお入りください。
二等の4号室にお入りくださいませ。
ごめんなさい。
まったく耳に入ってこないわ。
(三木)あっ…。
あの二等のですね4号室にお入りください。
あちらの奥の扉からお入りくださいますように。
帰ります。
(三木)はっ?
(三木)二等の4号室でございます。
あちらの扉からお入りください。
羽鳥ですけど。
羽鳥典子。
(三木)羽鳥さまようこそいらっしゃいませ。
羽鳥さまは一等の8号室にお入りくださいますよう。
あなたが三木さんですね。
はい。
車掌の三木でございます。
よろしくお願いします。
こちらこそよろしくお願い申し上げます。
(馬場)大奥さまのお気持ちを分かってあげてください。
お嬢さまを犯罪者にしたくないんです。
1人だけのけ者にされる気持ちはどうなるの?参加させるわけにはいかない。
分からず屋。
(安藤伯爵)ちょっといいかな?僕としてはせっかくここまで追い掛けてきた浪子の気持ちも大切にしてやりたいんだ。
(能登)甘い!最後まで聞いてください。
(能登)われらの人数は12でなければならないのです。
(安藤伯爵)ですから彼女は参加しない。
そのときは部屋で待機をしています。
それなら問題ないでしょう。
それでいいね?うん。
仕方ないかな。
いいんですね?ホントにそれで。
うん。
我慢する。
(馬場)大佐。
これが計画の最初のほころびにならなければよいのだが。
ご迷惑をお掛けしないよう妻は私が責任を持って預かります。
よろしくお願いします。
部屋割りなんですが1つ問題が。
今は9号室に伯爵が入られています。
(浪子)私隣がいい。
続き部屋の10号室は羽佐間さんが取っています。
離れ離れは嫌よ。
お嬢さまには10号室に入っていただいて予備の12号室に羽佐間さんは移っていただきましょう。
すぐに三木さんに伝えないと。
私が行ってこよう。
ご迷惑お掛けします。
大佐。
(能登)ちょっとした不測の事態が。
何があったんですか?
(能登)藤堂だ。
(三木)あれが。
(能登)私は顔を知られている。
よろしくお願いします。
すいません。
藤堂ですが。
藤堂さまでいらっしゃいますね。
寒いので早くしていただけますか?
(三木)ああはい。
私の最初の旦那がね占い師から南に行くと運が向くって言われたの。
北は駄目だって。
だから旅行するときは南にばかり行ってたんだけど全然運が向かないの。
だってそうよね。
南に行くってことは帰りは北へ向かうってことだから。
フフ。
(藤堂)誰かさこのばあさん黙らしてくれよ。
あら生まれて初めて「ばあさん」って呼ばれたわ。
これからはずっとそう呼ばれんだ。
慣れときなよ。
藤堂さま一等の7号室にお入りいただきます。
あらお隣ですわ。
よろしくね。
(幕内)すいません。
幕内ですが。
幕内さま。
幕内さまは二等の2号室にお入りください。
(益田)益田ですが。
(三木)益田さま。
二等の1号室に…。
(安藤伯爵)安藤とその妻だが。
(三木)安藤さま。
え〜安藤さま。
あっ。
安藤さま。
伯爵お一人のご予約を承っておりますが…。
(安藤伯爵)急きょ妻も同行することになった。
部屋は続きで…何も問題はないはずだが。
ああさようでございますね。
え〜でしたら一等の9号室と10号室をお使いくださいますように。
(浪子)感謝します。
(三木)どういたしまして。
(八千代)そうして全ての準備が整いあとは特急東洋が下関を出るのを待つだけになった。
(八千代)そのときあなたが現れたのです。
(莫)こちらの紳士に部屋を1つ取って差し上げてくれ。
大至急。
私の大切な友人なんだ。
勝呂武尊さんだ。
存じ上げてるだろ?あっ勝呂さま?あの探偵の?正確には名探偵です。
(莫)ハハ。
12号を頼む。
何かあったときのために予備の部屋があるんです。
お心遣い感謝します。
すいません莫さま。
(莫)まさか12号室も?申し訳ございません。
(莫)どうなってんだ。
えっ?どこかで会議でもあるのか?団体客か?
