キャー！
（鳥居勘三郎）
１６年前京都市内に住む会社員が夜の駐車場で何者かに殺害された
警察がまず疑ったのは被害者の妻大塚楓
当時彼女は離婚調停中の夫に付きまとわれ度々暴力を受けていた
しかし大塚楓の犯行を示す証拠は挙がらず事件は迷宮入りになって時効を迎えた
そして…
（結城秀則）何やってるんだ！
（頭を打ちつける音）
（パトカーのサイレン）
（会沢桂子）複数のゲソ痕が見つかりました。
争ったような跡です。
（吉川新平）着衣が乱れていますからガイシャは何者かと揉み合って転倒したようですね。
（兵藤兵吾）殺しの可能性が出たか。
（七尾洋子）「期間限定！京なすのクリームパスタ」うわぁおしいそう！ねえおみやさんランチこの店にしません？どこでもいいよ。
あっちょっと待って。
ニューオープンの韓国レストランか。
これも捨てがたい！相変わらず食い意地張ってるね洋子。
美食家って言ってください。
これでも舌は肥えてるんです。
肥えるのは舌だけにしてください。
心配無用！見てちょうだいこのスレンダーボディー。
（兵藤）神社のホトケ身元が判明しました。
（茅野太一）結城秀則４３歳。
住所は伏見区桃山。
（高岡俊介）勤務先は大手商社。
妻と中学生の子供がいますが半年前から別居状態です。
（村井信治）妻のアリバイは？
（星野康夫）確認中ですが函館の実家で暮らしてるようです。
函館…北海道か。
（吉川）それとこれなんですが…。
「デザートサービス券」？ガイシャの財布に入ってました。
東山の京料理屋古都梅のものです。
古都梅？ガイシャは昨日ここで食事をとっています。
（兵藤）店を出たのが午後５時前後。
えっ古都梅って八坂神社の近くの？
（吉川）ええ目と鼻の先ですよ。
（村井）説明しなくていいって！資料課の分際でガイシャの足取りでも追おうっていうのかね？いやいや昼飯どこにしようかなと思って。
はははは！暇だね！その京料理屋が過去のヤマと関係あるんですか？いや店じゃなくてねそこに勤めてた女性店員なんだけども…。
あったこれだ。
「法高寺駐車場会社員殺人事件」１６年前京都市内に住む会社員大塚正雄さんが駐車場で殺害された。
警察はガイシャの妻大塚楓さんを疑った。
奥さんに殺す動機はあったんですか？彼女は結婚当初から夫の暴力に悩まされていた。
離婚調停中も夫に付きまとわれ復縁を拒むと殴る蹴るの暴行を受けた。
最低ですねその男！しかし彼女の犯行を裏付ける具体的な証拠は挙がらず逮捕には至らなかった。
１６年前ってことはもう時効か…。
事件後彼女は旧姓の横井に戻り再び京料理屋で働き始めたと。
それが古都梅？今度は店のお客さんが殺害された。
まあ単なる偶然かもしれないけど。
もしかして会いに行くんですか？まあご飯のついでに。
あそこのランチ抜群！
（田中登志子）ほんまにええ話やと思いますえ。
あんたくらいの美人やったらあちらさんも大喜びや。
（横井楓）せっかくのお話ですけど私はもう結婚なんて…。
（店員）揚げ出し豆腐あがりました！
（楓）はい。
（ため息）
（楓）揚げ出し豆腐定食お待たせいたしました。
（登志子）お越しやす。
いらっしゃいませ。
（登志子）どうぞこちらへ。
よかった空いてて。
いつもこんなもんですわ。
何にしはります？僕は…西京焼き定食。
じゃあ私は肉豆腐定食のご飯大盛り！おおきに。
ご無沙汰してます。
今もここで働いてらっしゃるんですか。
何の取りえもない中年女他に雇ってくれるところはありませんから。
いやいや…。
あっ部下の…。
七尾と申します。
部下まで連れてらして…。
また私を疑うつもりですか？いえいえ。
お話があるなら後にしてください。
