おみやさん6 2016.01.07


お客様。
お客様?お客様!お客様!!
(鳥居勘三郎)
14年前京都市内のホテルで女性が首を絞められ殺害された
遺留品から身元は安井明美25歳とわかり部屋には男性と一緒にいた痕跡があった
被害者は娘と2人暮らしの女性で娘を家に置き去りにして男性とホテルで会っていたことがわかった
だが報道の過熱とは対照的にホテルにいた相手を特定できず事件は迷宮入りし時効まであと2か月と迫っていた
そして…
(上村達朗)もうあんたに用はない!さっさと帰ってくれ!
(殴る音)うっ…!
(おたま)アイタッ…。
イタタタ…イタッ…。
おたまさん?
(おたま)坊ちゃま…。
庭の落ち葉をねカゴに詰めようとしましてこう…。
大丈夫?グキッと…。
座って。
さあ座って。
まあまあ…面目ございません。
よいしょ…。
ああ…。
言ってくれたら僕がやったのに。
坊ちゃまにそんなことはさせられませんですよ。
(七尾洋子)水くさいじゃないおたまさん!あのねおたまさんの朝ご飯と引き換えなら庭掃除くらい私がやってあげるのに。
あなたにやっていただくぐらいならね坊ちゃまに介護していただいたほうがずっといいです!そんな強がり言っちゃって。
立てないんじゃしょうがないでしょ。
ほら貸して。
嫌よ!ちょっとおたまさん…。
嫌だってば…!ちょっと貸して…。
嫌〜!イテッ…ちょっと痛いじゃないおたまさん!治ってしまった。
はははは…。
ふふふ…。

(パトカーのサイレン)
(高岡俊介)ガイシャは上村達朗45歳ここの取締役です。
(兵藤兵吾)凶器はこれか?
(会沢桂子)はい。
大理石の灰皿です。
残念ながら指紋は拭き取られてました。
死亡推定時刻は?はい。
昨夜の8時から10時の間だと思われます。
(吉川新平)桂子さんこれって…。
(桂子)ああそうなんですよ。
兵さんちょっと見てくださいこれ。
(兵藤)うん?何だ?これは。
おみやさん今朝のヤマですよ。
殺しですって。
(茅野太一)ガイシャは上進アカデミーの取締役上村達朗です。
(村井信治)上進アカデミー?どういう会社かね?
(星野康夫)学習塾の運営会社です。
大学受験からいわゆるお受験のための幼児教室まで幅広く展開しています。
四十半ばで取締役か。
随分出世が早いんだな。
(吉川)社長の婿養子なんですよ。
旧姓は…芹沢達朗。
うん?芹沢…。
(村井)で家族は?
(高岡)社長令嬢の妻との間に双子の高校生の娘がいます。
家庭でも職場でもガイシャの評判はいいですね。
(桂子)失礼します。
これ鑑定終わりました。
もみじ?これがどうかしたのかね?
(桂子)現場に落ちていたんです。
もみじ?
(村井)まったくどうでもいいものばかり見つけてくるね。
(吉川)だってビルのオフィス内ですよ。
もみじが勝手に入ってくるわけないです。
…です!もみじが現場に落ちてたの?これ…。
(村井)資料課は出てこないでよ。
ねえ。
旧姓って芹沢?
