ワイルドジャパン 魔法にかけられた島々 2016.01.01


島々を照らす日の光。
ここは世界でも類いまれな自然が残っている国。
日本。
日本には世界の人々が驚く圧倒的な自然の姿があります。
「ワイルドジャパン」。
NHKとイギリス・BBCが最新の4Kカメラを使い…凍てつく大地にきらめく命。
世界屈指のサンゴ礁を育む海。
移りゆく…この多様な大自然は世界の人々には驚きに満ちた光景に映ります。
彼らの目を通して撮影された映像は私たちが自然といかに特別な関係を築き上げてきたのかを教えてくれるのです。
世界の人々から見るとまるで魔法にかけられたかのように映る日本。
その命の輝きを見つめます。
世界最大級のメガシティーを抱える日本。
1,300万人が暮らす東京。
過密する都市の風景がまるで魔法にかかったような姿を見せてくれる時があります。
春都心部で開花する桜の木々。
長く厳しい冬を経て人々が待ちわびた季節の到来です。
しかしこの春の魔法も僅か2週間しか続きません。
短いからこそ移りゆく自然のはかなさに美しさを見いだします。
日本人が豊かな自然の中で育んできた心です。
いにしえの都奈良。
ここには日本人が長きにわたり敬い続けている生き物がいます。
ニホンジカです。
草や笹などが主な食べ物です。
シカたちは夜は人目につかない所にいますが日中になると町をかっ歩します。
どこへ行くのでしょう。
向かった先は東大寺など数々の神社仏閣。
堂々と中へ入っていきます。
大胆な行動が許されるのには理由があります。
8世紀半ば神様はシカに乗ってこの地にやって来たと言い伝えられています。
以来奈良ではシカは大切にされてきたのです。
野生のシカに触れ合える場所は世界でも珍しく多くの観光客でにぎわいます。
シカたちとの距離を縮めてくれるものがあります。
「鹿せんべい」です。
せんべいをねだるためにシカたちはあの手この手を尽くします。
中でも目をみはるしぐさがおじぎです。
日本ではあらゆるものに礼を尽くしますがシカたちもお礼をしているかのようです。
日本の信仰心と長い歴史が育んできた特別な関係です。
漂う湯煙。
長野県の地獄谷ではサルたちが温泉につかりに来ます。
サルが湯につかるようになったのは今から50年以上前。
子ザルが偶然露天風呂に入ったのがきっかけでした。
やがて他のサルたちも釣られて入るようになったのです。
世界広しといえども温泉に入る野生のサルはここだけ。
珍しい姿を一目見ようと海外からも多くの観光客が訪れます。
野生動物の伸び伸びとした姿は人の心をつかんで放しません。
他にもサルたちは意外な行動を見せます。
湯の中に潜って沈んだ麦や大豆を食べ始めました。
夢中で口に詰め込んでいきます。
1分近く潜り続けるものもいます。
一方潜らないサルはどうするかというと…。
後ろ足の指で器用につまんで拾い上げます。
温泉好きのサルが見せるユニークなしぐさは海外の人たちを魅了します。
イギリス・BBCと共同制作した「ワイルドジャパン」。
制作者から見ると私たちの身近な自然は驚きに満ちています。
私たちが何気なく持っている自然へのまなざしは海外の人々の目を通すといかに豊かなものなのかが見えてきます。
独特の自然の中で育まれてきた日本人と自然との特別な関係。
世界の人々を魅了する日本の類いまれな自然を再発見していきます。
日本の象徴富士山。
日本各地には110もの火山があります。
世界の1割近くが集まる火山国なのです。
火山には大地の姿を一変させる力があります。
この強大な力が複雑な地形を生み出し日本列島の豊かな自然を育んできたのです。
その一つが大都会と隣り合うようにして広がる山々です。
都心から僅か数時間の距離に天をつくような巨大な峰が連なります。
標高2,500メートル北アルプスの斜面。
高さ1メートルほどのハイマツの中で何かが動いています。
ツキノワグマです。
