生涯をかけ多くの虫を見つめてきた。
観察の中で私は気付いた事がある。
虫たちの小さな体の細部まで全てに意味があり役目がある。
そこには人類を豊かにする驚くべき機能が隠されていると
昆虫が誕生しておよそ4億年。
厳しいサバイバルを勝ち抜いてきたムシたちは皆驚異のテクノロジーを身につけています。
セミの危険を察知した時の素早い飛び立ち。
2枚の羽がフックで合体。
1枚の大きな羽として使うからできるのです。
そんなムシたちのテクノロジーに今次々と注目が集まっています。
硬い背中に羽をしまったカブトムシ。
そのしまい方が巧みでさっと開いてすぐに飛び立てます。
これはなんと宇宙空間で素早く広がる太陽光パネルと同じしまい方なのです。
更に医療の分野でもムシのテクノロジーが応用されようとしています。
やっかいものの蚊。
相手に気付かれないように痛みを与えず血を吸います。
そのテクノロジーからこれまでにない注射針が開発されようとしています。
エネルギーの分野でも改革を起こそうとしています。
昆虫界の空の王者トンボ。
その優れた飛行能力の研究から自然エネルギーの世界に革命が起きようとしています。
世界の産業も変えようとしているムシの技術。
去年ドイツで開かれた産業見本市でドイツのメルケル首相が手に取ったのはなんとムシのロボットでした。
ムシたちが秘めた可能性は今最先端の研究者のヒントにつながっています。
まるで信頼する教師からとても良いアイデアを教えてもらうようです。
つまり自然からアイデアを借りてくるのです。
進化の過程で生物が手にしたすごい能力をまねする事で今までより便利で環境に優しい製品ができるかもしれません。
続々と発見されるファーブルさんもびっくりのムシのテクノロジー。
それが変えるかもしれない私たちの未来を見ていきましょう。
先生今日は何を観察してるんですか?うん我々にとってとても身近な虫だよ。
へ〜なんです…か!?何で蚊なんか観察してるんですか?知ってるかい?蚊はね血を吸うのは産卵前のメスだけなんだよ。
え?メスだけなんですか?そう。
ふだんはね樹液や花の蜜を吸って穏やかに暮らしてるんだがおなかの卵を育てるためにはもっと栄養価の高い血を吸う必要があるんだな。
人間にパシッとたたき殺される危険を冒してもだな。
へ〜蚊も子孫を残すために命懸けなんですね。
そうそういった行動の中に我々が知らない不思議がまだまだ隠されているんだ。
あ〜でも見てるだけでかゆくなってきますよ。
ああここに穴があいてたな。
ちょっと勘弁して下さいよ!あ〜刺されてる!いつの間に。
もうかゆい。
ピエール君!それだ。
え?蚊はね相手に気付かれずに刺す事ができるんだ。
しかしそれはなぜかなぁ?針が細いからじゃないんですか?この虫眼鏡でも小さすぎて見えん。
どうすればこの不思議が分かるんだ!刺されても気付かない蚊の不思議。
残念ながらファーブル先生の時代はその真相を知る事ができませんでした。
しかし100年後の現代の技術はその不思議を読み解く事を可能にしました。
長い進化の末に蚊が獲得した驚きの能力とは一体どのようなものでしょうか。
体長1センチにも満たない蚊。
私たちの皮膚を痛みもなく刺し血を吸い上げていつの間にか去っていきます。
かゆくなって初めて気付く。
なぜ私たちは刺されても痛みを感じないのでしょう。
体長の2割にも達する長い口。
髪の毛と同じくらいの太さです。
実際に蚊が刺すところ見てみましょう。
人間の皮膚に降り立つと針を刺しぐいぐい奥に刺し込んでいきます。
しかしこの時人間は痛みを感じていません。
血を吸い始め針が赤くなってきました。
蚊は自分の体重ほどの血を吸い上げます。
ここまで血を吸っても気付かれる事はありません。
おなかはピンポン球みたいに膨らんでいきます。
そして針を抜くと…飛び去りました。
蚊は刺した事に気付かれるとたたき潰されてしまいます。
そこで針を刺しても痛くないメカニズムを進化の過程で獲得してきたのです。
なぜ刺されても痛くないのか。
その秘密を探るため最新のデジタルマイクロスコープで撮影。
人工皮膚と人工血管を用意して観察します。
蚊が人工皮膚に針を刺しました。
すると中から何かが出てきました。
どんどん皮膚の下に伸びていきます。
あの口の中に格納されていた細い針です。
更に高感度のカメラを使って人工皮膚の中での針の動きを撮影します。
蚊の針は何か不思議な動きをしているように見えます。
