インドはヒンドゥー教をはじめとする多宗教国家。
インド料理を語る時、そしてインド人、インドそのものを語るとき
地理的な風土とともに、
宗教的な背景について無視することはできません。
インド料理は、歴史的経緯や土地の習慣などに影響されながら、
おおまかにはベジ(菜食)、ノンベジ(肉食)に区別されます。
さらに、にんにく、たまねぎを食べないなど、
宗教、宗派ごとに、食生活の違いがあります。
ヒンドゥー教
ヒンドゥー教はインド人の大多数を占める宗教。
法律的にはとっくに撤廃されたはずの身分制度カーストが、
今だに影響を残しています。
牛を神聖なものとし、基本は菜食。米や小麦、
豆や野菜とともに、
チーズ(パニール)などの乳製品がポピュラーです。
菜食は高位カースト階級の
ヒンドゥー教徒の中において顕著かつ厳しく、
にんにくやたまねぎを
にんにくの味を想像させるとして禁じている地方もあります。
しかしその一方で北部のカシミールなどでは、
肉食する高位カーストの
ヒンドゥー教徒も(ただし羊肉と野生の獣肉のみ)。
また卵だけは食べたり、海沿いでは、「海の果物」と称して
魚だけは食べるヒンドゥー教徒もいます。
インドでは北部ではターリ、
南部ではミールスと呼ばれる1人前の定食が発達し、
またスプーンではなく自分の右手で食べることも
多いですが、これはヒンドゥー教の浄、不浄の観念から、
他人の料理や残り物を取り分けて食べたり、
食器を共有することに拒絶感があるためといえそうです。
なお、飲酒はイスラム教のように前面禁止ではありませんが、
一般的に好ましくないものとされているようです。
イスラム教
パキスタンとバングラデシュが
イスラム教国として分割された後も、
インドには1億人以上のイスラム教信者が
全土に散らばって住んでいます。
(下層カーストのヒンドゥー教徒が
改宗したケースも非常に多い)。
インドではイスラムのムガール帝国が
ヒンドゥー教徒と融和をはかった経緯もあってか、
両教徒は長らく平和的に共存してきました。
(最近はパキスタンがらみで
対立やテロ事件が時折問題になっているのが残念です。)
イスラムには、嫌われる豚肉をのぞいた肉料理が多いのですが、
インドではヒンドゥー教徒の共存の歴史があるためか、
牛肉はさほどポピュラーではなく、
羊肉と鶏肉がメイン。
肉や野菜のスパイス炊き込みご飯であるビリヤニも、
代表的なイスラム料理。
なお、厳格なイスラム教徒が食べる食材は、
イスラム教で適切な処置をしたハラールフードのみであり、
またよく知られたとおり、
お酒は御法度です。