体長は150センチ体重130キロほど。
クマはアリなどの昆虫や木の実を食べて暮らしています。
高山で出会うのは珍しくとても貴重な光景です。
すぐ近くにはニホンザルの姿がありました。
こちらも同じように食べ物を探しています。
見つけたようです。
ハイマツの実。
貴重な栄養源です。
高山は他の動物に邪魔されない格好の食事場所になっています。
険しい山々からあふれ出た水。
日本の年間の平均降水量はおよそ1,700ミリ。
世界でも指折りの豊かな水の恵みが絶景を生みます。
落差日本一350メートルを流れ落ちる称名滝です。
雪解けの時期流れ落ちる水の量は毎秒10トンにもなります。
この滝の水の響きは古来よりお経を読む声に似ていると言われてきました。
日本人の独特の感性はあらゆる自然に及びます。
山を下った激流は里へと広がりやがて小さな流れになります。
そうした水の恵みを受けて出来上がるのが水田です。
人は里の斜面をうまく利用し水田が階段状に広がる美しい棚田を作りました。
機械に頼る事なく昔からの農機具を使い雑草を丁寧に取り除きます。
ここでは農薬をほとんど使わない自然に優しい農業が行われています。
水田は人がつくり出した湿原でもあります。
ここを頼りに多くの生き物が集まり豊かな営みが広がっていきます。
人の暮らしと自然が調和する里山の風景です。
里を潤す豊かな水は人と自然の独特の関係も支えます。
琵琶湖のほとりにある集落です。
江戸時代よりこの集落の人々は流れ入る水の恵みを得て生きてきました。
庭先には炊事用の小屋。
こうした小屋が多くの家にあります。
流れ込んでいるのは湧き水。
古くから変わる事のない清らかな水です。
人々と生活を共にしてきた生き物がいます。
水場の池を泳いでいるのはコイ。
このコイが重要な働きをしてくれます。
水場で食べ終えた食器を洗っているとコイが寄ってきます。
すると食べ残しをコイが食べてくれるのです。
海外の人が驚く日本人と生き物の不思議な関係です。
きれいになった水は水路へと戻っていきます。
清らかな水が水田へと流れ込み豊かな実りへとつながっていくのです。
水の恵みはそれだけにとどまりません。
梅雨の終わり幻想的な風景が生み出されます。
ホタルです。
恋の季節を迎えていました。
宙を舞いメスへアピールしているのはオスです。
成虫になったホタルの寿命は僅か10日ほど。
こちらではどうやら恋を実らせたようです。
命のかぎりはかない光を放ち続けます。
かつて日本人は宙を舞う光に亡くなった人たちの魂を重ね合わせたといいます。
豊かな水が幻想的な風景を生み出しているのです。
南北3,000キロにわたる日本列島。
大小7,000近くの島々が形づくっています。
初夏南西諸島の島々が育む独特の自然が輝きを放ちます。
九州本土から南へ60キロにある屋久島です。
亜熱帯から高山帯まで幅広い環境を抱える島です。
森の中にいたのはヤクシマザル。
ニホンザルの仲間ですが本州のサルと比べて小柄です。
ヤクシマザルは互いの絆を深めるための毛繕いを欠かしません。
島固有のヤクシマザル。
ある動物と特別な関係を築き上げてきました。
シカです。
このシカもまた島固有の動物。
サルの近くにシカが集まってきました。
サルたちは全く気にしていないようです。
その時です。
1匹のサルがシカの背中に乗りました。
次々と飛び乗ります。
すると…毛繕いが始まりました。
飛び乗られたシカは迷惑そうです。
しかし中には我慢しているように見えるものもいます。
木に登り始めたサル。
森の木々に豊富についている実を食べています。
その音を聞きつけたシカ。
木の下へと移動します。
シカが食べているのはサルが落とした木の実。
飛び乗られようともサルのそばにいればシカはおこぼれにあずかれるのです。
種を超えた不思議な関係が本土と隔てられた島の中で生まれていました。
更に南へと進みます。
