猫のしっぽ カエルの手・選「風薫る庭」 2016.01.01


すっきりと晴れ渡った青空に緑がまぶしい。
京都・大原は風薫る5月。
小さな変化を重ねながら春から夏へ。
田んぼには水が引かれ田植えも間近だ。
築100年。
かつて農家だった大原の古民家に家族で暮らすベニシアさん。
家も庭も手づくりを楽しんでいる。
いつも朝のまだ主人と息子が寝てる間にこうやって枯れた花を取ってすごい穏やかな気持ちになる。
イギリスから日本に来て37年。
ベニシアさんは今でもこの国の四季の豊かさに驚くという。
春夏秋冬。
移ろう季節とともに全く別の表情を見せる庭。
ベニシアさんは庭づくりを通してより深く日本の四季を感じている。
今日やっぱり草ちょっと取らないといけないね。
梅雨前だから。
去年ベニシアさんの英会話学校に入った辻典子さん。
2人は大原の朝市で知り合った10年来のガーデニング仲間でもある。
今日はこの頼もしい助っ人の手を借りて庭の夏支度を整える。
ここの花壇ベルガモットが多いのね。
で1メートルぐらい高くなるから大体70センチでいいと思ってるから今切ったら横から出てそんなに高くならないし。
夏に真っ赤な花をつけるシソ科のハーブベルガモット。
ベルガモットオレンジそっくりの香りを持つことからその名が付いた。
こうやってしたらまた…。
たくさん咲く?うん。
匂いがいいでしょ。
これ私時々ホットミルクにつけとく。
そしたら何ともいえないベルガモットの香りでリラックスして眠くなる。
湯がくんですか?これ。
ううんただつけとく。
ホットミルクを…。
沸かしながら?うんちょっと入れるだけ。
今日のようにたくさん摘んだらお風呂に入れて楽しむ。
ここの水仙。
続いては春の花水仙の手入れ。
来年も花を咲かせるには球根を太らせる必要がある。
切ったら球根が栄養がいかないから来年も咲かないしこうしたら葉っぱが腐るけど栄養がこの葉っぱから球根へ行くからね。
こうして根元で縛っておけば緑のうちは光合成を続けて栄養を作り出す。
枯れて腐っても土に戻って球根の栄養となる。
きれいな花をありがとう。
感謝を込めて。
庭の至る所に植えてある水仙。
何百もの株の手入れは助っ人と一緒でも大仕事だった。
ノリちゃんちょっといいものがあるよ。
これ。
これは何の木でしょう?お茶ですね。
お茶を今日は作りたいと思ってるんですけど。
裏庭の石垣の間たくましく育つお茶の木はベニシアさんが引っ越してくる前からここにあった古株だ。
立春から88日目。
八十八夜は茶摘みの始め。
日本の古い風習にならってベニシアさんお茶の新芽を摘み取る。
私毎日1回はお茶飲んでるよ。
お茶はもうハーブよ。
そうなんですか?もちろん。
お茶飲んだら元気になる。
きれいになる。
ありがとう。
すいません。
たくさんもらって。
またノリちゃんと2人で飲んで元気になります。
長生きできます。
アハハハ。
摘み取った新芽で新茶を楽しむ。
大原暮らしで学んだ簡単手もみの日本茶。
今からベニシアのワイルドのお茶作ります。
さっき庭で採った葉っぱを蒸しますから。
で2〜3分蒸したら色が変わるからちょっと待ちましょう。
茶葉は洗わずそのまま。
渋みが強くならないよう蒸し時間は短めに。
湯気が出るように。
火から下ろしたら素早くザルに広げ粗熱を取る。
ちょっとお茶の匂いあるね。
軽い感じ。
いい匂いよ。
そしたらここに…あオッケー。
触れる程度に温めたフライパンに茶葉を広げ手でもみながら水分を飛ばしていく。
乾かすと何か香りが出てくるのね。
乾かすことで香りが引き立ち手でもむことでうまみが増す。
うんすごいいい匂い!これ面白いわ。
何か匂いだけで何か…うんうれしい。
自分が作ったものを使ったらうれしいよね。
うん出来ました。
茶葉から水けがなくなれば完成。
家庭でも手軽に出来る自家製手もみの日本茶。
部屋中爽やかな香りに包まれる。
お茶出来ましたよ。
ありがとうございます。
おいしそう。
結構きれいに色出てるね。
おいしい。
何かうれしい。
うん。
自分で作るとおいしいですよね。
アハハッ。
そう。
今日は全部草取ったけどありがとうね。
いえいえ。
何かきれいになって。
でももうすぐ雨が降りだしたらまた出てくる。
庭で摘んだお茶を飲みながら庭をめでる。
庭仕事の疲れは一気に吹き飛んでまた一仕事したくなる。
初夏の日ざしに輝く大原。
その美しさを散歩で満喫。
この辺にすごいきれいなお庭があるからそれをいろんな季節見に行くのが好きですから。
ベニシアさんの家から歩くことおよそ20分。
お気に入りの寂光院は山の中ひっそりとたたずむ。
6世紀聖徳太子が建立したと伝えられる寂光院。
平家の滅亡後清盛の娘建礼門院が祈りの日々を過ごしたこの寺は平家物語の舞台でもある。
こういう場所に行ったら何かすごい穏やかな感じが。
やっぱり木が穏やかだからそのものを感じる自分も穏やかになって。
もうびっくりするぐらいきれい。
本当に自然の庭がいっぱいある。
山に抱かれた寂光院。
庭は自然と溶け合い訪れる人を優しく包み込む。
庭のたたずまいそしてこの庭と寺を襲った数奇な運命がベニシアさんの心を捉えて離さない。
今から9年前2000年の5月寂光院は不審火による火災で本堂が全焼。
庭も大きなダメージを被った。
本堂の左手にある汀の池のほとり。
立ち枯れた松の木が悲劇を今に伝える。
この場所で800年以上歴史を見つめてきた姫小松。
火をまとい焼けただれた幹は火事の4年後完全に息絶えた。
