・「目を閉じれば億千の星一番光るお前がいる」大好きな歌を口ずさみ自室でくつろぐ…今相撲界を席けんする23歳です。
・「大親友の彼女の連れおいしいパスタ作ったお前」カメラが回っていても全く気にしないおおらかな人柄。
(いびき)それがひとたび土俵に上がれば…。
(実況)がっちり握った!新大関として臨んだ名古屋場所で終盤まで優勝を争う活躍。
次代を担う力士としての存在感を見せつけました。
しかし5月の大関昇進からの道のりは決して順調ではありませんでした。
更なる高みを目指して取り組んだ四つ相撲の型。
自分のものにするのは容易ではありませんでした。
(実況)のこれるか!のこせない!本場所でも試行錯誤の日々が続きました。
大相撲の頂点に立つために。
技と心を磨き続ける照ノ富士。
新大関の2か月の戦いを追いました。
照ノ富士が大関になって初めての稽古が始まりました。
モンゴル出身。
史上初めて平成生まれの大関となった照ノ富士。
所属するのは5人の関取を擁する…角界屈指の稽古量で知られています。
いきなり40番の申し合い。
2人の幕内力士を相手に37勝と圧倒しました。
(一同)1234。
更にすり足などで足腰を鍛錬。
(一同)12341234。
稽古は初日から4時間。
決して妥協しないのが照ノ富士の信条です。
稽古のあとも大関としての仕事は続きます。
ファンにプレゼントするための色紙作りが一日数百枚。
はい終わりです。
お疲れさまでした!照ノ富士の特徴は1メートル91センチ178キロの恵まれた体を生かしたスケールの大きな相撲。
足腰の強さと腕力で豪快に勝負を決めます。
春場所で13勝。
5月の夏場所では初優勝を飾りました。
はあ〜っ!大相撲の顔の一人となった照ノ富士。
この日は初めてのCM撮影です。
昇進後はイベントや取材がひっきりなしに続きました。
はいオーケー!
(拍手)大関になって3週間。
この日稽古場に照ノ富士の姿はありませんでした。
赤く腫れ上がった右足。
昇進後一日も休めなかった疲れからうみがたまってしまったのです。
とても相撲が取れる状態ではありません。
それでも4日後には巡業先へ向かいました。
押さないで押さないで。
ファンには人懐っこい表情を決して崩しません。
大関としての務めを必死に果たしていました。
あ〜疲れた。
名古屋場所が始まりました。
新大関がどんな相撲を見せるのかファンの注目が集まります。
頑張って!頑張ってよ!照ノ富士頑張って〜!
(観客)照ノ富士〜!初日の相手は前頭2枚目の碧山。
(行司)手をついて!はっけよい!
(実況)碧山起こす。
おっとちょっと足が流れた!左を差し込んで組み止めた。
上手照ノ富士これで照ノ富士か。
いやそれでも碧山が出ていきます。
上手投げ!照ノ富士の勝ち!新大関初日白星。
豪快な投げで白星。
しかし納得できません。
首をひねります。
前半戦番付が下の力士を相手に白星を重ねていきます。
(実況)照ノ富士3連勝。
(実況)強い5連勝。
(実況)照ノ富士6連勝。
それでも浮かない顔です。
取組後の宿舎。
(取材者)お疲れさまです。
(取材者)お疲れさまでした。
(取材者)お疲れさまでした。
いつもの気さくな表情はありませんでした。
勝っても納得できない理由。
そこには大関となって目指してきた相撲が取れていないもどかしさがありました。
5月の大関昇進伝達式。
照ノ富士が語ったのは大関のその先への決意でした。
謹んでお受け致します。
「さらに上を目指す」。
横綱を視野に入れた異例の言葉でした。
どんな相手にも負けない相撲を身につけたい。
名古屋場所を前に照ノ富士が取り組んだのが四つ相撲の型を作る事でした。
相手の両まわしを十分に取り有利な形を作るのです。
照ノ富士の理想とする四つの型。
右を差し下手まわしを取ります。
そして左で上手まわしをつかみます。
右四つと呼ばれるこの型に持ち込めれば持っている力を最も発揮する事ができます。
(一同)よいしょ!右四つで大横綱の地位を築いたのが白鵬です。
(拍手)