屋久島から900キロの沖縄・西表島。
絶海の島には本州とは大きく異なる暮らしをしている生き物がいます。
厳しい環境を生き抜くために変わった行動を身につけたといいます。
リュウキュウイノシシです。
本州のイノシシより小柄。
鋭い嗅覚で土の中に隠れた虫や地上の木の実などを探して食べます。
ふだんは森の奥深くに暮らすのでその姿を見る事はめったにありません。
しかし夏のいっときリュウキュウイノシシは森から離れ大胆な行動を見せます。
夜の西表島。
浜辺に現れたのはアオウミガメです。
自分が生まれた浜に戻ってきて産卵を行います。
優しく砂を覆いかぶせ天敵たちに食べられないように守ります。
産卵を終えると海へと帰っていきます。
明け方。
浜辺に姿を現したのはリュウキュウイノシシです。
何か探しているようです。
砂を掘り始めました。
ウミガメの卵を食べています。
森ではめったにありつけない栄養豊富な食事。
本州に住むイノシシには見られない非常に珍しい行動です。
イノシシがこうした行動をとるようになったのは最近の事。
絶海の孤島で巧みに生きる命の営みです。
2か月後。
砂の中からウミガメの子供たちが出てきました。
幸いにもイノシシに食べられなかったようです。
次々と砂の中から出てくる子供たち。
一斉に海へと向かいます。
小さな体で大海原へと旅立っていきます。
数十年後またこの浜辺に戻って子孫を残すはずです。
今回お伝えしたリュウキュウイノシシがウミガメの卵を食べる驚くべき光景。
その撮影はNHKとBBCの合同クルーにとっては大変困難なものとなりました。
これまでその珍しい行動がテレビカメラで捉えられた事はなかったからです。
総勢6名の撮影チームは森と海の二手に分かれてイノシシが現れるのを狙う事にしました。
イノシシが潜む森では合計5か所に無人撮影カメラや撮影用のテントを準備。
海岸でもイノシシが現れるのを待ち伏せる事にしました。
しかし台風によって撮影は中断。
更にイノシシは警戒心が強くなかなか姿を見せません。
撮影開始からおよそ1か月。
ついに浜辺に現れました。
においを嗅ぎながら浜辺を歩き卵を探すイノシシ。
日本の自然に精通したNHKと動物の行動を独特のセンスで捉えるBBC。
両者のチームワークがスクープ映像につながったのです。
オレンジ色の魚はカクレクマノミです。
毒を持つイソギンチャクと共に生き敵から身を守っています。
こちらにも他の生き物を巧みに利用している魚がいます。
ホンソメワケベラ。
大きさは12センチほど。
他の魚に付いた寄生虫や古くなった皮膚などをつついて食べます。
掃除魚と呼ばれています。
海底に向かって泳ぎ始めました。
そこにいたのはツバメウオ。
大きさ45センチほどの肉食魚です。
体を起こして掃除を催促。
ホンソメワケベラがつつき始めます。
ツバメウオの体が黒く変わっていきます。
寄生虫が見つかりやすくするためだと考えられています。
その時大きな影が…。
ホンソメワケベラは影の方へと泳いでいきます。
現れたのはマンタです。
体の幅が4メートルにもなる世界最大級のエイ。
外洋からあたたかな沖縄の海へとやって来ました。
ゆったりと泳ぐマンタ。
ホンソメワケベラはせわしなく泳ぎ回り掃除を始めます。
マンタの中には同じサンゴ礁へ繰り返し現れては掃除してもらうものもいるといいます。
満足したのでしょうか?再び外洋へと去っていきました。
豊かな海は時として試練を与えます。
毎年夏。
日本列島は赤道付近で発生した台風に見舞われます。
台風は南の温暖な海で勢力を増し近づいてきます。
特に南西諸島の島々はその影響を最も受けやすい地域です。
古来この地域の人々は台風に耐えてきました。
本州から2,000キロの与那国島も台風の影響を受けやすい島の一つです。
面積30平方キロのこの小さな島には世界最大級の蛾がいます。
ヨナグニサンです。
