(カメラのシャッター音)
(狩矢和美)ここで1枚撮ろうか。
そのへんに並んで!いくよ〜!
(シャッター音)じゃあ次はこっち!そこ並んで。
翔子!もっと旦那さまにくっついて!…いいよぉ!ダメダメ!俊之さん翔子のこと思いきり熱くハグしてください!いや…。
いいよ〜!ほら2人ともてれてないで!
(携帯電話の着信音)
(多田俊之)はい多田です。
…わかった。
すぐに戻る。
ごめん。
急に取材が入ったんだ。
昼飯つき合えなくなった。
(多田翔子)うんわかった。
大変ですね。
(多田)じゃあ翔子をよろしくお願いします。
俊之さん全日新聞京都支局に異動になって2年だっけ?
(翔子)うん。
単身赴任まだ長そう?そうねぇあと1〜2年くらいかな?翔子も京都に戻ってくればいいのに。
う〜ん東京に家建てちゃったし。
それに私の出版社のほうの仕事もやっと軌道に乗り始めたところだし。
そうか…それで単身赴任か。
なにそれ?『万葉集』…。
これはね新羅へ向かう夫が詠んだものなの。
目的地に着く前に家に帰るはずだった秋が来てしまった…っていう嘆きの歌。
なるほどねぇ。
万葉の時代は大変だったんだ。
でもよかったね翔子。
今は新幹線でビューンだもん。
東京−京都もあっという間。
でもね…新幹線でも縮められないものもある。
えっ…?時間は縮められても…心の距離はどうにもならない。
翔子…?
(携帯電話の着信音)はい狩矢です…。
(翔子)「もしもし…和美…」翔子…?どうしたの?こんな朝早くから。
(翔子)「光明寺…紅葉の…」
(電話が切れる)「光明寺」?「紅葉」…?翔子?もしもし何のこと?もしもし?「おかけになった電話は電波の届かない場所に…」翔子…。
(カメラのシャッター音)お父さん。
この人私の親友の旦那さんで…。
(狩矢警部)和美!なんでお前がここにいるんだ?
(橋口刑事)いやぁ紅葉の下で…これは心中ですね。
・橋口刑事!
(橋口)警部!身元がわかりました。
男は多田俊之。
全日新聞京都支局勤務。
女のほうは神戸在住の須本雪子。
やっぱり…翔子の旦那さん…。
どうして…?翔子っていう奥さんがいるのに。
なんで心中なんか!?お嬢さん…。
だから心中じゃないですか。
道ならぬ恋の行く末ですよ。
紅葉の下で美しく燃え尽きたかったんじゃないですか?紅葉で顔を隠してあったか…。
なぜだ…?翔子…。
和美。
なにか知ってるのか?今朝翔子が電話してきたの。
(翔子)〔もしもし…和美…〕〔翔子…?どうしたの?こんな朝早くから〕
(翔子)〔光明寺…紅葉の…〕それだけで切れてしまって…。
そのお嬢さんの友達の翔子という女怪しいですね。
橋口さん!やめてください!しかしなぜわざわざ死体を見つけてくれと言わんばかりの電話をしてきた?翔子…!「おかけになった電話は…」ダメだわ。
(須本芦夫)雪子…!どうして…?どうしてこんなことに…!
(泣き声)
(須本)雪子は京都の友達の家に遊びに行くと言って昨日の昼過ぎから出かけていきました。
その友人の家名前と連絡先教えてもらえませんか?あのそれが…わかりません。
行き先知らないんですか?ええ…携帯を持っていたので。
なにかあれば携帯にかければいいと思っていました。
じゃあ名前も住所もわからない?あ…すみません…。
(ため息)でもどうして…うちの雪子が心中だなんて…。
そんな見も知らぬ男と…。
いえ。
2人は見知らぬ仲ではありませんでした。
半年ほど前からつき合いがあったようです。
まさか…。
奥さんは週に1度京都のご親戚の和菓子屋さんに手伝いに通っておられましたね?…はい。
所持品を!相手の男性の所持品にホテルのルームキーがありました。
どうやら2人はいつもこのホテルを逢い引きの場所に使っていたようです。
嘘だ…。
ホテルの従業員の証言もあります。
旦那は神戸の印刷会社の社長。
亡くなった雪子は社長夫人だったわけですね。
指…見たか?