(三木)いや偶然が重なったようでございます。
大勢のお客さまがけさ出発なさることになったようでございます。
(莫)ハァ〜弱ったな。
二等はどうなってる?
(三木)二等もあいにくふさがっております。
(莫)あり得ん!
(馬場)すみません。
(三木)はい。
(馬場)馬場と申しますが。
(三木)馬場さまでいらっしゃいますね。
あっ馬場さまは二等の4号室にお入りくださいますように。
あちらの奥の扉からお入りください。
(三木)ということで勝呂さまいくら日本を代表する名探偵といえども今日のところは我慢していただきませんと。
やはり私は普通車で。
(莫)いやとんでもない。
まだ遠いのか?今近道をお教えしますので。
もうすぐですよ。
(羽佐間)あそこに大きな看板が見えますよね?
(清水)おう。
(羽佐間)あそこを左です。
(清水)誰がかわやの場所を聞いた!
(羽佐間)すいません。
(ベルの音)状況が変わりました。
12号室にお入りください。
(羽佐間)はい。
(ホイッスル)勝呂武尊が乗ってるの。
(安藤伯爵)有名なのか?
(浪子)「いろは殺人事件」を解決した名探偵よ。
知らないの?大丈夫なんですか?いまさら計画を変更するわけには。
その探偵はどの部屋に?それがよりによって僕と相部屋なんですよ。
駄目だ。
もう耐えられない。
大丈夫。
三木さんに頼んであるから。
名探偵さんは一般車両に移ってもらいます。
そうしてもらえると助かります。
・
(ノック)
(三木)失礼いたします。
(馬場)ちょうどよかった。
探偵さんどうなりました?部屋を移られることになりました。
(幕内)本当ですか?
(八千代)よかったじゃない。
でどこになったんだ?重役の莫さまがご自分の部屋を提供されたんです。
ちょっと待って。
ということは。
6号室です。
(八千代)6号室。
藤堂の隣か。
かなり危険ね。
これだったらまだ幕内君と相部屋の方がましだった。
(幕内)いやそれは勘弁してくださいよ。
嫌な予感がする。
作戦は中止した方がいいんじゃないかしら?何言ってるの。
こんなチャンス二度とないんだからやっちゃいましょうよ。
あなたがお決めになることです。
答えは決まっています。
もう後へは引けません。
私もやるべきだと思う。
(幕内)僕も賛成です。
大奥さまがそうおっしゃるのなら。
思い切ってその探偵も一緒に消してしまうという手もあるな。
(八千代)困ります。
藤堂以外の人物に手を出すのは。
名探偵さんには眠り薬を。
どうやって飲ませる?サービスだと言って私が寝酒でもお持ちいたしましょうか?それだと確実に飲むとは限らない。
あっ食堂車はまだやってますか?ええ。
もうしばらくは。
誰かが飲みに誘うっていうのはどうかしら?
(保土田)どうも。
保土田と申します。
名探偵勝呂さんとお見受けしました。
ご用件は?よかったらですねこれから一杯いかがですか?旅は道連れ世は情けと申しましょうが。
事件の話やら何やらかんやら聞かせてもらえたらうれしかです。
今夜は思いの外疲れております。
申し訳ないがまたの機会に。
こうなったら逆の発想でむしろ寝かさないというのは?
(馬場)どういうことですか?今は11時。
これから30分置きに何かちょっとした騒ぎを起こして名探偵さんの睡眠を妨げるんだ。
2時ごろには疲れ果てて熟睡しているはず。
やってみましょう。
他のみんなが心配して待っています。
大奥さま計画は予定どおりということでよろしいですね?
(八千代)もちろんです。
決行は深夜の2時。
益田さんお願いします。
(益田)かしこまりました。
まずは藤堂に睡眠薬を飲ませる。
(益田)お薬はいかがなさいましょう?溶かしてしまってよろしいですね。
(藤堂)待て。
はい?狙われてるのに睡眠薬飲むバカどこにいる。
さようでございました。
(藤堂)おい。
幕内呼んでくれ。
かしこまりました。
(益田)失礼いたします。
やつはまだ薬を飲んでない。
清水はちゃんと乗ったのか?隣の客車に待機させております。
俺は狙われてるんだぞ。
部屋の前にいるように言っとけ。
伝えておきます。
(藤堂)東京に着いたら自動車用意してあんだろうな?手配してあります。
今夜はもういい。
行け。
(幕内)失礼します。
待て。
はい。
こっちへ持ってこいと言ってんだよ。
気の利かないやつだな。
(幕内)ああすいません。
(幕内)どうぞ。
(ため息)時計の針は1時15分に進めておいてね。
そうか犯行時刻を1時15分にするわけですね。
そんな小細工があの名探偵さんに通用すると思う?どういうこと?やることは分かってるわね?
(幕内)あっ…。
時計を進める。
時計を壊す。
脅迫状を持ち帰る。
悲鳴を上げる。
(馬場)悲鳴を上げて車掌を呼んだらこれを読み上げるの。
博多弁?
(馬場)詳しい話は後で。
頑張って。
先生あなたがいてくれて助かりました。
まだ何も始まってませんよ。
(幕内)時計を進める。
時計を壊す。
脅迫状を持ち帰る…。
時計を進める。
時計を壊す。
脅迫状を取り戻す。
悲鳴を上げる。
時計を…。
しっかりね。
はい。
どうしよう。
壊れない。
針が止まりません。
針止まりました。
うわ〜!・
(ノック)・
(三木)どうなさいました?藤堂さま。
・
(ノック)・
(三木)藤堂さま?すまん。
夢ば見とった。
恐ろしか夢やった。
(三木)何かお持ちいたしましょうか?
(幕内)いやいい。
・
(ベルの音)おやすみなさいませ藤堂さま。
・
(ベルの音)
(ノック)
(三木)どうなさいました?侯爵夫人。
ご苦労さまでした。
心臓が口から飛び出るかと思いました。
まずは第1段階終了。
ここまでは順調ですね。
脅迫状は?
(幕内)燃やしました。
燃やした?
(幕内)えっ駄目?持ってくるだけでよかったのに。
燃え残ったらどうするの。
えっいやでもだってほらもう完全に全部燃えちゃったから大丈夫かなって…。
あ〜何で燃やすかなあ。
何でってだって…燃やしたくなっちゃったんですよ。
だってもうほら…ごめんなさい。
何で燃やしちゃったんだろう。
まあいいでしょう。
大したことではありません。
次は30分後。
大奥さまの出番です。
了解しました。
行きましょう。
(幕内)あっ。
ちょっと待って。
何?何かおかしい。
(馬場)えっ?この列車動いてない。
(能登)雪で線路が埋まってる。
(馬場)動きそう?この様子じゃ朝まで無理だろう。
(昼出川)ここはどこ辺り?関ヶ原辺りじゃないか?
(幕内)まさか計画は中止?列車が動いてないんじゃな。
(幕内)いやでもだけど…。
やりましょうよ。
(安藤伯爵)いやどうかな。
先生が立てた作戦が全て変わってくる。
残念だけど日を改めるしかないかもしれませんね。
(能登)まさか雪で列車が止まるとは。
(保土田)チキショー。
(能登)ご決断を。
仕方ないわね。
(呉田)やるべきです。
何をためらってるんですか。
矢は放たれたのです。
後戻りはできません。
分かりました。
やりましょう。
では犯人は雪の中を逃げたことにしよう。
足跡は?
(能登)この雪だ。
足跡が残っていなくても不思議じゃない。
賢かねあんた。
(羽佐間)いやでももし雪がやんだら?そうなると犯人はこの列車の中にいるってことに。
それでもわれわれには全員アリバイがある。
心配ない。
(幕内)探偵は?私が何とかする。
さっ戻りましょう。
風邪ひきますよ。
それでは大奥さまよろしくお願いします。
久々の大舞台ね。
頑張って。
(八千代)先生。
(馬場)はい。
(八千代)不謹慎なことを言います。
私とっても楽しいの。
大奥さまのうれしそうなお顔久々に拝見しました。
(ベルの音)はい。
羽鳥さま?冗談じゃないわよまったく。
(三木)どうなさいました?男がいたのよ!私の部屋に。
(三木)まさか。
目が覚めたら部屋の隅にいたんだから。
間違いないの!はっきり見たんだから!いやしかし。
(八千代)確認して今すぐ!
(三木)入ってもよろしゅうございますか?
(八千代)まだいるかもしれないから気を付けなさい。
(三木)はい。
(八千代)私はね旦那以外の男に寝顔なんか見られたこと一度もないんですから!
(馬場)勝手なことをされては困ります。
(浪子)だって私も何か協力したいんだもん。
ですからこれは遊びではないんです。
分かってるわよ。
あの名探偵さんを寝かしちゃ駄目なんでしょ。
任せて。
計画にないことをしてほしくないんです。
(昼出川)お嬢さま先行ってますね。
(浪子)お願いしますね。
(馬場)昼出川さん。
あなたの気持ちは分かるがそれくらいは妻にやらせてやってもらえないだろうか。
せっかくここまで来たんだし。
足を引っ張るようなことしないから。
どうだった?名探偵さん眠そうな顔でこっち見てました。
そしていよいよ深夜の2時になりました。
時間だ。
みんなを呼んできます。
時間だ。
いってくる。
私の分までしっかりね。
(安藤伯爵)ああ。
このように。
うっ…。
あっ…。
私のカワイイ曽根子。
うっ…。
(藤堂)うっ…。
剛力家の皆さんを苦しめた罰です。
(藤堂)うっ…。
地獄に落ちろ。
(藤堂)あっ…。
けだもの。
神様ご理解ください。
奥さまの敵だ。
敵を取ったよ。
妻を苦しめた報いだ。
曽根子聖子安らかに…。
小百合…。
(馬場)こうして私たちは計画どおり藤堂こと笠健を殺害しました。
(馬場)そして朝になり最も恐れていたことが現実になりました。
あなたの捜査が始まったのです。
え〜これから順番に勝呂さんがお話を伺いますので皆さん身分を証明できるものを持って部屋で待機していてください。
(能登)どういう権限でその探偵は捜査をするのですか?私が依頼をしたのです。
優秀な探偵です。
必ず早期解決をしてくれるはずです。
幕内さんあなたからよろしいですか?えっ?僕?どうして?だって僕はさっき…。
勝呂さんが聞きたいことがあるそうなんです。
とにかく皆さん落ち着いてください。
間もなく汽車は運転を再開します。
名古屋に着くまでには事件も解決しています。
本当に?
(莫)あっ…しているはずです。
幕内さんどうぞ。
はい。
(三木)ご案内いたします。
(莫)失礼します。
(戸の開閉音)行きました。
(馬場)皆さんこれからが正念場です。
(能登)名探偵だろうが恐れることはない。
東京の警察で話す予定だったことをここで話せばいいだけだ。
練習したとおりにお願いします。
頑張りましょうね!よろしいですか?大奥さまからお話がございます。
皆さん感謝の言葉もありません。
娘たちもきっと喜んでいることでしょう。
本当にありがとう。
(轟侯爵夫人)ちょっといいかしらね。
どうされましたか?