(行司)はっけよい!のこったのこった!素早く右を差し一気の攻め。
歴代最多35回の優勝を成し遂げています。
まだ右四つの型が確立できていない照ノ富士。
得意な形に持ち込めずあっさり負けてしまう事があります。
更に一度負けると気持ちを立て直せなくなる悪い癖があります。
去年の秋場所では大関を破ったものの6連敗を喫し負け越しました。
右四つの型の追求には横綱を目指し技と心を磨きたいという思いが込められています。
右四つの型を作り上げる。
そのために取り口を基本から見直しました。
十分に力が出る位置でまわしをつかむためには腰を低く落とし下からまわしを取りに行かなければなりません。
1メートル90センチを超え腰の位置がほかの力士より高い照ノ富士にはこれが難しいのです。
名古屋場所を直前に控えた稽古。
下の力士を相手に思うようにまわしが取れません。
立ち合いから低い姿勢を作れるよう徹底的に足腰を鍛え直しました。
右四つの相撲を取ると決めて臨んだ名古屋場所。
(行司)はっけよいのこった!のこったのこった!のこった!6日目まで6連勝。
しかし右四つで勝ったのはこの一番だけでした。
理想の形を求めたい思いと白星を重ねたい思いの間で揺れていました。
(取材者)見ているファンも含めて恐らく皆さんもそういう相撲を大関に期待していると思うんですけど。
でもそういう…。
(取材者)勝ちたい?
(取材者)でもそれ一番難しい事ですよね。
はい。
7日目の朝。
この日の相手は相撲がうまい豪栄道。
今場所初めての大関戦です。
前回の対戦。
(行司)はっけよい!のこったのこった!豪栄道に得意のもろ差しの体勢を作られまわしに触る事ができませんでした。
力ずくで振り回しなんとか勝っていました。
今場所こそ右四つになって勝つ。
朝稽古から右四つの形を確認していました。
(歓声)豪栄道を相手に右を差せるか。
(行司)はっけよい!のこったのこったのこった!
(実況)差しで争い。
2歩入った!右からうまく攻めている豪栄道。
脚を掛けた〜!切り返し!豪栄道勝ちました。
(実況)照ノ富士大関になって初めての黒星!立ち合い。
照ノ富士は右を差す事ばかりに意識が行き腰高になってしまいます。
不利な体勢から右を必死に差し右四つになろうとしました。
一度阻まれてももう一度。
右を差す事にこだわり続けた照ノ富士。
その分相手の足技への対応が遅れました。
負けはしたものの先輩大関に対し自らの意志を貫きました。
信じる道を貫く気持ちはこれまでの人生で培われてきました。
子どもの頃から負けず嫌いだった照ノ富士。
体格に恵まれモンゴル相撲や柔道に親しんでいました。
5年前2つ年下の逸ノ城と共に日本の高校の相撲部に入部。
テレビで見ていたモンゴルの英雄朝青龍や白鵬の活躍に憧れたのです。
祖国の先輩たちに追いつきたいとプロになったものの甘くはありませんでした。
入門からおよそ2年幕下で足踏みが続きました。
それもあったからそれがあったから…転機が訪れたのは2年前。
当時所属していた部屋の閉鎖で20人近い力士がいる伊勢ヶ濱部屋に移る事になったのです。
質量ともに格段に増した稽古。
先輩力士との稽古からどんな攻めにも対応できる技術を吸収しました。
諦めずに貫く気持ちを教えてくれたのはモンゴルの先輩横綱日馬富士。
何度も土俵に転がされ泣きながらの猛稽古。
強くなるには地道な努力しかない事を体で覚えていったのです。
目標を見失わず続けてきた精進。
それが照ノ富士に大関の座をもたらしたのです。
名古屋場所9日目。
豪栄道戦の黒星から2日後。
次の大関との対戦が組まれました。
相手は稀勢の里。
右四つになるのが難しい相手です。
稀勢の里の得意な形は照ノ富士とは逆に左を差す左四つ。
照ノ富士の右と稀勢の里の左がぶつかるけんか四つです。
これまで5回の対戦で照ノ富士が右四つになれた事はありません。
豪栄道戦では右四つにこだわって敗北。
あくまで目指す形を貫くのか。
(実況)右を差しに行った照ノ富士。
左四つです。