(橋口)指?節くれだった指…爪の間にはインクが染み着いていた。
社長とはいえ自ら汗して働く。
夫はそんな誠実な人間なのに妻はよその男に熱を上げていた。
そのあげくに…殺された?それより警部。
多田俊之の妻翔子ですけど…。
連絡とれたか?いえ。
それがまだです。
まだとれない?「おかけになった電話は電波の届かない場所にあるか電源が入っていないためかかりません」翔子いったいどこにいるの?…お願い出てよ!お父さん…!おう。
なにか新しいことわかった?ああ。
須本雪子と多田俊之の死亡推定時刻が出た。
死体が発見された前日の夕方6時前後だ。
死因は毒物中毒。
じゃあ2人はここで毒物を飲んだのね。
夕方…美しい紅葉を死に場所に求めて服毒自殺。
心中した…。
いや違う。
今ここの住職に聞いたんだが朝5時半に境内を掃除したときは死体はなかったと証言してる。
死体がなかったの?うん。
あんなふうに紅葉が盛り上がっていたらすぐに変だと気づいたはずだって。
私が…朝ここへ着いたのは7時半。
じゃあ…5時半から7時半の間に死体がここに運ばれた?まぁそういうことだ。
お父さんまさか…?うん…。
2人は殺されて運ばれてきたんだ。
これは偽装心中だ。
偽装心中…?殺人だったんですか…。
奥さんの顔も相手の男性の顔も紅葉で隠されていました。
これは顔見知りの犯行と思われます。
そんな…。
いったい誰が…警部さん誰が雪子を…?須本さん。
こんなときに申し訳ありませんが念のため…いえ参考までにお訊きしたいんですが…。
なんでしょう?奥さんの死体が発見された前日の夕方6時ごろどちらにいらっしゃいましたか?えっ?私ですか…?ええ。
参考までにお聞かせ願えたら…。
あぁ…夕方の6時ごろ…?あの日は…雪子がいないので食事も兼ねて夕方からふらりと街へ出ました。
どなたかご一緒でした?いえ…1人です。
そうですか。
お1人ですか…。
あそうだ…。
あぁ…写真がご趣味ですか?たった一つの趣味なんです。
主に風景写真なんですが…たまにこうやって自分も入れて撮ります。
これはセルフタイマーで撮りました。
ほぉ…。
ちょうど夕方の6時ごろです。
ほら…ここに時計が写ってる。
なんだこれは?
(橋口)てるてる坊主なんです。
あぁ…てるてる坊主ね。
その日は幼稚園の遠足の日でその日だけ園児たちが作ったてるてる坊主をそうやって飾ってたそうです。
11月5日その写真は犯行当日に撮られたものに間違いないです。
須本のアリバイは証明されてます。
2人が殺されたころには須本は神戸にいたってことか。
2人の死体が運ばれたと思われる朝5時半から7時半の間須本は自宅で電話を受けています。
知人が須本の家に電話をかけ話をしたことを証言してますし須本の家の通話記録も残っています。
つまりその時間神戸にいた須本が2人の死体を京都で遺棄することは不可能ということで…須本はシロですね。
警部。
多田俊之の妻・翔子は依然として消息不明。
警察への連絡もない。
多田の住まいにも東京の自宅にも帰った形跡はない。
夫の不倫を知った翔子が2人を毒殺し心中に見せかけるため運び行方をくらませたのではと思われる。
多田翔子を重要参考人として手配する。
(刑事たち)はいっ!
(アナウンサー)「発見時刻の前の午前5時半ごろには死体がなかったとの住職の証言が得られたため“偽装心中殺人事件”として捜査を進めています」「一方殺害された多田俊之さんの妻・翔子さんが事件後行方不明となっており警察では翔子さんを重要参考人として手配しました。
では引き続き天気予報です」翔子…。
あのとき…もっと翔子と話せばよかった。
和美の古文の追試のとき家に泊まりにきて特訓をしてくれたあの翔子ちゃんでしょ?そう。
翔子がいなかったら私ヤバかったもん。
あ…引っ越しのときの…。
俊之さんが京都に引っ越してきたときの写真。
んっ…?この男…どっかで…?あっ!あのときの…!
(山野美野里)年末特集号の企画やで!冬といえばクリスマスにお正月!女にとって一番の悩みはっ!?
(細川)さあ…?
(美野里)ダイエットよっ!おいしいものは食べたいでも男もゲットしたい!女にとってスリムなボディは戦闘服なのよ!
(細川)はぁ?狩矢…この男クサイな。
引っ越し手伝ってるから俊之さんの同僚じゃないかと思うんですけど。
同僚?じゃあますます怪しいわ。
同僚の男が奥さんのこと陰から覗いてるやなんて…。
そうですよねえ?ひょっとするとこの男と翔子さんが不倫!やめてください!翔子はそんな人じゃないし第一それじゃ翔子と俊之さんはダブル不倫じゃないですか。
狩矢が考えてるほど男と女は単純やないえ。
けど翔子さんが行方不明ではなぁ…。
そやっ!雪子さんの旦那に訊いたらええ。
もしかするとこの男のことわかるかもしれん。
じゃあ私神戸まで…?おみやげは中華街の豚マンとゴマ饅頭!神戸ケーキもおいしいしな…それにプリンでええわ!社長!スリムなボディは女の戦闘服じゃないんですか?豊満なボディもまた戦闘服…。
はよ行きよしっ!いってきます!
(美野里)チャッチャと行く!はいいってらっしゃ〜い!せやっ!ガーリックパンも買うてきてっ!!
(須本)こんな男は知らないな。
そうですか…。
だいたいその女のこともよく知らないんですよ。
警察はその女のことを犯人とにらんでるみたいだけど。
私も疑われてね。
それで…この写真を見せました。
異人館の街で撮ってたまたま時計が写ってたんでアリバイになったんですよ。
6時10分…。
どうぞ。
すみません。
お構いなく。
ようすもやん!福やんいいとこに来た!
