声を出しましょう。
いらっしゃいませ。
日本で働く外国人は過去最高の78万7000人に上っています。
人手不足が進むサービス業や介護の分野で欠かせない存在となっている外国人。
先月、経団連は政府に外国人労働者を活用するための法改正を申し入れました。
しかし、日本で働きたいと思っている外国の人々は待遇や文化の壁に直面しています。
乾杯!
長く定着してもらうためにはどうしたらいいのか。
彼らの声に耳を傾け始めた企業もあります。
シリーズ新たな隣人たち。
今夜は外国人労働者が急増する現場から考えます。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
もし、ことばや文化が違う外国で働くことになったらどんなことを期待し同時にどんなことに戸惑い不安を覚えるでしょうか。
今、介護やサービス業など日本語によるコミュニケーションが重要な職場で働く外国人が増えています。
少子高齢化で働き手の減少が予想される中経済界は外国人の受け入れの拡充を求め政府も受け入れを拡充する方針を打ち出しています。
現在、日本で働いている外国人は過去最高の78万7000人。
ご覧のように立場はさまざまです。
日本人と結婚し在留資格を持つ人。
高度な専門技術を持ち就労ビザで働く人。
許可を得ている留学生や技能実習生などです。
人手不足から特に外国人に期待する傾向が強いのがサービス業や介護の分野です。
外国人が低賃金や過重労働に苦しむという問題が建設現場や製造現場でこれまで繰り返されてきましたが今、外国人を戦力として育て長期的に働いてもらうよう取り組む動きが活発になってきています。
どんな視点を大切に異国で働く人々と向き合い社会の活性化につなげていくのか。
新たな隣人たち。
シリーズ2回目の今夜は外国人と共に働く社会に向けて問われる企業や社会の在り方です。
最初は高齢化に伴い人材不足が深刻になっている介護の現場です。
全国に先駆けて外国人を積極的に雇用し始めている横浜市は外国人の立場に立った支援とは何かを模索しています。
先月、外国人向けの介護研修会に7か国30人以上が集まりました。
主催したのは横浜市の介護事業所が作る団体。
介護ヘルパーの資格取得のための技術や仕事に必要な日本語を教えています。
日本の介護現場を支える高度な人材を育てるためにはどうしたらいいのか。
この団体が全国に先駆けて導入したのが外国人労働者を支援するコーディネーターです。
コーディネーターの福山満子さんです。
14歳のとき中国残留孤児の母親と共に日本にやって来ました。
みずからの経験を生かし日本で暮らす外国人の相談に乗ってきました。
よりよい仕事を探すため福山さんは面接にも同行しています。
必ず確認するのが労働条件と待遇です。
日本人と同じでなければ就職させません。
福山さんはこの6年間で400人以上を就職させてきました。
外国の人たちに長く働いてもらうために欠かせないのは就職したあとの心のケアです。
この日、福山さんが訪ねたのはフィリピン人のエルリンダさんです。
おはようございます。
10年前に来日し日本人と結婚。
去年からこの施設で働いています。
介護ヘルパーの資格も持っていますがまだ職場になじめずにいました。
体の自由も利かずコミュニケーションを取ることが難しいお年寄り。
どうぞ。
なかなか自信を持って接することができませんでした。
お年寄りの食べるスピードにうまく合わせることもできません。
福山さんは意思の疎通が難しくてもスキンシップを取ったり笑顔で接したりするなど自分から心を開くことが大切だとアドバイスしました。
福山さんのアドバイスを受けてエルリンダさんは積極的に接するよう心がけるようになりました。
思い出したのは大好きだった祖国、フィリピンのおばあちゃんのことです。
エルリンダさんは小学校2年生の息子に日本語を教わっています。
(エルリンダ)横、横、こう?
