ハートネットTV Road to Rio「陸上 安西飛呂選手」 2016.01.06


「オン・ユア・マークス」。
かすかに見えるゴール。
「セット」。
誰よりも速く駆け抜けたい。
(スタートの合図)両目に障害のあるランナー…今年5月得意の800メートルで視覚に障害のある日本人選手として初めて1分台の扉をこじあけた。
飽くなき探究心でトレーニングに励む毎日。
しかしこの夏最大の試練に直面した。
支えてくれたのはライバル。
そして父親。
リオパラリンピックへ。
若きアスリートの夏に密着した。
6月。
(取材者)おはようございます。
高校3年生の…この日はある大会にエントリーしていた。
左目は見えない。
僅かな視力が残る右目でメンバーリストの名前を確認する。
定通制陸上大会東京予選。
視覚に障害のある選手は飛呂君しかいない。
不安はないのか…。
しかしその表情はスタートラインに立つと一変した。
「セット」。
(スタートの合図)
(飛呂)ダァ!わあ〜!見事優勝。
全国大会への切符を手に入れた。
飛呂君は自宅から3キロ離れた競技場で4時間のトレーニングに励んでいる。
練習パートナーは…学生時代陸上部に所属していた経験を持つ。
(直樹)自分で気付いたの?いつも自由な発想でトレーニングを考案する息子を直樹さんはサポートしている。
家に帰ると2人でフォームをチェック。
課題について話し合う。
飛呂君は視野が狭いためフォームの全体像を捉える事が難しい。
しかし直樹さんはそれが息子の強みだという。
能力の高さは壁に飾られた1枚の絵にかいま見る事ができる。
14歳の時半年かけて描いたこの作品。
列車は鉄道写真を参考に。
背景は見た事がある風景の記憶をいくつかつなぎ合わせた。
大好きな列車。
その疾走感に魅せられてきた。
生まれた時から両目に障害があった飛呂君。
だがその事を不自由だと感じる事はなかったという。
5歳の時父の転勤で福島へ。
このころから陸上大会に参加を始めた。
自慢の脚力。
小学校の持久走で飛呂君に勝てる同級生はいなかった。
しかし13歳の時予期せぬ出来事に襲われる。
その後母親の実家がある山梨県に引っ越した飛呂君。
住み慣れない土地になじめず一人さみしい時間が過ぎていった。
そんな姿を間近で見ていたのが直樹さんだった。
「息子に笑顔を取り戻したい」。
そこは真面目な飛呂君。
ジョギングでは飽き足らずすぐにトレーニングは本格的なものとなっていく。
眠っていた才能は一気に開花し…そして今年5月。
視覚障害者の世界大会で日本人では初めて800メートル1分台の記録を打ち立てた。
速くなるためなら努力を惜しむ事はない。
大学の論文を研究したりパラパラ漫画を参考にしたり常識にもとらわれない。
試行錯誤を重ねながら走りに磨きをかけてきた。
週に2日飛呂君は1人で東京にやって来る。
目指しているのは東京学芸大学のグラウンド。
ひゃ〜!その道のりは常に危険と隣り合わせだ。
ここまで来るのには理由がある。
それはこれまで知らなかった陸上の知識やトレーニング方法を学べるから。
更に年上の大学生と走れる事もレベルアップにつながっている。
そしてもう一つ。
お疲れ〜。
石井伸昂君の存在。
負けちゃった。
去年出会った2人は陸上の話で意気投合。
切磋琢磨する間柄となった。
グラウンドを離れればよき友人。
(飛呂)一旦…。
石井君はさりげなく声をかける。
何でも言い合える仲になった。
性格が出るんですよね。
ハハハ。
掛けがえのない友との出会いは飛呂君に刺激を与え続けている。
リオパラリンピック出場を目指す飛呂君。
しかし大きな問題があった。
それは得意の800メートルがリオでは行われないという事。
悩んだ末一時的に400メートルへの転向を決断。
これまで必要とされなかったクラウチングスタートへの対策を始めた。
(直樹)用意。
(スタートの合図)なんとか感覚をつかもうとダッシュを繰り返す。
しかし…。
体が思うように動かず加速ができない。
こんな感じで…。
原因の一つは飛び出し。
腰が引け体の軸が折れ曲がっている。
そのため上半身と下半身はバラバラ。