(福本)なんやお客さんかいな?この人死んだ多田さんの奥さんのお友達。
町内会の知り合いです。
この福やんが証言してくれたんですよ。
あの男とうちの奴が京都のお寺で棄てられていた時間帯私がここにいたということを…。
それで一発でした。
ここにいる私が京都で死体を棄てることなんかできないから。
(福本)すもやんはほんまにここにおりましたよ。
わしがかけた電話に出たんやから。
それにしても…雪ちゃんはかわいそうや…。
すもやんはもっとかわいそうや。
この会社はお父さんから受け継いだ会社ですわ。
お父さんが生きてたときはボロクソに言われてほんまにずーっと辛抱してましたわ。
すもやんはほんまにえらい奴ですわ。
ところであんたまだ何か…?あ…いえ…すみませんでした。
あんたの友達こそ犯人と違いまんのか?すもやんのことなもう放っといたって。
な頼むわ!用がなかったらもう帰って。
さぁ早う!
(福本)〔あんたの友達こそ犯人と違いまんのか?〕部長カンカンでしたよ!
(男)いけね!
(和美)あのタクシーを追って!俊之さんのマンション…!・
(エレベーターの到着音)あ…。
(ジャズの演奏)
(夏目利彦)もう一杯同じの。
こんばんはぁ。
ここよろしおすか?あぁどうぞ。
うちも同じの。
かしこまりました。
はいどうぞ。
おおきに。
いやぁすんまへん!堪忍どすえ!ほんまに堪忍どすえ。
あのお詫びのしるしに一杯おごらせてください。
マスター。
いいって。
あきまへん。
うちの気持ちが済ましまへん。
ほな乾杯しまひょ。
そお?じゃあ…。
かんぱ〜い!乾杯…。
お兄さんのお仕事当ててみまひょか?えっ?わかるの?予備校の先生?ハハッ…ブーッ!女子校の先生。
ブブーッ!…新聞記者。
ウソッ…なんで?いやぁ!当たりました?うちの友達の旦那さんも新聞記者さんやから適当に言うてみたんやけど。
なんだそうか。
全日新聞の文化部の記者さんで…知ってはります?心中事件の人。
…多田?ええ多田さん。
うちの友達は多田翔子いう子。
君翔子さんの友達なの?ええ。
そうどす。
お兄さんは…多田さんのお知り合いどすか?ああ…僕は…。
同じ新聞社の人どすか!いやぁ偶然やわぁ!君…本当に舞子さん?えっ?舞子さんて二十歳までなんだよね。
君そんなに若く見えないけどな。
…いやぁお兄さんいけずやわ〜!もう!出よう。
出るってどこへ?いいから!マスターつけといて!あの…うちもうそろそろ帰らんと!いやまだ帰さない。
訊きたいことがあるからね。
訊きたいこと?君翔子さんからなにか聞いてる?「聞いてる」ってあの…うちは…。
今度の事件のこと!なにか聞いてるのかって言ってるんだ。
いいえなにも…。
あの…うち…。
…お父さん!?和美っ!?なんだその格好は?なんだその顔?真っ白けじゃないか!いったいどうしたんだ?お父さんこそなによ?お母さんのことレストランにも連れていってあげないくせにあんな高級なお店で飲んじゃって!バカッ!お父さんは…聞き込み捜査なんだ。
そんな真っ赤な顔してどういう聞き込み捜査よ!いやお嬢さん!狩矢警部と私はホンットに捜査なんです!…夏目さん?夏目さん…?もうお父さんのバカッ!和美…誰なんだ?さっきの男は何者だ?えっ?怪しいと思って探ってたの!多田さんの同僚で夏目…。
「夏目利彦」…。
(携帯電話の着信音)翔子だわ…!もしもし翔子?もしもし!もしもし…翔子…返事して!
(アナウンス)「毎度ライフをご利用いただきましてありがとうございます。
本日9時をもちまして閉店です」「またのお越しをお待ちしております」
(電話が切れる)切れたわ…。
お父さんライフ。
チェーンスーパーのライフよ!閉店のアナウンスだったと思う。
確かに聞こえたわ。
多田翔子だな?《確かにライフの閉店のアナウンスが聞こえた》《きっとこのあたりの…》運転手さん!ライフってほかになかったっけ?そうですね…たしか中京のほうに。
じゃあそこ行って!翔子っ!?翔子!翔子!翔子っ!!・
(パトカーのサイレン)
(パトカーのサイレン)和美っ!お父さん!翔子が…!