(吉川)はい芹沢です。
聞こえないの?人の仕事を邪魔する暇があったら資料の整理でも掃除でも何でも…ねえ聞いてませんか?とにかく聞き込みだ。
(一同)はい!「京都パークランドホテル女性扼殺事件」もみじ狩りにでも行くか。
えっ?おみやさんどういうことなんですか?14年前パークランドホテルの一室で安井明美っていう女性の扼殺体が発見された。
薬殺…何の毒です?いやそれは薬でしょ。
そうじゃなくて手で絞め殺されるのは扼殺。
紐か何か使うのは絞殺。
ちょっと…。
洋子ホントに警察学校首席で出てるの?あれ〜?…ああそれってまだ小さい娘を家に残してホテルで男の人と会っていて殺されたっていう…。
事件当日の昼仕事先のスーパーの前の公衆電話で電話してるのが目撃されてる。
テレフォンクラブ…男の人がお店にいて女の人からかかってきた電話を受けて話し気が合えば会う約束をするっていうあれ?ああ当時は携帯も出会い系サイトも普及してなかったってことか。
じゃあホシはテレクラを通じて出会った男ってことでしょう。
ホテルに目撃者は?男は目撃されてる。
部屋に入るのを。
ただチェックインは安井明美本人がしてるため男は特定できなかった。
でも部屋に相手の痕跡が残るんじゃ…。
ホシのものと思われる指紋が残ってた。
ただ前科者カードと照合の結果は該当者なし。
ただガイシャの首に残ってた扼殺痕からホシが左利きであることが判明。
それとガイシャの右手中指の爪に残ってたホシの皮膚片。
ただ容疑者が浮上しない限りそのサンプルと比較対照することはできない。
他に手掛かりはなし?1もみじの葉っぱ。
ガイシャのものかホシのものかわからないが部屋にあった。
2電話。
事件発生からひと月後情報提供の匿名電話がかかってきた。
はい鴨川東署です。
(男の声)「パークランドホテルの事件セリザワって男を調べろ」えっ何ですか?もう一度おっしゃってください。
(男の声)「セリザワが犯人だ。
いいな」安井明美の周辺のセリザワを捜せと捜査陣は色めき立った。
ところが安井明美の周りに交友関係を知るものは誰もいなかった。
両親とは早く断絶…娘の父親は出産前に失踪。
パート先には友達はいない。
都会の中の孤独だな。
何だか切ない話…。
そのうち匿名電話に対する信憑性も疑われいつの間にかセリザワ捜しは消えていったと。
でおみやさんは今朝遺体で見つかった上村達朗がそのセリザワじゃないかって?可能性はある。
でも上村達朗には高校生の娘さんがいるんですよ。
…ってことは14年前にはもう結婚していて上村姓になってるんじゃ?けど妻子ある身で安井明美と付き合おうと思ったらさ名前は隠したかもしれないじゃん。
ああ…でとっさに旧姓を名乗ったと。
なるほどね〜!ここは?安井明美の娘さんがいた施設。
高校卒業までいたらしいよ。
いってきまーす。
いってらっしゃい。
気をつけてね。
あっすいません。
安井遥香さんについてお尋ねしたいんですけども。
はい…。
お待たせしました。
これが今年の年賀状です。
遥香ちゃん結婚したんですよ。
えっ…。
もうお子さんもいらっしゃるんですか?そうなんです。
高校を出て勤め始めた建築会社でいい人と出会いましてね。
すぐに結婚でした。
娘さん奈緒ちゃんっていうんですけどとってもかわいいんですよ。
いいなぁ美男美女で…お子さんもかわいかったし。
よかったですね〜遥香さん幸せになって。
あっこっち?
(倉田遥香)奈緒?奈緒!?
(遥香)奈緒!あっ遥香さん?奈緒!どうしました?娘がいなくなったんです。
2歳の女の子。
ちょっと目を離した隙にいなくなって…。
どんな服?赤と白のワンピースに紺のズボン。
洋子…。
はい。
(佐久間学)倉田さん!
(遥香)あっ奈緒…!
(佐久間)いや奈緒ちゃん裏のわかば公園に1人でいたものですからね。
(遥香)佐久間さんいつもすいません。
(佐久間)いえいえ。
あのこちらの方は?