羽を広げると24センチもの大きさになります。
嵐に見舞われる過酷な島の中でも巧みに命をつないできました。
こちらはヨナグニサンの幼虫。
体長は10センチほど。
40日ほど幼虫で過ごした後成虫になる準備を始めます。
ある日。
幼虫が太く強い糸を重ね合わせ頑丈なシェルターのような繭を作っていました。
台風が近づいてきました。
人々は台風の通過をじっと待ちます。
こちらにも台風の猛威に耐えるものがいます。
ヨナグニサンの繭。
頑丈な作りは猛烈な雨や風から確実に身を守るためだったのです。
台風一過。
繭が動き始めました。
羽化が始まったのです。
ヨナグニサンは台風が来るのを感じ取り過ぎ去るのを待って羽化するのではないかと考えられています。
1時間ほどかけて成虫になりました。
こちらはメス。
繭から出るとフェロモンを出しオスを待ちます。
オスがにおいにつられて飛んできました。
この触覚でメスの居場所を突き止めるのです。
ヨナグニサンの成虫には口が無く1週間ほどでその一生を終えます。
子孫を残すためだけに限られた時間を生き抜くのです。
メスとの出会いを果たし力尽きるオス。
メスは最後の力を振り絞り卵を産み付けます。
短くはかない命は耐え忍ぶ事で大自然の猛威に打ち勝ちました。
古来自然と深く関わり合ってきた日本人。
自然から多くの恵みを得て生きる人々の姿を見つめます。
沖縄本島に広がる海。
ここではあるものが育てられています。
これからその収穫に向かいます。
水深10メートルほどの海の底。
緑色のものが並んでいます。
もずくです。
ここはもずくの養殖場。
ロープに種を付けると自然に育ちます。
十分に育ったもずくをホースで吸い込み収穫していきます。
良質なもずくを育てるためには栄養豊富な海が欠かせません。
沖縄の海にはもずくの生育に適した環境が整っているのです。
この海で古くから受け継がれてきた人々の大切な営みです。
もずく養殖は別の側面も見せてくれます。
もずく畑は人が作り出した海藻の森です。
そこには身を隠すもの食事をするものそして産卵するものが集い命をつなぎます。
人と自然が調和して豊かな環境が生まれているのです。
人はこれを里海と呼びます。
人と自然が共に暮らす豊かな海の風景です。
海の中には人にとっては危険な生き物も暮らしています。
ウミヘビです。
沖縄には8種類のウミヘビがいます。
中には猛毒を持つ危険なものまでいるのです。
ふだんは海底に潜む魚などを捕まえて食べるウミヘビ。
もともと陸地に住んでいたヘビが海の生活に適応しました。
そのため呼吸をしに海面へと上がる必要があります。
沖縄本島に近い久高島。
ウミヘビが神の恵みとして大切にされてきました。
福地洋子さんと古波蔵節子さんです。
島に古くから伝わる伝統の担い手。
2人は神の恵みであるウミヘビの漁を代々行ってきました。
漁は神に仕える「カミンチュ」と呼ばれる女性だけに許された神聖なものです。
は〜いおばあちゃんこんにちは。
2人が着いたのはウミヘビの漁場です。
夜までここで待ちます。
波打ち際の洞窟です。
ウミヘビが現れました。
ここに流れ込む真水を飲むために洞窟へ集まってくるといいます。
静かな洞窟はウミヘビが休むのにも適した場所です。
2人が狙うのはハブの何十倍も強い毒を持つエラブウミヘビ。
光に敏感なウミヘビを僅かな明かりを頼りに探します。
気配を感じたら一気に水の中へ。
奥へと進み手を伸ばします。
すると素手でヘビを捕まえました。
相手は猛毒の持ち主。
しかし慌てる様子もなく落ち着いて袋に入れます。
2人は海の恵みに感謝をします。
すごいデカい!捕まえたウミヘビは限られた者しか入れない神聖な小屋でくん製にされます。
高級な食材として大切にされてきたウミヘビ。
島の伝統は今も受け継がれています。
長い間人々が守ってきた営み。
南西諸島の海が支えます。
北の大地世界遺産知床。