あら〜嫌われてますね。
別の刑事さんにもお話ししましたけど殺された男の方はうちの常連さんではありません。
個人的なお知り合いでは？まさか！初めて見るお顔でした。
では殺された結城秀則さんはどうしてここへ食事に来たんでしょう？はあ？彼自宅も職場も伏見なんです。
伏見から八坂まで２０分かかります。
２０分かけてここに食事に来る理由って何ですかね？そんなこと私に訊かれても困ります。
あの…もういいでしょうか？別の刑事さんにもいろんなことを訊かれてちょっと頭痛がしてきました…。
あっ申し訳ありません。
帰ります。
お仕事中すいませんでした。
何か怪しいなぁ。
一瞬動揺してたみたいだけど…。
やだ何あれ。
隠し撮り？ちょっと…ちょっとちょっと！ねえねえ今の男さっきお店にいませんでした？いた。
揚げ出し豆腐定食食べてた。
はあ…よく観察してるなぁ。
だって気になったもん。
チラチラ…こっち見てたから。
ねえ隠し撮りしてたの楓さんの写真ですよね？あれってストーカーなんじゃ？ガイシャが借金？ええ。
親戚や友人からもかなりの額を借りてたらしいです。
えっ何で？そんな大手に勤めてて何で金に困ってるの？
（兵藤）ギャンブルですよ。
給料の大半をつぎ込んでたようですから。
妻子と別れたのもそれが原因だったらしいですよ。
呆れた。
どうして世の中こんなにダメ男が多いわけ！？いや俺ダメ男…？ところがだ。
ダメ男は案外女心をくすぐったりする。
事件の陰に女あり…ですよ。
何？突然。
ガイシャの胸ポケットから見つかったんです。
あらきれいな字。
どれどれ？「結城秀則さま」「毎日暑い日が続きますがお元気ですか」「結城さんはこの夏もどこかの山に登るのでしょうか」「私は大学時代の友人とペンションに泊まる予定です」「ペンションは河口湖の湖畔にあるそうで今から」…ああ続きがありますね。
最初の１枚だけ。
誰からなんでしょう？別居中の奥さんじゃないよね。
これはね女ですよ。
でこの女がホシなんだ。
うーん…だけどガイシャはどうして手紙を持ち歩いていたんだろう？それにこれしばらく会ってないような文面じゃありません？うん？ちょっと貸して。
ほらね！おたまさんの字に似てるでしょ。
達筆だけど…おたまさんこのラブレター誰に出すの？
（おたま）俳句の会のお友達にね四季折々のご挨拶です。
おたまの場合はね恋文はいただく専門でございましたから。
ふん見栄張っちゃって。
あなたもねたまには手紙ぐらいお書きなさい。
ええ〜？今時メールで十分じゃない。
まあ嘆かわしいわ…。
相手の顔を思い浮かべながら文字をつづる…この心の余裕が心身をみずみずしく保つんでございますよ。
なるほど！相手の顔が思い出せたらボケてないっていう証拠か。
まあ！人を小バカにする娘は明日の朝からご飯は出しません！そんな！ごめんおたまさん。
謝るから機嫌直して。
ご飯食べさせて〜！ダメ！ご飯で思い出した。
うん？あの手紙メニューの字に似てるんだ。
メニュー？ほら筆跡がそっくり。
うーん…言われてみれば。
お越しやす。
毎度おおきに。
１つお訊きしたいんですけどもこのメニューどなたがお書きになったんです？これですか？うちの仲居ですけど。
もしかして横井楓さん？へえ。
子供の頃お習字習うてはったみたいで。
なかなか見事な字ですやろ？じゃああの手紙も…。
手紙？いえいえ…あのもう１つお訊きしていいですか？先日結城秀則さんっていう方がこちらで食事なさったと思うんですけども。
ああそれやったら他の刑事さんにも訊かれました。
うちの常連さんやおへんえ。
いやいやいやそうじゃなくて彼横井さんとは知り合いだった様子ありました？知り合い？そういうたらお会計の時に何か話してはったような…。