(遥香)通りがかった方で…。
奈緒を一緒に捜してくださったんです。
ああそうですか。
ありがとうございました。
じゃあ私は戻りますから。
(遥香)はい。
奈緒ちゃんバイバイ。
(倉田奈緒)バイバイ。
はい。
じゃあ。
(遥香)あの…ありがとうございました。
お騒がせしてすみませんでした。
あっ申し遅れました。
鴨川東署の鳥居といいます。
何かご用ですか?ちょっと見ていただきたい写真がありまして…。
この人ご存じですか?上村達朗さんとおっしゃいます。
芹沢さんとおっしゃったかもしれません。
お母さんから名前を聞いたことはないですか?ありません。
この人が何か?今朝他殺体で発見されました。
お母さんの事件と関係あるかもしれません。
知りませんこんな人。
もう来ないでください。
でも時効まであと2か月なんですよ?犯人が捕まっても捕まらなくても私には関係ありません。
あんな人…母だと思ってませんから。
お家に入りましょう。
「室内からインスタント食品の食べ屑空の容器が多数発見されたことや遥香が不衛生であったこと安井遥香の証言から安井明美は遥香に充分な食事を与えておらず子供の面倒を見ていなかったことが判明」
(ため息)この安井明美って母親遥香さんのことを丸っきり放ったらかし。
ろくな食事も与えずお風呂にも入れず…。
これも児童虐待の一種なんでしょ?まあ育児放棄…ネグレクトともいう。
実際にさ手を上げるのと本質的には変わらないんだろうね。
う〜ん理解できないな。
子供にこんなことするなんて。
ああ…遥香さんがあんなこと言うのも無理ないか。
おみやさ〜ん。
何ですか?私に用事って。
14年前ホテルの一室で女性が殺害されてそのガイシャの爪の中にホシのものと思われる皮膚片が入ってたヤマがあるよね?その皮膚片と今朝遺体で発見された上村達朗一緒かどうか調べてくれる?うわっそれはちょっと…。
頼むよ〜!ああ…おみやさんの頼みじゃ断れません。
わかりました。
でもその代わりですねお食事連れてってくださいね。
2人…2人っきりで!
(小池仁美)どうぞ。
わあ〜素敵!
(仁美)もみじのお陰でお料理がグッと映えますやろ?ホント!自然な色ってどうしてこんなに鮮やかなのかしら。
(福島重夫)「もみじ」いう言葉はもともと色を揉み出すっていう意味の「揉み出づ」からきてるそうです。
へえ〜。
揉みいづ…もみず…もみじ…やね。
昼と夜の温度の差が大きくなればなるほどもみじの色づきがよくなるの。
へえ〜。
ええ。
ちょうどこの時期の京都の気候がもみじを鮮やかな色に揉み出してくれるわけですね。
ふ〜んじゃあこの赤に乾杯ね。
じゃあ〜雅人君もう1本!
(福島雅人)はい。
(仁美)はいはい。
ほっぺたそろそろもみじ色ですよ。
何言ってんの。
これぐらいで顔色が変わるもんですか!おみやさん!びっくりですびっくりです!おみやさんの読みどおりでした。
安井明美の爪に入っていた皮膚は上村達朗のものでした。
上村って左利き?はい。
家族に確認取りました。
安井明美を扼殺したホシも左利きでしたよね。
14年前のヤマのホシは上村達朗と見て間違いありません。
ありがとう恩に着ます。
いいえ。
お礼も期待してまーす!ママ見て。
(遥香の声)ママママ…。
行かないで。
お願いママ。
お願い!今日は行かないで。
遥香といて!
(安井明美)ちょっと離してよ。
あっ!何すんのよ!私は忙しいんだから!さっさと寝なさい!
(奈緒)ママママ見て!ママママ見て!ママママ見て!奈緒!危ないじゃない!落ちてケガしたらどうするの!?さっさと寝なさい!登っちゃダメだって言ってるでしょ!どうしてママの言うことが聞けないの?おててもこんなに汚して。
バイ菌が入ったらどうするの?わかってるの?
(奈緒)ごめんなさい…。
ホントにわかってるの?
(奈緒)ごめんなさい…。
やめて!大丈夫?これもあなたが…?まさか奈緒ちゃんに虐待を?私はただ奈緒にいい子になってほしくて…。
奈緒だけじゃない。
私もいい母親になりたいんです。
母とは違うんです!