そんな老木の最期をみとった人がいる。
枯れてもなお姫小松を残し歴史ある庭の復興と再生に全力を注いだ中辻英一さん。
親子二代にわたってここを守ってきた庭師だ。
こんにちは。
こんにちは。
すごい!すごい所に登ってるのね。
大原に住んでるんですけど…。
中辻さんのおかげで今この庭がある。
ベニシアさんは一度ゆっくり話を聞きたかった。
火事があった時どう思った?ものすごいショックだったでしょうね。
そうですねこの本堂が焼けてそれに伴う松の被害受けて枯れた時はね。
火災そのものの時はもうパニックみたいになってね。
もう私のとこの家が燃えたほうがずっといいわと。
「なぜこれが!?」という感じだったんですけど。
何か自分の親なり両親が亡くなっていったような気がして。
根から切るのも忍びないということでこういう形で。
残すほうがいい。
はい。
残してるんですけどね。
昔を思い出します。
はい。
火災の被害に遭ったのは姫小松だけではない。
樹齢200年ほどのこの大カエデも幹の半分以上を失った。
中辻さんは今も懸命の治療を続けている。
木のやけど一番の問題は皮が無いために水が染み込み腐ってしまうことだ。
傷んでますねこれ。
見てのとおりこうなってる。
浸透して。
これをまず取ってしまうことじゃね全部。
木はここだけで生きてるのでね。
この皮のとこのここの所ね。
やっぱりやけどしてるさかいに木そのものが焼け焦げて。
大事にしてる昔からのカエデの木ですので何とか一日でも長生きさすために頑張ってます。
どんなに治療を施しても皮を失った部分は弱くやがて雨水が染み込み腐ったり虫がついたり。
そこでまた傷んだ所を丹念に取り除く。
その繰り返し。
それでも根から枝の先まで栄養を送ることさえできればその木が死ぬことはない。
腐るのを少しでも遅らせるために中辻さんは削り取った木の表面に墨汁を塗る。
墨汁には水をはじく効果と殺菌作用がある。
昔の人の知恵で桜やら何でも切り口に墨を塗ってたようで。
これがいまだにこの時代になっても一番いいみたいで。
はい。
まあこのもともとの木には戻らんと思います。
ただこの皮のとこがねぐるっと巻いてきますので。
中は空洞になるかも分かりませんけどね。
はい。
火災から9年。
数え切れないほど何度も治療を繰り返してきた中辻さん。
木の持つ生命力と中辻さんの情熱。
2つの力が合わさって大カエデは今もこうして生きている。
この黒いのは私らが蘇生して…。
塗ってたのね。
でも生きてるのね。
生きてます。
ここは生きてる。
巻いていく。
生命力すごいね。
もう木の生命力はすごい。
そういうふうにやって1年でも長生きするような感じにね。
でもすばらしい。
火災が燃えたので上のほうまで…。
燃え尽きた。
ず〜っと。
だいぶ回復してきたんですわ。
木が喜んでるんじゃない?おじさんがやってくれたから。
どの緑よりも鮮やかな大カエデの新緑。
火事から蘇った寂光院の庭。
風に揺れる木々はまるで喜びを歌っているかのようだ。
中辻さんの一番いい場所はどこですか?私が思う一番ベストポイントはあそこ。
ちょっとご案内します。
ああありがとう。
中辻さんが案内してくれたのは汀の池の向こう側。
すごいね。
はい。
この場所は昔から私好きなんです。
ここからね。
確かにすごいね。
池があって。
私らが世話した庭で造ったところと後ろのところ。
あれと建物とのバランスがとても私は好きなんで。
きれいね。
寂光院の私の一番ベストポイント。
何か秘密みたいな感じよね。
はい。
へえ!全然違うわね。
自然と一続きになった空間で草木がそれぞれの命を全うする。
それが中辻さんの夢の庭。
立ち止まることのない季節の中で庭仕事も終わりなく続く。
チューリップの花ともそろそろお別れ。
頑張って大きな花を咲かせた分この時期球根はクタクタになっている。
そこで一手間。
花が付いていた茎を根元で切り取る。
こうして種を作るという大仕事から球根を解放する。
次にご褒美。
手作りコンポスト。
ほんで球根の周りに入れます。
ありがとう。
また秋にいい球根になりますように。
やっぱり植物咲いた後に「ご苦労さん」って言うのを忘れたらアカンし。
ベニシアさん手作りの堆肥を与えて数週間。
球根が元気を取り戻すのを待って土から出して保管する。
花は終わっても世話は終わらない。
2016/01/01(金) 05:55〜06:25
NHKEテレ1大阪
猫のしっぽ カエルの手・選「風薫る庭」[字]

美しい新緑の季節を迎えた、京都大原。ベニシアさんもチューリップの球根作りなど庭仕事を楽しむ。庭で摘んだお茶の新芽で作るベニシア流の新茶作りを紹介。

詳細情報
番組内容
美しい新緑の季節を迎えた京都・大原。ベニシアさんの庭のハーブも緑豊かに育ちはじめた。チューリップや水仙の球根作りや、ベルガモットのせん定作業など、庭仕事を楽しむ毎日。裏庭に生えるお茶の新芽を摘み、すぐに作れるベニシア流の新茶レシピを紹介する。大原の古寺・寂光院では、平家物語の時代から語り継がれる境内の庭の美しさに感動し、庭造りのすばらしさを語る。
出演者
【出演】ベニシア・スタンリー・スミス,【語り】山崎樹範

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸

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