会話の内容は聞こえました？そんな。
聞き耳立てたりしまへんわ。
大方デートの申し込みでもしてはったんちゃいますか？彼女なかなかのべっぴんさんですやろ？ええ確かに。
（カメラのシャッター音）
（カメラのシャッター音）あっ楓さん実家に戻られたんですね。
（楓）家に来られてもお話しするようなことは何もありません。
そうでしょうか？我々に何か隠してません？この手紙…結城さんの遺体のポケットに入っていた手紙です。
あなたの字と筆跡がよく似ています。
これあなたが書かれたのでは？調べればすぐにバレちゃいますよね。
おっしゃるとおりです。
これは私が書いた手紙です。
あれは嘘だったんですね。
結城さんとは知り合いではなかったなんて…。
嘘なんかついてません。
彼に会ったのは本当にあの日が初めてでした。
ちょっと待って。
どういうこと？彼は私のペンフレンドだった人です。
ペンフレンド？私の宝物ご覧になりますか？昔買っていた音楽雑誌です。
とっくの昔に廃刊になってしまいましたが。
１９８１年９月号。
昔の雑誌にはよくペンフレンドの募集欄がありました。
これが私です。
ブラスバンド部に入っている高１女子…音楽好きの方友達になりませんか？京都市東山区横井楓…。
じゃあ結城さんはこれを読んで？応募してくれました。
こんな私にも青春時代はあったんですよ。
（楓の声）「前略結城秀則さま」「ペンフレンドに応募してくれて本当にありがとう」「男の子に手紙を書くのなんて初めてだからちょっと緊張しています」「まずは自己紹介から始めますね」「私の名前は横井楓」「京都の八坂神社の近くに住んでいます」「町はいつも観光客でにぎやかです」「きれいな舞妓さんにも会えますよ」
（青年の声）「横井楓さん手紙をありがとう」「僕も自分が住んでいる町について書きます」「僕が暮らしているのは近江八幡にある高校の寮です」「琵琶湖がすぐ近くにあって町の人たちはみんな親切です」
（楓の声）「やった！ブラバンの地区大会３位入賞！」「結城君が頑張れって言ってくれたお陰です」
（青年の声）「先週山岳部の仲間と日本アルプスに登りました」「横井さんと同じ名前の木が真っ赤に紅葉しててとてもきれいだったよ」
（楓の声）悩んでいた時彼の手紙の中に「自分の心の声を信じて歩いていけばいい」という言葉がありました。
救われました。
彼だけには苦しみも悲しみも素直に書けた。
なのに不思議ですね。
最後まで顔も知らずにいたなんて。
文通はいつまで続いたんですか？私が結婚するまでです。
私宛ての手紙を大塚が勝手に開けて…。
（楓）ただいま。
何してるの？返して。
（大塚正雄）誰や？その結城って奴。
誤解しないで。
ただの文通相手よ。
文通？会うつもりもないし会ったこともないわ。
いつから送り合うとるんや手紙。
高校時代から。
やめて…！やめて！！何やこんなもん！手紙みな捨ててまえ。
（楓の声）もともと嫉妬深い人でしたけどあの時から私のことをまったく信用しなくなりました。
暴力が始まったのもあの手紙がきっかけでした。
やめて！そしてあなたは文通をあきらめた。
ええ。
（楓の声）「結城さんお返事が遅くなってごめんなさい」「寒さもだいぶ和らいできましたね」「もう少し暖かくなったら結城さんはまたどこかの山に登るのでしょうか」「実は今日は勝手なお願いがあります」「１２年も続いた私たちの文通だけどこの手紙でおしまいにしたいのです」「なぜなら…なぜなら私は今とても幸せな結婚生活を送っているからです」「いつまでも青春時代を引きずるのはやめてこれからは目の前の暮らしを大切にしたいのです」「一度も会うことはなかったけれどあなたは私にとって大事なお友達です」「今までもこれからもずっと」「１２年間私に生きる力を与えてくれて本当にありがとうございました」「お元気で」それからあなたは間もなく大塚正雄さんと別居。
