彼女が恋した職人さん 〜マリーは匠に首ったけ〜 2016.01.06


世界が注目する日本の職人の技。
そこにはながい時をかけて先人たちが磨き上げてきた匠の技がある。
それを支えるのは我々日本人が忘れかけていた和の心
この技に恋してしまいました。
これはそんな匠の技に恋をした外国人の女の子と僕のすてきな出会いの物語
のはずが…
ドントタッチ…!《なぜ僕は殴られているのか?その理由はちょっと前にさかのぼる》外国人の観光案内を僕が?すみません意味わかんないんですけど。
僕の知り合いの女の子がカナダから日本にやってくるんだよ。
いや僕もいろいろ忙しいですし…。
和田君恋人いないよね?今それ関係あります?メッチャクチャ関係あるんだな。
彼女を案内しながらコミュニケーションをとってくうちに恋人どうしになってしまうかもしれないじゃないか。
たった3日だけの話だよ。
う〜んでもな…。
和田。
単位足りてないよな?ん?まったくなんで僕が…。
すみません!《もしやあの子?っていうかフランス人形みたいにめっちゃきれいじゃん!》お待たせしてしまいたいへん恐縮でございます。
私マリー・コーデリーと申します。
和田巧と申します。
たくみ!?すてきなお名前ですね貴様。
えっ貴様って随分乱暴じゃない?いえいえ貴様という言葉はもともと尊敬の気持を込めた丁寧な言葉なのでございますよ。
きさま。
そうなんだ。
あ〜それよりマリーどっか観光したい所ある?はい!あるでございます!「死ぬまでに会いたい100人の和の職人」。
日本の勉強しているうちにすばらしい職人がたくさんいることを知りました!ぜひ大学のリポートに書きたいのでございます!そうなんだハハハ…。
《顔はかわいいけどちょっと苦手なタイプかも》
とりあえず僕らは轟教授にご馳走してもらえるということで銀座へ向かった
(戸が開く音)お〜マリー久しぶり!教授!ご無沙汰でございます!きれいになったなぁ。
恐悦至極でございます。
すばらしいお店でございますね。
そうだろそうだろ。
一流の店が集まる街銀座において舌の肥えた美食家や数多くの著名人がお忍びで通う名店旬の素材の味を引き出す鮮やかな職人技は舌だけではなく我々の五感を刺激し心まで魅了する。
どうだ?興奮してきたろ?いや興奮は…。
恐れ入ります。
これはですねのどぐろの蒸し寿司でございます。
わお!美しいでございますね!俺のおごりだ。
おごり!?うんたらふく食べてくれ。
(2人)いただきます。
一つひとつの素材の味が引き出され絶妙な味わい。
筆舌に尽くしがたいでございます。
どうだ?ムラムラするだろ?いやムラムラはしません。
マリー何してんの?座って。
その鮮やかな切り口…。
もしかして本焼き包丁でございますか?よく本焼きをご存じですね。
お〜どうりですばらしい味のはずです。
でも包丁と料理の味は関係ないんじゃない?料理の教えでこんな言葉がある。
「刺身の味は鮮度と包丁で決まる」。
切れ味のいい包丁を使うと料理に角が立つからな。
角が立つ?切れ味のいい包丁で刺身などを切るとその断面はまっすぐ滑らかに仕上がる。
味覚に大きく影響する歯ざわりがよくなるのはもちろん余分な水分栄養素が無駄に逃げてしまうことがないためみずみずしく食材の旨みを存分に堪能することができる。
そして究極の切れ味を持つと呼ばれているのが鋼のみを鍛えあげて作られる数百年もの歴史を持つ日本刀の秘伝の技術が受け継がれている。
究極の切れ味を持つ包丁をどうやって作っているんですか?私本焼き包丁を作る職人に会いたいでございます!堺の包丁職人の仕事だな。
そうです。
堺の池田さんのところです。
堺って大阪?いやムリムリムリムリ!単位欲しいんでしょ?和田君。
連れていってあげてくださいな。
そう言われても。
ん?おっ?うわぁ〜ん!うわぁ〜ん!《うわぁめっちゃ目に涙ためてる!でもここで連れていくって言ったらこの先もどんどん連れ回されそうだし…。
どうする?俺…どうする?俺!》わかったわかった。
行くよ。
イエス!じゃ行くでござる!ちょっと今のウソ泣き?頼んだでござるよ〜。
ちょっと教授!さ〜てこれから本格的に食べちゃいますかね。
かしこまりました。
やったやった!