(翔子の声)「すべて私が悪いのです」「もみじの寺に死んだ二人を運びました」「とうきょうに戻ろうかとも思いましたが疲れました」「あとのことはお任せします。
しんでお詫びいたします」「お許しください。
多田翔子」お父さん…!翔子…。
遺書の文字は多田翔子容疑者本人の筆跡と確認されました。
なお使用された用紙は前日の折り込み広告の裏でありこの遺書が以前に書いたものでないことも判明。
さらにビル屋上に残された靴から多田翔子本人の指紋を検出。
では多田翔子は自殺ということですね?犯行後逃亡していたもののそれに疲れ果て絶望し自殺したものと思われます。
多田翔子を容疑者と断定する根拠は何ですか?翔子の夫・俊之と須本雪子が不倫関係にあったのは事実です。
おそらく嫉妬にかられてこの遺書に書いてあるとおり2人を殺害したと考えられます。
ひどすぎる!どうして翔子が殺人犯で自殺なのよ!?遺書にそうあったんだ。
翔子は人を殺すような人間なんかじゃないわ!私は…信じない!まぁ確かに…ちょっとおかしな点がいくつかある。
おかしな点?ねえお父さんなに?おかしな点って。
ああ…。
ねえお父さん!和美…。
靴を脱いでそこにきちんと揃えてごらん。
…ここで?そうだ。
ストップ!!ほらやっぱりそうだろ?靴を揃えるときは普通そうやって片手で両方の靴の真ん中を持つ。
ところが多田翔子は違っていた。
右手の指紋が右の靴から左手の指紋が左の靴から検出されてるんだ。
右手で右の靴左手で左の靴…?そうだわ…確かにこんなふうに揃えたりしない。
そのことがどうも引っかかってな…。
だが今の段階では遺書のとおり多田翔子が犯人で自殺を遂げたという見解しかできないんだ。
(美野里)元気だし狩矢。
さぁこの特製ドリンク飲んで。
翔子が亡くなったのは9時前後だったって…。
私に電話してきてすぐ飛び降りたんです。
そうなん…。
私があのとき気づいてたら…。
翔子を死なせずにすんだのかもしれない。
助けることができたのかもしれない。
そんなに自分を責めんときよし。
けど…私さえ気づいてたら…!違う!翔子さんが狩矢に電話してきたんはきっと最後にあんたの声が聞きたかったからや。
翔子…。
(美野里)自分を責めたらあかん。
翔子さんかて喜ばんえ。
さっこれ飲んで元気だし!…はい。
ウエッ!何ですかこれ!?黒ゴマに丹波の黒豆で作った黄粉沖縄の黒酢ブルーベリーにもずくにはちみつそれにプロポリスが1滴!体にええもんぜ〜んぶ入れたんえ!さあ飲んで!飲んで!グーッと!グーッと…!まずい…!慣れたらええの!怖がらないで。
何もしないよ!だってあなたあのとき翔子のこと陰から…!あれは翔子さんのことが心配だったから見張ってたんだ。
翔子のことを…心配してたの?多田の不倫を知ってしまった彼女がなにか無茶なことをしやしないかって…。
あなた…?ごゆっくりどうぞ。
(夏目)多田とは同期でね。
1年前あいつが京都に異動してきてからつき合うようになって。
引っ越しのときのハガキに写ってましたよね?ああ…あれね。
多田さんが不倫してること…知ってたんですか?…ああ。
あいつ…ずいぶん悩んでたみたいだったなぁ。
(携帯電話の着信音)〔もしもし…うん〕〔今同僚と一緒なんだ。
…え?今から?〕〔それは無理だよ。
…泣くなよ!〕
(多田)〔とにかくまたこっちから電話する〕〔おかわり!〕〔翔子さん元気か?〕
(多田)〔ん?ああ元気だよ〕〔単身赴任なんかやめていっそこっちに呼べば?〕〔いや…家を買ったからね。
それに彼女も仕事がある〕〔厳しいねぇ…〕〔まあね〕〔でも東京に帰るっていう夢があるからな〕〔帰って必ず政治部の記者になる〕〔それに…今度帰ったら子どもをつくるつもりだ〕〔ごちそうさま〕俊之さんは翔子との将来をちゃんと考えてたのね。
翔子のこと愛してたんだわ…。
そのようだね…。
じゃあ…雪子さんのことは?あいつ…女遊びするような奴じゃなかったからね。
まじめさと優しさがアダになった…。
だから悩んでたんじゃないかな…?それって…雪子さんのことも愛してたってこと?…かもしれない。
どうして…?なんで…?男と女は理屈じゃないからね。
(夏目)バカな奴がいてね…。
翔子さんに多田の不倫のことを告げ口した男がいたんだ。
翔子に…?たまたまそれを聞いてしまってね。
翔子さんもまた多田と同じでまじめだし一途なとこあるし彼女がどうするか心配になって…。
その心配が現実になってしまった…。
でもまさか2人を殺すなんて…。
違うわ!翔子じゃない!だってさっきあなただって言ったじゃない!俊之さんは不倫はしてたけど翔子との将来考えてたって。
ああ…。
翔子はそんなにバカじゃない…。
じゃあなぜ翔子さんは自殺を?偽装よ…。
あの自殺は偽装に違いないわ。
偽装か…。
ねえその翔子に告げ口した男のこと教えてよ。
どんな人?同じ会社の人?いや。
まだそれは教えられない。
どうしてっ?記者はね感覚だけで物事の白黒は決められないんだ。
まず翔子さんの自殺の現場にまつわることをしっかりと調べ直してからだ。
わかったわっ!こっちが繁華街の歩き方でこれお薦めのレストランとバー。
これも全部確かめたんえ。
全部お薦め!