その数か月後彼は何者かに殺害された。
何度も手紙を書こうと思いました。
もう一度文通がしたかった。
でもあまりにも身勝手に思えて結局書くことはできませんでした。
そして１６年後結城さんが突然あなたの働くお店を訪ねてきたんですね？その時はまったく気づかなかったんです。
あの人が私の文通相手だったなんて。
（楓）お釣りとサービス券です。
（結城）ありがとう。
あんたに話があるんだ。
えっ？明日の午後３時この先の喫茶店に来てくれ。
（楓の声）翌朝刑事さんが店に来てあの人が殺されたことを聞かされました。
その時初めてあの人の名前を知ったんです。
そしてあなたは彼がかつての文通相手だということに気づいた。
何が何だかさっぱりわかりません。
どうして今頃になって彼が私に会いに来たのか…。
どうして殺されなければならなかったのか…。
彼が持ってた手紙あなたに見せるためかもしれませんね。
自分があなたの文通相手だということをあなたに証明するために。
本当は会いたくなんかなかった。
はい？あの頃のことなんて思い出したくなかった。
彼と文通を始めた頃の私は毎日が本当に楽しかった。
明日が来るのがいつも楽しみだった。
自分の未来はきっとすばらしいものになるって…。
未来の自分に書くように彼に自分の悩みや苦しみを書いていたような気がします。
それがこんな寂しい人生を送るなんて思ってもみなかった。
そんな…。
夫に虐げられ警察に疑われて私はいつの間にか人に心を開くことのできない女になった。
こんな未来あの頃には思いもしなかった。
うん！これすごく美味しい！
（福島雅人）グジの若狭焼きです。
もう今が旬ですから。
ふ〜ん。
あれっ？グジって何の魚でしたっけ？前にも訊いたけど。
（福島重夫）ふふふ…アマダイですわ。
塩振って一晩寝かせると身が締まって味もようなるんですわ。
焦らずに待つのがコツ。
（小池仁美）調っていく味を想像しながら静かに待つ。
それも楽しいもんですえ。
はあ…文通も同じかもしれませんね。
お互い相手を思いながら返事を待つのが楽しいのかも。
洋子の場合待ちきれなくて催促しそうね。
どうせ落ち着きがありませんよーだ。
あれっそういえば１６年前警察は楓さんが文通してるって知らなかったんですよね？うん。
彼女の交友関係を洗ったがペンフレンドの存在には気がつかなかった。
つまり捜査線上に結城秀則の名前は挙がらなかった。
はっ！ねえおみやさん１６年前のホシ結城秀則だった可能性もあるんじゃないんですか？彼がもし当時楓さんの境遇を知っていたとしたら…！楓さんを暴力亭主から守るために殺害した？どうだろう…。
ガイシャの部屋から手紙のたぐいは見つかっていません。
所持していた便箋が入っていた封筒も見つかってないんです。
妙だねぇ。
誰か処分したのかね？う〜ん…でね便箋からは３人の指紋が出てきました。
１つは書いた人１つは受け取った人…あれ？もう１つは…。
うん…。
あと気になった点といえば…あっお財布かな。
財布？うん。
部屋のタンスから３万円が入った財布が見つかったんだけれど遺体も財布を所持してたんですよ。
じゃあガイシャはお財布を２つ持っていた？まあねそういう習慣の人もいなくはないんでしょうけど…。
でやっぱりガイシャは女がいたようですよ。
財布の中にこれが入ってた。
楓！？ねえおみやさん１６年前のヤマのガイシャ大塚正雄の財布は見つかってます？いやホシが持ち去ったと見えてまだ発見されてない。
