タイムスクープハンター セレクション「爆笑!ものまね大作戦」 2016.01.06


(沢嶋)
その歴史は古い。
動物の鳴きまねや形態模写などは1,000年以上前から伝わる芸能であり今の演劇表現の基本であるという。
文化が成熟した江戸時代。
ものまね芸は庶民の間で大流行した。
豊富なネタとユーモアあふれる表現力で人々を夢中にさせた江戸のお笑い。
その様子を記録するため私はタイムワープした
え〜アブソリュートポジションN757W392E431S084。
ポジション確認。
アブソリュートタイムB3964241年29時16分37秒。
西暦変換しますと1848年7月3日13時41分55秒。
無事タイムワープ成功しました。
コードナンバー913587これから記録を開始します。
沢嶋雄一。
彼はタイムスクープ社より派遣されたジャーナリストである。
あらゆる時代にタイムワープしながら時空を超えて名もなき人々を記録していくタイムスクープハンターである。
町の一角にある居酒屋。
店内は酒に酔った男たちで盛り上がっている。
この辺りに住む職人仲間たちだ。
定期的に集まっては宴会を催しているという。
彼らは職人としての顔の他に特技を持っている
宴会でものまねを披露するのが大きな楽しみになっていた。
そんな庶民の娯楽を追いかけてみる
この時代の人々にとって私は時空を超えた存在となります。
彼らにとって私は宇宙人のような存在です。
彼らに接触するには細心の注意が必要です。
私自身の介在によってこの歴史が変わる事もありえるからです。
彼らに取材を許してもらうためには特殊な交渉術を用います。
それは極秘事項となっておりお見せする事はできませんが今回も無事密着取材する事に成功しました。
宴会を仕切る鳶の末吉の合図でものまねが始まった
あっしからやろう。
一番手で名乗りを上げたのは石工職人太蔵
ネタは歌舞伎の有名なシーンから
よっ成駒屋!
歌舞伎がはやっていた江戸時代はこうした役者のものまねが定番だった。
花形役者の声色やしぐさを売り物にするプロの芸人がたくさんいた。
続いて登場したのは大工の鷹次郎
時の南町奉行。
声色や顔の表情をまねていかにもいそうな人を表現するいわゆる「あるあるネタ」である
じゃ今度俺いくか!
かご職人の周兵衛の得意ネタ。
身近にいる人の特徴を大げさにまねて笑いをとる
まずは舌足らずの…きたきた!
(笑い)
(笑い)
役者ものまねの他に江戸時代に好まれたのは浮世ものまねである。
なまりが強い人の声や老婆酔っ払いの姿など日常を切り取ったものまねも人気があった
すいません。
ハハハハハハ!
(木を切る音のまね)イテテテテテ…。
(笑い)近所の悪ガキ集めて。
といいますと?いいじゃねえかよ。
やめろ末さん。
分かったよ。
辛気くせえな。
まああれだよ。
酒飲みながらこうやって…ちょちょちょちょ…。
そうだ!やってねえよ。
末さん!
宴会のトリをとるのはリーダーの末吉。
一体どんな芸を見せてくれるのだろう
十八番は生き物の形態模写
出てきたぞ出てきたぞ!何だそりゃ。
着物や簡単な小道具を使って仮装し面白いセリフを加えるのが末吉のスタイルだ
面白かったです。
言うなよ。
どうやら生き物のものまねにはマニュアル本があるらしい
中見てえ?はい。
ちょっと見せて下さい。
あんちゃんやれるんじゃねえか?やってみろよ。
いや私は…。
出るだけでいいんだから。
赤貝やってみな!
本部に詳しい情報を聞いてみる事にした
こちら沢嶋。
本部応答願います。
はいタイムナビゲーターの古橋です。
え〜…。
江戸時代に「腹筋逢夢石」という本が出版されたそうですが追加情報をお願いします。
はい「腹筋逢夢石」ですね。
お待ち下さい。
「腹筋逢夢石」は1809年に山東京伝と歌川豊国によって出版された滑稽本です。
犬や虫などさまざまな生き物のまねをした人の姿にセリフを添えた構成となっています。
これを手本にすれば誰でもものまねができるというマニュアル本のようなものでした。
「腹筋逢夢石」は初編が出版されるとたちまち大評判となり翌年には続編も刊行されています。
そうですか。
思った以上にものまねが流行していたんですね。
はい。
ありがとうございました。
ものまねの歴史は古い。
「日本書紀」の火闌降命が水に溺れる様をリアルに表現した演技がものまねの元祖だと言われている。
また猿楽には多くのものまねの演目がある。
江戸時代になるとものまねはプロだけではなくこうして素人の間でも盛んに行われるようになり身近な娯楽として流行していく。
職人たちのものまねで宴会は大いに盛り上がる。
だがこのあと彼らに予想もしない展開が待ち受けていた