(美野里)ほなそれあとで電話しますし。
おかしい…。
なんかわかった?翔子のこの遺書のことなんですけど…。
なんだかこれ…翔子が自分で書いたようには思えないわ。
なんで?なんかこの文章翔子と似合わない。
…わかった。
漢字の使い方だわ。
「もみじ」「とうきょう」「あと」「しんで」が全部ひらがなになってる。
最近の子漢字知らへんさかい。
ううん社長。
翔子は大学国文科出身なんです。
漢字にはうるさかったんです。
評論家は「自殺前の心の動揺が表れてる」とか書いてるけどちょっと見てください。
「お任せ」とか「お詫び」はわざわざ漢字にしてる。
ほんまや…。
翔子がこんないいかげんなひらがなと漢字の使い分けをするなんて変だわ…。
じゃあ翔子が最後に私にかけてきた携帯電話は現場にはなかったのね?うん。
おかしいわ…。
現場の周辺もくまなく捜したが部品のかけらすら見つからなかった。
ほかになにか?広告の裏に書いた遺書っていうのが納得いかない。
どうして?遺書なのよ?どうして広告の裏なんかに書くのよ?んっ?考えられないわ…。
翔子は筆まめな人だったしいつもハガキや便せん…切手にまで気を使う人だったの。
そんな人が…最後の手紙をどうして広告の裏なんかに書く?絶対おかしいわ。
なるほど。
漢字とひらがなの使い方だって…。
とにかく何もかもおかしいのよ!実はお父さんも納得いかないことがあるんだ。
なに?あの薄っぺらな大きな首巻きだ。
薄っぺらな大きな首巻き?うん…まるで飛び降りるときにその首巻きが外れないようにとしっかりと固く結んであった。
これから死のうとする人間がなぜそんなことする必要がある?じゃあ翔子はやっぱり偽装自殺?だが今の段階ではそれを証明できるだけの証拠がない。
それに警察がいったん自殺という見解を発表したらそれを覆すのは容易なことじゃないんだ。
ねえお父さん。
その薄っぺらな大きな首巻きってこれのことでしょ?なんだお前も持ってるのか!パシュミナ!パ…パシュ…?そんなオヤジばっかりだから真犯人を見過ごしてるのよ!ごちそうさまでした!いやごちそう…?和美っ!!…もったいないな!
(夏目)藤原忠平の歌だよ。
今も昔も小倉山の紅葉は美しかったってことだね。
翔子もね…『万葉集』とかすごく詳しかったの。
翔子はやっぱり殺されたんだわ…。
真犯人がいるんですきっと。
夏目さん。
翔子に俊之さんの不倫を告げ口した人に会わせて。
…うん。
(阿部次郎)社長わざわざありがとうございました。
じゃあよろしくね。
(阿部)はい失礼します。
夏目…。
(夏目)訊きたいことがあるんだ。
お宅…誰?亡くなった多田翔子さんの友人です。
悪いけど…俺関係ないから。
関係ないとは言わせないぞ!俺は聞いたんだからな!お前は電話で翔子さんに多田の不倫を告げ口してた。
(阿部)聞いてたのかよ?
(夏目)お前が彼女に知らせたんだ。
そうだよ!俺が知らせた。
多田の奴…あいつが転勤してきたおかげで俺は企画から外されたんだ。
どうでもいい広告取りの仕事に回されて。
それなのになんだ!多田はいい気なもんだ!取材で知り合った人妻と…。
雪子さんと多田さんがつき合っているところを見たの?おお。
見たよ。
むかついたね!東京から女房が来たときには女房にいい顔してさ。
どっちもうまくやってやがる。
それでばらしてやったんだよ。
そのせいで翔子を苦しめたわ。
そして…翔子と多田さんの将来をぶち壊しにした!冗談じゃない!ぶち壊されたのはこっちなんだ!多田のおかげで俺は…。
(夏目)ちょっともう少しペースを落とさない?腹が立つと早足になるの!腹を立ててるの?当たり前でしょ!親友を犯人にさせられて殺人を自殺と言われて警察はバカなオヤジばっかりで。
おまけに一日の終わりにバカな男の嫉妬の愚痴で締めくくり…。
もう最低…!そうか…。
しかしそれはまずい。
怒ると身体に悪いホルモンが分泌する。
免疫だって低下するし美容にだって良くない。
じゃあどうすればいいの!?ドーパミンという身体にいいホルモンを放出しよう。
ドーパミン?快感を得れば出るホルモンなんだ。
今日の一日の締めくくりをこう変えよう。
・
(狩矢警部)和美!お父さん!!何やってるんだこんなところで!?もうやだっ。
おいっ…!〔今日の一日の締めくくりをこう変えよう〕
(ノックする音)・
(狩矢)和美!!開けなさい!!もう…うるさい!!うるさいじゃないだろ!話があるんだ。
さあ開けなさい!!
(ノックする音)和美!!まったく…。
近ごろの若い奴はいったい何を考えてんだ!?あんな公衆の面前で不謹慎な。
あらお忘れですか?何を?あなたもたしか…。
あれは鴨川だったかしら…。
ん?祇園祭りの祭りばやしが聞こえてたから…夏?あれってたしかまだおつき合い始めたばっかりで…。
もう寝るぞ!あっ!たしか円山公園のしだれ桜の下でも…。
バカ!まったく!
(笑い)夏目さん…。
《アリバイを崩してみせるわ…》あかんあかん。
こんなありふれた企画。
なんか画期的なダイエットの情報を集めな…例えば食べれば食べるほどやせるチョコレートとか。
ヒーリングスポットならずダイエットスポットの特集とか。
拝めば必ずやせるご利益のあるお寺の初詣特集とか。
(細川)はあ…。
社長!神戸に行ってきます!狩矢!今日こそ絶対にお土産に中華街の豚まん頼むで。
行ってきます。
行ってらっしゃ〜い。
社長もダイエット!!何言うてんの!豚肉にはなお肌にええものがいっぱい入ってんねんで。
《まずは…そう電話のアリバイだわ》《あの朝須本と電話をしていたと証言したあの男…》ありがとうございました。
あった…!ここだわ!明石屋名物ぽこぽこ焼きぽこぽこ…。
どうや!はいお待ちどうさま!