洋子…洋子の推理案外いい線いってるかも！うう〜！いい線どころかきっとビンゴですよ！花名刺のこと楓さんに確認しましょう！
（兵藤）目撃者が出ましたよ！事件の日に神社から出てくる男を見たという証言が出ました。
よし似顔絵作らせる。
スピード逮捕に向けてその男を徹底的に捜し出せ！野々宮静夫さんですね。
鴨川東署の者ですが結城秀則という男性について少々お訊きしたいんですが。
（野々宮静夫）虫ですよ。
（兵藤）はあ？悪い虫は退治しないと花が枯れてしまう。
えっ…どういう意味ですか？虫を殺すのがどうして罪になるんですかねぇ。
あなたが作ったものですよね？結婚前に大塚と一緒に…。
あの…これ一体どこに？殺された結城秀則さんの部屋で見つかりました。
はっ！？この財布に入ってました。
見覚えありそうですね。
大塚の財布です。
でもどうして…？あの…本人が死亡している以上推測でしかないんですけど１６年前にご主人を殺害したのは結城秀則だった可能性があります。
はあ？恐らくお財布は物盗りに見せかけるために持ち去ったんです。
先日彼があなたに話そうとしていたのは１６年前の真実だったのかも…。
ちょっと…。
ちょっと待ってください。
結城さんが大塚を殺すなんて絶対にありません。
第一理由がないじゃないですか。
理由なら１つだけ考えられます。
あなたを守ろうとしていた。
私？はい。
あなたは１６年前にご主人からひどい暴力を受けていました。
その事実を結城秀則が何らかの事情で知ったとしたら…。
まさか…そんな…まさか…。
おみやさん！兵さん。
また先を越されましたか。
（吉川）すいません。
この方についてお訊きしたいんですが。
こいつ…！お店の常連さんです。
この男が結城秀則さんの殺害を自供しました。
ええっ！？あなたに親しく話しかける姿を見て殺意がわいたと言ってます。
はあ…やっぱりストーカーだったんだ。
ストーカー？いやぁ…。
あっこりゃ立派なストーカーですねぇ。
店に入ろうとした時見たんですよ。
あの男が彼女になれなれしく話しかける姿をね。
ちょっと待てお前そんなことで殺意を抱いたのか？そんなこと？フッ。
おたくら何もわかってないんだなぁ。
彼女は僕に助けを求めたんですよ。
助けてくれって言ったのか？あんたに。
言わなくてもわかりますよ。
「僕には彼女の声が聞こえるんです」「彼女の心の声が」「ははははは…」
（吉川）野々宮静夫建築資材メーカーの社員です。
所有している靴の１足が現場のゲソ痕と完全に一致しました。
一方的に好意を寄せた揚げ句思い込みから殺しか…。
ひどい話ですね。
まあでもこれで一件落着ですね。
１６年前のホシは結城秀則でその結城を殺したのはあの男。
そうだろうか…。
えっ？何か釈然としないなぁ。
すごい大きな勘違いしてるような気がする。
う〜ん？おみやさん何に引っかかってるんです？いやだから楓さんどうして今まで野々宮静夫のストーカー行為に気がつかなかったんだろう。
バレないようにうまくやってたんですよきっと。
いやそれに１６年前のヤマ…。
えっ？結城秀則が文通相手を救うために殺人を犯したと考えると１つ矛盾点が生じる。
何です？人物像。
結城っていうのはギャンブルのために借金を重ねて奥さんに愛想を尽かされるような男だよ。
そんな男が殺人に手を染めてまで１人の女性を守ろうとするだろうか？でも現に部屋から証拠が見つかったんだし。
そうなんだよ…。
過去のヤマと現在のヤマがきれいに物証でつながってる。
それが不自然なんだよ。
誰かにお膳立てされたみたいな…何か嫌な感じ。