(息子)うん、で、払う。
さらに上の資格を取って介護の仕事を長く続けたいと思っています。
今夜のゲストは、東京大学名誉教授の、姜尚中さん。
政治学がご専門で、日本のグローバル化についての提言を続けていらっしゃいます。
そしてもうお一方、漫画家のヤマザキマリさんです。
ヤマザキさんは、イタリア、シリア、アメリカ、ポルトガルで暮らしたご経験をお持ちなんですが、外国で生活したご経験をもとに、今のエルリンダさんの様子、どう見られました?
なんか彼女に感情移入した立場で見ちゃうんですけれども、やはり、日本の方たちって、どうもほかの国の方たちと比べるとね、閉ざされてるというか、例えば、外国から来た方にとっては、日本の方を見て、日本の人たちを知ろうっていうのはすごく大事だと思うんですけれども、こっちが一生懸命、その気持ちを提示しても、なかなかそれを見せてくれないっていうのは、やっぱり大きなハードルになってしまうのかなって、すごく感じますよね。
彼女、介護現場で難しい、不安だ、自信を持てないという気持ちになっていらっしゃったですよね。
日本はやっぱり、比較的、いろんな国を見てきてますけど、適応難易度のグレードが高いといいますかね、やっぱり、日本の方たちって、そんなに積極的にコミュニケーションを取らない国民性だと思うので、やっぱりちょっと、いつもおしゃべりをたくさんしているような国の方たちにとっては、難しいのかなと思います。
でも、おばあちゃまたち、静かにしてらっしゃったりすると、余計ですよね。
イタリアのおばあちゃんだってうるさいですよ、もうずっと本当に100歳近くになってもわーっとおしゃべりしているような、そういうところのおばあちゃまたちに慣れてるような国の方は、やっぱりちょっと戸惑っちゃうんじゃないかなと思いますよ。
姜さんも今の様子、ご覧いただいて、福山さんのような、そういった橋渡しをしてくださる方がちょっと気遣って、ケアしてくださるっていうことは、本当にありがたいでしょうね。
やっぱりさっき、福山さんでしたかね、やっぱり中国残留孤児でということで、やっぱりこう、外国からおいでになった人と、日本の方をつなぐ、一つのブリッジになっているわけですよね。
それから同時に、これ、やっぱり介護というのは、ある人の言い方をすると、情動労働というんでしょうか、つまり情けが動く労働で、結局、これはマニュアル化できない。
だから、なかなか低賃金だとなり手がないわけですよね。
だから、マニュアル化できないからこそ、やっぱり情けが動くわけで、そうすると、パーソナルな関係ができると思うんです。
だから、非常にやっぱり重要な仕事だと思いますし、そういうときに、なおさらのこと、やっぱり間をつなぐ人がいるっていうことで、本人も安心感があるし、それからやっぱり、その人を通じて、日本の社会にやっぱり溶け込んでいけるという、だからワンステップ多く人が必要だということでしょうね。
特に、外国人だから介護の現場の難しさが、高まるっていうふうに捉えがちになる傾向ってありますか?
あると思いますね。
だから今の日本の若者だって、全く高齢の方々とどうつきあっていいか分からない子は結構いるわけですよね。
でもそのときは、同じ日本人どうしだから、結局、世代の違いに還元して説明します。
でも、外国人であると、実は世代の違いとか、いろんなファクターがあるんだけれども、すべてを外国人ということで説明しやすいと。
そこに少しやっぱり、問題があるんじゃないでしょうかね。
イタリアも多くの移民を受け入れて、ある意味では、すごく身近な所に移民の方、外国人の方が暮らしているということが、本当に当たり前になってますよね。
当たり前ですね。
それはどうしているんですかね?
わが家にも、掃除のお手伝いしてくださっている方、東欧の方ですけど、やっぱりそういった方たちをサポートする組織というか、そういうものがたくさんあるんですよ。
一つと限らずに。
例えば、子どもたちだけが、そういった移民の方たちの子どもたちに言語を教えるボランティアの団体があったりとか、あとやっぱり、ノウハウが分からないとか、いろんなストレスがたまってる人たちが、それを聞いてくれるベテランの今の方のような方がいる組織があって、そこにいろんな相談をしにいけたりとか、だからやっぱり、たまらないように、不純物が常に浄化されていくような環境を積極的に整えていってるような気がしますよね。
それは全国にあるわけですか?