(子どもたち)ありがとう。
ごめんラーメンチャーシューメン。
おかわりください!なんぼ食べてもねお話はしませんから。
話してくれるまで食べますから。
はいどうぞ。
もう一皿!え〜まだ食べるの?はいどうぞ。
ほんまにかなわんな…。
(福本)気をつけてくださいな。
早く…。
(福本)そやからこの前話したとおりですわ。
(福本)すもやんは確かにあの朝家にいてました。
印刷機の音もしてました。
10分ほど話しましたかね。
うちの商店街の旅行の話。
(印刷機の音)あんなにうるさい中でよく10分も話せましたね。
はい。
ああ…そうや…。
すもやんがかけ直してくれたんですわ。
私が7時に電話したらすもやんが機械がうるさい言うてね。
そうや思い出した!すもやんがかけ直してくれたんですわ。
それにしても…商店街の旅行の話って朝7時に早くないですか?まあ早い言うたら早いですけど朝7時やったら家におる言うてね。
その時間にかけてくれ言うたんですわ。
ということは…電話は須本さんのほうからかけてくれって言ってたんですね?ええそうですわ。
あの…私店のほうありますさかいもうこのへんでよろしいやろ?はいありがとうございました。
どうも。
(印刷機の音)それこぼすなよ。
はい。
やるやる。
社長いいですから。
・
(電話の音)
(夏目)「はい夏目です」あっ夏目さん?今神戸に来てるんだけど…。
(夏目)「和美ちゃんだったらよく聞いて。
神戸に行ったって聞いたけど危ないから勝手に深入りしないように」なーんだ。
留守電かあ…。
留守電のトリック!!
(テープに録音された印刷機の音)〔おう。
福やんか。
今機械がうるさいからかけ直すよ。
ちょっと待っててくれ〕《応答メッセージのバックには機械の音が吹き込んであった》・
(電話の音)
(福本)〔もしもしすもやん?〕
(須本)〔おう福やんか。
今機械がうるさいからかけ直すよ〕
(須本)〔ちょっと待っててくれ〕
(福本)〔うんわかった〕《朝7時に福本さんに答えたのは留守電の須本だったんだわ》《福本の家から須本の家への通話記録はそれで残った》《そのころ須本は京都にいた》《2人の死体をお寺に運ぶために》〔ああもしもし〕
(福本)〔ああわしや〕〔おうふくやんか?〕
(福本)〔よう聞こえるわ〕〔例の商店街の旅行やけど城崎温泉あたりでどうかな?〕《うまくタイミングをはかって福本に電話をかけた》《そして10分旅行会の話をした》《あなたの電話のアリバイは…崩れたわよ!》
(和美)ただいま〜。
あっお帰りなさい。
お父さんまだ帰ってないわよね?ええ遅くなるって言ってたけど。
あ〜良かった。
和美…そんなにお父さんのこと嫌わないであげて。
だって…いつもよけいなところに現れるしいちいちうるさいし…もう最悪。
和美のことを思う親心よ。
ううん違う。
あれはオヤジ心。
(笑い)何これ?この秋からカルチャーセンターで和歌の勉強を始めたのよ。
へえ〜。
おもしろいのよそれが。
ほら。
例えばこれ。
和歌は五・七・五・七・七でしょ。
その最初の文字をつないで暗号にしたのもあるのよ。
ほらこれ。
最初の文字をつないで暗号に…。
すもとあしお…。
須本芦夫…!いただきま〜す!うんおいしいわ。
ダイイングメッセージやったとはな。
翔子は国文科出身なんです。
和歌に暗号をこめる方法のことを知っていたんだと思います。
だからわざとひらがなにしたんだと思います。
なるほどなあ…。
熱いっ!こんな熱いお茶飲めるか!クソ〜!きっと俊之さんたちを殺したときの幼稚園の写真のアリバイにも裏があるはずだわ。
私行ってきます!狩矢ちょっとお待ち!!これ持っていき。
何ですかそれ?うちがいつも携帯してる痴漢撃退用スプレー。
社長。
撃退の効果は?バッチリ!!…って言いたいねんけど使ったことないしわからへん。
そりゃそうでしょ。
なに〜!?効果あるわ。
持っていき。
はい。
じゃ行ってきます。
気をつけて〜!すみません。
この辺りに幼稚園ってありますか?この上を上がって右にあります。
ありがとうございます。
ここだわ…。
なんか変…。
色が違う…。
写真の花は白かったのに…。
すみません。
(保母)はい?あそこの花なんですけど最近植え替えられました?えっ?ああ…あの花ですか?知人が撮った写真だと白かったんですけど。
それはきっと朝撮った写真じゃないですか?朝…?
(保母)あれはね酔芙蓉といって朝は白く咲いてるんですが昼過ぎになるとまるでお酒に酔ったように花芯がピンクに色づいて夕方には赤くなるんです。
酔芙蓉…。
色が変わる花なんです。
色が…変わる?花の色が変わるんですか?