こうしてマリーのウソ泣きにまんまと騙されてしまった僕は究極の切れ味を持つという本焼き包丁の職人さんに会うため大阪の堺に向かった
ハァ…マリーこれでいいの?そうだよこれこれ。
この団子はで代金なんだけど…。
日本男児は細かいことを気にしないほうがいいですよ。
なんだよそれ!もう〜。
うまっ。
まさに熟練された匠の技がつくり上げた味わい。
大感激でございます!はい貴様…。
大阪に連れてきてくれたお礼。
折り鶴ですよ。
ありがとう。
それよりほんとに職人さんに会いたいの?たぶん全然おもしろくないと思うけど。
貴様なぜそんなことを?あっいやだって…。
職人なんて華もないし地味な仕事だし…。
あっそっち!行くでござる!え?たのもう!ちょっとやめなよ!たのもう!!やめなよ!あの何かご用ですか?こんにちは。
突然…。
もしかしてあなたが職人でございますか?おおこれが究極の包丁を生み出す手。
すみません私事務員なんですけど。
超恥ずかしいでございます。
ん!すみません。
見学とかってできるんですか?すみませんそういうのはちょっと…。
あぁですよね。
ありがとうございました。
うわぁ〜ん!あぁ大丈夫です。
お願いします!
このあとマリーは日本の匠の技を見るためわざわざカナダからやってきたと10分間ほど熱弁。
工場の方もその尋常ではない熱意に負けたのか今回特別に包丁づくりを見学させてもらえることになった
来る途中包丁の工場が何軒もあったんですけどなんで堺って多いんですか?なにせ堺は600年の歴史を持つ刃物の街ですから。
でも江戸時代に太平の世になり…。
どうぞ。
失礼します。
ここが作業場です。
もう感激です!ここで究極の切れ味を持つ本焼き包丁が作られているんですね!早速見せてください!わかりました。
大きく分けて…。
3つの工程に分かれます。
なるほどね。
最初はまず鋼を熱し柔らかくしたらハンマーで叩いて微妙に調整しながら包丁の形へと整えていきます。
ただ鋼は冷えてしまうと硬くなってしまうのでより早くより正確に叩きわずか10分ほどで包丁の形にしなくてはなりません。
みるみる包丁の形になっていくです。
ショッキングな職人技でございます!包丁の形に出来たら続いて土置きといって…。
これは日本刀を作る技術から受け継がれてきた方法です。
包丁は硬いほどよく切れるって言われてるんですけど硬すぎると骨の硬い魚をさばいたりするとき…。
そこでこの土の置き加減こそが1本の鋼のなかに硬さと柔らかさという相反する要素を同時に存在させる秘密なんです。
そして土置きしたものにこれから焼き入れを行います。
焼き入れ?どうぞ座って。
鋼というのは熱してから一気に冷やせば冷やすほど硬くなります。
またその反対に冷やす時間を遅くすればするほど柔らかくなります。
うわっ!ジュジュジュッて音がしますよ!貴様!その性質を利用してコントロールしているんです。
完成した本焼き包丁に見られる刃文は先ほどの土置きと焼き入れで意識的につけられた硬さと柔らかさの境目なんです。
こちらが完成品になりますどうぞ。
まさにアメージングでございます。
私この技に恋してしまいました。
あの何かお聞きになりたいことありましたらどうぞ。
はいはいはい!池田さんはこの仕事をいくつから始めたんですか?18からやってて25年くらいです。
はい本焼き包丁づくりで大変なことは何ですか?温度が高くても低くても割れるしムラがあっても割れるし。
なるほどね。
10本に1本くらい出来たらええくらい。
もう頭が下がります。
貴様からも質問ございませんか?もう十分でしょ。
カナダにこのことわざがあります。
旅の恥はかき捨て。
ゴー。
じゃあひとつだけ。
どれだけすごい包丁を作ってもすごく有名になるわけではないし正直お金だってすごく儲かるわけではないですよね。
やりがいとかって感じられるんですか?う〜んその包丁をつこうた人がこの包丁はよう切れるなって言うてくれたらええかなと思ってる。
それだけですか?それだけ。
ただ私どももそうなんですけどこういった伝統工芸全体の悩みとして後継者がいないんです。
もし誰も継がなかったらここはどうなるんですか?閉めることになるかもしれないです。
じゃあこの技は池田さんの代でなくなるってことですか!?オーマイゴッド!わかりません!どうして日本が誇るすばらしい技を日本の若い人たちは継ごうとしないんでございますか?まあみんながみんなやりたいわけじゃないから。