(遥香)奈緒…帰るわよ。
奈緒ちゃん…。
遥香さん!遥香さん。
遥香さん。
写真をお見せした上村達朗ですが…お母さんの事件の犯人だということが確定しました。
犯人を逮捕できなくてこのような事態になってしまい警察官の一員として深くお詫びします。
謝っていただく必要はありません。
もう放っておいてください。
あっ…。
このままにしておいていいんですか?ご主人に相談するとか児童相談所とか。
佐久間さんっていったっけ。
えっ?あの…公園で遊んでた子供を連れてきてくれた人。
ああ…。
何かすごい信頼してるみたいだったよね。
はい。
この先の角を曲がったところです。
すぐにわかりますよ。
あっどうも。
ありがとうございます。
佐久間さんって弁護士さんだったんだ。
あっそうでしたか警察の方でしたか。
あの…昨日から気になってるんですけどあの親子何でこんなに気になるんですかね?遥香さんは確かに子育てに問題を抱えています。
でもそれは育児放棄とか日常的な虐待とかそういうことではありません。
どちらかというと愛情が強すぎてそれをどう表していいかわからないようです。
それで時々感情の糸が切れてしまう。
それは愛し方がわからないということですか?母親の愛情を感じられなかったから。
ええ本人はそう言ってます。
実は遥香さんのお母さん14年前に殺害されているんです。
そのお母さんの育った家庭も結構難しい家庭だったそうです。
えっそれって虐待を受けていた明美さんが母親になって遥香さんを虐待してその遥香さんも奈緒ちゃんに手を上げてるってこと?それじゃあいつまでも繰り返しじゃない。
確かに虐待の連鎖を断ち切るのは大変です。
でも遥香さんは必死で頑張ってる。
ご主人はどうなさったんですか?それが海外に単身赴任中でして。
じゃあその間は遥香さんがずっと1人で子育てを?ええ。
私もできるだけ気をつけるようにして時々様子を見に行ったりしてますから。
あっ!先生は本も書かれてるんですか?ええ。
へえ…あっほらほらほら。
よろしければどうぞ1冊お持ちください。
あっありがとうございます。
へえ〜。
虐待の連鎖か…。
考えたこともなかったな。
もし私が親の愛情を感じられずに育ったら私も子供に同じことをしてしまうのかなんて。
まあ独身の私があれこれ考えても説得力ないけど。
いやそれでも考える必要はあるんじゃないの?どこかのひどい母親の仕業だ。
自分とは関係ない。
そういうふうに考えたらこの問題は解決しないと思うよ。
そうですね。
(村井)鳥居君!はい?よくも勝手なことをしてくれたね。
何ですか?上村達朗と14年前のヤマの皮膚組織の鑑定ですよ。
捜査上のことはまずこの私に相談してくれないと。
過去のことに興味はないって言いませんでした?今回のヤマは14年前のヤマと繋がってるんです。
おみやさんみたいなこと言って。
ホシの目星はついたんですか?もちろん。
上村殺しは14年前のヤマの報復に違いない。
今安井明美の関係者を当たらせているところです。
ということで君達はお疲れさん。
さあどうぞ職場に。
はい!はい。
(桂子)おみやさ〜ん。
桂子さんどうしたの?あのねこれ…これ見てください。
変なんです。
ホントだ。
14年前ホテルに残されてた指紋と上村達朗の指紋が一致してない。
はい。
安井明美の爪の中の組織は間違いなく上村のものなんです。
でも部屋中に指紋を残していったのは別人。
これどういうことなんでしょうか?誰かもう1人別の人間がいたってことになるね。
ええっ?桂子さんこの14年前の事件のひと月後匿名の情報提供の電話がかかってきた。
それコピーしてくれる?はい。
14年前のヤマはまだ終わってない。
事件の全容が解明されない限り真相は見えてこない。
(茅野)課長!どうした?安井明美の娘倉田遥香について重要な目撃証言が取れました。
何?