生き物と人とが築き上げた独特な関係を見つめます。
海岸に知床の主ヒグマが姿を現しました。
陸上では日本最大体重は300キロを超す事もあります。
こちらは母親。
子グマもいました。
2頭います。
ヒグマは母親が1頭だけで子育てをします。
突然別のクマが現れました。
立ち上がって警戒する親子。
近づいてきたのは子連れのメスでした。
危険な相手ではありません。
海沿いでは漁師たちが番屋と呼ばれる漁の拠点で網の手入れをしています。
ヒグマの親子がやって来ました。
襲われたら人の命に関わる大きなクマ。
しかし漁師たちは平然と過ごしています。
人とクマが共に暮らす場所は世界でもほとんどありません。
お互いに干渉しない事でクマと人との共存が図られているのです。
厳しい冬を前にヒグマたちは備えを始めます。
川に現れたのはメスのヒグマ。
ヒグマの親子は恵みの時を待ちわびていました。
母親が川の中をのぞいています。
沖合から産卵のためにやって来たカラフトマスです。
母親は2頭の子供たちが冬を乗り切れるよう狩りをしなくてはなりません。
狙いを定め猛然と追いかけます。
必死に逃げるカラフトマス。
見事に捕まえました。
子供たちは母親の方へと駆け寄ります。
母親は少し食べると再び狩りに出かけます。
この時期にたくさんの脂肪を蓄えるヒグマ。
中には5割以上も体重が増えるものもいます。
栄養をため込んで半年近くに及ぶ冬眠を乗り切らなくてはならないのです。
狩りは雪の降り始める頃まで続きます。
ヒグマの狩りを捉えた知床。
撮影に挑んだのはマクファーレンさん。
世界中の動物を追って20年になります。
特別な許可を得てこの番屋を訪れたマクファーレンさん。
最も驚いたのはここで仕事をしている地元の人々の姿でした。
クマが至近距離に迫っても全く動じない漁師たち。
長い年月をかけて築き上げた特別な関係だという事が少しずつ分かってきました。
漁師の話を聞いたマクファーレンさん。
クマとの向き合い方を自らに問いながら撮影に臨みます。
子グマが近づいてきました。
急いで車の中に隠れます。
近づき過ぎて母グマを刺激しないよう細心の注意を払います。
適度な距離をとる事ができたら再び撮影開始です。
すると狩りが始まりました。
人々とヒグマが時間をかけて築き上げた関係を踏まえたうえでギリギリの距離を保ち慎重に撮影を続けます。
こうして狩りのダイナミックな映像が生まれたのです。
動物たちが冬の備えに忙しく動き回る北海道の森。
シマリスです。
木の実を食べています。
厳しい冬を越すためにエネルギー源を確保しなければなりません。
冬シマリスは地面の巣穴で冬眠しますが一週間に一度目を覚まし巣穴の中で食事をします。
そのため今から多くのドングリを巣にためておくのです。
頬袋と言われる口の中の袋に蓄えます。
秋の森にはライバルがたくさん。
貴重な食べ物を取られまいと必死に追い立てます。
こちらはエゾリス。
同じく食べ物を探しています。
ところが先客にはシマリスがいます。
互いににらみ合います。
シマリスはエゾリスを追い出しにかかります。
シマリスは何とか自分の食事場所を守りきりました。
頬袋には最大で6つのドングリをためられます。
それを一気に巣の中へ。
冬支度は大忙しです。
北海道東部の野付半島。
砂が堆積した全長26キロの細長い半島です。
枯れ木が立ち並ぶ寒々とした光景が広がります。
秋子孫を残すための激しい戦いが繰り広げられます。
大きな角。
エゾシカのオスです。
秋はエゾシカにとって繁殖シーズン。
オスは縄張りを作り何頭ものメスを囲います。
自分の子孫を多く残すためです。
オスにとって一頭でも多くのメスを囲う事が大事になります。
ところが別のオスがメスを狙ってやって来ました。
群れのオスはライバルの挑戦を受けて立ちます。
(角がぶつかる音)70センチを超える大きな角のぶつかり合い。
静かだった半島に激しい音が響き渡ります。
