新年を迎え、3月の就職活動解禁がいよいよ近づいてきた。「希望する企業の内定を取れるのか」「そもそも内定を取れるのか」など不安に駆られている就活生が多いことだろう。一方、就活に励む我が子を物心両面で支える「親」にとっても就活は大きな関心事だ。
たとえばマイナビが2015年3月の就活イベントで親向けセミナーを初めて開催したところ、参加費が5000円かかるにもかかわらず、134人もの親が参加した。
会場にいた複数の親に話を聞くと、「納得のいく就職をして我が子が幸せに生活できるようになってほしい」という声や、「ここまでかけてきた多額の学費に見合う就職をしてほしい」など、子どもの就活に対して様々な考えがあることが分かった。いずれも理解できる気持ちだが、こうした気持ちや思いがエスカレートすると、かえって我が子の就活の足を引っ張るケースもある。最近では就活を大きく妨げる親を表す「毒親」という言葉もあるほどだ。そうならないように反面教師としていくつかのパターンを紹介する。
「銀行に就職しろ」と迫る父親
この4月に就職を控えた都内私立大4年のAさんは、昨年3月に就活を開始したあたりから父親とほとんど口をきいていない。理由は、志望企業について過剰に口出しをされたからだ。かつて国営だったある超大手企業に勤める父親がA君に対して、「お前はどこの企業を受けているんだ」と聞いてきた。中堅メーカーや商社の名前を答えると「そんな会社は聞いたことがない。大手銀行を受けなさい」ときつく言われた。
Aさんは、銀行が持つ堅いイメージが自分に合わないと考えて志望していなかった。その思いを伝えたが父親は聞く耳を持たず、「メガバンクを受けろ」の一点張り。その後も何度もしつこく聞かれるため、Aさんは帰宅しても父親がいるリビングを通り抜け、自分の部屋にこもることが増えた。Aさんは「大手銀行に勤める兄と比較されることもあり、口をきくのがイヤになった」と振り返る。
就活生や親からの相談を受け付けるある就職支援会社によると、これは「俺の子どもなのだから大手企業に就職すべき」という気持ちからくる「大手強制」だという。大手企業に就職することは待遇の良さなどのメリットがあるため、親が勧めたくなる気持ちは分かる。しかし子どものやる気をそいでしまい、かえって内定までの道を遠くさせてしまうという。
就活生の数が毎年40万人に及ぶのに対して、人気ランキング上位企業の採用数は合計で約2万人と言われる。就活生の数が減っているとはいえ、人気企業への就職が狭き門であることは以前から変わりがない。そんな現実を踏まえると、大手企業以外の選択肢もあることを子どもに伝えることも大事だろう。