今スィエットから電話があって…。
ゲットしたの?人類が生み出した負の遺産と戦い続ける日本人がいる。
元自衛官だ。
村のあちこちから回収される地雷。
カンボジアでは内戦が終わって20年以上たってもいまだ数百万個埋まっているという。
高山さんは9年前からそれを一つ一つ爆破処理し豊かな畑に変えてきた。
少しずつ広がっていく安心な暮らし。
しかしもう一つ復興に欠かせないものがあった。
それは現地の人々の…道路の問題。
それから学校の問題。
それから井戸の問題。
村ではさまざまな課題を自分たちで解決しようという意識が育っていないのだ。
(高山)いわゆるハードできますよ。
地雷原を切り開いた大地に自立の心は芽吹くのか。
高山さんと村人の日々を追った。
カンボジアではポル・ポト軍と政府軍が衝突するなど1970年から20年以上内戦が続いた。
敵の殺傷と自衛のため国中に地雷が埋められていった。
カンボジアの中でもとりわけ激しい戦闘の舞台となったのが北西部にあるタサエン地区。
最も多く地雷が埋められた場所の一つだ。
地雷原の中で人々はどのように暮らしてきたのか。
その現実がかいま見える場所に高山さんが案内してくれた。
歩いてくる男性は両足が義足だった。
元ポル・ポト軍の兵士コイ・デンさん。
右足は内戦の時地雷で失った。
もう一方の左足を失ったのは内戦が終わったあと。
畑を作るため森を切り開いていた時地雷を踏んだという。
体に刻まれた恐怖と闘いながらコイ・デンさんはその後も農地の開墾を続けた。
あら。
もらった…。
もう〜いっぱいくれるなあ。
今は苦労を重ねて開いた畑で果物を作り暮らしている。
こうしたカンボジアの実情に対し日本をはじめ先進国は多額の支援をしてきた。
去年の援助額はおよそ8億ドル。
国家予算の3割を占める。
そうした支援は時に新たな問題を生むと高山さんは言う。
月に一度タサエンの村長や有識者が集まる会議。
村のさまざまな課題について解決策を話し合うはずだったが…。
苦笑いの高山さん。
村長たちは課題の解決策として支援を第一に考えるようになっていた。
まずオートモ地区に小学校を。
これも私もよく分かります。
高山さんは45歳の時自衛隊初のPKOでカンボジアに派遣された。
傷ついた国に道路や橋を造る仕事に強烈なやりがいを感じたという。
しかし半年後志半ばで帰国命令を受けた。
定年後自衛隊で身につけた地雷の専門知識を生かそうとタサエン地区で活動を始めた高山さん。
そこで目にしたのは想像以上の現実だった。
頻発する農作業中の事故。
村人たちは未来さえ思い描けずにいた。
こうして9年前高山さんはタサエン地区で地雷処理プロジェクトを立ち上げた。
カンボジアの復興には住民の自立が欠かせない。
そう考える高山さんはプロジェクトに住民を積極的に参加させる事にした。
村人たちを訓練しデマイナ−地雷処理員として雇用した。
このデマイナ−たちの存在をきっかけに人々の意識が変わっていくと高山さんは信じている。
この日埋まっている地雷を探すのは山の斜面。
かつて戦闘が行われた場所だ。
デマイナ−たちが金属探知機の音に耳を澄ませ少しずつ前進する。
(金属探知機の警告音)この異常な音は地中に金属の塊がある証拠だ。
(金属探知機の警告音)地雷は上から触ると爆発する可能性があるため側面から少しずつ土を取り除いていく。
見つかったのは爆発した迫撃砲弾の一部だった。
弾薬など地雷以外の金属も無数に埋まっているのだ。
(取材者)100%?