(角がぶつかる音)勝ったのは挑戦者のオスでした。
次は群れのオスとしてライバルたちの挑戦を受ける事になります。
子孫を残せるのは一握りのオスだけなのです。
世界屈指の豪雪地日本。
冬いくつもの気象条件が重なって出来る自然の芸術があります。
スノーモンスター樹氷です。
樹氷は氷点下の空気中で水の粒が木々にぶつかって氷になり更に雪が積み重なったもの。
巨大な樹氷が山一面に立ち並ぶのは世界でも日本だけです。
急峻な山々と自然の神秘が生む圧巻の光景が広がります。
北海道の海を覆うのは流氷。
ロシア・アムール川の河口近くで生まれ日本に流れ着きます。
北半球で最も南の氷の海です。
海が氷に閉ざされる頃日本を目指してやって来る生き物がいます。
オオワシです。
翼を広げると2.5メートル。
世界最大の海のワシです。
ロシア東部から越冬のため日本に渡ってきます。
氷に閉ざされた湖で食べ物を探します。
遠くに人影が見えます。
漁師です。
氷を割っています。
厚い氷の下には網が仕掛けられていて真冬でも漁ができるのです。
とれるのは冬の貴重な獲物。
ワカサギやチカなどです。
しかし市場に出回らないものは氷の上に投げ置かれます。
オオワシはそれを狙っていたのです。
こちらの動きをじっと観察。
漁師が家路に就く頃一斉に魚に飛びかかります。
(鳴き声)氷上の熱い戦いです。
(鳴き声)獲物にありつく事ができました。
オオワシは時に人の営みを巧みに利用しながら極寒の大地に立ち向かいます。
ロシアへ戻る春まで耐えられたものだけが命をつないでいく事ができます。
寒さは厳しさを増していきます。
生き物たちの息遣いが聞こえてこない静かな世界。
命を支える僅かな場所がありました。
そこにいたのはタンチョウです。
世界の人々を魅了する日本を代表する鳥。
日本では主に北海道で見られます。
(鳴き声)タンチョウは江戸時代までは日本に広く分布していました。
しかしこの美しい羽を目当てに乱獲などが進み激減。
一時は北海道の平原に30羽ほどが残るだけでした。
しかしそれを救ったのが釧路地方の農家たちでした。
1950年代に猛寒波に襲われた時の事。
食べ物が乏しい中農家の与えるトウモロコシを食べ始めました。
それをきっかけに冬を越す個体が増え数が回復。
今では1,500羽ほどが北海道に生息しています。
復活の取り組みは国際的にも評価されています。

(鳴き声)雪原に響き渡る歌声。
(鳴き声)互いの絆を深める大切な舞です。
人に支えられながら貴重な命が輝きを取り戻しているのです。
世界の人々が魅了されるまるで魔法にかけられたかのような日本の自然。
大地の力が生み出す多彩な風景。
命を支える豊かな水の恵み。
そして自然と調和する人の営み。
日本は輝く命にあふれています。
2016/01/01(金) 02:30〜03:43
NHK総合1・神戸
ワイルドジャパン 魔法にかけられた島々[字][再]

NHKと英国BBCが2年にわたって撮影・制作した「ワイルドジャパン」。今回、海外からの視点で日本の美しい四季の変化を軸に繊細な映像で紡ぎ、その魅力を再発見する。

詳細情報
番組内容
NHKと英国BBCが2年にわたって撮影・制作した「ワイルドジャパン」。北海道から沖縄までの多様な環境と、躍動する生きものたちの姿を高精細の4K映像でとらえるとともに、ドローンを駆使したダイナミックな空撮映像も交え、世界に誇る貴重な日本の自然をスケール感豊かに描いた。今回、年末の特集番組として、海外からの視点で日本の美しい四季の変化を軸に繊細な映像で紡ぎ、その魅力を再発見する。
出演者
【語り】上川隆也,中川緑

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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