全国にあります。
割と小さな町なんかにもありますので、ちょっとすごいなと思いますけど、それは。
姜さん、先ほどヤマザキさんが、日本は特に外国から来ると、閉ざされた感じを受ける。
入りにくいんではないかということですけれども、その日本の持っている入りにくさっていうのは、どういったところから?
一つ、やっぱり確認しておかなきゃいけないのは、日本は先進国、G7の中で、比較的、外から労働力入れなくても、国内での労働力移動があったということですよね。
ただ、今、おっしゃったことと関連して言うと、南イタリアなんかはやっぱり移民の送り出し国ですから、労働力も。
日本も実はかなり戦後も、働き手を外に出してた。
ブラジルとかいろんな所に。
そういう歴史を持っているわけだから、だから、やっぱり日本の場合、その歴史をひも解けば、私は、今はグローバル化の中で、日本がやっぱり受け入れていかざるをえない。
そのときに、やっぱりどうしても、外国人と日本人って、二分法しかないんですね。
その間にあるようなグラデーションがいっぱいある。
そういう人たちをやっぱり活用してこなかったということが一つありますよね。
それからもう一つ、よく感じることは、自分たちはユニークであると、すべての所作から文化から。
こういうユニークなものは、アウトサイダーには分からないという、そういうやっぱり先入観が、やっぱりどこの国にもユニークさはあるわけで、ですから、その自分たちがユニークであるというのを、もうちょっと相対化できればね、おもしろい化学反応が起きて、いろんな人と逆におもしろいものが出てくるかもしれないという、しんどく思うよりは、自分たちが、もしかして、自分たちの知らない未知なものと出会って、自分の中にある未知なものもね、もう一回発見できるかもしれないって、そういうように積極的に考えたほうがいいんじゃないでしょうかね。
今、化学反応ということばがありましたけれども、多様な人材のいる職場では、イノベーションが生まれたり、競争力が高まるというふうにいわれています。
外国人の個性をいかに生かして、そして職場の活性化を図るのか。
そういった取り組みを行っている、今度はサービス業の分野をご覧ください。
全国で340店舗以上を展開している外食チェーンです。
海外への店舗展開を見据えて8年前から外国人を雇用し始め今では50人が正社員として働いています。
失礼します。
大変お待たせいたしました。
インドネシアのバリ島出身のジャンホットさん。
笑顔が魅力の26歳。
2年前、採用されました。
日本文化が好きで大学で日本語を学んだジャンホットさんは日本で長く働き続けたいと思っています。
しかし当初は店長とのコミュニケーションがうまく取れず思い悩んでいました。
ある日、店長が就業の15分前に来なさいと指示を出しました。
事前に身支度や業務の確認をしておいてほしかったからです。
しかし、15分前に来たジャンホットさんは何をしていいか分かりません。
店長の指示の意図が分からなかったのです。
会社を辞めたいとまで思い詰めていたジャンホットさん。
ほかにも同じように悩んでいる人が後を絶ちませんでした。
この会社では、2年前まで外国人社員の2人に1人が辞めていました。
重く受け止めた会社は新しく入社した外国人に対して調査を行いました。
職場で信頼されていないと悩んでいる人。
場の雰囲気を考えて言いたいことも言えずに我慢してしまう人。
外国人が職場で孤立しがちで個性を十分に発揮できていない実態が明らかになりました。
どうすれば、能力を存分に発揮してもらうことができるのか。
対策に乗り出しました。
外国人の個性を生かすために互いに違いがあることを認め合い一人一人に合わせて接し方を考えよう。
新たな方針を打ち出したのです。
ジャンホットさんに対しても店長は、指示の出し方を見直しいつ、何をすればよいのか具体的に伝えるようにしました。
迷いがなくなったジャンホットさん。
笑顔が戻ってきました。
皆さん、きょうは元気よく声を出しましょう。
いらっしゃいませ!ありがとうございました!