すると…。
ついに決定的な瞬間を捉えました!蚊の針の外側が交互に動いています。
一体どうしてこんな動きをしているのでしょうか。
蚊の針の構造を詳しく見てみましょう。
不思議な動きをしていたのは針の先端です。
太さは僅か100分の5ミリ。
両脇にギザギザがついた構造になっています。
実はここに痛くない秘密があったのです。
蚊の針は人が痛みを感じる痛点をすり抜けるだけの細さを持っています。
通常の針の場合皮膚を巻き込んでゆがめてしまいます。
すると痛点が刺激され「痛い」と反応してしまうのです。
そこであのギザギザの構造です。
蚊はまず小さな穴をあけそこにギザギザを滑り込ませます。
ギザギザがあると皮膚を巻き込む事なくスムーズに入っていきます。
これを繰り返して少しずつ掘り進めていたんです。
周囲の痛点への刺激は最小限ですみます。
なんと蚊は針を突き刺すのではなく両側のギザギザを使って掘り進んでいました。
皮膚への影響を最小限に抑え痛みの発生を抑えていたのです。
この蚊の技術を応用した痛くない注射器の研究が進んでいます。
「お茶を見つけてつかみます」。
研究しているのはなんとロボット工学の博士です。
「お茶を持ってきました」。
蚊の精密機械のような針のメカニズムに感心して研究を始めました。
10年来蚊の研究に取り組んできた青柳博士。
去年新たな注射器を生み出し注目されました。
なんとロボット工学を応用した注射器。
形は注射器にはとても見えません。
その先端についているのが青柳博士が開発した最先端の注射針。
拡大して見てみましょう。
この針蚊と同じようにギザギザがついています。
しかも機械仕掛けで左右交互に動くんです。
見事なまでに蚊の針の動きが再現されています。
さまざまな血液検査への応用が期待されています。
今マイクロTASという技術があって…それと組み合わせれば…僅か0.1ミリの蚊の口に秘められたテクノロジーが臨床検査など世界の医療を変えようとしています。
先生!何してるんですか?し〜っ!静かに。
何なんですか?ふ〜む…。
だから何なんですか?ああやっぱり切れた。
今切れたこの糸が綿の糸だ。
そしてとっくに切れてしまってるのがこの羊毛の糸。
最後まで残ってる丈夫な糸がシルクだ。
シルクってこのつやつやしたやつですか?そう。
この絹の糸がね繊維の中で丈夫な糸だと聞いていたんで検証してみたんだ。
ふ〜ん。
うわあ!イモムシはちょっと…。
ハッハッハ何を情けない事を言ってるんだ。
このカイコが希少なマユを作ってくれるから我々人類は丈夫な絹の糸を手にする事ができるんだ。
いやそれはそうですけど…。
このマユはねのばすと1,200m以上にもなる一本の糸で作られてるんだ。
えっ?これ一本の糸で出来てるんですか。
気持ち悪い。
なぜカイコはこんなに丈夫で長い糸を作る事ができるんだ。
全く驚くばかりだ。
いや〜不思議だなぁ。
カイコのマユから取り出す絹糸シルク。
この古くからある糸にも医療の現場での期待が高まっています。
まず注目されているのはこの糸の強さです。
シルクは天然繊維なのに鉄と匹敵する糸だと言われてきました。
実際に切って強さを確かめてみましょう。
シルクと鉄を主成分とするステンレスの糸を比較しました。
結果はその差僅か160g。
違いはほんの僅かでした。
カイコはなぜそんなに強い糸が必要なのでしょうか。
その理由は幼虫からさなぎそして成虫へと変化していくカイコの一生にあります。
その生涯で最も重要になるのがマユ作りです。
カイコはたった一本の糸でマユを作ります。
その長さは1,200m以上。
マユの中でさなぎとなり更に成虫になります。
この間動く事もできず生涯で最も無防備な時です。
そこで天敵や風雨から身を守る強力なシェルターが必要です。
それがマユなのです。
吐き出した糸の太さは100分の2ミリ。
しかし鉄にも匹敵する強じんな糸です。
この糸をカイコがどうやって作っているのか詳しく見てみましょう。
糸を吐き出す瞬間をガラス越しに超拡大レンズをつけたハイスピードカメラで撮影しました。
これはカイコの口を下から見ています。
黒いギザギザが葉っぱを食べる口。
その下にあるのが僅か100分の3ミリの糸吐き口です。
これがカイコが糸を生み出す瞬間です。
首を大きく持ち上げて糸を引っ張っていきます。
実はカイコは糸を吐くのではなく首を振りながら体内から引っ張り出していたのです。