(茅野)事件の夜9時に倉田遥香は上進アカデミーを訪ねています。
(吉川)ビルの清掃員が入っていくのを見たと。
よし倉田遥香を任意で引っ張れ。
(吉川・茅野)はい!何しに行ったんだろう遥香さん。
(高岡)「上村達朗とはどうやって知り合ったんです?」「ちゃんと話してくださればすぐに帰れますから」「お世話になっている弁護士さんで佐久間さんという方がいて…」「1か月ほど前その方の事務所で偶然お会いしたんです」幼児教室をやってるからと名刺をいただいて。
あんな時間にあなた1人で訪ねてる。
どんな用事で?上村さんを前にも見たことがある気がして…。
(兵藤)「どういうことです?」子供の頃よく母の帰りを起きて待ってました。
寝てないと怒られるからアパートの窓からそっとのぞいて。
何度か母のことを送ってきた人がいました。
上村さんに会った時その時の人に違いないと感じました。
ずっと気になっていて…。
ただ母のことを聞いてみたかった。
「私の知ってる母はいつもイライラして…」小さなことですぐ不機嫌になって…。
でもこの人といる時の母は幸せそうで…。
母にもそんな一面があったのかと。
でも…。
安井明美なんていう人に心当たりはありません。
確かに見たんです。
あなたの顔を…。
勘違いだと言ってるでしょう!あなたも人の親ならそんなだらしない母親のことは早く忘れたほうがいい。
えっ…?あなたを置いて男と遊んでいた母親なんでしょう?悪いけど最低だ。
そんな母親にいつまでも固執しているとあなたも二の舞いになりますよ。
(高岡)あなたは上村を許せなかったんじゃないんですか?お母さんと付き合っておきながら軽蔑して揚げ句に殺してしまった。
だからあなたは復讐をした。
いいえ!「私は上村さんが母を殺したなんて知らなかった!」「ましてや復讐なんて考えたこともありません!」奈緒!起きなさい帰るわよ。
ではまた明日話を伺います。
遥香さんどうなるのかしら…。
(桂子)おみやさん。
例の14年前の事件のコピーできました。
でもね変なんです。
(刑事)「はい鴨川東署です」
(男の声)「パークランドホテルの事件セリザワって男を調べろ」
(刑事)「えっ何ですか?もう一度おっしゃってください」
(男の声)「セリザワが犯人だ。
いいな」次ね私の声のデータ出しますね。
(桂子の声)「セリザワが犯人だ」ここが「セリザワ」の「セ」の部分なんですけどほら違うでしょ。
母音の「エ」が通常の発音よりも長いの。
じゃあ極端に発音すると「セェリザワ」になるってこと?そうなの。
(男の声)「セリザワが犯人だ」私のいとこにもね1人いるんですよ。
こうやって「セ」がなまる女の子が。
いとこってどこの人?あっ福井です。
(洋子・鳥居)福井…。

(遥香)佐久間さん。
ああ…これおみやげのおすそ分けです。
クッキー。
ありがとうございますいつも。
奈緒喜びます。
どうですか?困ったことありませんか?いいえ…。
もしカッとなったらまず深呼吸して。
それでも気持ちが収まらないようだったら私に電話ください。
はい。
じゃあ。
そんなだらしない母親のことは…。
(明美)さっさと寝なさい!!
(遥香)ホントにわかってるの?
(上村の声)あなたも二の舞いになりますよ。
ごめんね…。
(遥香)ごめんね…。
ごめんね…。
(井原秀幸)ええこの本は僕が編集したんですよ。
佐久間さんに上村さんを紹介したのもあなた?はい。
上村とは大学の同期で幼児教育の有識者を紹介してほしいと相談されて半年前佐久間さんを…。
その時佐久間さんの様子に変わったことはありませんでしたか?別に…あっそういえば僕が上村のことを旧姓で呼んだんですよ芹沢って。
そうしたら佐久間さんが後からしつこくそのこと訊いてきて。
(佐久間)どうぞ。
今日は何か…?あっ先生がお書きになったご本拝読しました。
先生福井の出身なんですね。
えっ?はいそうですけど。
14年前警察に1本の電話がありました。
遥香さんのお母さんを殺害したのは芹沢だっていう情報提供の電話です。
その電話に福井のなまりがあったんです。
だから何だっていうんですか?私が福井出身だということと何の関係があるんです?先日上村達朗っていう男性の他殺体が発見されました。
旧姓芹沢。
あなたもご存じの方ですよね?ええ。
その上村が遥香さんの母親を殺害した芹沢だって断定されたんです。
つまり情報提供の電話は正しかった。
警察に電話をかけた人間は遥香さんの母親を殺害したのは芹沢だということを何としても伝えたかった。
明美さんとその娘のために。
3日前の夜8時から10時の間あなたどこで何してました?3日前ってそれは…。
そうです。
上村が殺害されたまさにその日です。
ええ…。
うん…。
その日は私はずっと家にいました。
仕事がたまっていたものですから。
そうですか。
その日の夜遥香さん上村の元を訪れたって言ってます。
警察は遥香さんが上村を殺害した。
そう見ています。
奈緒ちゃん!えっ?ちょっとすいません。
どうしたの奈緒ちゃん?ママいないの。
ずっといないの。
えっ?おみやさん。
兵さん!