(轟侯爵夫人)ごめんなさい。
私現場に落とし物しちゃったみたいなの。
何を落とされたんですか?ハンカチを。
しかも頭文字入り。
大丈夫かしら。
心配ないと思います。
侯爵夫人は犯人から最も遠いお方なのでそこから疑われることはないと。
ちなみに頭文字は何と入っていたのですか?「N」私名前がナツだから。
他にイニシャルが「N」の女性はいますか?私典子です。
(浪子)浪子です。
お嬢さまと大奥さま。
むしろこちらの方が疑われる可能性が強いな。
とんだとばっちりだ。
(轟侯爵夫人)ごめんなさい。
(浪子)あっ私は大丈夫。
疑われても平気よ。
この中でやってないの私だけだもの。
一応手は打っておきましょう。
他に何かありますか?はい。
大佐どうされました?
(能登)現場にパイプクリーナーを置いてきてしまった。
うかつだったよ。
(馬場)ご自分に疑いの目を向けさせようというのですか。
(能登)もしものときの用心だ。
私なら疑われてもいくらでも切り抜けられる。
勝手なことをされては困ります!だけどちょっと証拠が多過ぎるな。
こちらで用意したものに侯爵夫人のハンカチそれにパイプクリーナーってどれだけ犯人は不注意なんですか。
大丈夫大丈夫。
きっと名探偵さん頭を悩ますわよ。
お手並み拝見とまいりましょう。
あとは勝呂さんもご存じのとおりです。
私たちは様々な手を使い何とか捜査を混乱させようと必死になりました。
おかげで真実にたどりつくのに半日もかかってしまいました。
まさか。
いや何でだかは分からないんですけど勝呂のやつもう知ってるんですよ。
藤堂の正体。
(馬場)笠健だって言ったの?
(幕内)剛力家の話もしてました。
信じられん。
魔法使いだ。
ありゃ魔法使いだよ。
どうしましょう。
最初の予定どおりにいく。
われわれは剛力家とは一切関係がない。
それで押し通すんだ。
(馬場)侯爵夫人は?あの人はありのままで話した方がいいだろう。
心配なのは大奥さまとお嬢さんだ。
みんなに話してきます。
嘘みたい。
あの探偵は噂どおりの切れ者のようです。
素性がバレて最も怪しまれるのはお嬢さまです。
くれぐれも剛力家の人間であることは伏せてください。
妻は私が守る。
よろしくお願いします。
先生ごめんなさいね。
いまさら何ですか。
こうなったら一蓮托生です。
(馬場)食堂車の様子は?乗客の尋問は一とおり終わりました。
あの小男はどんな様子だ?いやさすがは名探偵勝呂武尊。
かなり真相に近づいたかと思われます。
そうですか。
いやあの男が現れてから何か嫌な予感がいたしました。
(馬場)引き続き食堂を見張ってください。
はい。
失礼いたします。
(三木)ごめんください。
こうなったらしかたがない。
あとは私が。
(馬場)何を考えてらっしゃるんですか?私は軍人だよ。
戦場で何度も手を汚してきた男だ。
ここは戦場ではありません。
しかし他に手は…。
(八千代)笠健以外の命を奪うことは断じていけません。
奇麗事を言ってる場合ですか?下手したら全員がお縄だ。
そのときは私一人が自首します。
そんなことをしてもみんな黙っていませんよ。
車掌の制服と赤いガウンはまだこの車両の中にあるはずです。
(須田)それは確かな証拠になりますな。
乗客全員の荷物調べを。
(莫)了解。
荷物検査か。
これからすぐに始めるとのことでございました。
想定内です。
どうするつもりだ?
(馬場)時間を稼ぐんです。
羽鳥夫人のバッグから凶器が見つかったことに。
犯人はこの部屋を通り抜けたときにナイフを隠していったんです。
あのどういう意味でしょうか?
(馬場)説明している時間はありません。
大奥さまもう一働きお願いできますか?了解です。
(三木)失礼いたします。
例のガウンを私のかばんに入れたのはどなたですか?あれは大佐のアイデアでした。
なかなかのユーモアでした。
ガウンを貸していただけますか?