そのスピードは1分間に60センチ。
口から糸を引っ張り出す事でどうして鉄並みの強さが生まれるのでしょうか。
糸の製造工場体内の仕組みはどうなっているのか。
カイコの体内の模式図です。
体内では糸は液体です。
そこにヒモのようなものが丸まって浮いています。
このヒモ一つ一つが糸のもとです。
カイコがマユを作る時にはその液体全体が引っ張られます。
するとヒモも引っ張られて形が伸びます。
ヒモの触手が離れて外側に向くのです。
この触手は強力な磁石のような性質を持っています。
違う色同士はくっつきますが同じ色では反発します。
やがて細い口にたどりつくとぎゅっと圧迫され触手は次々に網の目のようにくっついて全体が一つに結び付いていきます。
こうして引っ張られ圧縮される事で鉄にも負けない強さが生み出されるのです。
カイコが自分の身を守るために生み出した強い糸。
このシルクが先端医療を変えようとしています。
30年もシルクの強さの解明に取り組んできた研究者がいます。
朝倉博士が今研究しているのはカイコの糸でつくった人工血管です。
人間の血管には強い圧力がかかります。
この人工血管の糸は天然素材にもかかわらずそれにも耐える強さがあるというのです。
こういうふうなものは…それをどうしても…カイコの糸の強さを生かして誕生した直径6ミリに満たない人工血管。
更にこの人工血管をテストすると不思議な事が起こりました。
体内の様子を特別な顕微鏡で見た写真です。
白がシルクの人工血管赤が体内の組織です。
なんと人工血管は徐々に溶けていき代わりに自分の血管に置き換わっていったのです。
1年後の写真です。
シルクの人工血管の7割が無くなり本物の血管が再生されていました。
カイコの糸の成分は人間の細胞の主成分と同じタンパク質。
もう一つのカイコのテクノロジーが見えてきました。
こうしたシルクが秘めていた特殊な技術を生かして新たな研究も進んでいます。
このクリームを傷口に塗ると皮膚や血管毛根まで再生し傷痕が残りにくい事が分かってきました。
更に目尻のしわの気になる女性にクリームを3週間塗るとなんとしわが浅くなったのです。
細胞にものすごくなじみやすいタンパク質というのはあんまり地球上にあるわけではない。
きっとないと思うんですね。
先生!大ニュースです。
何だ騒々しい。
アメリカのライト兄弟がついに飛行機を完成させたらしいのです。
とうとうやったか!はい!鳥のように自由に空を飛びたい。
人類の夢がまた一つかなったんですね。
あ〜空を飛ぶってどんな感覚なのかな。
う〜ん…人間は鳥をよき先生として飛ぶ事を学んだんだな。
大自然は常に我々の先を進んでいる。
はっ…先生。
虫も空を飛びますよね。
うん。
その事から何か分かりませんか。
虫の飛翔か。
まあこうして見てみると虫の羽も多種多様だな。
使い方飛び方もまたそれぞれ違う。
そういった中に我々が知らない秘密がまだまだ隠されているんだなぁ。
さすが先生。
我々も飛行機に負けていられないですね。
うん。
しかしこうして標本を見てるだけでは分かる事に限りがある。
ああ…どうすればこの不思議が分かるのかなぁ。
空を飛ぶ飛行機の原理を応用した風力発電機が今世界中に急増しています。
導入量はこの20年でおよそ100倍。
自然エネルギーの代表格です。
ところが日本の多くの地域では…大型風車を回せません。
このエネルギーの問題にも新たな光を与えてくれるムシがいます。
風を切って飛んできたトンボ。
目にも留まらぬ速さです。
上下左右に自由自在複雑な動きで飛んでいます。
昆虫界の空の王者トンボ。
鳥にも負けない昆虫界屈指の飛行能力を誇っています。
その姿ハイスピードカメラで捉えてみました。
これぞ元祖のトンボ返り。
そして空中でのUターン。
更に独特の飛び方を発見しました。
この日ほとんど風もないのに華麗に空に浮かんでいました。
一体どうして風もないのに飛ぶ事ができるのでしょうか。
トンボの進化のテクノロジー探ってみましょう。
まずはトンボの羽をじっくり見てみます。
厚さは1,000分の3ミリ程度の極薄です。
よく見ると細い骨格が複雑に張り巡らされそこに薄い透明な膜があるだけ。
更に拡大してみます。
すると…なんと羽はでこぼこ!平らではありません。
しかもかなり不規則です。
この羽のどこに我々の知らないテクノロジーが隠されているのでしょうか。
まずは通常の飛行のメカニズムを見てみましょう。