地面を蹴った反発は利用できず推進力が失われていた。
スピードが出ないいらだちをぶつける。
やるやる。
親子の間に溝が生まれていた。
そんなやさき飛呂君に不運が襲った。
(飛呂)ああ…。
練習中草むらに隠れていた段差に気付かず転倒。
右足首のじん帯を損傷する全治6週間の大けがを負ってしまったのだ。
それでも飛呂君は再び走る日に向けすぐにリハビリを開始。
そのひたむきな姿を見て直樹さんは17年前に抱いた気持ちを思い起こしていた。
愚痴一つこぼさない息子。
直樹さんは再び共に走る覚悟を決めた。
けがから2週間後。
直樹さんは体の軸作りを提案。
弱かった上半身を徹底的に鍛え抜くトレーニングを始めた。
この重さ4キログラムのボールを投げ合う練習も直樹さんのアイデア。
体幹を鍛え全身を連動させるのがねらいだ。
8月上旬。
ようやく走れるようになった飛呂君は直樹さんと一緒に東京学芸大学にやって来た。
ゆっくりとジョギング。
その時飛呂君の顔がゆがんだ。
再発だけは絶対に避けたい。
直樹さん持ち歩いていた氷を患部にあてがう。
本当は無理をさせたくなかったが息子の意思を尊重した。
復帰を急ぐその思いを知っていたからだ。
その思いとは定通制大会の東京予選で最後までデッドヒートを演じたライバル石井君との再戦。
健闘を誓い合った2人だが飛呂君は石井君の目の前で大けがを負ってしまった。
その事をきっかけに連絡をためらっていた2人。
時間を再び進めるために飛呂君は全国という大舞台で自分の走りを石井君に見せたかったのだ。
「セット」。
(スタートの合図)お疲れ!9月中旬。
飛呂君は直樹さんと共にある挑戦を始めていた。
(直樹)用意。
(スタートの合図)それはリオに向けた新たなフォームの獲得。
復帰後のフォームは明らかに変わっていた。
けがをする前は腰が引け体の軸が折れ曲がっていた。
しかし今は体に1本の軸が通っている。
結果地面からの反発を効率よく推進力に変える事ができている。
けがを機に取り組んださまざまなトレーニングによって飛呂君は進化を遂げていた。
ピンチをチャンスと捉え果敢にチャレンジし続ける息子。
その姿を直樹さんは誇らしく感じていた。
僕はあんまり何か…親に感謝するのが好きじゃないのでただ…9月下旬。
飛呂君はリオパラリンピックへの足掛かりとなる重要な大会に挑んだ。
400メートルの出場標準記録は51秒。
リオに行くためには突破が最低条件だ。
親友そして父親に支えられてここまでたどりついた。
レースになればたった一人自分との闘い。
「オン・ユア・マークス」。
「セット」。
(スタートの合図)標準記録は突破できなかった。
しかしリオそしてその先にあるゴールへ…。
戦いはまだ始まったばかりだ。
2016/01/06(水) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV Road to Rio「陸上 安西飛呂選手」[解][字][再]

パラリンピックを目指す高校生、視覚障害者陸上の安西飛呂選手。800mでは日本記録を持つ期待の星だ。飽くなき探究心で父とともにトレーニングに励む日々に密着。

詳細情報
番組内容
パラリンピックを目指す高校生、視覚障害者陸上の安西飛呂選手。生まれた時から両目に障害のある安西は800mの日本記録を持つ。そんな安西選手が世界と戦うために強化しているのがスピード。いかに効率よく地面を蹴る力を推進力に変えられるか、父と共にトレーニングに励んでいる。しかし、この夏、段差に足を取られ、じん帯を損傷。人生初の大きな試練をどう乗り越えるのか。親友との絆、父子の葛藤を経て進化する姿に密着。
出演者
【語り】風間俊介

ジャンル :
福祉 – 障害者
福祉 – 高齢者
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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日本語(解説)
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