まったく…つぶらな瞳の割にひねくれてるんだから。
どれも明らかに隠し撮りされたものです。
この写真私たちが会いに行った時の！う〜ん…。
うん？やっぱり変だ。
何がです？ほらこの写真新春セールのポスターが張ってある。
ええ。
新春セール今がシーズンですよね。
ということはこれ最近になって撮られたものだよね。
はっ？それにこっちも…この花僕らがこの前行った時も咲いてた。
うん？それのどこが変なんです？いやこれらの写真はみんな最近になって用意されたものかもしれない。
（２人）はっ？用意されたってどういうことですか？野々宮はストーカーを演じていただけかもしれない。
楓さんの写真を集めたのも自分がストーカーですということを警察に思い込ませるためだったのかもしれない。
そんな…！一体何のために？
（ドアの開く音）おみやさんビンゴ！あの２人つながりがありました。
野々宮静夫の経歴です。
出身高校を見てください。
近江大学附属近江八幡高校…。
結城秀則も同じ高校を卒業してるんです。
しかも同じ年に。
２人同級生…。
何かあったのかも。
高校時代２人の間に。
（体育教師）おおこれやこれや。
結城はねぇ僕より１つ下でしたけど高校生のくせに金賭けてマージャンしよってから何度も停学食ろうとったわ。
その頃からギャンブル好きだったんだ。
まあせやけどなかなかの二枚目やし女の子にはようもてて。
野々宮静夫さんってどんな生徒でした？野々宮静夫…さあ…そんな奴おったかな？あっこれ結城の代の卒業アルバムに文集です。
ほな終わったら声かけてください。
ああすいません。
２人の共通の知人を調べて連絡取って…送検に間に合いますかね？とにかく急ごう。
はい。
いた。
これ結城です。
野々宮も！２人同じクラスです。
あった野々宮の作文。
『部活動の思い出』。
部活動って何部です？山岳部。
山岳部。
あっ。
２人は本当にペンフレンドだったんだろうか…。
えっ？
（吉川）実況見分を行います。
一緒に来てください。
何です？会ってほしい人がいるなんて…。
すぐに済みます。
一緒に来ていただけませんか？
（野々宮）どういうことです？正直に話してもらえませんか？はっ？あなたがそこで結城秀則さんを殺害した本当の理由。
（ため息）全部話しましたよ。
あの男が彼女になれなれしく…。
違う。
あなたはストーカーなんかじゃない。
楓さんに対するあなたの思いはそんな利己的なものじゃなかったはずです。
楓さんの文通相手１０年以上にわたって手紙をやりとりした相手それは野々宮さんあなたでしょ？結城秀則さんじゃなくてあなただった。
１６年前楓さんのご主人大塚正雄さんを殺害したのもあなた。
大塚って誰です？聞いたこともありませんね。
それに文通って一体何のことです？１９８１年あなたと結城さんは同じ寮に住む高校の同級生だった。
そしてあなたはその当時山岳部に所属してた。
楓さんの文通の相手は山登りが趣味だった。
しかし殺された結城さん登山の経験はない。
考えられるのはただ１つ。
あなた高校時代何らかの理由で結城さんの名前を騙って楓さんと文通を始めたんです。
そして１２年後楓さんのご主人を…。
もういい！これ以上は黙秘します。
あなたの筆跡を楓さんに確認してもらうのは簡単です。
結城さんの手紙に付着してた指紋とあなたの指紋と照合するのも簡単です。
ですがどうかご自分の言葉でご自分の真実を語ってください。
真実…？１０代の頃からあなた偽りの名前で楓さんに何通も手紙を書き続けた。
しかし書き込まれた思いは偽りじゃなかったはずです。
楓さんと同じように若い時の喜びとか悩みとか正直に書きつづったはずです。
どうか教えてください。