(高山)そうそうそうそう。
地雷や不発弾を爆破処理するのも高山さんとデマイナ−の仕事だ。
ター!ター!OK?OK。
爆風で石が飛んでくる事もあるため150メートルは離れる。
休日村の中でもとりわけ貧しい地域を訪ねた。
そこにデマイナ−の一人ソクヘインさんの自宅がある。
子どもの頃から続いていた厳しい生活。
17歳の時デマイナ−の募集を知り危険を承知で応募した。
収入のためには背に腹は代えられなかったという。
3年前に結婚した夫のラエンさん。
妻の仕事に複雑な思いを抱えている。
ソクヘインさんもかつては夫と同じ気持ちだった。
しかし今ほかに働き口がある状況になってもデマイナ−を辞めるつもりはないという。
自分の村は自らの手で守る。
自立の心が少しずつ芽生えていた。
高山さんはデマイナ−以外の人たちにも村を思う気持ちを持ってほしいと考えている。
この村ではゴミは捨て放題なのが当たり前。
しかし高山さんは各自でゴミ箱を作り村をきれいにするよう働きかけてきた。
ちょっと行きますか?しかし簡単には理解してもらえない。
「ゴミを捨てたのでお金をもらえないか?」と話す村人もいた。
ふだんはおじいさんと慕われる高山さんの突然の雷。
村人たちは素直にゴミを拾い始めた。
その厳しさが村を思う証しである事は皆分かっているのだ。
OKOK。
グッドグッド。
あ〜疲れた。
一人一人の小さな努力が自立の芽を育んでいく。
その芽を大きく育てる事が高山さんの目標だ。
分かったか?OK。
サンキュー。
なぜこの村のためにそこまでやるのか?そう尋ねると高山さんがある場所に案内してくれた。
2007年に起きたデマイナ−事故。
その慰霊碑だ。
事故は高山さんが一時帰国するため村を離れていた時に起きた。
犠牲となったのは若手のデマイナ−たち7名。
対戦車地雷の処理を誤り爆発に巻き込まれた。
高山さんは4年前ふるさと愛媛県を拠点にNPOを立ち上げた。
日本で集めた寄付金を元手に自立の糧となる事業の拡大を図っている。
村で初めての酒造りの会社。
あえて現地の人を代表にした。
将来はカンボジア焼酎として世界の国で売れるようにと味にこだわった。
原料は地雷を取り除いた畑で村人たちが作ったキャッサバイモ。
既に国内の観光地などへ出荷が始まっている。
村の自立に奔走する高山さんは無料の日本語学校も開設している。
(子どもたち)「やすい」。
(先生)「たかい」。
(子どもたち)「たかい」。
(先生)「おいしい」。
(子どもたち)「おいしい」。
(先生)「ひま」。
(子どもたち)「ひま」。
一人一人のレベルは上がり日系の工場に就職する卒業生も増えている。
(子どもたち)「やさしい」。
(先生)「やさしい」。
(子どもたち)「やさしい」。
(先生)「やさしい」。
(子どもたち)「やさしい」。
更にもう一つ大きな成果が現れつつあった。
変わり始めた子どもたちの意識。
授業前誰に言われるでもなく教室を掃除していた。
・「今負けそうで泣きそうで消えてしまいそうな僕は」・「誰の言葉を」カンボジアの村に入って9年。
自立の心は多くの人々に芽吹き始めている。
2016/01/07(木) 00:10〜00:40
NHK総合1・神戸
NEXT未来のために「自立の芽を育てる〜カンボジア地雷原からの報告〜」[字]
カンボジア・地雷原の村に飛び込んだ元自衛官。村人を訓練し、共に地雷処理を行う。「物や金を与えるのではなく、自立する心を育てる」真の復興をめざし奮闘する姿を追う。
詳細情報
番組内容
膨大な地雷が埋まったカンボジアの辺境地。十分な農地もなく貧困がまん延していた村に、自ら乗り込んだ元自衛官がいる。高山良二さんは、村人たちを訓練し、地雷処理チームを組織。次々と地雷原を緑の畑に変えてきた。「多くの国が金や物を落としてきたが、それが逆に支援への依存体質を生んだ」という高山さん。“自立する心”を育てようと、村人と一緒に汗を流し、時には怒りをあらわにする。真の復興をめざし、奮闘する姿を追う
出演者
【出演】NPO理事長…高山良二,【語り】向井理
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
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