(兵藤)えっ?兵さん?おみやさん…。
あれっお母さんも一緒?ううん。
1人で外歩いてたの。
遥香さんホントにいないの?はい。
任意同行に来てみたらもぬけの殻でした。
(吉川)携帯や財布があるから遠くへは行ってないでしょう。
(高岡)兵さんちょっとこのあたりを捜してきます。
うん頼む。
大丈夫かな遥香さん…。
どこか心当たりはありませんか?いいえ…。
もう…昨日の取り調べがこたえたのよ!相当思い詰めた様子だったもん。
こういう時どこへ行くんだろう?心を落ち着ける場所か…。
まさか…。
心当たりあるの?あるなら言ってください!もみじ…。
えっ?青井神社のもみじが好きだってそう言ってました。
遥香さんがそう言ってたんですか?いや遥香さんは覚えていないはずです…。
明美さんがそう言ってました?
(佐久間)遥香さん!やっぱりここだった。
覚えていたんですか?どうしてここへ来たのかわからないんです。
昨日の夜から眠れなくて。
どこかへ行ってしまいたくて…。
とにかく無事でよかった。
奈緒ちゃんが待ってるから帰りましょう。
帰れない!私といたら奈緒がダメになる…!愛してるのにきっとまた手を上げてしまう。
子育てをしていれば誰だってそういう悩みはあります。
一緒に頑張りましょう。
ダメ…。
うまく愛せないんです!私も愛されなかったから…。
母に愛してもらえなかったから!違う。
違うんだ遥香さん。
明美さんは君の思ってるような人じゃない。
(遥香)どうして母のことを?遥香さん。
あなたのお母さんが亡くなる直前まで一緒にいたのが佐久間さんです。
すまない…ずっと言えなかった。
どういうこと?明美さんと初めて出会ったのは14年前司法試験の合格発表を控えた日…。
私は試験に何度も落ちていた。
それでイライラしてその不安から逃れるために…。
そこで明美さんと知り合い明美さんが指定したホテルで会いました。
何?それ。
ああ…青井神社のもみじ。
娘がくれたの。
えっ子供いるの?
(明美)うん。
何歳?7歳。
父親娘が生まれる前にいなくなっちゃってそれからずっと2人。
君が1人で育ててるんだ。
偉いんだね。
全然。
私あの子にすぐ当たっちゃうし。
忙しくて…。
だから連れて行くのはいつもこの近所の神社だけ。
そこ好きなんだ。
もみじに囲まれてるとイライラも忘れちゃう。
大変なんだね。
うん。
でもあの子のことは好き。
ただどうやって接していいのかわかんない。
だから私の分まであの子に愛情を注いでくれる人と一緒になりたいってそう思ってたんだけど…。
(佐久間の声)明美さんは言っていました。
少し前まで真剣に付き合っていた男性がいたと。
それが芹沢と名乗ってた上村達朗。
上村は遥香さんのことも大事にすると約束した。
だから明美さんは上村に求められたら夜中に遥香さんを置いてでも出かけたそうです。
結婚というゴールを信じて。
明美さんは真剣だったが上村のほうは遊びだった。
そのことに気がついた明美さんは深く深く傷ついた。
そしてテレフォンクラブに1本の電話をかけたんです。
天に繋がる1本の蜘蛛の糸にすがるような思いで。
その糸があなたに繋がった。
(明美)彼ね奥さんだけじゃなくて双子の娘までいたの。
あんまりだから言ってやった。
あなたの家庭をめちゃくちゃにしてやるって。
怖いな…。
言っただけ。
何もできないよ。
本当に好きになった人だもん。
(佐久間の声)その時の彼女は本当に寂しそうで胸が痛くなるような笑顔で…。
思わず言いそうになりましたまた会おうって。
でも…。
(携帯電話)芹沢さん?うん…。
うんわかった!彼がねもう一度やり直そうって。
今から会おうって!よかったね。
じゃあ俺行くよ。
もみじの葉っぱって赤ちゃんの手みたいだよね。
ふふっ。
あの子の手もこんなにちっちゃかったんだな。
(佐久間の声)その笑顔は本当にやさしいお母さんの顔でした。
その後あなたは司法試験に合格した。
はい。
でもニュースで明美さんの死を知った時犯人は芹沢って男だと思った。
ああっ…。