飛行機の翼の形は風がその形に沿って流れる事で上の空気が薄くなり浮く力が生まれるようになっています。
しかし僅かな風では流れが乱れ浮かせる力は生まれません。
そこで飛行機はジェットエンジンなどで高速飛行しなければならないのです。
一方でこぼこの羽で弱い風の中を滑空するトンボ。
その秘密を探るため空気の流れを見てみます。
風洞実験装置に実物のトンボの標本を入れて羽に注目します。
空気の流れを見やすいよう煙が筋状に出てきます。
風速は2m。
飛行機では浮き上がれない弱い風です。
そこにレーザーで色をつけて見やすくしました。
さあ何が見えるでしょうか。
ハイスピードカメラが捉えたのは不思議な空気の流れでした。
通常空気は物体に沿って流れますがトンボの羽はでこぼこの谷間に空気が流れ込まないのです。
この羽のでこぼこの形には一体どのような秘密があるのか。
トンボの羽の構造を10倍に拡大した模型を使い更に詳しく見てみます。
すると…。
羽の上の谷間そこには強い渦が生まれていました。
下の谷間には構造上そうした渦は生まれていません。
そのため羽の上下で流れるスピードに差が生まれていたのです。
速さの違い確認してみます。
流れに穴をあけて通り過ぎる上下の速度の違いを見てみます。
穴がやって来ました。
すると谷の上を加速しながら通過しました。
弱い風の中でも起きる上下の空気のスピードの違い。
これがトンボの羽のでこぼこの秘密だったのです。
トンボの羽のメカニズムです。
でこぼこの谷間に風が巻いて渦が発生しています。
その渦が車輪のように回転し羽の上の空気を加速させていました。
こうして上の空気と下の空気に速さの違いが生まれ浮く力が発生します。
トンボの羽は極めて弱い空気の流れでも浮く優れものだったのです。
このトンボの羽のでこぼこ技術を応用して新しい取り組みが始まろうとしています。
航空や宇宙など空の専門家…小惑星探査機はやぶさにも携わっていたエンジニアです。
その小幡博士が今開発しているのがこちらです。
これは風車でこちら側から風が来るとこうやって回るんです。
これはトンボのあのでこぼこをつけた風車の羽根。
小幡博士の取り組みはトンボのでこぼこの羽を応用した風力発電機です。
この日は大型風車では回らない僅か3mの風速で発電していました。
このトンボの風車の仕組みを見てみましょう。
トンボの風車は少し角度をつけています。
そこに風が当たるとでこぼこに渦が発生します。
これにより空気の流れの速さが変わり空気の薄い方に引き付ける力が発生します。
これが羽根を回す力となったのです。
非常に弱い風でも渦を発生させ回転を加速できます。
どれほど弱い風で発電できるのか実験してみました。
同じサイズの風車ででこぼこのないものと比べてみましょう。
40。
少しずつ風を流すとトンボのでこぼこの風車が先に回り始めました。
45。
その時の風速はなんとたったの0.5mでした。
かすかな風でも回るトンボの風力発電。
日本のエネルギー問題に新たな光を照らそうとしています。
1ケタまでいくかどうか分かりませんけども…トンボの技術を使った風力発電が世界のエネルギー問題解決に貢献する日も遠くないかもしれません。
人間のエネルギー問題にもさまざまなヒントを与えてくれるムシたち。
更なる可能性を秘めたムシが海辺にいます。
(針山)せ〜の!あ〜すごい大きいのいたけど残念。
こちら生物学者の…なんとフナムシにほれ込んだ研究者です。
(針山)初め見た時に「あっこわい」と思いますけど。
実は針山博士フナムシがとんでもない方法で水を取り込む技術を持っている事を発見したんです。
特別に水に食紅で色をつけて与えます。
注目は後ろ脚の2本です。
つま先を見て下さい。
地面の水が吸い上げられて無くなります。
もう一度見てみましょう。
なんとフナムシは脚から水を吸い上げていたのです。
今度はシャーレの裏側から見てみます。
画面左の一つになった2本の脚とおなかに注目して下さい。
水が脚から上がっておなかが赤くなっていきます。
それにしてもどうやって水を上げているのでしょうか。
脚を横から見ると水は表面を伝ってどんどん上がっていきます。
フナムシは水が自動的に上がっていく脚を持っていたのです。
どうしてフナムシの脚は自動的に水を上げる事ができるのでしょうか。
先ほどの赤い水を上げた脚の表面をアップで見てみましょう。