(安藤伯爵)無礼ではないか。
この部屋でガウンが見つかるとお嬢さまに嫌疑が掛かってしまうんです。
・
(八千代)キャ〜!いいわ。
どうされましたか?
(八千代)こっちよ!早く!どこにあったんです?
(八千代)化粧ポーチの中よ。
私こう見えてもとってもデリケートなの。
子供のころから血を見るだけでもう気を失うくらい。
いつかも家の目の前で野ネズミが…。
先生いかがです?これだけの犯罪計画です。
相当な力量のある指導者がいるはずに違いないと私は考えました。
人々を率いる人徳綿密な計画を立てる頭脳そして突発事態に冷静に対処する度胸。
それが3人の人物に割り振られていることがこの事件の面白いところです。
すなわち人徳は大奥さまに頭脳は先生に度胸は大佐に。
大奥さまこんな結果になってしまい申し訳ありませんでした。
何を言うのです。
(能登)あなたのせいじゃない。
むしろあなたはよくやった。
私もそう思います。
勝呂の知恵が勝っていただけです。
ここまでやってこられたのは先生がいたからです。
すみません。
(能登)この雪さえなければ全てがうまくいった。
(能登)この雪さえなければ。
勝呂さん。
はい。
これで全てをお話しいたしました。
どうなさるおつもりですか?難しい質問です。
被害者は憎むべき男ではありましたがしかしながらこれは殺人事件です。
どうしても表沙汰にしなければいけないのであれば私一人の犯行としていただけませんか?大奥さま。
(八千代)笠健は私の娘と孫を殺しさらには生まれてくるはずのもう1人の孫まで殺したんですから。
ここにいる人たちは善良で誠実な人たちです。
私の愛する家族。
義理堅い使用人たち。
(八千代)娘さんを亡くしてかわいそうな三木さん。
先生と大佐はすてきな家庭を築くはずです。
それにお答えする前に鉄道省の重役としてあなたのご意見を伺いたい。
私ですか?ぜひ。
私の意見を申し上げるならば勝呂さんが出された第一の解答米原から乗った女のような声の男が藤堂を殺し逃げていったという説に1票を投じたい。
それ以外の解答はあり得ないように思えます。
名古屋の警察にはそう伝えたいのですが。
ではこの勝呂武尊に犯罪者を見逃せと。
須田先生のご意見は?
(須田)うん。
賛成ですな。
医学的な見地から色々私も意見を述べさせていただいたがどうやら的外れのようだ。
あなた方は私に犯罪をもみ消せとおっしゃる?そのとおりです。
は〜耳を疑いますな!どうやら覚悟を決めた方がいいようだ。
足跡はどうなるのです?雪の上に足跡がない以上犯人はまだ列車内にいるということになる。
それ以外の可能性はない。
断じてない。
保土田さん。
(保土田)何?申し訳ないが表に出てもらえますか?何ね?今すぐ!保土田さん。
(保土田)う〜…。
そこで走り回ってください。
何でね?理由はいい!
(馬場)やって!もっと大きく!
(保土田)はい。
弱ったもんですなあ。
現場の保存は犯罪捜査の常識です。
あんなに踏み荒らされてしまっては今となっては犯人の足跡があったかどうか確認もできません。
警察も困るでしょうなあ。
私の知ったことではないが。
感謝します。
ご苦労さん。
戻っておいで。
これは勝呂武尊が解決できなかった初めての事件です。
しかしこれほど誇らしいことはありません。
それでは事件の真相もはっきりしたことですので私はそろそろ部屋に戻ることにします。
莫さんフグの一夜干しの食べ方教えていただけますか?もちろんです。
(3人の笑い声)
(浪子)お母さま。
みんなよくやりました。
(三木)言葉もございません。
羽佐間君。
任務完了だな。
今は早く眠りたい。
終わったわね。
何か気が抜けっしもうたな。
これから僕たちどうなるんですかね。
決めたでしょ。
駅に着いたらばらばらになるの。
ばらばらに?