ジャンホットさんは日本人のパート従業員の指導も任されるようになりました。
職場の雰囲気も明るくなり店全体の活性化につながっています。
乾杯!
今年度入った外国人社員の定着率はおよそ9割。
将来は会社を担う幹部になることが期待されています。
異なる視点を取り入れることで職場を変えていきたい。
それが、会社の目標です。
ヤマザキさん、やっぱり、大事なのは、これ、コミュニケーションのやり方なんですかね。
15分前じゃ、たぶん私も分からなくて、ぼーっと立ってたと思うんですけれども、やっぱり言語化してほしいというのがあると思うんですよね。
コミュニケーションがごく当たり前のさっきも言いましたけど、国から来てる人間にとっては、悟れない、やっぱりそこまではやっぱり日本ではよく場を読めという言い方があるけど、読めないし、読まなくていい人たちがたくさんいる社会から来てる人にとっては、なおさら、難しいと思うんで、そこはやっぱり、コミュニケーション力をどんどん上げていくというのは大事なことかもしれないなと思います。
本当になみなみならぬ努力をしながら、働いているのかなというふうに思えるんですけれども、どんな思いで皆さん来て、働いているというふうに、私たちは捉えなくちゃいけないんでしょう?
やっぱりジャパニーズドリームというわけじゃないですけど、日本に対する憧れもあるし、そして日本に行けば、やっぱりもう少し豊かになるんじゃないかというそれはあると思うんですね。
それから、日本に対する印象も、海外では非常にいいので、ただそれは、インサイダーになろうとしたときに、いろんな壁にぶつかったということだと思うんですよね。
結局、コミュニケーションというのは、最終的には、コンテキストを読めるかどうか。
自分たちはどういう今、コンテキストにいるのかと。
全体の中での位置づけですね?
そうですね。
そのコンテキストが読める人が、日本人なんですね、長くその世界の中にいるから。
でも、コンテキストが読めない人は同じことばを使っても、KYになってしまう。
空気が読めない?
そのコンテキストを読み取る力は、でも、意外と若い人にどんどん少なくなっているんじゃないでしょうかね。
また、世代によってもまた必ずしも読めない人もいるし、だから多くの人が、コンテキストを読み取れ、読み取れということに、ちょっと疲れているんじゃないかと思う。
だから、逆に言うと、めんどくさいけれども、説明したほうがいいと思います。
でも、結果としてサービス業の現場では、一人一人、個性を発揮できるようにした、そうしたら、自分たちも変われた。
得るものがやっぱり非常に多かったということでしたよね。
そういうことですね。
やっぱりお互い分かり合おうと思うと、ものすごいエネルギーやそごや摩擦が生じると思うんですけれども、そこを乗り越えないと、やっぱり成熟していかないんですよ。
はしょっては、決してグローバル化というのは、ありえないので、やっぱりそこで得られるなんというか、成就した気持ちというかね、満足感というのはあると思いますね。
そうすると、やはり、摩擦は避けたい、でも日本にとって、やはりこの人材というのは、今、必要不可欠になっている部分がある。
このプロセスをどのようにわれわれはどんな視点を大事に進めていけばいいのか。
同化が排除かではなくて、一つ、統合というのがあると思うんですね。
国が統合するというより、社会が柔らかく多様性を持ちながら統合できる。
自分もその中に入っていける。
これに失敗すると、欧州のある一部の国のようになってしまう。
ですから、排除でもなく、同化でもなく、柔らかい統合。
互いに変わらなければいけない。
2016/01/05(火) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代▽“新たな隣人たち”(2)どう受け入れますか?外国人労働者[字]
国内の外国人労働者数は、過去最高の78万7千人。中でもサービス・介護の分野では、さまざまな模索が始まっている。労働現場での“共生”。新たなステージへの道筋を探る
詳細情報
番組内容
【ゲスト】東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長…姜尚中,漫画家…ヤマザキマリ,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長…姜尚中,漫画家…ヤマザキマリ,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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