すると溝のようなものが続いているのが見えます。
これが水を上げていく道なのです。
倍率を上げると外側は密で狭く真ん中には広い間隔でうろこのようなものがたくさん並んでいます。
これは毛細管現象と言われる力を利用しています。
布を浸すと水が吸い上げられます。
これが毛細管現象です。
しかし普通水は重力に引っ張られてすぐに上がる速度は遅くなります。
しかしフナムシの脚は違います。
水が上がるスピードが落ちる事はありません。
その上がり方にテクノロジーが隠されています。
両側が早く真ん中が後から上がっていきます。
一体どういう事でしょうか。
フナムシの溝の外側は細い毛が狭い間隔で並んでいて速いスピードで水が上がります。
一方内側はうろこ状になっており間隔が広くたっぷりの水がゆっくり上がる仕組みです。
それを先に上がっていく外側の水が引っ張り上げていきます。
関節ごとのフシがいっぱいになると次のフシに上がります。
重力で下に引っ張られますがフシがあるとそこをスタート地点にして更に引き上げていく事ができます。
これでより多くより高く水を引き上げる事ができるのです。
なぜフナムシはこの脚を獲得したのでしょうか。
実はフナムシが生きる海辺は潮の満ち引きが激しく常に波にさらわれかねない危険があります。
更に鳥やカニなど天敵も心配です。
そこで素早く水を飲めるように体を適応させていったのです。
針山博士は工学者の石井大佑博士と手を組んでフナムシの構造から学んで新たな発明品を生み出しました。
それがこちら。
一見ただの板のように見えますがフナムシのテクノロジーが詰まっています。
水につけるとあの脚のように両側が早く上がり中央を引っ張り上げながら水をたくさん早く上げます。
拡大して見てみるとフナムシと同じです。
両側は細い毛内側はうろこ状の広い構造です。
フナムシ自体はたった2センチぐらいしか水を上げれてないんですけども…例えば高層ビルにフナムシの脚のテクノロジーを応用した仕組みを用意。
それだけでエネルギーを全く使わずに屋上まで水を上げる事を目指しています。
18世紀ごろに起こりましたけども…それを踏まえた上で…医療現場で注射針に革新をもたらす蚊の針。
傷をきれいに治してくれるカイコの糸のクリーム。
更にエネルギー問題に新たな光を与えてくれるトンボ。
フナムシはエネルギーを使わず水をどこまでも上げられる可能性を示してくれました。
ムシたちが秘めていたテクノロジーは今人類の未来を着実に変えようとしています。
先生。
あれ?さっきまでいたのに…。
うわあっ!先生!こ…ここに入っては駄目です。
ピエール君これは何だ?手のシワがこんなに大きく見える。
面白いな!駄目です!先生これは先生の時代にはなかったもので。
何を訳の分からん事を言ってるんだ。
よしこれで虫を見てみよう。
すごい発見になるぞ。
駄目です。
離せ。
離しません。
私はすごい発見を目の前にしているんだ。
君は邪魔をするな!離せ!ファーブルはおよそ30年をかけかの有名な「昆虫記」を書き上げました。
もし少しだけ時代が違っていれば更に大きな発見をしていた事でしょう。
人類がようやく気付き始めたムシたちの驚異のテクノロジー。
もしかしたらあなたの隣のムシも世の中をもっともっと変えてくれる驚くべき能力を秘めているかもしれません。
2016/01/06(水) 20:00〜20:43
NHK総合1・神戸
ファーブルもびっくり! ぞくぞく発見!夢のムシ技術[字]
蚊の針、カイコの糸、トンボの羽…、最新鋭のスーパーカメラが捉えた驚くべき虫たちのメカニズム。そこから生まれた人類の未来を変える最新テクノロジーの数々を紹介。
詳細情報
番組内容
数億年もの生存競争を勝ち抜いてきた「ムシ」たちの驚異のメカニズムが人間社会を変えようとしている。先端医療に変革をもたらすのは、人間に痛みを感じさせずに血を吸う「蚊」や強くしなやかな糸を作る「カイコ」。高性能な羽を持つ「トンボ」や自動的に水を吸い上げる脚を持つ「フナムシ」はエネルギー問題解決のヒントに!ファーブル博士(津川雅彦)と助手ピエール(渡部豪太)の二人が驚くべき虫たちの世界へといざなう。
出演者
【出演】津川雅彦,渡部豪太
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
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