富士山の麓に広がる広大な森。
およそ1,200年前に流れた溶岩の大地。
土が少ない過酷な森です。
しかしそこに生き物たちの営みがあふれます。
富士山がつくり出した不思議の森。
その豊かな四季を見つめます。
富士山頂に雪が残る4月。
樹海は春本番を迎えます。
ニホンリスは恋の季節。
メスを探し駆け回ります。
ニホンジカが探すのは芽吹いたばかりの野草です。
(さえずり)森に響くさえずり。
小さな体で縄張り宣言をしています。
(さえずり)ミソサザイがついばむのはコケ。
ひとしきり集めると洞窟へ。
留守の間にのぞいてみると…。
ありました。
ミソサザイの巣です。
コケや木の皮でしっかりと作られた巣。
樹海は鳥にとって子育てをしやすい場所です。
5月。
若葉が開き始めます。
カラマツも鮮やかな緑をまといます。
芽吹きとともに咲いた花。
秋には松ぼっくりになります。
春の日ざしを受け新緑に覆われていく樹海。
木々が葉を広げるにつれ地面には光が届かなくなります。
この時期を選んで花を咲かせるランの仲間がいます。
植物の進化の中では後から生まれた新参者。
生存競争を生き抜くためあえてほかの植物が少ない過酷な環境を選びました。
夜。
ランの近くに姿を現す生き物がいます。
普通ヒメネズミは木の上で暮らしますが樹海での住みかは溶岩の穴。
同じ穴から今度は一回り大きなアカネズミが出てきました。
複雑に入り組む溶岩は動物たちの絶好の住みかとなっています。
7月。
富士山が凜々しくそびえます。
エゾハルゼミが梅雨明けが近いと告げ始めます。
(鳴き声)この時期動物たちも活動的。
溶岩の洞窟を寝床にする…ガや羽虫を食べるため洞窟と森を行き交います。
(水音)不思議な行動をとる鳥がいました。
木のうろにたまった水で水浴びをしています。
(水音)樹海では降った雨が溶岩に吸い込まれ川も池もないため水場を見つけるのも一苦労です。
(水音)溶岩の上でたくましく育つ木々。
樹海にはまるで土のように水を蓄えるものがいます。
コケ植物です。
雨水はコケの体に捕らえられすぐには下へと落ちていきません。
水を蓄えたコケは木の種の揺りかごに。
木の芽は成長したあとコケが好む日陰をつくります。
樹海には土をつくる生き物もいます。
分解者と呼ばれる虫たちです。
木や落ち葉を盛んに食べ土をつくる分解者たち。
分解が進み過ぎ生態系を狂わせないよう歯止めをかける生き物もいます。
植物でも動物でもない不思議な生物…分解者やバクテリアを食べ成長します。
しかし食べ過ぎる事はありません。
ゆっくりと移動し一度に大量の分解者を捕らえる事がないため森を急激に変える事はないのです。
溶岩がこの地に流れ込んで1,200年余り。
樹海は絶妙なバランスを保ちながら成長してきました。
10月。
鮮やかに色づいた樹海で冬支度が始まります。
実りの季節。
アカマツは命のリレーを始めます。
空気が乾燥すると開く松ぼっくりのかさ。
風に乗り種が飛び出します。
種はしっとりぬれたコケの上で春を待ちます。
ニホンリスも冬の備えを始めていました。
冬を越す食べ物を集めようと駆け回ります。
大好物のドングリを見つけると急いで貯蔵場所へ。
冬支度にせわしない樹海の生き物たちの秋です。
12月。
樹海は雪と氷に包まれます。
いてつく風をしのごうと溶岩の陰で体を休めるのは…積もった雪を食べるのは水分を補うため。
厳しい冬を耐え抜きます。
冬眠をしないリスは森を駆け回っていました。
匂いを頼りに地面に埋めておいた木の実を捜します。
ようやくオニグルミを1つ見つけました。
富士山の裾野溶岩の大地でめぐる季節。
水も土も少ない過酷な森に春が訪れます。
(さえずり)生き物たちが絶妙なバランスを保ち成長してきた樹海。
ヒナが巣立った巣の上にまた小さな命が芽吹いていました。
2016/01/01(金) 03:45〜04:00
NHK総合1・神戸
樹海 命めぐる四季[字]
富士山のふもと「青木ヶ原樹海」でめぐる四季。コケで巣作りをする野鳥、木かげを選ぶランの花、植物でも動物でもない不思議な生物「粘菌」など、独特の生態系を長期撮影。
詳細情報
番組内容
日本の最高峰、富士山のふもとに広がる広大な森、「青木ヶ原樹海」。およそ1200年前に溶岩が流れ、土や水が少ない過酷な樹海だが、意外なほど豊かな生態系がある。コケや木の皮で巣作りをする野鳥、木かげで美しい花を咲かせるランの花。そして植物でも動物でもない不思議な生物「粘菌(ねんきん)」。富士山の絶景とともに、樹海で育まれるユニークな生態系をつづる。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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