でも状況からすれば私が疑われても仕方ない。
長年の苦労がやっと報われたのにここで名乗り出て人生を棒に振るわけにはいかないと…。
それで匿名の電話をかけたんですか?パークランドホテルの事件芹沢って男を調べろ。
(刑事)「えっ何ですか?もう一度おっしゃってください」芹沢が犯人だ。
いいな。
明美さんの携帯があったから芹沢って名字さえわかれば電話番号から本人が特定されると思いました。
なのに一向に捕まらなかった。
携帯は上村が破棄したんでしょう。
事件が報道される度明美さんに申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
遥香さんとは子育て支援のボランティアで知り合った。
明美さんの話していた娘さんだとわかって全力で支えなければと思いました。
これで明美さんにも罪滅ぼしができると思った。
しかし半月前…。
おい芹沢。
トイレあっちあっち。
(上村)ああそうか。
ちょっと酔ったかな。
まだまだこれからだぞ。
でさこの前ね…。
あの…今芹沢っておっしゃいました?あああいつね旧姓が芹沢なんですよ。
婿養子に入ったから。
(佐久間の声)最初はただ名字が同じというだけだと思った。
でもいろいろ調べるうちあの時の芹沢に間違いないと…。
それであの夜上村に会いに行ったんですね。
何ですか?これ。
覚えてるだろう。
殺された安井明美さんも娘からもらったもみじの葉を大事にしてた。
明美さんはあんたのことを娘を愛してくれる人だと信じてた。
フッ…娘を愛するだと?笑わせるな。
あの女は娘を虐待してたじゃないか。
あんたも週刊誌で読んだだろう。
あれは生きてたって子供を殺してしまうような女さ。
死んで正解だ。
黙れ…。
明美の娘も同類だな。
そのまた娘も。
あんたがどんなに支援したって絶対に救われない。
根が腐ってるから。
あんたに用はない!さっさと帰ってくれ!うわーっ!
(殴る音)うっ…!佐久間さん…。
すまなかった。
でもこれだけはわかってください。
あなたのお母さんはあなたを愛してた。
君にこのことをずっと伝えてあげたかった。
でも言い出せなかった…。

(遥香)佐久間さん!ありがとうございました。
確かにあなたのお母さんは不器用でした。
でも間違いなくあなたを愛してた。
あなたがここであげたもみじの葉大事に持ってました。
虐待の連鎖あなたが断ち切ってください。
娘さんにどう接していいかわからなくなった時手を上げそうになった時必ず思い出してください。
佐久間さんのことを。
それとお母さんが持ってた1枚のもみじ。
(奈緒)ママー。
ママー。
奈緒…。
はい。
ママ見て。
ホントだ…。
もみじの葉っぱって奈緒の手みたい。
もう大丈夫よね遥香さん。
大丈夫。
ゆっくりゆっくり一歩ずつお母さんになればいいんだから。
ああ〜私も早くかわいい娘が欲しいな〜。
はははは…。
その前に相手を見つけないと。
心配していただかなくてもすぐに見つかりますから。
いや〜洋子に釣り合う男はなかなかいないと思うよ。
まいったな。
私ってばそんなにいい女?その気の強さについていけないと思う。
ちょっと何よそれ!おみやさん!2016/01/07(木) 09:55〜10:53
ABCテレビ1
おみやさん6[再][字]

14年前一人の女性が殺され、傍にもみじの葉が落ちていた。そして現在発見された遺体の傍にも一枚のもみじが落ちていた!3世代の母娘が繰り広げる愛憎の物語をお楽しみに!

詳細情報
◇番組内容
京都鴨川東署資料課の窓際課長・鳥居勘三郎(渡瀬恒彦)が、部下の七尾(櫻井淳子)と迷宮入りした難事件に挑む!
◇出演者
渡瀬恒彦、櫻井淳子、七瀬なつみ、不破万作、林泰文、片桐竜次、小野寺丈、一條俊、相本久美子、菅井きんほか
【ゲスト】大村彩子、高橋和也ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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