貴様…。
それに仕事も単調できつそうだしね。
貴様巧という名前に名前負けしてるでございます。
名前負け?日本が誇る匠の技をないがしろにするなんてたくみならたくみらしく匠を敬うべきでございます!僕だって好きでこの名前になったわけじゃないし。
だいたいマリーもさどうせクールジャパンだかのブームにのって日本に一時的に興味持っただけでしょ?はっ!?っていうかそもそもほんとに日本のことわかってるわけ?心からほんとに日本のこと好きなの?好きでございます!ハハッ!よく言うよこれだってさ絶対こういう使い方するものじゃないと思うよ。
そういうことも知らずにさ…。
ドントタッチ…!これは…これは大切な人にもらったものでございます。
ちょっと言いすぎたかな?そもそもほんとに日本のことわかってるわけ?心からほんとに日本のこと好きなの?好きでございます!はい貴様。
大阪に連れて来てくれたお礼折り鶴ですよ
(ため息)フッ…何だ?これ。
そういえば…。
これだってさ絶対こういう使い方するものじゃないと思うよ。
これは…これは大切な人にもらったものでございます大切な人からもらったって言ってたな。
東京に戻った僕とマリーは仲直りのきっかけに骨董品屋に行くことにした
すご〜いひえ〜!教授暇ならあなたがマリーのこと案内してくださいよ。
だって俺みたいなおっさんより若い男の子のほうがいいに決まってるじゃないか。
ハァ…。
うん昨日はどうだった?いやまあ…。
ん?ねえねえ貴様!何にもないですよ。
ん?どうした?どうした?どうした?どうした?これかわいいでございます。
なめてみるか?なめてみる…何言ってんですか?いいんだよさあペロペロペロペロ。
ペロペロ?うん。
甘っ。
すごく甘いでございます。
フフフフ!これガラス細工じゃないんですか?これはね飴ちゃんだよ。
まさかこれも匠の技ですか?そう!飴細工それは平安時代中国から来た職人によって伝えられたとされる伝統工芸。
素手と握りバサミ一本のみを使い高熱の飴が冷めるまでのわずかな時間に作り終わらねばならない秒単位の芸術品だ。
飴の温度は90℃。
飴を優雅に軽やかに伸ばしてゆく。
そして丸めた飴を棒に刺す。
彫刻とは違い削り取ったり切り取ったりはしない。
棒の先につけた丸い飴を手で形を整えながらハサミで切ったり伸ばしたりしながら作り上げる。
リズミカルにテンポよく。
一瞬でも迷ったら作品は台なしになる。
ハ〜そしてクライマックス。
自らの手で最後の総仕上げだ。
こうして完成したのが金魚の飴細工だ!ブラボ〜!チャチャチャパッ!チャチャチャパッ!いや2人とも興奮しすぎだから。
あチャチャチャパッ!2階行くでござる。
行くでござる。
ひ〜すご〜い。
わぁ。
あっこれきれいですね!珍しい模様のコップだね。
コップなんかじゃないよ。
江戸切子です。
江戸切子?そう!切子とはカット模様をさしガラスの表面にカットを入れ磨きで仕上げるガラス製品。
江戸時代後期から始まったといわれている伝統工芸だ。
「でんととでんとと伝統工芸」「でんとととっとと伝統工芸」まずは割り出し。
ガラスのコップや皿に目安となる線を大胆に書き込んでいく。
そして大技の連続。
粗摺り!器を回転させながら模様を大胆に刻んでいく。
更に三番掛けで細かく模様をつける。
この時零コンマ単位で模様を見分ける目を持っているのが秀石だ。
仕上げはガラス本来のツヤを出すために丁寧に磨きをかけて仕上げていく。
これなんか変わってますね。
家具ですか?これ。
ちゃうちゃうこれは江戸指物。
それは木の木目の本来の美しさを活かした家具でありその最大の特徴は物差しでその作り方はまず木材選びから始まる。
その木材は天然乾燥させた桑や杉桐。
そのなかから運命に導かれ恋に落ちるようにたった一つの素材を選ぶ。
そして優しく素材を愛でるかのようにかんなで削り更にほぞ。
そうほぞと呼ばれる木と木の接合部分を作っていく。
木と木の接合部分。
そしていよいよ結ばれるとき。
まるでお互いが求め合うように激しくそう激しくそして静かにピッタリ…静かにピッタリと寄りそう。
あ〜ここまで来たらもう誰にも止められない。
きれいにきれいに磨き上げそして漆を塗って仕上げれば愛の結晶そう愛の結晶江戸指物が生まれる。
どうだ?このほとばしる愛を感じられるか?愛すてきです!うん。