(2人)ええ。
どうもありがとうございました。
《須本は夕方にここで写した写真だと言っていた》《でも実際は朝の6時に写したものだったんだわ》アリバイが…崩れた。
(携帯電話の着信音)もしもし。
(夏目)「和美ちゃん?」「ああつながった…」夏目さん?今どこにいるの?「今神戸の異人館がある街」英幸稚園です。
わかったのよ!須本のアリバイのトリックが!トリック?写真に写った…。
ファクスを送ってよこしたのはお前か?もしもし?和美ちゃんどうしたんだ?もしもし?神戸の異人館の街英幸幼稚園。
もしもし。
狩矢警部お願いします。
・
(電話の音)はい狩矢です。
君は…?なに…和美が神戸に…?どうやら何か事件に巻き込まれているんじゃないかと思います。
僕も今すぐ神戸に向かいます。
わかった。
連絡ありがとう。
緊急事態発生。
至急兵庫県警の協力要請を求む。
(パトカーのサイレン)あなたが2人を殺したのね?そしてその罪をなすりつけて翔子まで…。
いいから黙って歩け!翔子が何したっていうのよ?あの女が言ってきたんだ。
あの女?翔子のこと?うちの奴があの女の亭主を誘惑したってな。
ああその女性なら確かにここに来ました。
あの花のことを訊かれてそのあと男の方と車で一緒に…。
どっちに行きましたかね?六甲山のほうへ走っていきましたけど。
六甲山…。
どうも。
和美ちゃん…無事でいてくれよ。
俺は…何も気づかなかった…。
何も知らなかった…。
あの女が1年前電話をかけてくるまで…。
・
(電話の音)〔はい〕〔私が須本ですが〕
(須本)昼間だというのに酒を飲んでいる様子だった。
〔お宅の泥棒ネコちゃんと首輪つけておいてもらわなきゃ〕〔あの…どちらにおかけですか?こちらは須本ですが〕〔須本雪子ってあなたの奥さんでしょう?〕〔ええ。
雪子は確かに私の…あの…雪子が何か?〕〔だから…人の亭主にちょっかい出すような泥棒ネコにはちゃんと飼い主が首輪をつけておけって言ってんのよ!〕〔あの…お話がよくわからないんですが…〕〔あんたの奥さんがうちの夫と不倫してるって言ってんの!〕〔これでわかる?〕〔もしもし…?〕うちの雪子に限って自分から不倫なんてするはずがない。
きっとその男にうまくだまされてそうなったに違いない。
ここは雪子と話し合って…そう思って…。
〔話がある。
座ってくれ〕〔お前が多田俊之と不倫をしていることはわかってるんだ〕〔間違いに気づいて謝ってくれれば私は許すつもりだ〕
(雪子)〔間違いに気づいて謝れば許すですって?〕〔そうだ〕〔間違いなんかじゃないわ〕
(雪子)〔週1回の京都の親戚の和菓子屋の手伝いが私の唯一の息抜き。
そんなときに俊之さんに出会ったのよ〕
(雪子)〔私は俊之さんを愛してる。
身も心も燃えてるの〕〔もううんざりなのよ!〕〔雪子…〕〔結婚するころにはわからなかった〕〔いつもブランド物を着てスポーツカー乗り回してた神戸の社長の御曹司?バカみたい…〕〔たまのこしはバブルと共にはじけたわ〕〔初代のやり手のお父さんが死んであんたが継いだらこのありさま〕〔しょせんは二代目のボンボン。
甘いのよ〕〔俊之さんは違うわ〕〔あの人は誰の力でもない自分の力で生きてる人よ〕〔ただの新聞記者なんだろ?〕
(雪子)〔いいえ〕〔彼は東京に戻ったら政治部の記者になるの〕〔そして日本の政治を報道するのよ〕〔彼には大きな野心があるわ。
あんたとは大違い!〕
(須本)何が野心だ…。
日本の政治だか何だか知らないが人の嫁をたらしこんでおいて…!
(車の音)もしもし夏目です。
ありました。
須本の車です。
了解。
こちらもそっちに向かう。
2人を殺して…そのうえ翔子まで…。
どうして翔子を殺したの?2人を殺した罪をあの女にかぶせなきゃならなかったんだ。
呼び出したらあの女とんできた。
会ってすぐ薬で眠らせた。
(須本)ところが次の朝多田翔子は目を覚まして携帯電話をかけてた。
〔光明寺…紅葉の…あっ!〕〔お前は自殺したことにしてほとぼりがさめたころ解放してやる。
だから…ここに遺書を書くんだ〕
(店内閉店の音楽)
(アナウンス)「毎度ライフをご利用いただきましてありがとうございます。
本日9時をもちまして閉店です」「またのおこしをお待ちしております」翔子はあなたに殺されることを知っていた。
だからダイイングメッセージを残したのよ。
遺書の中にあなたの名前が残された。
あなたが犯人だと知らせたのよ!うるさい!!アッ!!わーっ!あっ!!ああ!チクショウ!助けて!!アッ!
(須本)どけっ!!
(須本)あっ!
(須本)あっ!
(パトカーのサイレン)あなた…!お父さん…。
和美…大丈夫か?お願いします!あっ!!