どこで間違ってしまったのか。
間違いの始まりは高校１年の時でした。
「自己紹介から始めます」だってさ。
まじめな女。
（結城）何か返事出すの面倒くさくなってきたよ。
アホ。
お前ナンパするために手紙書いたんちゃうんか？う〜ん俺新しい彼女できたし。
ホンマか？
（野々宮の声）返事を待っている彼女が何だかかわいそうに思えて…。
結城の代わりに返事を書いてしまいました。
（結城）お前俺のふりして文通始めたわけ？ごめん。
（ため息）まあいっか。
なあデート代カンパしてくれない？あっああ…。
２千円でいいよ。
名前の貸し賃っていうことで。
なあはよ行こう？映画始まるやん。
（野々宮の声）彼女に会って謝ろう。
そう思いました。
今度一緒に行こうよ。
絶対行こう。
じゃあ楓バイバイ！
（一同）バイバイ！
（野々宮の声）だけど彼女はあんまりまぶしくてあんまりきれいで…。
嘘の自分でもいいから友達でいたいと思ってしまった。
それから１０年以上本当の名前も名乗れないまま彼女と文通を続けました。
しかし楓さん結婚を境に文通をやめたいと言ってきた。
恨む気持ちはありませんでした。
彼女が幸せな結婚をしたと聞いて本当にうれしかった。
ただ最後にどうしても嘘をついていたことを謝りたくて…。
それで彼女に会いに行ったんですね。
何か月も迷った末決心して彼女の自宅を訪ねました。
やめて！やめ…！亭主に向かって何やその口のきき方は！
（楓）ごめんなさい。
やめて！
（野々宮の声）その時気がつきました。
自分自身を偽っていたのは僕だけじゃなかった。
あんなに明るかった楓さんが…。
楓さんも手紙の中で精一杯幸せな女を演じていたんです。
それであなたは大塚さんを…？ええ。
尾行して数日後…。
お願いします。
もうやめてあげてください。
あんな乱暴は…。
やかましいわ！あいつはな一生俺の言うこと聞いとったらええんや。
ちょっと待って！どけ！邪魔や！彼女迷惑してるじゃないですか！お前楓に色目使われたんかい？はっ？楓の奴今度会うたらぶっ殺したる！ああー！そして１５年が過ぎ事件は時効を迎えた。
京都への転勤をきっかけに彼女の勤める店に通うようになりました。
そんな時あいつと…結城と再会したんです。
結城さんは昔の友人に借金を重ねてたそうですがあなたのところにも金を借りに？初めは断りました。
だけどそれを逆恨みしたあいつは僕の留守中に部屋を物色し…。
（結城）何で俺の名前が？横井楓…？
（野々宮の声）あいつは気づいてしまったんです。
僕があの時の少女と名前を偽ったまま文通を続けていたことに。
あいつはそれをネタに僕に金をせびるようになりました。
それだけじゃない…。
１６年前楓の亭主が死んでるらしいな。
お前…。
そういえば昔同窓会で山岳部の連中が言ってたのを思い出したよ。
お前の様子がおかしいって。
そうだ。
明日な横井楓に会う約束をした。
何のために？いや別に。
まあいろいろ手紙のこととか聞いてみたくてな。
いやぁいい女だよな。
楓に会うのは楽しみだよ。
頼む！彼女には会うな！なっ？何言ってるんだ。
お前には関係ねえだろ。
うわー！痛いなお前。
何してんだ！
（野々宮）うわぁ…！ああー！
（頭を打ちつける音）これが真実です。
あいつを殺した本当の理由です。
もう１つだけ教えていただけませんか？あなた犯行後結城さんの部屋に１６年前の犯行の証拠を置いていきましたよね？ですがあの事件時効が成立しています。
そんな事件の犯人をどうして結城さんに見せる必要があったんですか？
（野々宮）あの料理屋のおかみさん楓さんにしょっちゅう見合い話を持ってくるんですよ。