これってハンコでございますか?ハンコ…。
お〜これは珍しい。
天然石で作られたハンコだ。
マリーって名前のハンコありませんか?あるわけないじゃん。
っていうかハンコなんか必要ないでしょ。
欲しいでございます。
カード使うときサインじゃなくてハンコを押したいのでございます。
マリー職人を探さなくていいのか?あっそうでございました!ちょっと教授余計なことを。
次は加賀友禅300年の伝統を今もなお守り続ける職人です。
加賀友禅いいところに目をつけたね!プッあぁ。
加賀百万石の城下町として栄えた…。
日本を象徴する着物のなかでも加賀友禅は最も格調高い着物と言われているがその花草鳥など日本人が加賀友禅はいったいなぜありのままの風景を描いたように写実的であるのか。
その秘密は金沢の自然が大きく関わっているからと言われている。
そして伝統の技を支えているのは熟練した職人のリレーだ。
金沢の自然と加賀友禅がどう関わっているのか私ぜひ加賀友禅の職人に会いたいです!レッツゴー!いやいやいや加賀って石川県だよね?いやさすがにちょっと。
うわぁ〜ん!マリー悲しいでございます。
またウソ泣きでしょ?マジで無理だから。
うわぁ〜ん!ちょっとマリー他のお客さん見てるから。
マリー。
うわ〜ん。
うわぁ〜ん!教授まで?わかったからもう泣くのやめて。
(2人)オッケー。
なぜローラ?ほら行くでござる。
見つかるといいがマリーの捜してる人が。
まさにアメージングでございます。
私この技に恋してしまいました。
また恋したの?
またしてもマリーのウソ泣きに騙されてしまった僕は300年以上続く日本を代表する伝統工芸加賀友禅の職人さんに会うため石川県の金沢に向かった
着物?オーソービューティフル。
ハァマリー買ってきたよ。
お〜そうですこれこれ!分厚くて大きい油揚げをこんがりカリッと焼き上げて寿司飯を詰めた金沢名物焼きいなりでございます!おいしい!感激…。
感激の極みでござる。
でござる。
わざわざカナダから職人の父に会いに?はいぜひ匠の技を拝見したいのでございます。
あの作業の邪魔はしないようにしますんで。
でしたらどうぞどうぞ。
おじゃまいたします。
こちらです。
お〜ここが加賀友禅を生み出す工房ですか?なんだか武者震いしてきました。
武者震いの使い方違うから。
すみません。
友禅とはもち米を原料にした糊で防染して布に色をつけて染める技法のことで完成までに13もの工程があるんです。
13も?そのすべてを熟練の職人が手作業で行いバトンを受け渡すようにリレーしていきます。
加賀友禅はなぜ写実的と呼ばれているのかその理由はこれから父がやる作業を見ていただければなんとなくわかるかもしれませんよ。
私の父は最初に布に手を入れる友禅作家と呼ばれる職人でどんな模様にするのか金沢の自然をスケッチして絵柄を決めます。
これは300年以上前から変わらずありのままの金沢の自然を描き出してきた加賀友禅の特徴なんです。
春夏秋冬新緑や枯れ葉そんな金沢の自然を肌で感じ心の中に入れその感動を文様として色や形に表して着物の中で表現していくことが大事なんだって父はよく言っています。
出来上がったスケッチをもとに絵柄を決めて今度は生地に直接絵を描き上げていきます。
この時水に濡らすと消える性質を持つ露草からしぼり取った青花と呼ばれる花の汁を使って描きます。
下絵が完成したあと糊置職人と呼ばれる職人へバトンを渡します。
そのあと置いた糊を生地に食い込ませる地入れを行うことで模様の輪郭をくっきり浮かび上がらすことができるんです。
それが終わると友禅作家である父のもとに反物が戻されます。
いよいよここから反物に命を吹き込む彩色が行われます。
ついに加賀友禅の匠の技が見られるでございますね。
マリー!加賀友禅の特徴の一つは彩色をするとき…。
こうすることで花びらが丸みを帯びてくるように見えてきますよね。
一枚一枚丁寧にぼかしを入れていくのですが外側が濃く内側に向かい少しずつ薄くなっていくのが加賀友禅に多く見られる特徴です。
更に虫喰いや枯葉があります。
自然の中にある葉っぱは初々しいものもあれば虫に食われていたり枯れていたりしているものもありますよね。
加賀友禅はそんな自然のありのままの姿を美しいものとして捉え描き出すことを大切にしているのです。
まさにアメージングでございます。
私この技に恋してしまいました。