(昼出川)だって私たちはたまたま列車に乗り合わせたんだから。
でも寂しくないですか?ここまで一緒にやってきたのに。
だって世の中には法で裁かれない悪いやつがたくさんいると思うんですよ。
それを1人ずつ見つけだして僕たちで仕置きしていくっていうのはどうですか?
(保土田)俺それ乗ったばい。
僕らならできる気がするんですよ。
(昼出川)バカなこと考えないの。
われわれに殺人は似合わない。
私は名古屋の警察に宛てて事件の報告書でも作成することにします。
かなりの文才が必要となりそうですなあ。
・
(汽笛)
(須田)あれは?どうやら除雪作業が終わったようです。
小1時間で名古屋に着くでしょう。
ほう。
急がなければ。
勝呂さんありがとうございました。
あなたが乗っていて助かった。
2016/01/05(火) 00:55〜03:42
関西テレビ1
オリエント急行殺人事件第二夜[再][字][多]【今夜殺人事件の裏側が明かされる! 野村萬斎】
勝呂によって解き明かされた犯人たちの思い。その犯行に至るまでの5年間を犯人の告白によって描く。三谷幸喜のオリジナルストーリーは世界初、そして今夜完結!
詳細情報
番組内容
「三谷幸喜×アガサ・クリスティー」夢のコラボレーション、さらには豪華キャストの競演で注目を集めた、三谷幸喜版『オリエント急行殺人事件』。
三谷のオリジナルでお送りする第二夜は、時間と空間を広げ、犯人の視点から事件を再構築。犯人側から事件を振り返り、犯行に至るまでの経緯を丹念に描く。それは綿密な犯罪計画に裏打ちされた、驚異の復讐(ふくしゅう)劇だった。
番組内容2
原作をこよなく愛する三谷にしかなし得ない、驚がくの展開が待ち受ける。かつてない超豪華な容疑者たちの命を懸けた物語。まだ世界の誰も見たことのない『オリエント急行殺人事件』がここに誕生。
出演者
野村萬斎 :名探偵・勝呂武尊(すぐろたける)
松嶋菜々子 :乗客、家庭教師・馬場舞子(ばばまいこ)
二宮和也 :乗客、藤堂の秘書・幕内平太(まくうちへいた)
杏 :乗客、外交官夫人・安藤伯爵夫人
玉木宏 :乗客、外交官・安藤伯爵
沢村一樹 :乗客、陸軍大佐・能登巌(のといわお)大佐
・
池松壮亮 :乗客、万年筆の販売員・羽佐間才助(はざまさいすけ)
出演者2
八木亜希子 :乗客、教会で働く女性・呉田(くれた)その子
青木さやか :乗客、轟侯爵夫人のメイド・昼出川澄子(ひるでがわすみこ)
藤本隆宏 :乗客、輸入車のセールスマン・保土田民雄(ほとだたみお)
・
富司純子 :乗客、おしゃべりなマダム・羽鳥夫人
高橋克実 :鉄道省の重役・莫(ばく)
笹野高史 :外科医・須田
小林隆 :乗客、藤堂の執事・益田悦男(ますだえつお)
出演者3
草笛光子 :乗客、轟侯爵夫人
西田敏行 :特急東洋の車掌・三木武一(みきぶいち)
・
佐藤浩市 :乗客、実業家・藤堂修(とうどうおさむ)
他
スタッフ
【原作】
アガサ・クリスティー(英1890〜1976)「オリエント急行の殺人」
【脚本】
三谷幸喜
【制作】
大多亮
石原隆
【プロデューサー】
重岡由美子
橋本芙美
元村次宏
【音楽】
住友紀人
【制作協力】
共同テレビ
【制作著作】
フジテレビ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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