なのに彼女は決してそれを受けようとしない。
自分に幸せは似合わない。
そう思ってるんですよ。
結城を殺した時考えたんです。
１６年前の殺人の罪をこいつに引き受けてもらえないかと。
それが僕から彼女への最後の手紙のつもりでした。
最後の手紙？伝えたかったんです。
あなたの文通相手は本気であなたを守ろうとしたと。
楓さんは守られるに値する女性なんだと。
そんな方法間違ってる。
ええ…。
自分で名乗り出るべきだった。
だが僕は臆病でした。
高校時代からずっと…ずっと臆病なんです。
そんな臆病な男が１人の女性を守ろうとするでしょうか？犯罪に手を染めてまで。
（野々宮）余計なことを…。
余計なことを…。
ごめんなさい。
私何も知らずに…。
今までずっと何も知らずに自分を不幸な人間だと…。
あなたには関係ない。
全部私が勝手にしたことです。
あなたには関係ない。
忘れてください。
この先二度と会うこともないでしょう。
会いに行きます！あなたに何度でも会いに行きます。
さようなら。
手紙を書きます！返事をくれますか？あの人は私なんかのために…。
どう…どうして…。
あなたいつかおっしゃいましたよね。
こんな私にも青春があったって。
彼まだ青春の中にいるんです。
（野々宮の声）自分の心の声を信じて歩いていけばいい。
今度来る時は手紙を持ってきてください。
必ずお渡しします。
揚げ出し豆腐メニューにあるかしら？揚げ出し豆腐？あっ…留置場のメニューにあるといいんだけど。
野々宮さんの好物なんです。
（楓の声）「野々宮静夫さま１６年ぶりのお手紙です」「こうして再びあなたに手紙を書いているのが何だか信じられない気持ちです」「書きたいことは山ほどあるのに胸がつかえて思うように言葉がつづれません」「そういえばあの日以来不思議なんです」「いつもと同じ風景がなぜか以前より輝いて見えるのです」「まるで明日が来るのが楽しみだった高校時代に戻ったようです」「何が変わったわけでもないのに自分の人生がとてもいとおしく感じられるのです」
（楓の声）「私は今もあのお店で元気に働いています」「あなたがまたいつもの席に座って揚げ出し豆腐を注文する日…いつか訪れるその日を私はここでずっと待っています」「お体を大切に。
またお手紙書きます。
横井楓」「自分の心の声を信じて歩いていけばいい」か…。
やっぱり男の人のほうが純粋なんですかね？どうしたの？突然。
いや黙って誰かを思い続けるなんて私には無理だなって。
あはは…。
洋子さ黙ってるとストレスがこうたまるタイプだもんね。
（桂子）そう！ストレスは女の敵！そして愛はストレートに伝えるが女の道！ウッス！というわけでおみやさーん！何？私？好きだ！
おしゃべりあるき目です
今日はちょっと変わった新聞社にお邪魔します
2016/01/06(水) 09:55〜10:53
ＡＢＣテレビ１
おみやさん６[再][字]
【第10話】夫から暴力を受けていた女性（国生さゆり）。彼女にとって高校時代に始まった顔も知らない文通相手は大切な存在だった。その文通相手が…！？
詳細情報
◇番組内容
京都鴨川東署資料課の窓際課長・鳥居勘三郎（渡瀬恒彦）が、部下の七尾（櫻井淳子）と迷宮入りした難事件に挑む！
◇出演者
渡瀬恒彦、櫻井淳子、七瀬なつみ、不破万作、林泰文、片桐竜次、小野寺丈、一條俊、相本久美子、菅井きんほか
【ゲスト】国生さゆり、大高洋夫、伊藤洋三郎ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字（字幕）
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