稀勢の里上手ちょっと深い上手。
下手投げに行く。
下手は切れた。
稀勢の里しのいだ。
押し倒し照ノ富士の勝ち!照ノ富士勝ち越しです!立ち合い。
照ノ富士は迷わず右を差しに行きます。
しかし稀勢の里の左に阻まれました。
右四つになれず攻め込まれます。
投げで相手のバランスを崩し体勢を立て直そうとしました。
けんか四つの難しい相手にも右四つで臨む。
目指す相撲への強い意志を見せました。
次に見据えるのは横綱白鵬戦。
照ノ富士にとって今場所最大の山場です。
先場所の対戦。
照ノ富士は同じ右四つの白鵬に右を深く差され左上手をしっかりとつかまれました。
何もできずに僅か12秒で敗れました。
あっ照ノ富士!照ノ富士!待ち望んでいた白鵬戦。
照ノ富士かっこいい!ここまで9勝1敗で並んでいます。
(拍手と歓声)照ノ富士!照ノ富士!今最も強い相手に貫いてきた右四つの力が通用するのか。
(拍手と歓声)右四つ同士の白鵬とはどちらがいい位置でまわしを取れるかが勝負を分けます。
(行司)かたや白鵬白鵬こなた照ノ富士照ノ富士。
飛ぶ鳥を落とす勢いの新大関が角界を引っ張ってきた横綱に挑みます。
(拍手と歓声)
(実況)満員の愛知県体育館大歓声の中で制限時間いっぱいです。
9勝1敗同士の対決。
白鵬でしょうか。
(実況)それとも新大関照ノ富士か。
表情が変わった。
待ったありません。
手をついて。
(実況)上手は取れない!白鵬が先です。
(実況)照ノ富士残した!右の下手一本。
(実況)下手を切りたい。
上手も切りたい。
はっけよい。
のこったのこったのこった!
(実況)上手がまだ取れていない照ノ富士背中。
(実況)動きが止まる。
(実況)ひねった!照ノ富士残した。
(実況)さあ胸を合わせた!
(実況)残れるか!?残せない!
(拍手と歓声)
(場内アナウンス)「ただいまの決まり手は寄り切り。
寄り切りで白鵬の勝ち」。
立ち合い。
白鵬に劣らぬ低い姿勢。
左上手を狙います。
しかし巧みにかわされます。
一方右の下手。
力の出る深い位置まで差し込み…。
まわしをつかみました。
左の上手をしっかりと取れれば自分が有利な体勢になれる。
まわしに手が届いたその時。
白鵬に右手と腰の動きで遮られ自分の体勢にさせてもらえませんでした。
最高峰の横綱に真っ向勝負を挑んだ1分11秒。
通じなかった悔しさが胸に残りました。
それでも自分の進むべき道に間違いはないと手応えを感じていました。
14日目の支度部屋。
この日11勝目をあげ戻ってきた照ノ富士。
今場所届かなかった白鵬の一番を見つめました。
はい。
右四つの型を目指して真正面から自分と向き合った名古屋場所。
つかんだ手応えを胸に見据えるのはただ一つ。
横綱への道です。
真の強さを追い求めて。
照ノ富士の本当の挑戦はこれからです。
2016/01/07(木) 01:45〜02:30
NHK総合1・神戸
アスリートの魂・選「理想の“型”を求めて 新大関 照ノ富士」[字]
史上初の平成生まれの新大関、照ノ富士。モンゴル出身の23歳。春場所で36連勝中の横綱・白鵬に土をつけ、「規格外」の魅力を放つ。新大関として臨む名古屋場所に密着。
詳細情報
番組内容
4年前に初土俵を踏んだ照ノ富士。新三役の春場所で13勝、続く夏場所では12勝をあげ初優勝。三役になってわずか2場所で異例の大関昇進を遂げた。力強く柔らかなその取り口は、「過去に似たタイプの力士が見当たらない」と、親方衆に言わしめるほど。横綱との一番にも決して物おじすることのないメンタルも含め“規格外”の魅力を放っている。7月の名古屋場所。これまで通りの力を発揮できるか。「大関」としての戦いを追う。
出演者
【出演】照ノ富士春雄,【語り】仲村トオル
ジャンル :
スポーツ – 相撲・格闘技
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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