また恋したの?父に何か聞きたいことがありましたらどうぞ。
はいはいえっとこのお仕事をやっていていちばん大変なことは何ですか?そうですねこの仕事は一つひとつが手描きなんで二度と同じものができないと。
一枚一枚自分の思いを作り上げていくのが私たちの仕事なんです。
貴様からも質問ございませんか?辞めたいと思ったことはないんですか?そうですね毎日毎日こうやって家の中で仕事しているからたまに外へ出てのんびりしたいかなってそういうことを思ったことも何度もありますね。
じゃあなんで続けてこられたんですか?長いことやっているから自分の仕事がこれかなこういう仕事かなと思ってるんです。
なんでも続けることが大事なんです。
結局こういう人生でよかったかなと思ってるんです。
これで友禅の作業は終わりではありません。
彩色が終わったら模様以外の部分生地全体の色を塗っていく地染めという作業に移ります。
更に地染めが終わったら本蒸しが行われます。
これは生地を蒸すことで繊維が膨張し染料が組織の中に入ってより生地に定着させるための作業です
ここまで何人もの職人の手を経てきた加賀友禅のバトンは最後に友禅流しという作業に引き継がれます。
今やってると思うのでご案内しましょうか。
イエスイエス。
あの方が地染め師の荒木順一さんです。
昔はこの浅野川で友禅流しを行う職人さんもたくさんいたんですが今は人工の川でやられる方ばかりで昔ながらの方法で友禅流しを行うのは荒木さんともう1人しかいらっしゃいません。
いよいよ加賀友禅300年の伝統を守る匠の技が見られるんでございますね。
加賀友禅で最後の作業です。
友禅流しが始まるのは早朝から。
自然の川で作業するので天候などの影響を受け毎日状態が違います。
なのでまず職人は…
反物を傷つけてしまうものがないか川底の状態を確認します。
もしも川の流れが強い場合は職人は
そしてすべての準備を終えたところでやっと友禅流しが開始されます。
金沢の冬の風物詩として親しまれてきた友禅流し。
日中でなく早朝なるべく水温が低い状態で行われるのには理由があります。
水が冷たいと生地の繊維の透き間が閉まり染料が外に出なくなり反物に色がより定着するからなんです。
また荒木さんは糊の落ち具合を確認するためどんなに水が冷たくても必ず素手で行うそうです。
こうした職人さんの情熱に支えられ加賀友禅の着物は300年に亘って受け継がれてきたのです
すごいでございます。
こんにちは。
こんにちは。
こんにちは。
え〜と荒木さんはこの仕事をやって何年になるのでございますか?親父の跡を継いで2代目で今年で40年になりますかね。
お父さんの跡を継ぐことに迷いはなかったんですか?それですね親父が仕事できなくなるとあと誰もする人がいないもんですから私も長男っていうこともあったもんでそれでその跡を継いでこの仕事をやったと。
もしよかったら僕にも友禅流しやらせてもらえませんか?そんな難しい仕事でもないですからね。
どうぞどうぞいいですよ。
ありがとうございます。
川底の石滑りますから気をつけてくださいね。
はい。
これが生地の端っこだからこれを順番に川へ水の中へ浸けて。
はい。
そういう要領になりますから。
はい。
端っこね水にまず入れて。
はい。
そしたら流れがずっと持ってってくれるから。
手に添えながら。
順々に順々。
うわ〜すごい。
マリーわかった?う〜マジで冷たい。
ほんとでございます。
でも職人さんは毎日これやってるんだもんね。
マリー。
隠してたことがある。
なんでございますか?実は…。
マリー隠してたことがある。
なんでございますか?実は…。
うちの親父も職人なんだ。
えっ?ハンコを作ってる職人なんだ。
ハンコ?でも俺親父のやってる仕事が大嫌いでさ。
朝から晩までハンコばっかり削ってほんとつまんない仕事だなって嫌ってた。
でも今回マリーと一緒にいろんな職人さんに会って職人は地味で華がない仕事なんかじゃないってわかった。
みんな自分の仕事に誇りを持って毎日悩みながら自分の仕事に向き合ってる。
きっと親父もそうだったんだろうなって。
そう思えたのはマリーのおかげだよ。
ありがとう。
お〜い!あったかい豚汁あるでございますよ。
似合ってるよマリー。
ほんとでございますか?うんほんと。
嬉しいでございます。
巧。
あれ?貴様じゃなくて初めて巧って呼んでくれたね。
からかうとまた殴るでございますよ。