(警察)さあ立て!夏目さん…。
偽装心中真犯人逮捕の瞬間スクープゲット!!あ〜やられた。
雪子は多田との不倫がばれてからも私へのあてつけか相変わらず京都通いを続けました。
(須本)親戚の和菓子屋を手伝うとしらじらしい嘘をついて多田と会っていたんです。
私は気が気ではなく…あの日気がついたら雪子のあとをつけていました。
私は親父から引き継いだ会社をなんとかつぶさないようにこの不景気も必死の思いでやってきた。
でも資金繰りは最悪の事態になっていました。
〔よろしくお願いします〕〔これ以上の融資は無理です〕〔いや…そこをなんとか…〕ついにはヤミ金融に手を出してしまいました。
やけっぱちな気持ちだった…。
〔これでしばらくはなんとかなる…〕だが当然のことながらその催促の日がきてなんとか質屋に出せるものはないかと探していたらあの着物を見つけたんです。
あのときの雪子のことを思い出して…。
美しい着物を着て満足そうに笑ってた。
それに比べて外からのぞいていた私は毎日あくせく金策に走り回っている。
社長なんて名前だけで…みじめでみっともない男でした。
雪子には5千万円の保険がかけてあった。
雪子を殺して保険金をもらう。
その金で会社を守る。
(雪子)〔ホント!?〕〔へえ〜〕〔うんわかったわ。
じゃあ金曜日に光明寺でね〕〔京都に行ってくるわ。
店の手伝い頼まれちゃって〕手伝いに行くなんて嘘だというのはわかっていた。
多田に会うんだ。
光明寺で。
〔雪子…〕〔なんでこんなところにいるのよ〕〔離婚について…話がしたい〕
(雪子)〔早くしてほしいんだけど〕〔お前の気持ちはわかった。
だから…離婚しよう〕〔本来なら慰謝料をもらうべきところだ〕〔でも…そんなものはいらない!!〕〔保険金をもらうから慰謝料なんかいらないんだよ〕多田は…どうやって殺した?はい…。
多田が来るのを待ちぶせして…。
〔私は…雪子と離婚します〕〔あなたも奥さんと離婚して雪子と一緒になってやってください〕〔待ってください〕〔雪子を…頼みます〕〔私は離婚はしません〕〔うわっ!〕〔雪子にお前の本音を聞かせることができなくて残念だよ〕私は2人を殺して一晩待ちました。
そして翌朝死体を寺に捨てにいったんです。
雪子は美しかった…。
紅葉の着物を着て紅葉に覆われた雪子は…今までで一番美しかったかもしれません。
そのうえなぜ多田翔子まで殺した?雪子が保険に入って一年経っていなかったので…。
その場合心中だと保険がおりないんです。
それで多田翔子を犯人に仕立てあげた…。
共犯の小田房枝のことだが…。
違います!小田さんは共犯じゃありません。
私がひとりでやりました。
彼女は事件に関係ありません。
すべて…私がしたことです。
私が…バカでした…。
私は…金のために雪子を…。
雪子を殺してしまった…!初めあんたに会ったとき…スーツを着ていながら手を見れば苦労の忍ばれる手をしていた。
二代目とはいえまじめにがんばってきた人物だと思った。
だがあんたは…その汗とインクの染みた手に3人もの人間の血まで染みこませてしまった。
それはもうどんなに洗っても一生とれない。
一度消えた3人の命も…二度と元には戻らない。
(嗚咽)須本芦夫はあんたが事件には関係ないと供述している。
(小田房枝)社長が…そう言ったんですか?すべて自分でやったと供述した。
もしかして須本と内縁関係があったんじゃ?いいえ。
そのような関係は一切ございません。
社長は気の弱いところがありますが仕事一途で女遊びなどされたことありません。
それはまじめで仕事一筋だった先代ゆずりです。
しかしそんな男が妻にかけてあった保険金目当てに3人もの人間を殺してるんだ。
そんな気の弱い男がなぜそんな恐ろしいことを考えついたのか?許せなかった…。
あの女が許せなかったんです。
私は結婚のときも反対でした。
財産目当ては見え見えだった。
あの女…先代のお仏壇にお線香の一本もあげたことがないんです。
お花も水もいつも私が替えてました。
何より許せないのが…社長の妻のくせにほかの男と…。
〔社長!〕〔小田さん〕〔こんなもの破ったってダメです!!〕〔放っておいてくれ…〕〔こんなもの破ったところで何が変わります?〕〔もう…ダメなんだ〕〔俺と雪子も…それから…この会社も…〕〔もう何もかもダメなんだ…〕〔芦夫さんはダメなんかじゃありません!〕〔先代が一代で築きあげたこの会社〕〔二代目の芦夫さんが継がれてどれだけがんばってきたか…私が知ってます!〕〔…雪子さんに死んでもらいましょう〕〔ホントにきれいな着物…〕〔今の季節にぴったり…〕〔小田さん…〕〔雪子さんに…この着物を着て死んでもらいましょう〕あの女を殺せば保険金で会社は助かります。
会社は大切ですから…。
会社が大切だから…?須本の人生はどうなる!?あんたがそそのかしたりしなければ彼は殺人に手を染めなかったかもしれない!須本の人生はメチャクチャになってしまった。
それでもあんたは会社が一番大切だというのか!?
(嗚咽)翔子は好きな人と一緒になった。
幸せをつかんだと思ってたのにな…。
幸せか…。
幸せって何なのかなあ?育むものなんじゃないかな?…こんなふうに。
2016/01/07(木) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
山村美紗サスペンス 京都紅葉寺殺人事件[再][字]
不倫偽装心中に秘められた殺意…失踪した妻に容疑!神戸、六甲山 赤白の花のトリック
詳細情報
◇出演者
藤谷美紀、田村亮、原田龍二、山村紅葉、中野良子 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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