(博徒1)ここにいるのは分かってんだよ!
店の外が騒がしい
(太蔵)来ちまった…。
何だよ「来ちまった」って。
賭場?
(博徒1)てめえうそついてんじゃねえぞ!
太蔵は博打に手を出していた。
賭場の借金を返さない太蔵を追いかけ取り立てに来ていたのだ
現れたのは賭場を仕切る親分吉太夫
果たして太蔵の運命は…
間一髪太蔵は仲間の助けを借りて窓から脱出。
私も彼らに同行するため飛び出した
江戸の町を必死に走って逃げた。
彼らが住む長屋へ向かう。
ところが…
いる。
来てる。
賭場の取り立て人は長屋にも来ていた。
家に帰る事もできない非常事態。
一体どうなってしまうのか
よしこっちだ。
どこ行くんだよ。
いいから来いよ。
向かった先は場末の旅籠。
末吉の姉がこの家に嫁いでいる
(お滝)どうしたってんだい!?
事情を説明し助けを求める
ひとまずこの旅籠に身を寄せる事になった
(鷹次郎のため息)おめえよぉ…そうだよ。
3両!?お前バカじゃねえの?どうすんだよ。
(鷹次郎)何とか言えよ。
(太蔵)すいません。
(鷹次郎)何だよその言い方。
長屋に戻れなくなった4人。
いらだちから次第に感情的になっていく