もう殴ってんじゃん。
髪形も似合ってんじゃん。
これって。
あっそれマリーのと似てるね。
いらっしゃい。
それは全部九谷焼です。
九谷焼というのはね江戸時代から伝わるね石川県特有のね磁器なんです。
これはね山水花鳥といってねいろんなそういうものをね色鮮やかに塗ってあるでしょ。
これ焼いてあるものだから何百年経っても色が変わらない。
これなんかはね九谷焼の着物の帯留めです。
帯留め?帯留め。
ああマリーのそれ帯留めだったんだ。
ちょっといいですか?はいはい。
見せてください。
えっはい。
間違いない。
これ私が作ったものですね。
え?えっと45年前に知り合いの人に作ってあげたものです。
マリーこれって。
マリー?やっとやっと見つけました。
あなたにずっと会いたかったんです。
えっ私に?私45年前にこの街にいたエレンの孫です。
エレン。
どういうこと?おばあちゃんのこと覚えてますか?もちろん覚えてますよ。
これ作ってあげた人ですから。
45年前にカナダからホームステイに来た女性に…。
私はまだ若かった。
その方が好きになってしまった。
恋をしたんです。
でもまだ45年前というとあまり国際結婚には寛容ではなく2人で話し合った末別れることに決めました。
その時に彼女に作ってあげたのがこの帯留めです。
じゃあマリーが言ってた…。
これは…これは大切な人にもらったものでございます!おばあちゃんだったのか…。
それでエレンは元気なんですか?おばあちゃんは今回一緒に日本に来るはずでした。
でも半年前に体調を崩して亡くなりました。
おばあちゃんは私が小さい頃から日本の思い出をたくさん話してくれました。
日本語を教えてくれたのもおばあちゃんです。
だから私は日本が大好きになったんです。
そうだったんだ。
これはおばあちゃんが出そうとしていたハガキです。
これなんと書いてありますか?「すばらしい思い出をありがとう」。

匠の技に恋をしたマリー。
そんな彼女に僕巧が恋をしてしまった
そしてマリーが帰国する日がやってきた
いよいよ今日でお別れだね。
はい。
3日間お世話になりましたでございます。
あっノート出して。
うん…イエー。
ホワイ?いいから。
これ。
これは…。
ハンコ欲しがってたから。
だから彫った。
巧が?昨日親父のところ行って教わってきた。
まあ…あんまうまくできなくて。
棒がちょっと短くなっちゃったけどね。
まさにアメージングでございます。
じゃあ私からもハンコを。
え?ありがとう。
僕のほうこそありがとう。
じゃあ行くでござる。
今度僕がカナダ行くから!待っているでございます。
あれ?ちょっと待てよ。
大阪金沢までの交通費に包丁途中の買い食い着物の着付け…。
っておいこれ3日間ですごい出費だぞ…。
なのにほっぺにチューだけなんて。
まっいっか。
マリー役のテイラーさんオールアップです。
この後演技初挑戦で実は日本語もほとんど話せなかったマリー役のテイラーさんから撮影を終えた直後涙の感想です
マリー役のテイラーさんオールアップです。
おめでとう!お疲れさまでした!2016/01/06(水) 23:58〜00:58
テレビ大阪1
彼女が恋した職人さん 〜マリーは匠に首ったけ〜[字]

“和”をテーマに、“匠の技”と“職人”にスポットを当てる異色のドラマ。和田巧(千葉雄大)は、とある目的で来日したカナダ人女性と伝統ある和の職人探しをすることに。

詳細情報
番組内容
大学で「日本の職人の技」をリポートするために来日したカナダ人女性のマリー(テイラー)。職人嫌いの大学生・和田巧(千葉雄大)は、恩師に頼まれてマリーのアテンドをすることに。いろんな職人らの元を訪れていくうちに、最初は気乗りしなかった巧も、マリーに惹かれつつ和の魅力に気付いていく。実はマリーには、どうしても会いたい和職人がいるのだという。マリーが探す職人とは?そして、巧が職人を嫌う理由とは?
出演者
 和田巧…千葉雄大
 マリー・コーデリー…テイラー
監督・演出
西古屋竜太
ホームページ
http://www.tv-tokyo.co.jp/shokuninsan/

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

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