やがて取っ組み合いのケンカとなった。
収拾のつかない状況。
周兵衛がついに…
こら!
(末吉)おい周さん待てよ!何だよあいつ気取りやがって…。
何だこの!いいよいいよほっとけよ。
いてぇ…。
一夜明けても長屋には借金の取り立て人が待ち伏せをしていた。
しばらく戻れそうにない。
太蔵は覚悟を決めた
ああ。
やめろって!
だがその時だった
ちょっと待てよ。
現れたのは勧進元小湊屋。
興行を主催し運営する世話役である
そうだよ。
周兵衛は太蔵の借金返済のためひそかに動いていた
少なくとも俺はそう思ってた。
実際みんなだってそう思ってたんじゃねえのかよ。
そ…そうだな。
(周兵衛)仲間じゃねえかよ。
ありがてえ。
実はみんなものまねを本業にしたいと心の内にひそかに思っていたのだ
きちんと金がもらえ客が満足してくれるような芸とは何か。
興行を前に4人は小湊屋を交えて話し合う
ちょっとちょっといいですかこれ。
小湊屋が一枚の紙を広げた
人間のさまざまな表情を双六の形式で描いた浮世絵である
えっ…俺がかよ。
いくぜ。
寄席などではこのような表情を芸人がまねして披露していた
ちょっと待てよ。
そうするとよ…
(小湊屋)そうしてもらおうと思ってます。
(周兵衛)やってるうちに楽しくなってくるぜ。
ああ6だ。
「踏んづけ」だ。
初めはこのネタに懐疑的だった4人。
やってみると意外にも盛り上がりを見せた。
結局本番の興行では誰にでも受けそうな顔芸をメインに打ち出す事が決まった
ついに興行の日を迎える
こうしたものまねの興行は神社など人が多く集まる場所で行われる事が多かったという。
果たして客の入りは…
たんまりあるぜ。
芸の素人である4人にとって初めての興行。
おのずと気合いが入る
ものまね公演間もなくです。
果たしてどんなネタを見せてくれるんでしょう。
まず一番手は鷹次郎。
得意の持ちネタを披露する
え〜鷹次郎がお送りする浮世ものまねを一つ。
どこだ?チャポン。
よ〜しいざ!えいえいっえ〜い!ビシャビシャビシャ…。
つかみは上々。
続いて周兵衛
あ〜…。
(笑い)ワン!ワン!ワン!
(笑い)
太蔵は動物ネタで勝負だ
(カエルの鳴きまね)
(カエルの鳴きまね)
(拍手)
手にしているのは目鬘という仮面。
目鬘を使ってさまざまな表情をまねる芸で文化文政期にはなし家の三笑亭可上が得意としていた。
トリを務めるのは末吉
(笑い)
江戸時代の鉄板ネタを持ってきた
カーッカッカッカ…。
(拍手)
そしていよいよ興行が佳境に入る。
「延喜吉相百面双六」
(拍手)
サイコロを客に振ってもらう
さあ元気がいいや。
思い切り振ってくんねえ。
何が出るかな?いいよいいよいいよ!「いきがり」の顔頼むぜ。
その作戦が大当たりとなった
(笑い)おっきた。
(笑い)
(笑い)
言葉の要らないこのシンプルな笑いが若者からお年寄りまで全ての人に大受けとなる
ありがとうございます。
興行は予想以上の盛り上がりを見せ喝采を浴びる。
ものまね芸が終わり舞台におひねりが舞う。
これも彼らの貴重な収入源だ。
しかしその時だった
賭場の親分吉太夫だ。
なんと興行にまで追いかけてきていた。
場内が凍りつく
(博徒2)できねえのか!どうなんだ?おい。
親分のむちゃぶりに太蔵が…
え〜じゃあやります。
なんとかやり遂げた。
危ない!逃げるように舞台の裏に戻る
だが…
何もねえよ。
あいつどこ行ったんだよ。
てめえ!
急いで追いかける。
ところが…
逃げるしかなかった
どっち行くんだよ。
こっちだ!
路地裏の物陰に身を隠す
(博徒1)いたか?
(吉太夫)いねえか。
(物音)
もはや逃げ場がない
(猫の鳴きまね)
太蔵のものまねに救われた
(猫の鳴きまね)おいこっち。
金を持ち逃げした小湊屋を捜す
見てねえか?見てねえのかよ。
小湊…。
ちきしょう!どっち行ったんだよ。
いた!小湊屋だ。
大金の入った風呂敷包みを持っている
黙れこの野郎!返せ!
金を奪い合いもみ合いとなる。
とその時!幸い金は舟の上に
必死で舟を追いかける
止まれってんだよ!おい!こっち来いよ!おいらの荷物が載ってんだっつってんだよ。
何やってんだよ。
こっちだよこっち。
だが…
(太蔵)ああ…。
(末吉)太蔵!
(鷹次郎)太蔵!太蔵おめえよぉ…。
どうする事もできない。
太蔵は観念し覚悟を決めた
吉太夫が小刀を取り出す。
絶体絶命の危機
ところが…
おっと…
実は親分はものまね好きの純粋なお笑いファンだった
太蔵…。
何だよこれ。
緊張が解け4人は一気に力が抜ける。
ものまね興行を見て心変わりをした親分。
笑いの力が氷のような頑な心をとかしたのである。
ほっとした彼らの姿を見届け私は今回の取材を終える事にした
ちょっと待ってくれよ。
もう帰っちまうのか?達者でな!はい。
どこかで会おうぜ。
行こう。
ものまね芸人という夢に向かって歩きだした4人の男たち。
これからどんな困難が待ち受けようとも仲間同士力を合わせて乗り切るに違いない。
彼らには「笑い」という武器があるのだから。
それはどんな時代でも通用する人類共通の力である
以上コードナンバー913587アウトします。
2016/01/06(水) 02:00〜02:30
NHK総合1・神戸
タイムスクープハンター セレクション「爆笑!ものまね大作戦」[字]

「タイムスクープハンター」のアンコール放送。時空ジャーナリストの沢嶋雄一(要潤)は江戸時代、お笑い芸「ものまね」を披露する庶民に密着取材を行う。

詳細情報
番組内容
今回の取材対象は日本で古くから庶民に親しまれてきたお笑いの芸「ものまね」。その歴史は古く「日本書紀」の中の記述には神の姿や形をまねる描写がある。1848年、江戸。町の居酒屋で職人たちの宴会が行われていた。仕切っているのは、とび職人の末吉。酒で気持ちよく酔った頃合いを見て、仲間にものまね芸を披露させる。役者、動物の鳴き声をまねて爆笑!しかし、突然、賭場を仕切る男たちが「金を返せ!」と乱入して来る。
出演者
【出演】要潤,杏

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドラマ – 国内ドラマ
バラエティ – その他

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:7603(0x1DB3)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: